どうしょういむ

田原摩耶

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同床異夢

おしまいにしよう※

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「ぁ、あ……っ、ぁ、ゃ、燕斗……っ! ぉ゛、くひ……っ!」
「美甘、気持ちいいか? 退屈な恋愛ごっこよりもずっと楽しいだろ? そうだよな、美甘」
「っ、さ、だは、そんなんじゃ……っ、ぁ゛、う、くうぅ……っ!」
「そうだって言え」
「ひ、ぅ゛」

 腰が勝手に揺れる。その揺れに合わせて震える性器が滑稽で、情けなくて、それなのに自分で抑えきれることなどできなかった。

「何が彼氏だ、何が恋人だ。……馬鹿馬鹿しい。お前のことを何も知らない、表面でしか見てない。自分の正義に酔ってるような男に告られて満足か? 馬鹿みたいに浮かれて舞い上がってな……はは、可愛いよ、本当」

 息が苦しい。体勢とかの問題ではなく、呼吸が浅くなる。床の上を這いずって逃げようとしても燕斗に何度も足を捕まれ、そのまま腰を掴まれた。
 栄都のやつからなにか聞いたのか、だからこんなに怒ってるのか。……どうでもいいだとか顔も見たくないだとか言ったくせに。
 俺にはもう燕斗のことが何も分からない。ただ、こいつが悪意を持って俺を傷つけようとしてるのだけはわかった。
 今までだって何度も泣かされてきた。そりゃあもうボロキレのように扱われたりもした。けれども、こんな風に剥き出しになった燕斗の感情に触れたのは初めてだったからこそ、戸惑った。普段ならば本心など見えないほどのガチガチの鍍金に覆われていた部分だ。……いや、本当にそうなのか?

 そんなことを考えた瞬間、臍の下を指で押さえつけられる。ぐりぐりと膀胱ごと前立腺を圧迫された瞬間、目の前が白くなる。

「っぃ゛、う゛……っ!」
「認めろ、美甘。お前が好きなのはあいつじゃない、自分が可愛いだけだ」
「ちが、っ、ふ、ぅ゛……っ! ぁ、や゛、ぐひ……っ!」

 違う。そう言いたいのに、内側と外側から前立腺を柔らかく潰されそうになり、内腿がガクガクと痙攣する。呼吸すらもままならない。開いた口からは唾液と呻き声ばかりが漏れ出す。
 やばい、これ、いやだ。やめろ。
 必死に腰を捩り燕斗の手から逃れようとするが、間に合わなかった。

「ぃ゛、あ゛……っ!」

 びくりと大きく跳ね上がった下半身。勢いよく噴き出す熱。ぴゅっとカーペットの上に飛び散る体液を見て、俺の中から指を抜いた燕斗は「少ないな」と俺の頭を撫でた。燕斗の手癖のようなものだ。わかっていたのに、冷たい目で、昔と変わらない優しい手で俺の頭を撫でる燕斗に頭が混乱しそうになる。

「ぁ、え、んと……」
「そういや美甘、聞いたか? 君完のやつは今後俺達がお前に近付いたら警察に突き出すらしいぞ」
「……は、……」
「不自然だと思わなかったか? そんなあいつがお前の悲鳴を聞いても駆けつけてこないなんて。……小便漏らされて、こんなに泣いて、可哀想なお前をほったらかしにしてあいつは何をしてるんだろうな」

 どくん、と心臓が跳ねる。薄暗いリビングの中、立ち上がった燕斗はそのまま俺の腿を踏みつけ、開脚させたまま固定した。
 大きく開かされた股の奥、口を開いたまま肛門が開閉するのを体で感じた。

「ど、ういう、意味」
「どういう意味だと思う? 少しは自分で考えたらどうだ、美甘」
「サダに、サダになにか……っ」

 したんじゃないだろうな、と言いかけた矢先だった。いきなりリビングの扉が開いた。そして、部屋の中にパッと灯りが点る。

「うー……っ、さっみぃ、暖房くらい点けろよなあ」

 もしかしてサダが帰ってきたのではないか。そう首を動かした俺は、リビングへと入ってきた長身の男を見て青ざめた。
 勝手に人の家の暖房を弄り、上着をソファーへと脱ぎ捨てたそいつ――もとい栄都は俺達の方を見て、笑う。

「なんでそんな寒そうなところでやってんだよ。ソファー使わせりゃいいのに、可哀想だろ? 美甘が」
「さ、んと」
「そうだよ、俺だよ俺。……悪かったなぁ? 大好きなサダじゃなくて」

 サダは栄都と話すために外に行って、それで、なんでこいつが普通に家に上がってくるのだ。
 なんで、サダはいないのか。
 頭に昇っていた血がどんどんと引いていく。

「栄都、君完はどうした?」

 青褪める俺の代わりに問いかけたのは燕斗だった。「あー」と思い出したように髪を掻き上げた栄都は、「連れてきた方が良かった?」と悪びれもせず、そのままソファーにふんぞり返るのだ。

「外に置いてきて見つかったときのが面倒だ。……それに、目を覚まされたときもな。縛ってここに連れてきておけ。後は適当に転がしておけばいいさ」
「はいはい、楽しそうで何より」
「黙れよ、栄都」
「おい、美甘なにやってんだよ。こいつもっと機嫌悪くなってんじゃねーか、しっかり媚びとけって」

 笑いながら渋々立ち上がった栄都は、「黙って行け」と燕斗に静かに怒鳴られ肩を竦める。それからこちらをちらりと見ては小馬鹿にしたような一笑だけを漏らし、すぐにリビングを出ていく。
 俺は何も声に出すことができなかった。二人の会話を断片的に聞いて、サダが気絶させられるようなことをされたのは間違いない。

 俺はサダの言葉を信じていた。報復されたとしても、警察がきてくれたらなんやかんや助かると。
 けれど、そもそも警察を呼ぶことも許されなかったとしたら?
 全身から冷たい汗が滲む。手足が震えるのは寒さからだけではないだろう。
 そっと俺の肩を抱いた燕斗は唇を寄せた。

「そんなに震えるな、美甘。寒いのか?」
「燕斗、なんで、こんな」

 こんなことをするんだ。
 そう、震える唇で必死に言葉を絞り出したとき、燕斗は普段と変わらない優しい笑顔を浮かべた。

「言っただろ。これで終わりにするためだ」
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