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近いようで遠い関係性、幼馴染。六日目。
愛だとか恋だとか好きだとか幼馴染だとか
しおりを挟む宋都の部屋を出た俺は、リビングへと降りてきていた。
まだぼんやりとした頭で目の前に映し出されるドラマを眺める。勿論、頭の中に入ってくるはずがない。
「はぁ……」
宋都は昼寝してて、燕斗も多分今休んでるのだろう。時計を見れば、もう休み時間が終わる頃だろうか。
サダに返事をしないといけないと分かっていたが、サダへと送るメッセージの内容を考えようとしても、どうしても宋都から聞いた話の内容が脳にこびりついてしまっていた。
やっぱり、俺に恋人なんて早かったんだ。
俺がこんな不誠実で情けない男だったと改めて突き付けられると、言いしれぬ虚脱感に襲われてしまう。
逃げてばかりでは駄目だと分かってきても、元々逃げてばかりの俺からしてみたらどうサダと向き合えばいいのか分からなかった。
……あいつらは、俺が逃げたところで追いかけてくるようなやつらだったしな。
双子の顔を思い出しながらも、ぼんやりとテレビを見ていたときだ。
不意に、ベランダの方で人の気配がした。――正確には窓の外、家の門の前だ。
なんとなく気になって起き上がった俺は、そろりとベランダに寄る。そして、驚愕した。
「……っ?! さ、サダ?!」
思わず声に出てしまい、慌てて口を塞いだ。制服の上から上着を着たサダが門の前、インターホンを鳴らそうとしていたのを見て、俺は慌ててソファーから降りる。
そして、ベランダへと出たのだ。
「……っ、さだ、……サダ!」
なるべくご近所迷惑にならないような声量でサダを呼べば、俺に気付いたようだ。ベランダの柵越し、こちらを振り返ったサダは「美甘?」と驚いたような声をあげる。
「って、サダ……走ってきたのか? すごい汗だな……」
「っ、お前……、大丈夫か……」
「あ。……お、俺は……大丈夫、それより、ほら」
サダ、と俺はスラックスのポケットを探り、ハンカチを取り出した。そのまま、柵の向こうにいるサダの額の汗を拭えば、サダは「悪い」とだけ呟いた。
「いや、俺の方こそ……返事遅くなってごめん。その、色々あって」
「……」
「あっ! いや、その、色々っていうのはそういうやつなんじゃなくて、その……っ!」
どんどんと空気が重くなっていくのがわかる。サダを傷付けるつもりはなかったのだ。本当だ。俺はあいつらの無茶苦茶さには慣れてたけど、サダは違う。
何事もなかったように振る舞える方がおかしいのだ、と今更になって当たり前のことに気付いた。
「……サダ、ごめん。……心配してきてくれたんだよな」
「当たり前だろ。あんな、……っ、……慈光弟は? いるのか?」
「ああ、上で寝て……」
ると思う、と言いかけた矢先、目の前でインターホンを押そうとするサダにぎょっとする。
「わーっ! サダ、待った!」
「……美甘、なんで止めるんだ? あいつとは一回ちゃんと話すべきだったんだ」
「いや、その、宋都のことは本当気にしなくていいから! あいつ、まじで俺のことその辺に転がってる小石としか思ってないから! ……っ、その……」
「あいつにとってはその辺の小石でも、俺にとっては大切な子だ」
――サダが、怒ってる。
普段優しいサダばっかり見てきただけに、感情を顕にするサダを前に俺は言葉に詰まった。
心臓がぎゅうっと締め付けられ、それと同時に自分が尚恥ずかしくなってしまうのだ。
「……さ、サダ……」
「やっぱり、ごめん。無理だ。……お前がそういうことサれてるって知ってても、無理。……割り切れるわけねえだろ」
「……っ、……」
引かれても仕方ないし、嫌われたってそりゃそうだと思えるのに。何故こんなに俺のことを見詰めてくれるのだ。
苦しげに吐き出すサダに、動悸が乱れる。頭が、熱い。俺、こんなにサダを傷付けて逃げようとしたやつなのに。なんで。
考えれば考えるほど頭と脳がぐるぐると回り出す。そのまま呼吸が浅くなったとき、背後でがらりと窓ガラスが開いた。
そして。
「――ああ? うるせーなと思ったらなに人んちの庭先でイチャイチャしてんだよ」
ふらりと倒れそうになった体を抱き支えた宋都は、凍り付くサダを前に「金取んぞ、サダ」と皮肉たっぷりの性悪笑顔を浮かべるのだ。
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