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エロメイン短編
大好きな爽やか先輩受けに告白したらOKしてもらったけど思ってたのと違う|気弱後輩×爽やか美形先輩(攻め視点)
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俺には憧れの人がいる。
一個上の榊先輩は優しくて、頼りになって、いつもとろくて馬鹿にされる俺なんかにもとっても優しいのだ。
「空木(うつき)、どうしたんだ? 相談したいことがあるって……」
「あ、あの、その……」
「うん?」と覗き込んでくる榊先輩。そんな顔もかっこよくて頬が熱くなってしまう。
それでも、今日こそは伝えるのだ。榊先輩と出会ってからずっと、胸の内に秘めていたこの思いを。
「あの、お、俺……榊先輩のことが好きです! つ、付き合ってください!」
放課後、誰もいない夕暮れに染まった廊下に自分の声が木霊する。
意を決して、ずっと頭の中で繰り返してたその言葉を口にしたときだった。鼻先の榊先輩の顔が、目が丸くなる。
そして、それもほんの一瞬。
「……は? まじで言ってんの?」
先程までの笑顔は消え失せ、真顔になる榊先輩に爪先から冷たくなっていった。
頭の奥底で優しい榊先輩なら断るときも優しく断ってくれる。そう思い込んでいたのかもしれない、目の前の榊先輩にひゅっと喉が鳴った。
「あ、あの……」
「あーもしかしてお前もあれか、『優しくされたら本気になるタイプ』ってやつ? まじか、ウケんね。俺男相手は流石に初めてだわ」
「ご、ごめんなさい……」
「なんで謝んの? お前が言ったんだろ、付き合ってくださいって」
言った。確かに言ったけど。
明らかに榊先輩の目には、その言葉の端々には嘲笑が含まれているのがわかってしまったからこそ酷く後悔した。顔をあげ、まともに榊先輩の顔を見ることもできない俺の肩に、とん、と榊先輩の手が乗った。
「いいよ、付き合ってやる」
「……ッ、へ……」
「なんで驚くんだよ、嫌だった?」
そんなはずない、と言わなければならないところなのに声が出なかった。榊先輩の顔を見てしまったからだ。まるでゴミでも見るような目でこちらを見下ろすその目を。
「ま、取り敢えず場所変えようぜ」
「こんな場所、他の奴らに見つかったら面倒だしな」と榊先輩に首を撫でられ、汗が吹き出した。
何故だろうか、告白を受け入れてもらえて付き合えることになったのに、まるで心が喜んでいない。
寧ろ撤回したい、付き合う前の悶々とした日々に戻りたい。そう思ったところで既に遅いとわかっていたからこそそう思ったのかもしれない。
◆ ◆ ◆
「空木、お前今までつきあったやついないって言ってたよな」
「は、……はい」
「男好きになったのは? 元々そういう趣味でもあったん?」
「な、ぃと思います……ぉ、俺は……っ、ん、榊先輩が……ッ」
「俺が初めて?」
耳元で囁かれ、ぶるりと肩が震える。顔が熱い。見たことのない、意地の悪い目で見つめられ直視できないまま俺はこくこくと数回頷いた。
そんな俺にさして興味なさそうに「ふうん」と榊先輩は唇に触れてくるのだ。
近くの空き部屋に押し込められたと思えば、まじまじと榊先輩に見つめられ、こうして触れられる。
俺にはまだこれが現実だと飲み込むことができなかった。いつも少し乱暴に俺の頭を撫でてくれていた手が、今は俺の唇に柔らかく触れるのだ。感触を確かめるように、薄皮ごと揉まれ「せんぱい」と声を漏らしたとき。榊先輩の顔が更に近付いた。
「……っ、」
「なあ、空木。俺と付き合いたいってことはキスとかそういうこともしたいってこと?」
「……そ、れは……ッ」
「なあ、ちゃんと答えろよ」
何故、こんな質問責めにあってるのかわからなかったが、すぐ側で榊先輩のいい匂いがするというだけで正常な思考なんてできるわけがなかった。
はい、と掠れる声で答えれば、榊先輩は「可愛いな、お前」と笑った。いつもの笑顔とは違う、やっぱり見たことのない笑顔だった。
「……せ、先輩……ッん、ぅ……ッ!」
それに気を取られた瞬間、視界が陰る。唇に押し当てられる柔らかな感触にぎょっとし、濃くなる榊先輩の匂いに頭の中が真っ白になった。
――俺、榊先輩とキスしてる。
「……っ、ん、ぅ……ッ」
「……は、なに息止めてんだよ。死ぬぞ?」
「っ、せ、先輩……なんで……ッ」
「キスしたいって言ったのはお前だろ? ほら、今度は口開けろよ」
「っ、え……ッ、ん、ぅ……むぅ……ッ!」
ずっと頭の中で想像していた触れるだけのキスと実際のそれはまるで違った。
唇を舐められ、滑るように入ってきた榊先輩の舌に驚く暇もなく咥内を舐られる。唾液同士が混ざり、それを咥内へ塗り込むように執拗に舐められ、舌を絡め取られる。
「っ、ん……ッ! ぅ、む……ッ!」
呼吸するのもやっとだった。緊張し、咄嗟に目の前の榊先輩の胸を押し返そうと伸ばした手首を取られる。そのまま手の甲から指の先まで重ねるようにして撫でられれば、それだけで背筋が震えた。
「ふ、ぅ……ッ」
「おい空木、舌ちゃんと出せよ」
「……っ、は……ッ、んん……ッ」
逆らうという考えに至ることができなかった。
性急だと分かっていても、それでいて感じたことのない感覚に囚われ、なにがおかしいのかも分からなくなって言われるがままに舌を出せば、口を開いた榊先輩にそのまま舌を甘く吸われるのだ。
「ッ、ふ、んぅ゛……ッ!」
榊先輩に咥えるように覆われた舌。ぬちぬちと唾液を塗り込むように舌を舐められ、ぴんと尖ったそこを根本から舌先までれろ、と舐めあげられれば眼球の奥、脳みそがじわりと熱くなっていく。
「っ、ぅ、む……っぢゅ、ぅ゛……ッ!」
「は、……ん、なあ空木、お前キス好きだろ」
「っ、へ、んは……ッ、ん、ぅ……ッ! ッは、わ、わかんな……ッぃ、です」
「嘘吐け、キスしただけで勃起してんぞ」
「ここ」と先輩に腰を押し付けられ、下腹部が震えた。
先輩の口から出た勃起という言葉と、キスに夢中になってる間に膨らんだそこに気付き顔から火が吹きそうになる。
「ぅ、あ……っ、ご、ごめんなさ……ッ」
「脱げよ、空木」
「……へ、ぇ」
「聞こえなかったか? 脱いで“それ”、見せろよ」
「俺のこと好きならできんだろ?」と笑う榊先輩に血の気が引いた。全身が冷たくなって、それと同時に熱くなる。もうわけがわからなかった。
けど、楽しんでる榊先輩が無表情になるのが見たくなくて俺はそれに逆らうことができなかった。
言われた通りベルトに手をかけ、スラックスを脱ぐ。下着越しでも性器の形がわかるほど勃起した自分の身体が恥ずかしくて、それ以上にニヤニヤと笑いながらこちらを見る榊先輩の視線が痛くて、恥ずかしくて、気持ちよくて、わけがわからない。
「ぬ、脱ぎました」
「馬鹿、全裸に決まってんだろ」
「……っ、そ、んな……」
「俺のこと、好きなんだよな」
「……ッ」
「俺とエロい事したくねえの?」
ああ、なんだ。何故だ。何故俺は萎えないのか。
呪詛のように囁かれる言葉は俺の精神を蝕んでいく。なにも考えられなくなるように甘く響く。
この人は間違いなく俺の反応を見て楽しんでいるだけだと分かっているのに、それでもいいと溺れてしまいそうになるのだ。下着に手をかけ、ゆっくりとそれを下ろせば、限界まで固くなった性器が反動で溢れ出すのだ。
それを見て、榊先輩は鼻で笑った。
「すげ、お前顔に似合わず結構デカいんだな」
「……っ、ん、せ、んぱい」
「なあ、お前俺で抜いたことあるの?」
先輩の指が俺の性器に触れる。それだけで意識が飛びそうだったのに、先輩の口から出たその言葉に心臓がより大きく跳ねるのだ。
「俺をオカズにしたのかって聞いてんだよ。……答えろよ、空木」
「……っ、ご、めんなさい……」
「ごめんなさいじゃないだろ? ……なに想像してシコシコやったんだ?」
俺にとって光のような榊先輩の口からは耳を塞ぎたくなるような言葉たちが飛び出してくる。
亀頭からとぷりと滲む先走りを人差し指で絡め取られ、尿道口へと塗り込むように窪みの部分を撫でられればそれだけでイッてしまいそうだった。
「せ、先輩に……ほ、められるのを……」
「褒められる?」
「……っ、ぁ、ん、……ッは、はい……っ」
「へ~……なんかむっつり臭えな」
「ご、ごめんなさ……ッ、ぁ゛ッ、んんッ!」
瞬間、柔らかく亀頭を押し潰され背筋が震えた。
そのまま尿道口を縦に潰すようにぬちぬちと揉まれ、「ひっ」と声が漏れる。
「っ、や、め……っ、せ、んぱいぃ……ッ」
「お前は俺のことどうしたいって思ってたんだ? 男同士ってあれだろ? ケツでやんだろ?」
「っ、そ、れは」
「今更こんなにチンポ勃起させといて恥ずかしがってんじゃねえよ。ほら、言えよ空木」
「っ、せ、先輩に、挿れたいです……ッ」
性の匂いが濃くなる密室の中、恥ずかしいくらいに間抜けな叫びが木霊する。
そんな俺を見下ろしたまま、一瞬きょとんとした榊先輩だったがすぐにあの意地悪な顔になったのだ。
「……っ、は、キモ」
その冷ややかな目に、引きつった顔面の貼り付けたような笑顔に、心の奥がぞくりと震える。
「お前が俺に? ……なあ、空木。お前、そんな風に俺のこと見てたのかよ」
「そんな無害そうな面で、股にこんなものぶら下げてな」玉のような汗が吹き出し、滲む。首から上が酷く熱くて、それなのにそれ以上に見たことのない榊先輩から目が逸らせない。
榊先輩の指の先一本一本の気配まで辿ってしまい、それを知ってか榊先輩はふ、と笑った。
「そんな強請るような顔するなよ。……仕方ねえな」
予想だにしていなかった榊先輩の声に、思わず「え」と間抜けな声を漏らしてしまう。
その次の瞬間だった。竿から根本を撫でていた指は、輪を作るようにその根本をぎゅっと掴んだ。ドクドクと性器の先端まで集まっていた血流を止められ、呼吸が浅くなる。
行き場を失った管の中、ものすごい勢いで流れてきた血液が溜まっていくような感覚だった。
「なんてな、俺がお前の女になるって? ジョーダン。いくらなんでもそこまで優しくねえから」
「っ、さ、かき先輩……っ、手を……ん……っ!」
「へえ、苦しそうだな。出したいのか?」
下着から性器全体を取り出した先輩は、片方の手で既に重たくなっていた睾丸を撫でるのだ。
性器からこちらの顔へと、下腹部を覗き込んでいた榊先輩の視線が自然と上目遣いになりより一層鼓動が跳ね上がった。
こくこくと何度も頷けば、睾丸を柔らかく撫でるように掌全体で握り込まれ、背筋がぶるりと震える。そのまま柔らかく圧迫するように押され、「先輩」と情けない声が漏れた。
「……その顔は悪くねえな」
そう言って、榊先輩は俺にキスをしようと顔を近づけてきた。
また榊先輩にキスしてもらえる――そんな気持ちが先走り、堪らず舌を伸ばそうとしたとき。届くはずの舌先は空を切るのみで、ひょいと顔を離した榊先輩はそんな俺の顔を見て笑った。
「駄目だ、まだな」
「ま、だ……?」
「ああ、まだだ。まだ俺は、空木の情けない顔が見たい」
今みたいに、と睾丸を弄ばれ、喉の奥から声が溢れる。竿の方もまた触ってもらいたくて、我慢できず自分の性器を握った。
そのまま榊先輩の顔を見つめながら性器を扱き出す俺を見て、「うーわ」と榊先輩は笑う。
「本当、どうしようもないやつだな。……お前にプライドないのかよ」
「っ、な、ないです、なくて……いいです……っ、おれ、今……先輩といるだけで……っ」
「気持ちよくなれんの?」
「……っ、……はい」
「イケねえのに」
それでもいいです、とは言えなかった。それでも先端からとろりと滲む先走りは止まらない。
荒くなる呼吸を整える余裕もなかった。ぬちぬちと先走りを指に絡め、全体を刺激していく。昂ぶれば昂ぶるほど自分を苦しめることになると分かってても手を止めることができなくて、そんな俺を見て榊先輩は笑うのだ。
「一生懸命だな、無駄撃ちになるだけってのに」
「は、……っ、く……ッ!」
「ドクドク言ってる。射精したいってさ」
「……っ、せ、んぱい……ッ!」
射精が近づくにつれ、出したいという思考一色に染められる。のたうち回りそうになるほどの飢えに似た感情が込み上げ、耐えられずに俺は榊先輩の胸を鷲掴んだ。
「……ッ、は」
シャツ越しにでも伝わるほどの胸の膨らみの感触を掌で味わう。我慢などすることはできなかった。まさか榊先輩は自分の胸を揉まれるのだと思ってなかったらしい。ほんの一瞬目が丸くなり、それからすぐに榊先輩は俺の性器から手を離した。
瞬間、睾丸の中、溜まりに溜まったどろりとした精液が溢れ出し、先輩の制服を汚してしまう。
「……っ、う、わ。なにやってんの、まじで」
「はあ、……っすみませ……」
「……萎えたわ、帰る」
ゴシゴシと人のシャツで精液をぬぐった先輩は、そう怒ったように鞄を手にし、部屋を出ていくのだ。濃厚な性の匂いが残った部屋の中、俺は出したばかりの性器にどくどくと熱が集まるのを感じる。
先程胸を揉んだときの感触、それよりも榊先輩の驚いたような目と立ち去り際に髪の下から覗いた赤くなった耳を思い出しては再び勃起した。
「……っ、先輩……」
追いかけて押し倒す勇気など俺にはない。
指を埋めれば柔らかく押し返してくる榊先輩の胸の感触を思い出しながら、俺はそのあと二回榊先輩で抜いた。
おしまい
一個上の榊先輩は優しくて、頼りになって、いつもとろくて馬鹿にされる俺なんかにもとっても優しいのだ。
「空木(うつき)、どうしたんだ? 相談したいことがあるって……」
「あ、あの、その……」
「うん?」と覗き込んでくる榊先輩。そんな顔もかっこよくて頬が熱くなってしまう。
それでも、今日こそは伝えるのだ。榊先輩と出会ってからずっと、胸の内に秘めていたこの思いを。
「あの、お、俺……榊先輩のことが好きです! つ、付き合ってください!」
放課後、誰もいない夕暮れに染まった廊下に自分の声が木霊する。
意を決して、ずっと頭の中で繰り返してたその言葉を口にしたときだった。鼻先の榊先輩の顔が、目が丸くなる。
そして、それもほんの一瞬。
「……は? まじで言ってんの?」
先程までの笑顔は消え失せ、真顔になる榊先輩に爪先から冷たくなっていった。
頭の奥底で優しい榊先輩なら断るときも優しく断ってくれる。そう思い込んでいたのかもしれない、目の前の榊先輩にひゅっと喉が鳴った。
「あ、あの……」
「あーもしかしてお前もあれか、『優しくされたら本気になるタイプ』ってやつ? まじか、ウケんね。俺男相手は流石に初めてだわ」
「ご、ごめんなさい……」
「なんで謝んの? お前が言ったんだろ、付き合ってくださいって」
言った。確かに言ったけど。
明らかに榊先輩の目には、その言葉の端々には嘲笑が含まれているのがわかってしまったからこそ酷く後悔した。顔をあげ、まともに榊先輩の顔を見ることもできない俺の肩に、とん、と榊先輩の手が乗った。
「いいよ、付き合ってやる」
「……ッ、へ……」
「なんで驚くんだよ、嫌だった?」
そんなはずない、と言わなければならないところなのに声が出なかった。榊先輩の顔を見てしまったからだ。まるでゴミでも見るような目でこちらを見下ろすその目を。
「ま、取り敢えず場所変えようぜ」
「こんな場所、他の奴らに見つかったら面倒だしな」と榊先輩に首を撫でられ、汗が吹き出した。
何故だろうか、告白を受け入れてもらえて付き合えることになったのに、まるで心が喜んでいない。
寧ろ撤回したい、付き合う前の悶々とした日々に戻りたい。そう思ったところで既に遅いとわかっていたからこそそう思ったのかもしれない。
◆ ◆ ◆
「空木、お前今までつきあったやついないって言ってたよな」
「は、……はい」
「男好きになったのは? 元々そういう趣味でもあったん?」
「な、ぃと思います……ぉ、俺は……っ、ん、榊先輩が……ッ」
「俺が初めて?」
耳元で囁かれ、ぶるりと肩が震える。顔が熱い。見たことのない、意地の悪い目で見つめられ直視できないまま俺はこくこくと数回頷いた。
そんな俺にさして興味なさそうに「ふうん」と榊先輩は唇に触れてくるのだ。
近くの空き部屋に押し込められたと思えば、まじまじと榊先輩に見つめられ、こうして触れられる。
俺にはまだこれが現実だと飲み込むことができなかった。いつも少し乱暴に俺の頭を撫でてくれていた手が、今は俺の唇に柔らかく触れるのだ。感触を確かめるように、薄皮ごと揉まれ「せんぱい」と声を漏らしたとき。榊先輩の顔が更に近付いた。
「……っ、」
「なあ、空木。俺と付き合いたいってことはキスとかそういうこともしたいってこと?」
「……そ、れは……ッ」
「なあ、ちゃんと答えろよ」
何故、こんな質問責めにあってるのかわからなかったが、すぐ側で榊先輩のいい匂いがするというだけで正常な思考なんてできるわけがなかった。
はい、と掠れる声で答えれば、榊先輩は「可愛いな、お前」と笑った。いつもの笑顔とは違う、やっぱり見たことのない笑顔だった。
「……せ、先輩……ッん、ぅ……ッ!」
それに気を取られた瞬間、視界が陰る。唇に押し当てられる柔らかな感触にぎょっとし、濃くなる榊先輩の匂いに頭の中が真っ白になった。
――俺、榊先輩とキスしてる。
「……っ、ん、ぅ……ッ」
「……は、なに息止めてんだよ。死ぬぞ?」
「っ、せ、先輩……なんで……ッ」
「キスしたいって言ったのはお前だろ? ほら、今度は口開けろよ」
「っ、え……ッ、ん、ぅ……むぅ……ッ!」
ずっと頭の中で想像していた触れるだけのキスと実際のそれはまるで違った。
唇を舐められ、滑るように入ってきた榊先輩の舌に驚く暇もなく咥内を舐られる。唾液同士が混ざり、それを咥内へ塗り込むように執拗に舐められ、舌を絡め取られる。
「っ、ん……ッ! ぅ、む……ッ!」
呼吸するのもやっとだった。緊張し、咄嗟に目の前の榊先輩の胸を押し返そうと伸ばした手首を取られる。そのまま手の甲から指の先まで重ねるようにして撫でられれば、それだけで背筋が震えた。
「ふ、ぅ……ッ」
「おい空木、舌ちゃんと出せよ」
「……っ、は……ッ、んん……ッ」
逆らうという考えに至ることができなかった。
性急だと分かっていても、それでいて感じたことのない感覚に囚われ、なにがおかしいのかも分からなくなって言われるがままに舌を出せば、口を開いた榊先輩にそのまま舌を甘く吸われるのだ。
「ッ、ふ、んぅ゛……ッ!」
榊先輩に咥えるように覆われた舌。ぬちぬちと唾液を塗り込むように舌を舐められ、ぴんと尖ったそこを根本から舌先までれろ、と舐めあげられれば眼球の奥、脳みそがじわりと熱くなっていく。
「っ、ぅ、む……っぢゅ、ぅ゛……ッ!」
「は、……ん、なあ空木、お前キス好きだろ」
「っ、へ、んは……ッ、ん、ぅ……ッ! ッは、わ、わかんな……ッぃ、です」
「嘘吐け、キスしただけで勃起してんぞ」
「ここ」と先輩に腰を押し付けられ、下腹部が震えた。
先輩の口から出た勃起という言葉と、キスに夢中になってる間に膨らんだそこに気付き顔から火が吹きそうになる。
「ぅ、あ……っ、ご、ごめんなさ……ッ」
「脱げよ、空木」
「……へ、ぇ」
「聞こえなかったか? 脱いで“それ”、見せろよ」
「俺のこと好きならできんだろ?」と笑う榊先輩に血の気が引いた。全身が冷たくなって、それと同時に熱くなる。もうわけがわからなかった。
けど、楽しんでる榊先輩が無表情になるのが見たくなくて俺はそれに逆らうことができなかった。
言われた通りベルトに手をかけ、スラックスを脱ぐ。下着越しでも性器の形がわかるほど勃起した自分の身体が恥ずかしくて、それ以上にニヤニヤと笑いながらこちらを見る榊先輩の視線が痛くて、恥ずかしくて、気持ちよくて、わけがわからない。
「ぬ、脱ぎました」
「馬鹿、全裸に決まってんだろ」
「……っ、そ、んな……」
「俺のこと、好きなんだよな」
「……ッ」
「俺とエロい事したくねえの?」
ああ、なんだ。何故だ。何故俺は萎えないのか。
呪詛のように囁かれる言葉は俺の精神を蝕んでいく。なにも考えられなくなるように甘く響く。
この人は間違いなく俺の反応を見て楽しんでいるだけだと分かっているのに、それでもいいと溺れてしまいそうになるのだ。下着に手をかけ、ゆっくりとそれを下ろせば、限界まで固くなった性器が反動で溢れ出すのだ。
それを見て、榊先輩は鼻で笑った。
「すげ、お前顔に似合わず結構デカいんだな」
「……っ、ん、せ、んぱい」
「なあ、お前俺で抜いたことあるの?」
先輩の指が俺の性器に触れる。それだけで意識が飛びそうだったのに、先輩の口から出たその言葉に心臓がより大きく跳ねるのだ。
「俺をオカズにしたのかって聞いてんだよ。……答えろよ、空木」
「……っ、ご、めんなさい……」
「ごめんなさいじゃないだろ? ……なに想像してシコシコやったんだ?」
俺にとって光のような榊先輩の口からは耳を塞ぎたくなるような言葉たちが飛び出してくる。
亀頭からとぷりと滲む先走りを人差し指で絡め取られ、尿道口へと塗り込むように窪みの部分を撫でられればそれだけでイッてしまいそうだった。
「せ、先輩に……ほ、められるのを……」
「褒められる?」
「……っ、ぁ、ん、……ッは、はい……っ」
「へ~……なんかむっつり臭えな」
「ご、ごめんなさ……ッ、ぁ゛ッ、んんッ!」
瞬間、柔らかく亀頭を押し潰され背筋が震えた。
そのまま尿道口を縦に潰すようにぬちぬちと揉まれ、「ひっ」と声が漏れる。
「っ、や、め……っ、せ、んぱいぃ……ッ」
「お前は俺のことどうしたいって思ってたんだ? 男同士ってあれだろ? ケツでやんだろ?」
「っ、そ、れは」
「今更こんなにチンポ勃起させといて恥ずかしがってんじゃねえよ。ほら、言えよ空木」
「っ、せ、先輩に、挿れたいです……ッ」
性の匂いが濃くなる密室の中、恥ずかしいくらいに間抜けな叫びが木霊する。
そんな俺を見下ろしたまま、一瞬きょとんとした榊先輩だったがすぐにあの意地悪な顔になったのだ。
「……っ、は、キモ」
その冷ややかな目に、引きつった顔面の貼り付けたような笑顔に、心の奥がぞくりと震える。
「お前が俺に? ……なあ、空木。お前、そんな風に俺のこと見てたのかよ」
「そんな無害そうな面で、股にこんなものぶら下げてな」玉のような汗が吹き出し、滲む。首から上が酷く熱くて、それなのにそれ以上に見たことのない榊先輩から目が逸らせない。
榊先輩の指の先一本一本の気配まで辿ってしまい、それを知ってか榊先輩はふ、と笑った。
「そんな強請るような顔するなよ。……仕方ねえな」
予想だにしていなかった榊先輩の声に、思わず「え」と間抜けな声を漏らしてしまう。
その次の瞬間だった。竿から根本を撫でていた指は、輪を作るようにその根本をぎゅっと掴んだ。ドクドクと性器の先端まで集まっていた血流を止められ、呼吸が浅くなる。
行き場を失った管の中、ものすごい勢いで流れてきた血液が溜まっていくような感覚だった。
「なんてな、俺がお前の女になるって? ジョーダン。いくらなんでもそこまで優しくねえから」
「っ、さ、かき先輩……っ、手を……ん……っ!」
「へえ、苦しそうだな。出したいのか?」
下着から性器全体を取り出した先輩は、片方の手で既に重たくなっていた睾丸を撫でるのだ。
性器からこちらの顔へと、下腹部を覗き込んでいた榊先輩の視線が自然と上目遣いになりより一層鼓動が跳ね上がった。
こくこくと何度も頷けば、睾丸を柔らかく撫でるように掌全体で握り込まれ、背筋がぶるりと震える。そのまま柔らかく圧迫するように押され、「先輩」と情けない声が漏れた。
「……その顔は悪くねえな」
そう言って、榊先輩は俺にキスをしようと顔を近づけてきた。
また榊先輩にキスしてもらえる――そんな気持ちが先走り、堪らず舌を伸ばそうとしたとき。届くはずの舌先は空を切るのみで、ひょいと顔を離した榊先輩はそんな俺の顔を見て笑った。
「駄目だ、まだな」
「ま、だ……?」
「ああ、まだだ。まだ俺は、空木の情けない顔が見たい」
今みたいに、と睾丸を弄ばれ、喉の奥から声が溢れる。竿の方もまた触ってもらいたくて、我慢できず自分の性器を握った。
そのまま榊先輩の顔を見つめながら性器を扱き出す俺を見て、「うーわ」と榊先輩は笑う。
「本当、どうしようもないやつだな。……お前にプライドないのかよ」
「っ、な、ないです、なくて……いいです……っ、おれ、今……先輩といるだけで……っ」
「気持ちよくなれんの?」
「……っ、……はい」
「イケねえのに」
それでもいいです、とは言えなかった。それでも先端からとろりと滲む先走りは止まらない。
荒くなる呼吸を整える余裕もなかった。ぬちぬちと先走りを指に絡め、全体を刺激していく。昂ぶれば昂ぶるほど自分を苦しめることになると分かってても手を止めることができなくて、そんな俺を見て榊先輩は笑うのだ。
「一生懸命だな、無駄撃ちになるだけってのに」
「は、……っ、く……ッ!」
「ドクドク言ってる。射精したいってさ」
「……っ、せ、んぱい……ッ!」
射精が近づくにつれ、出したいという思考一色に染められる。のたうち回りそうになるほどの飢えに似た感情が込み上げ、耐えられずに俺は榊先輩の胸を鷲掴んだ。
「……ッ、は」
シャツ越しにでも伝わるほどの胸の膨らみの感触を掌で味わう。我慢などすることはできなかった。まさか榊先輩は自分の胸を揉まれるのだと思ってなかったらしい。ほんの一瞬目が丸くなり、それからすぐに榊先輩は俺の性器から手を離した。
瞬間、睾丸の中、溜まりに溜まったどろりとした精液が溢れ出し、先輩の制服を汚してしまう。
「……っ、う、わ。なにやってんの、まじで」
「はあ、……っすみませ……」
「……萎えたわ、帰る」
ゴシゴシと人のシャツで精液をぬぐった先輩は、そう怒ったように鞄を手にし、部屋を出ていくのだ。濃厚な性の匂いが残った部屋の中、俺は出したばかりの性器にどくどくと熱が集まるのを感じる。
先程胸を揉んだときの感触、それよりも榊先輩の驚いたような目と立ち去り際に髪の下から覗いた赤くなった耳を思い出しては再び勃起した。
「……っ、先輩……」
追いかけて押し倒す勇気など俺にはない。
指を埋めれば柔らかく押し返してくる榊先輩の胸の感触を思い出しながら、俺はそのあと二回榊先輩で抜いた。
おしまい
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