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性悪双子と強制的に仲直りさせられる。三日目。
救世主でもあり元凶※
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――慈光家・玄関口。
おばさんも宋都も出けているらしい。誰もいない慈光家に燕斗と二人きりになるというシチュエーションほど恐ろしいものはあるだろうか。
「体は大丈夫?」
「え」
「美甘、環境が変わると毎回体調崩してただろ」
二階へと上がる階段を昇りながら、燕斗はそんなことをぽつりと口にする。
あんなキスしといていうセリフかよ、というか順番が違うだろ。と、思わず喉元まで言葉が出かかったが、なんんとか寸でのところで堪えることに成功した。
「別に、普通だけど……ゆっくり眠れたし」
そう答えれば、階段の途中でふと足を止めた燕斗はこちえらをちらりと振り返る。いきなり立ち止まるものだからぶつかりそうになり、危ないだろという念を込めて顔を上げれば、燕斗のやつと思いっきり目が合ってしまう。
燕斗のやつがあまりにも冷たい目でこちらを見てくるもんだから、思わず「なんだよ」と身構えれば、あいつは「ふうん」とだけ呟いてそのまま階段を上がっていくのだった。
本当に、なんなんだよ。
もやもやとした気持ちを抱えたまま、俺はそんな燕斗の後を追いかけた。
それから、俺は燕斗に連れられるように燕斗の部屋までやってきたいた。
相変わらず機嫌は悪いもんだから、一体どんな八つ当たりをされるかとヒヤヒヤしていたが、俺が想像していたよりも燕斗は落ち着いていた。否、嵐の静けさというやつなのかもしれない。
「美甘、そこ座って」
俺を部屋に押し込むなり、燕斗はそう部屋の奥にあるベッドを指さした。
なんでベッドなんだ。座るくらいなら俺は地べたで十分だ。と、言いたいところだったが燕斗に逆らえるわけもなかった。
恐る恐るベッドに腰を掛ける。「これでいいのか」と、傍に立つ燕斗をちらりと見た時だった。隣に腰を掛けてくる燕斗に、全身の筋肉が緊張する。
太ももがくっつくくらいの距離の近さは今に始まったことではないにしてもだ。
「美甘」と左耳に吹きかかる吐息に息を飲んだ。恐ろしさのあまり、燕斗の方を見ることが出来なかった。
「こっちを見ろ、美甘」
「う……え、燕斗……」
「ちゃんと説明しろ、自分の口で。どういうつもりで、こんなものを俺に送り付けて来たのか」
そう、俯く俺の眼前に差し出されるのは燕斗の携帯端末だ。そこに表示されているのは俺とのトーク画面。昼間にメッセージ送り付けたあと、燕斗からの怒涛のメッセージに既読つけることも避けていたことを思い出し、ハッとする。
「た……確かに、いきなり予定キャンセルしたことは悪かった。けど、俺だっておれの人付き合いが……」
あるんだからそれくらい大目に見れくれたっていいじゃないか。
そう、ごにょごにょと口ごもったとき、ぴくりと燕斗の片眉が反応したのを見て息を飲む。
やばい、間違いなくこいつイラついてる。
「人付き合い、ねえ」
「な……なんだよ」
「俺は美甘との予定があったら何が何でもお前を優先させるし、そもそもいきなり別の予定――ましてやお泊りなんて喧嘩売るような真似はしないけど」
「け、喧嘩売ってたつもりじゃ……」
「じゃあ、俺とそんなに一緒に帰りたくなかったのか?」
思わず言葉に詰まってしまった。実際そうなのだから誤魔化しようがなかったのだ。
そもそもなぜ俺はこんな圧迫面接みたいな真似をされているというのか。俺のせいか、そうか。
最悪の空気ではあるが、ちゃんとこいつに本音を話すならば今しかないのじゃないかと思った。だって、いつもははぐらかされたり宋都の邪魔が入ってまともに話せるような空気にすらならないし。
勇気を振り絞り、俺は「だって」と声を吐き出した。
「お、お前はそうなのかも知れないけど、お、俺は……違う」
「違う?」
「俺だって、ふ……ふ、普通に、遊んだりしたかったんだよ」
ただ言葉を伝えるだけだというのに、なぜこんなに決死の思いで伝えなければならないのだろうか。
言葉が喉に突っかかり、握りしめた拳に更にきゅっと力が入るようだった。
こちらをじっと見ていた燕斗の目が更にすっと細められるのを見て息を飲んだ。
「美甘、普通ってなに?」
「ぅ、え」
「普通にだったら、俺達だって遊んでるだろ」
伸びてきた燕斗の掌が太ももの上に置かれ、思わず慌てて燕斗の手を掴んだ。
それを無視して、燕斗は腿と腿の隙間に指を滑り込ませてくる。
「ふ、普通じゃないだろ、こんな……っ」
「普通だっただろ、俺達の間では」
「それは……」
お前ら二人の間の話しだろ。
そう言い返そうとした時、腿を掴んでいた燕斗の掌がゆっくりと足の付け根に向かって這い上がってくる。まだ宋都に犯されたときの感覚や疲労、異物感が残った下腹部へと近づく燕斗の手が恐ろしくて、「やめろよ」と小さく身を攀じった時だった。
「今更何言ってんだよ。……それとも、やっぱり君完のやつになにか吹き込まれたのか」
「っサダは、関係ない……っ」
またあいつに迷惑をかけるようなことだけは避けたかった。
咄嗟に声をあげ、否定した瞬間燕斗に膝の頭を掴まれる。なにをするんだ、と止める暇すらもなかった。そのまま大きく脚を開かされ、顔面に熱が集まる。
「な、あ」
「……ああ、驚いた。美甘、お前ってそんな大きな声も出せるんだ」
開かされる足の間、這わされた燕斗の手が腿の付け根のリンパを揉みしだく。
触れられているだけなのに、あまりにもねっとりとした燕斗の触れ方に背筋が震える。
「やめろ、燕斗……っ」
「ねえ美甘、確かめて良い?」
「なに言って……」
「だから、本当に何もないのかを」
は、と息を飲んだ時だった。
足の付け根まで登ってきた燕斗の手は敢えて股の奥、そこにある膨らみ始めたそれを避けるようにして俺の服の中へと手を滑り込ませてきた。
「な、おい……っ」
やめろ、と慌てて燕斗の手を掴む。
けれど燕斗はそれを無視し、服の裾を持ち上げるように直接腹部を撫でるのだ。
「ん、ぅ……っ」
「柔らかいね。完定にもここ、触らせたの?」
「だから、ちがう……って、……」
さっきから何を勘違いしてるんだ。サダをお前と一緒にするな!
そう言い返したかったのに、それよりも先にぺろりと服の裾を持ち上げられ、呼吸が停まりそうになった。
お腹が見えるほど服を持ち上げられ、「やめろよ」と慌てて服の裾を掴んで下げようとすれば、燕斗のやつは更に服を持ち上げる。
「駄目だろ、美甘。言っただろ、これは確認だって」
「うそ、やめろ、服伸びる……っ!」
「大丈夫だよ。そのときは俺が新しい服買ってやるから」
そういう問題ではないのだ。
泣きそうになる俺を無視し、とうとう首元まで服を捲り上げた燕斗。
俺は恥ずかしさのあまり下を見ることなどできなかった。
すーすーする胸元に、お腹周りを撫でていた燕斗の手がゆっくりと皮膚の感触を楽しむように近付いてくる。
いやだ、やめろ。と股を閉じ、必死に仰け反って燕斗の手から逃げようとするが、そんなこと最早無駄な抵抗だった。
「……ねえ、美甘。これ、なに?」
そして、明らかに燕斗の声が低くなったのを俺は聞き逃さなかった。
『これ』とはなんなのだ。
咄嗟に目を開けたとき、そのまま燕斗に胸元を撫でられ、身動ぐ。
燕斗の視線の先、胸元に残った小さな引っ掻き傷や痣に息を飲んだ。
昨日色々あって忘れていたが、間違いない。宋都に便所で襲われたときについたものだろう。
さっと血の気が引いていく。
「そ、それは……」
「一昨日はこんな跡なかったよね」
「ん、う……っ!」
くるくると燕斗の指が痣の周辺を撫でる。
その感触がこそばゆくて、思わず身体が震えた。
――もしかして燕斗のやつ、サダがつけたと思っているのだろうか。
「ち、がう……それは……」
「それは?」
「ぁ……っ、ん、ぅ、やめろ……触るな……っ」
「続けろよ、美甘」
鷲掴みにでもするように這わされた燕斗の手に、そのまま柔らかく胸を揉まれる。揉むというよりも掴まれてる感覚の方が強いが、それでも悲しきかな散々弄り倒されてきた乳首は手のひらで潰されるだけでも反応してしまうようだ。
「言って、美甘」
「っう、……っ、ゃ……」
「や、じゃないだろ。……それとも、俺には言えないのか?」
何度燕斗の腕から逃げようとしても更に身体を抱き竦められ、しまいには燕斗の膝の上に座らせられてしまうのだ。
燕斗の股の間、尻の辺りの嫌な感触がただ不愉快だった。もぞもぞと何度も体勢を整え直して逃げようとするが、ガッチリと腰の前でホールドされた筋肉質な腕は俺のことを逃す気はないようだ。更に背中から覆いかぶさってくるようにのし掛かってくる燕斗は俺の右耳を甘噛みする。
「美甘」
――だから、なんでこいつは既にもうキレ掛けてるんだよ!
堪らず泣きたくなった。あとどさくさに紛れて耳を舐めるな、と慌てて顔を逸らせば、更に舌を伸ばされ、耳に吐息を吹きかけられて「ひいッ」と情けない声が漏れてしまう。
言えるものなら言いたい、サダの名誉のためにもだ。
けどそうなると『じゃあ誰につけられた?』となるわけで、芋蔓式に宋都が出てきて余計に燕斗が面倒なことになるのは目に見えている。
……なんて考えていたときだった。
「だんまりか? 美甘。……俺に隠し事するなって言ってるよな、お前はどうせ嘘が吐けないんだから」
「っ、ま、待て、燕斗……っ! ん、ぅ……っ!」
柔らかく乳首を指で弾かれた瞬間、下腹部がぶるりと震えた。
はあはあと呼吸が浅くなり、必死に声を堪えようとすればするほど燕斗の愛撫は執拗になっていく。
指で捏ねられ、側面をシコシコと擦られ、引き伸ばされていく。
それだけで堪らなく甘いものが胸の奥、それから下半身にじんわりと広がっていくのだ。
「や、だ……っ、ん、え、んと……ッ」
「気持ちいいのが好きだろ? 正直に言えば、痛いことはしないでやる。お前が嫌いな痛いことだよ」
ね、と乳首をシコってた燕斗の指に僅かに力が入り、腰がびくんと跳ね上がった。ただでさえ過敏なそこに刺すような鋭い痛みが走り、考えるよりも先に「やだ」と声が漏れた。
「い、痛いの……ぃ、いやだ、燕斗……やめて……っ」
「じゃあ本当のこと教えてくれるよな」
「ほ、本当に……サダとはなにもないんだって、サダは優しくしてくれて……っ」
「優しく、こんな風に触ってくれた?」
抓られたと思えば、今度は乳首を柔らかく潰され、そのまま柔らかくなった乳輪に頭を埋めるように指を動かされる。そのまま円を描くようにくるくると内側で刺激されれば、それだけで自分のものと思えないような恥ずかしい声が漏れてしまうのだ。
「ち、ちが……や、っ、いやだ、それ……っんん……っ!」
「違う?」
「さ、サダとは……ぇっ、え、えっちなこと……してないから……っ、本当に……っ!」
「……じゃあ『これ』は?」
乳首の傍についていたキスマークのことを言ってるのだろう。
このままでは一生燕斗から開放されない。そう悟った俺は覚悟を決め、「宋都が」と声を上げた。宋都の名前が出た瞬間、カリカリと乳首を引っ掻いていた燕斗の手がようやく止まった。
「さ、宋都に……無理矢理……っ、サダは、関係ない……っ」
――言った。言ってやったぞ!
これでいいだろ、もう許してくれ。そう背後の燕斗を見上げたとき、俺はそのままひゅっと息を飲んだ。
「……それ、いつの話?」
丁度部屋の照明の下になった燕斗の顔には影が出来、その表情まではよく見えなかった。けれど、明らかに更に落ちた声に俺は再び、いや先程以上に危険を察知したのだった。
「い、いつのって……」
なんでそんなことを聞くんだ。
焦りやらなんやらでぐるぐると回る頭の中、燕斗にぎゅっと柔らかく乳首を引っ張られれば、あまりの痛みに「ひうっ」と情けない声が漏れる。
構わず燕斗はそのまま乳首の先っぽをぐに、と柔らかく指の腹で挟んでくるのだ。それはもう敏感になってたそこにとっては激痛に等しい。
「ぁ、い、痛い……っ燕斗、やだ……っ!」
「いつの話だって聞いてるんだ、美甘。言え」
「い、ぁ、ほ、放課後……っ、放課後に、宋都と会って……んんっ!」
言い終わるよりも先に、更に乳輪ごと絞るように乳首を挟まれ、痛みのあまりに燕斗の腕の中で全身が震えた。
じわ、と目尻に滲む涙を見て、燕斗はそのままべろりと舌を這わせ、溜まった涙を舐めとる。
乳首への刺激は相変わらず、痛みに全身を強張らせる俺の顔を覗き込み、燕斗は「放課後?」と再度確認するように尋ねてくるのだ。俺は何度も頷き返した。
「ん、う……え、燕斗……っ」
「へえ、あいつ……放課後探し回っても美甘には会わなかったって言っていたはずだけどな」
「……っ!」
――これは、まずいかもしれない。
宋都のやつには散々な目に遭わされたのだから今更義理立てする必要はないとしてもだ、それでも俺の処女を引き換えにあいつを黙らせたわけだから――まさかこれ、宋都にもブチ切れられるやつじゃないのか。
「ぁ、あ、まちがえたっ、ちが、えんと……」
「違うってなにが?」
「ほ、放課後……じゃない」
「じゃあいつ?」
ぎゅうっともう片方の乳首も絞られ、息を飲む。痛みを通り越してじんじんと熱く痺れだしたそこに集中力や思考力、その他諸々がかき乱されるようだった。
「わ、わすれ……ひう゛ッ!」
「忘れた? 今忘れたって言おうとしたか? 美甘」
「ぁ、あ、そ、そこばっか、形おかしくなる……っ!」
「もうとっくに恥ずかしい形になってるから気にするな、美甘。それより、今忘れたって言わなかったか? お前、もしかして俺に嘘なんて吐いてるわけないよな?」
「ぁ゛……っ、や、ちが……ッ」
「本当に?」と耳元で囁かれながら、今度は痛みで感覚がイカれ始めていたそこから燕斗の指が離れる。そして、そのままツンと尖ったそこに優しく撫でるように先っぽを擦られた瞬間、びくん!と大きく上体が跳ね上がった。
「ぁ、や、ほ、ほんと……ぉ゛……ッ! 待って、それ、その触り方いやだ、えんと」
「嘘を吐いたらお前でも許さないぞ、美甘。分かってるよな、俺がそういうの死ぬほど嫌いだって」
「ぁ゛っ、ふ、ぅ゛……ッ!」
痛みと快感、緩急つけて交互に刺激され続け、感覚神経がイカれ始めてるのかもしれない。
今度は突起から指が離れ、すりすりとその周囲の柔らかく色付いた部分を指の腹で擦られ、勝手に開いた喉の奥から声が漏れそうになる。
いやだ、燕斗、と何度も頭を振るが、燕斗は刺激する手を止めようとはしない。まるで試すように執拗に胸ばかりを触れられ、下腹部にまで熱が集まり始めるのだ。
「嘘、吐いてないよな?」
逃げようと浮かした腰を押さえつけられたまま、足を絡み取られる。そのまま開かされた下半身、膨らんだ下腹部を眼下に晒されぎょっとするのも束の間。
燕斗にねっとりと耳を舐められ、「ひう」と声が震えた。
燕斗が怒っている。怒ってる燕斗ほど俺には怖いものはない。けど、本当のこと言ったら宋都にも、もしかしたら燕斗にも怒られるかもしれない。
そう思ったら怖くてまともな考え方なんてできるはずもなかった。
「ほ、ほんと……」
「じゃあ俺の目を見てもう一回言え、放課後に宋都のやつに会っていないって」
「さんとに、あってないです……」
「放課後が抜けてるだろ」
「ほ、放課後に……っ、ぃ、さ、宋都に、会って、にゃ……な、いれす……っ!」
乳首をカリカリ引っかかれるという直接的な妨害を受けながらも、俺は必死に燕斗に訴えかけた。こちらの顔を真正面から覗き込んでいた燕斗は、冷たい目で俺をただじっと品定めするが如く見つめるのだ。
「じゃあ、いつこのキスマークをつけられたんだ?」
「んっ、ぅ、が、学校で……ぇ……」
「そうか。わかった」
言うなり、燕斗はどこからともなく取り出した携帯端末を操作する。そして慣れた手付きでどこかへと電話を掛け始めるのだ。
「ああ、もしもし。俺だ。宋都お前、美甘と放課後会ったか?」
『ああ? なんだよあいつもうネタバラシしたのか?』
スピーカーモードになっていた端末から聞こえてきた苛ついたような宋都の声に血の気が引いていく。
端末に耳を当てたまま、ゆっくりと燕斗の視線がこちらへと向けられていくのが分かり、益々血の気が引いた。
「ああ、お前に散々な目に遭わされたって泣いてたぞ」
『嘘吐け。あいつだってションベン垂らして喜んでたっての……』
ぶち、と宋都の声はそこで途切れた。燕斗が通話を終了させたのだ。『もうこれ以上は必要ないだろう』、そう判断した燕斗が。
俺は恐ろしさと燕斗からの圧に耐えきれずにただひたすら足元のカーペットの毛並みを眺めるので精一杯だった。
「……それで、なにか言い残したことはないか? 美甘」
え、俺、これから処刑でもされるのか?
「ない、です」
「だろうな。あっても、これ以上は自分の首を締めるのと同義だからな」
「え、えんと、ごめ」
んなさい、と続けるよりも先に、燕斗の掌が太腿に伸びる。そのまま足の付け根まで這い上がってきた大きな掌は、あまりの恐怖に縮み込み始めていた股間を鷲掴むのだ。
「ひぎゅっ!」と大きく震える俺に構わず、手の中のその細やかな命を鷲掴みにしたまま燕斗は微笑んだ。
「――……聞こえないな、なにも」
あ、終わった。俺。
「ぁ、あ゛……っ、いやだ、燕斗」
「嘘を吐いたのはお前だ、美甘。俺に逆らえる立場か?」
「おかしいと思わないのか」と下着の裾から滑り込んできた手に、そのまま下着の中で性器を激しく責め立てられる。何故俺がこんな責め苦を受けなければならないのか、あまりの理不尽さに泣きそうになりながら「ごべんな゛しゃい」と連呼することしかできない。
しかし、それで燕斗が許すわけがない
「なんで俺に嘘吐いた」
「らっ、だ、だって……だっで、えんと怒る……」
「お前が嘘吐くからだ」
下着の中、ガチガチになって自分の先走りで濡れまくってたそこの根本を掴まれ、堪らず「ひぎゅっ!」と背筋が震える。
苦しい。大きく開いた股の間、大きくなろうとしていたところを阻害されて頭が真っ白になっていく。
「ぁ、や、やめて……苦しいの、や、いやだ……っ」
「苦しい? 嫌だ? ……お前は好きだろ、こういうの」
「ぅ、や、……っ、やだ、離して、手ぇ……っ」
「俺たちとの約束よりも、君完と一緒にいる方が楽しかった?」
「う、あ」
声質は柔らかいもののだ。しかし、言葉の端々に滲むその威圧感は拭えない。
そんなことない、なんてあからさまな嘘はこいつの怒りを更に焚きつけてしまうだけだ。
俺が言葉に詰まっていると、燕斗はそのまま下着の中から俺の性器を引っ張り出した。
「まっで、えんと……っ! い、ぅ……ッ!」
ぴょんと勃起したそこの根本を掴まれたまま、伸びてきたもう片方の手に亀頭を柔らかく撫でられる。
燕斗に性器を掴まれているというだけでも恐ろしいのに、何故そこを、と考えるだけで汗が止まらなかった。
そんな俺を無視し、燕斗は窪みに指を這わせるのだ。
「っ、ぁ、や……っ」
「なあ美甘」
「え、んと」
「――まさか、俺から逃げようだなんて思ってないよな?」
ピンポイントに刺され、息が詰まりそうになった。
燕斗の顔にいつもの柔らかい笑顔はない。
ぬちぬちと亀頭を刺激しながら、燕斗は「なあ美甘」と再度俺を呼ぶ。掌を被せるようにぐり、と亀頭を擦り上げられた瞬間、電流が流されたように下半身が震えた。
「えんと、燕斗、それいやだ、えんと……ッ!」
「なあ、違うって言わないんだ。否定しろよ、美甘」
「ち、が……っ、ちがう、ちがうからっ、ゆるして……ッ」
「遅いよ」
「っ、ひ、ぅ゛……ッ!!」
ただでさえ敏感な部分を擦られ、強すぎる刺激にどうにかなりそうだった。
燕斗の手から逃れようとする度に燕斗の膝からずり落ちそうになる。それでも燕斗は責める手を緩めなかった。
「ぁっ、あ゛……ッ、ひ、いやだ、くる、でちゃ、……っ、えんと……っ!」
「このままじゃ出ないから安心しろ。気持ちいいのがずっと続いて、端ない美甘は嬉しいだろ?」
「っ、――ッ、ぅ、ひ……ッ!」
目の前の悪魔は淡々と、優しい声で続けるのだ。
先走りも絡み、更に激しくなる燕斗の愛撫にあっという間に限界まで勃起した性器。それでも行き場のない快感にただ頭がどうにかなりそうだった。
「すごい鼻水出てるぞ、美甘」
「ご、めんなしゃ、ゆるじで……も゛ぉ、もぉじない……ッ!」
「俺を未読無視して宋都のやつとだけ二人でこっそり会った挙げ句、そのまま他の男の家に行かないってことか?」
チクチク言葉なんてものではない。相当根に持ってる燕斗の機嫌を直すにはひたすら誠意の謝罪、これに限る。
ウンウンと頷けば、燕斗は俺を見つめていた。そのまま亀頭を捏ね、揉んでいた手がやや緩む。
「じゃあ、俺のこと好きだって言えよ。美甘」
「しゅ、すき、すき!」
「愛が籠もってないな」
「ひっ、ぃぐ……っ! すきだから、はやくっ、ぃ、いきたい……っ! ぐるじ、も、やぁ……っ」
ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返しながら必死に快感から逃れようとバタつく俺に、燕斗は眉一つ変えないままこちらをじっと見下ろしていた。そして、
「っ、ん、む……っ」
触れるようにキスをされる。
そして、掴まれていた根本から手が離れた次の瞬間、そのまま俺は燕斗の掌に射精した。
浮き上がる腰、無理矢理引きずり出される快感はあまりにも強烈だ。脳の細胞が多分いくつか死んだと思う。
声にならない声をあげ、そのまま痙攣する俺の体を抱き締めたまま燕斗は更に深く唇を重ねたのだ。
「は、……っふ、う……っ」
虫の息、とはまさにこのことだろう。
射精後の疲労感に呼吸するのも精一杯で、そのまま力が抜けそうになったところを燕斗に抱き締められる。
「美甘、もう一回言って」
「な、に……」
「好きって。俺のこと」
「す……き……」
「うん」
なんなんだよ、急にしおらしくなりやがって。
そのまま唇を重ねられたまま、燕斗に性器を扱かれる。溢れる精液を塗り込むようにゆるゆると扱いてくる手は先程よりもほんの少しだけ優しい、が射精直後の俺にとっては堪らないものだ。
「っ、は、んむ……っ、う……っ」
「美甘、もう一回」
「っ、ぅ、あ……好き、好き……っ、だから、も……っ、休ませて……っ」
「だめ、ちゃんと言って」
「っ、う、んん……っ」
まるで駄々っ子のようなことを言いながらも強請ってくる燕斗。
竿全体を扱かれる度に腰が浮きそうになり、俺はうわ言のように「好き」と繰り返すのだ。その度に燕斗は俺にキスをする。頭がどうにかなりそうだった。
なんで俺は好きっていいながらこいつとキスしてんだ。
「じゃあ、宋都より好き?」
そんな中、咄嗟に問いかけてきたその言葉に思わず俺は燕斗を見上げた。
そんなの、比べられるわけがないだろ――お前らどっちも大嫌いだ。
「美甘、なんで黙るんだよ」
「っ、いやだ、燕斗……っ、こわ、い」
「俺は怖くないだろ。……なあ、こっち向けよ」
美甘、と顎を掴まれ、ぷにゅ、と唇をくっつけられる。唇の薄皮に這わされる舌に、頭の奥がじんわりと熱くなる。
こんな状況で、ちんぽから汁垂らしながらアホみたいに同じ言葉を繰り返すことしかできない俺だけど、その問いに対してだけは答えることはできなかった。
それが燕斗の気に召さなかったようだ。
「……まだ駄目か」
確かにそう、小さく燕斗はつぶやいたのだ。
そしてそのときだった。扉の外からドタドタとけたたましく階段を駆け上がってかる音が聞こえてきた。誰の足音なのか、俺にはもう分かる。
そして次の瞬間、勢いよく扉が開いた。走って帰ってきたのか、制服姿で息を乱した宋都がそこにいた。
「おいっ、燕斗……って、うわ、遅かったか」
「遅かったな、宋都。美甘なら連れて帰ってきたぞ」
「あの電話からだろうなとは思ったけどよ、よくやるよな」
見るな、とか、せめて足を閉じさせてくれとか色々あったが、宋都は燕斗の膝の上で股をおっぴろげさせられている俺を見ても動じることなく、むしろ何もなかったかのようにどかりと隣に腰をかけてくるのだ。
「っ、さ、んと……っ」
「おー泣いてる泣いてる。燕斗におもくそ怒られたか」
「けどま。お前が悪いんだからな」と笑いながらそのまま人の下着をずらし、肛門に指を入れてくる宋都にぎょっとした。
「っ、ぅ、ん……っ、んん……っ!」
「言っておくが宋都、お前にもこのあと色々聞きたいことはあるんだがな」
「まあまあそんな怒んなって。ほら、お前の好きなやつ買ってきてやったから」
片手間作業みたいに人のケツとちんぽ弄りながら俺挟んで会話しないでくれ。
宋都はコンビニの袋に入ったそれをそのまま燕斗に手渡す。うっすらと見えた中身は、一時期燕斗がハマってたカカオ成分のチョコレートだ。俺にはなにが楽しくてそんな甘くもない罠みたいなチョコを買って食ってんのか理解できなかったが、どうやら今もまだ燕斗は好きなようだ。
それを受け取った燕斗はそのまま宋都を睨む。
「俺は美甘と違って物で釣られないぞ」
「分かってるよ。だから土産」
「……はあ」
このため息は少し許してるときの燕斗だ。というよりも、やれやれ本当にどうしようもないやつだなといった諦めの境地に近い。
受け取った袋をサイドボードに置いた燕斗はそのまま宋都を睨む。
「俺がいない間、美甘と遊んだんだろ? だったら今は、俺が美甘と遊ぶ番だ」
「おいおい、そんなにケチケチすんなって。ほら、美甘だって二人のが喜んでるだろ」
「こんなにケツヒクつかせて」と宋都に柔らかくなった肛門に何本も指挿れられ、そのままコリコリ前立腺を揉まれればぶわりと汗が滲んだ。
「っう、ぁ……っ、や……っ!」
「すぐ気持ちよくなってんじゃねーよ美甘」
「っ、ち、が……っ、んん……っ!」
「燕斗、ほら、美甘が口寂しいっつってんぞ」
そんなつもりはない。勝手なことを言うな。
そう言ってやりたいのに、口を開けば溜まった唾液と出したくもない声しか出てこない。
宋都に無理矢理燕斗の方を向かされたまま、えんと、と呟けば、燕斗の顔が引きつるのを見た。
「……っ、お前は、本当に……」
「えん……っ、ん、む……ぅ……ッ」
噛み付くように唇を重ねられる。
普段の燕斗よりも荒っぽいキスだった。それでも、それだけでも反応できるように既に俺の体は慣れさせられている。ねじ込まれる舌先にそのままぢゅぷ、と音立て、粘膜をこすり合わせるように絡ませられるのだ。逃げようとしても後頭部を掴まれて逃れることはできない。
唾液が溢れようが、汚れようが、関係ない。燕斗にディープキスされながら扱かれ、宋都にケツを穿られる。二度目の絶頂には射精は伴わなかった。ガクガクと跳ね上がる下腹部。「お、イッた」と宋都の笑う声を聞き流しながら、俺は暫く目の前の燕斗から目を反らすことはできなかった。否、許されなかった。
おばさんも宋都も出けているらしい。誰もいない慈光家に燕斗と二人きりになるというシチュエーションほど恐ろしいものはあるだろうか。
「体は大丈夫?」
「え」
「美甘、環境が変わると毎回体調崩してただろ」
二階へと上がる階段を昇りながら、燕斗はそんなことをぽつりと口にする。
あんなキスしといていうセリフかよ、というか順番が違うだろ。と、思わず喉元まで言葉が出かかったが、なんんとか寸でのところで堪えることに成功した。
「別に、普通だけど……ゆっくり眠れたし」
そう答えれば、階段の途中でふと足を止めた燕斗はこちえらをちらりと振り返る。いきなり立ち止まるものだからぶつかりそうになり、危ないだろという念を込めて顔を上げれば、燕斗のやつと思いっきり目が合ってしまう。
燕斗のやつがあまりにも冷たい目でこちらを見てくるもんだから、思わず「なんだよ」と身構えれば、あいつは「ふうん」とだけ呟いてそのまま階段を上がっていくのだった。
本当に、なんなんだよ。
もやもやとした気持ちを抱えたまま、俺はそんな燕斗の後を追いかけた。
それから、俺は燕斗に連れられるように燕斗の部屋までやってきたいた。
相変わらず機嫌は悪いもんだから、一体どんな八つ当たりをされるかとヒヤヒヤしていたが、俺が想像していたよりも燕斗は落ち着いていた。否、嵐の静けさというやつなのかもしれない。
「美甘、そこ座って」
俺を部屋に押し込むなり、燕斗はそう部屋の奥にあるベッドを指さした。
なんでベッドなんだ。座るくらいなら俺は地べたで十分だ。と、言いたいところだったが燕斗に逆らえるわけもなかった。
恐る恐るベッドに腰を掛ける。「これでいいのか」と、傍に立つ燕斗をちらりと見た時だった。隣に腰を掛けてくる燕斗に、全身の筋肉が緊張する。
太ももがくっつくくらいの距離の近さは今に始まったことではないにしてもだ。
「美甘」と左耳に吹きかかる吐息に息を飲んだ。恐ろしさのあまり、燕斗の方を見ることが出来なかった。
「こっちを見ろ、美甘」
「う……え、燕斗……」
「ちゃんと説明しろ、自分の口で。どういうつもりで、こんなものを俺に送り付けて来たのか」
そう、俯く俺の眼前に差し出されるのは燕斗の携帯端末だ。そこに表示されているのは俺とのトーク画面。昼間にメッセージ送り付けたあと、燕斗からの怒涛のメッセージに既読つけることも避けていたことを思い出し、ハッとする。
「た……確かに、いきなり予定キャンセルしたことは悪かった。けど、俺だっておれの人付き合いが……」
あるんだからそれくらい大目に見れくれたっていいじゃないか。
そう、ごにょごにょと口ごもったとき、ぴくりと燕斗の片眉が反応したのを見て息を飲む。
やばい、間違いなくこいつイラついてる。
「人付き合い、ねえ」
「な……なんだよ」
「俺は美甘との予定があったら何が何でもお前を優先させるし、そもそもいきなり別の予定――ましてやお泊りなんて喧嘩売るような真似はしないけど」
「け、喧嘩売ってたつもりじゃ……」
「じゃあ、俺とそんなに一緒に帰りたくなかったのか?」
思わず言葉に詰まってしまった。実際そうなのだから誤魔化しようがなかったのだ。
そもそもなぜ俺はこんな圧迫面接みたいな真似をされているというのか。俺のせいか、そうか。
最悪の空気ではあるが、ちゃんとこいつに本音を話すならば今しかないのじゃないかと思った。だって、いつもははぐらかされたり宋都の邪魔が入ってまともに話せるような空気にすらならないし。
勇気を振り絞り、俺は「だって」と声を吐き出した。
「お、お前はそうなのかも知れないけど、お、俺は……違う」
「違う?」
「俺だって、ふ……ふ、普通に、遊んだりしたかったんだよ」
ただ言葉を伝えるだけだというのに、なぜこんなに決死の思いで伝えなければならないのだろうか。
言葉が喉に突っかかり、握りしめた拳に更にきゅっと力が入るようだった。
こちらをじっと見ていた燕斗の目が更にすっと細められるのを見て息を飲んだ。
「美甘、普通ってなに?」
「ぅ、え」
「普通にだったら、俺達だって遊んでるだろ」
伸びてきた燕斗の掌が太ももの上に置かれ、思わず慌てて燕斗の手を掴んだ。
それを無視して、燕斗は腿と腿の隙間に指を滑り込ませてくる。
「ふ、普通じゃないだろ、こんな……っ」
「普通だっただろ、俺達の間では」
「それは……」
お前ら二人の間の話しだろ。
そう言い返そうとした時、腿を掴んでいた燕斗の掌がゆっくりと足の付け根に向かって這い上がってくる。まだ宋都に犯されたときの感覚や疲労、異物感が残った下腹部へと近づく燕斗の手が恐ろしくて、「やめろよ」と小さく身を攀じった時だった。
「今更何言ってんだよ。……それとも、やっぱり君完のやつになにか吹き込まれたのか」
「っサダは、関係ない……っ」
またあいつに迷惑をかけるようなことだけは避けたかった。
咄嗟に声をあげ、否定した瞬間燕斗に膝の頭を掴まれる。なにをするんだ、と止める暇すらもなかった。そのまま大きく脚を開かされ、顔面に熱が集まる。
「な、あ」
「……ああ、驚いた。美甘、お前ってそんな大きな声も出せるんだ」
開かされる足の間、這わされた燕斗の手が腿の付け根のリンパを揉みしだく。
触れられているだけなのに、あまりにもねっとりとした燕斗の触れ方に背筋が震える。
「やめろ、燕斗……っ」
「ねえ美甘、確かめて良い?」
「なに言って……」
「だから、本当に何もないのかを」
は、と息を飲んだ時だった。
足の付け根まで登ってきた燕斗の手は敢えて股の奥、そこにある膨らみ始めたそれを避けるようにして俺の服の中へと手を滑り込ませてきた。
「な、おい……っ」
やめろ、と慌てて燕斗の手を掴む。
けれど燕斗はそれを無視し、服の裾を持ち上げるように直接腹部を撫でるのだ。
「ん、ぅ……っ」
「柔らかいね。完定にもここ、触らせたの?」
「だから、ちがう……って、……」
さっきから何を勘違いしてるんだ。サダをお前と一緒にするな!
そう言い返したかったのに、それよりも先にぺろりと服の裾を持ち上げられ、呼吸が停まりそうになった。
お腹が見えるほど服を持ち上げられ、「やめろよ」と慌てて服の裾を掴んで下げようとすれば、燕斗のやつは更に服を持ち上げる。
「駄目だろ、美甘。言っただろ、これは確認だって」
「うそ、やめろ、服伸びる……っ!」
「大丈夫だよ。そのときは俺が新しい服買ってやるから」
そういう問題ではないのだ。
泣きそうになる俺を無視し、とうとう首元まで服を捲り上げた燕斗。
俺は恥ずかしさのあまり下を見ることなどできなかった。
すーすーする胸元に、お腹周りを撫でていた燕斗の手がゆっくりと皮膚の感触を楽しむように近付いてくる。
いやだ、やめろ。と股を閉じ、必死に仰け反って燕斗の手から逃げようとするが、そんなこと最早無駄な抵抗だった。
「……ねえ、美甘。これ、なに?」
そして、明らかに燕斗の声が低くなったのを俺は聞き逃さなかった。
『これ』とはなんなのだ。
咄嗟に目を開けたとき、そのまま燕斗に胸元を撫でられ、身動ぐ。
燕斗の視線の先、胸元に残った小さな引っ掻き傷や痣に息を飲んだ。
昨日色々あって忘れていたが、間違いない。宋都に便所で襲われたときについたものだろう。
さっと血の気が引いていく。
「そ、それは……」
「一昨日はこんな跡なかったよね」
「ん、う……っ!」
くるくると燕斗の指が痣の周辺を撫でる。
その感触がこそばゆくて、思わず身体が震えた。
――もしかして燕斗のやつ、サダがつけたと思っているのだろうか。
「ち、がう……それは……」
「それは?」
「ぁ……っ、ん、ぅ、やめろ……触るな……っ」
「続けろよ、美甘」
鷲掴みにでもするように這わされた燕斗の手に、そのまま柔らかく胸を揉まれる。揉むというよりも掴まれてる感覚の方が強いが、それでも悲しきかな散々弄り倒されてきた乳首は手のひらで潰されるだけでも反応してしまうようだ。
「言って、美甘」
「っう、……っ、ゃ……」
「や、じゃないだろ。……それとも、俺には言えないのか?」
何度燕斗の腕から逃げようとしても更に身体を抱き竦められ、しまいには燕斗の膝の上に座らせられてしまうのだ。
燕斗の股の間、尻の辺りの嫌な感触がただ不愉快だった。もぞもぞと何度も体勢を整え直して逃げようとするが、ガッチリと腰の前でホールドされた筋肉質な腕は俺のことを逃す気はないようだ。更に背中から覆いかぶさってくるようにのし掛かってくる燕斗は俺の右耳を甘噛みする。
「美甘」
――だから、なんでこいつは既にもうキレ掛けてるんだよ!
堪らず泣きたくなった。あとどさくさに紛れて耳を舐めるな、と慌てて顔を逸らせば、更に舌を伸ばされ、耳に吐息を吹きかけられて「ひいッ」と情けない声が漏れてしまう。
言えるものなら言いたい、サダの名誉のためにもだ。
けどそうなると『じゃあ誰につけられた?』となるわけで、芋蔓式に宋都が出てきて余計に燕斗が面倒なことになるのは目に見えている。
……なんて考えていたときだった。
「だんまりか? 美甘。……俺に隠し事するなって言ってるよな、お前はどうせ嘘が吐けないんだから」
「っ、ま、待て、燕斗……っ! ん、ぅ……っ!」
柔らかく乳首を指で弾かれた瞬間、下腹部がぶるりと震えた。
はあはあと呼吸が浅くなり、必死に声を堪えようとすればするほど燕斗の愛撫は執拗になっていく。
指で捏ねられ、側面をシコシコと擦られ、引き伸ばされていく。
それだけで堪らなく甘いものが胸の奥、それから下半身にじんわりと広がっていくのだ。
「や、だ……っ、ん、え、んと……ッ」
「気持ちいいのが好きだろ? 正直に言えば、痛いことはしないでやる。お前が嫌いな痛いことだよ」
ね、と乳首をシコってた燕斗の指に僅かに力が入り、腰がびくんと跳ね上がった。ただでさえ過敏なそこに刺すような鋭い痛みが走り、考えるよりも先に「やだ」と声が漏れた。
「い、痛いの……ぃ、いやだ、燕斗……やめて……っ」
「じゃあ本当のこと教えてくれるよな」
「ほ、本当に……サダとはなにもないんだって、サダは優しくしてくれて……っ」
「優しく、こんな風に触ってくれた?」
抓られたと思えば、今度は乳首を柔らかく潰され、そのまま柔らかくなった乳輪に頭を埋めるように指を動かされる。そのまま円を描くようにくるくると内側で刺激されれば、それだけで自分のものと思えないような恥ずかしい声が漏れてしまうのだ。
「ち、ちが……や、っ、いやだ、それ……っんん……っ!」
「違う?」
「さ、サダとは……ぇっ、え、えっちなこと……してないから……っ、本当に……っ!」
「……じゃあ『これ』は?」
乳首の傍についていたキスマークのことを言ってるのだろう。
このままでは一生燕斗から開放されない。そう悟った俺は覚悟を決め、「宋都が」と声を上げた。宋都の名前が出た瞬間、カリカリと乳首を引っ掻いていた燕斗の手がようやく止まった。
「さ、宋都に……無理矢理……っ、サダは、関係ない……っ」
――言った。言ってやったぞ!
これでいいだろ、もう許してくれ。そう背後の燕斗を見上げたとき、俺はそのままひゅっと息を飲んだ。
「……それ、いつの話?」
丁度部屋の照明の下になった燕斗の顔には影が出来、その表情まではよく見えなかった。けれど、明らかに更に落ちた声に俺は再び、いや先程以上に危険を察知したのだった。
「い、いつのって……」
なんでそんなことを聞くんだ。
焦りやらなんやらでぐるぐると回る頭の中、燕斗にぎゅっと柔らかく乳首を引っ張られれば、あまりの痛みに「ひうっ」と情けない声が漏れる。
構わず燕斗はそのまま乳首の先っぽをぐに、と柔らかく指の腹で挟んでくるのだ。それはもう敏感になってたそこにとっては激痛に等しい。
「ぁ、い、痛い……っ燕斗、やだ……っ!」
「いつの話だって聞いてるんだ、美甘。言え」
「い、ぁ、ほ、放課後……っ、放課後に、宋都と会って……んんっ!」
言い終わるよりも先に、更に乳輪ごと絞るように乳首を挟まれ、痛みのあまりに燕斗の腕の中で全身が震えた。
じわ、と目尻に滲む涙を見て、燕斗はそのままべろりと舌を這わせ、溜まった涙を舐めとる。
乳首への刺激は相変わらず、痛みに全身を強張らせる俺の顔を覗き込み、燕斗は「放課後?」と再度確認するように尋ねてくるのだ。俺は何度も頷き返した。
「ん、う……え、燕斗……っ」
「へえ、あいつ……放課後探し回っても美甘には会わなかったって言っていたはずだけどな」
「……っ!」
――これは、まずいかもしれない。
宋都のやつには散々な目に遭わされたのだから今更義理立てする必要はないとしてもだ、それでも俺の処女を引き換えにあいつを黙らせたわけだから――まさかこれ、宋都にもブチ切れられるやつじゃないのか。
「ぁ、あ、まちがえたっ、ちが、えんと……」
「違うってなにが?」
「ほ、放課後……じゃない」
「じゃあいつ?」
ぎゅうっともう片方の乳首も絞られ、息を飲む。痛みを通り越してじんじんと熱く痺れだしたそこに集中力や思考力、その他諸々がかき乱されるようだった。
「わ、わすれ……ひう゛ッ!」
「忘れた? 今忘れたって言おうとしたか? 美甘」
「ぁ、あ、そ、そこばっか、形おかしくなる……っ!」
「もうとっくに恥ずかしい形になってるから気にするな、美甘。それより、今忘れたって言わなかったか? お前、もしかして俺に嘘なんて吐いてるわけないよな?」
「ぁ゛……っ、や、ちが……ッ」
「本当に?」と耳元で囁かれながら、今度は痛みで感覚がイカれ始めていたそこから燕斗の指が離れる。そして、そのままツンと尖ったそこに優しく撫でるように先っぽを擦られた瞬間、びくん!と大きく上体が跳ね上がった。
「ぁ、や、ほ、ほんと……ぉ゛……ッ! 待って、それ、その触り方いやだ、えんと」
「嘘を吐いたらお前でも許さないぞ、美甘。分かってるよな、俺がそういうの死ぬほど嫌いだって」
「ぁ゛っ、ふ、ぅ゛……ッ!」
痛みと快感、緩急つけて交互に刺激され続け、感覚神経がイカれ始めてるのかもしれない。
今度は突起から指が離れ、すりすりとその周囲の柔らかく色付いた部分を指の腹で擦られ、勝手に開いた喉の奥から声が漏れそうになる。
いやだ、燕斗、と何度も頭を振るが、燕斗は刺激する手を止めようとはしない。まるで試すように執拗に胸ばかりを触れられ、下腹部にまで熱が集まり始めるのだ。
「嘘、吐いてないよな?」
逃げようと浮かした腰を押さえつけられたまま、足を絡み取られる。そのまま開かされた下半身、膨らんだ下腹部を眼下に晒されぎょっとするのも束の間。
燕斗にねっとりと耳を舐められ、「ひう」と声が震えた。
燕斗が怒っている。怒ってる燕斗ほど俺には怖いものはない。けど、本当のこと言ったら宋都にも、もしかしたら燕斗にも怒られるかもしれない。
そう思ったら怖くてまともな考え方なんてできるはずもなかった。
「ほ、ほんと……」
「じゃあ俺の目を見てもう一回言え、放課後に宋都のやつに会っていないって」
「さんとに、あってないです……」
「放課後が抜けてるだろ」
「ほ、放課後に……っ、ぃ、さ、宋都に、会って、にゃ……な、いれす……っ!」
乳首をカリカリ引っかかれるという直接的な妨害を受けながらも、俺は必死に燕斗に訴えかけた。こちらの顔を真正面から覗き込んでいた燕斗は、冷たい目で俺をただじっと品定めするが如く見つめるのだ。
「じゃあ、いつこのキスマークをつけられたんだ?」
「んっ、ぅ、が、学校で……ぇ……」
「そうか。わかった」
言うなり、燕斗はどこからともなく取り出した携帯端末を操作する。そして慣れた手付きでどこかへと電話を掛け始めるのだ。
「ああ、もしもし。俺だ。宋都お前、美甘と放課後会ったか?」
『ああ? なんだよあいつもうネタバラシしたのか?』
スピーカーモードになっていた端末から聞こえてきた苛ついたような宋都の声に血の気が引いていく。
端末に耳を当てたまま、ゆっくりと燕斗の視線がこちらへと向けられていくのが分かり、益々血の気が引いた。
「ああ、お前に散々な目に遭わされたって泣いてたぞ」
『嘘吐け。あいつだってションベン垂らして喜んでたっての……』
ぶち、と宋都の声はそこで途切れた。燕斗が通話を終了させたのだ。『もうこれ以上は必要ないだろう』、そう判断した燕斗が。
俺は恐ろしさと燕斗からの圧に耐えきれずにただひたすら足元のカーペットの毛並みを眺めるので精一杯だった。
「……それで、なにか言い残したことはないか? 美甘」
え、俺、これから処刑でもされるのか?
「ない、です」
「だろうな。あっても、これ以上は自分の首を締めるのと同義だからな」
「え、えんと、ごめ」
んなさい、と続けるよりも先に、燕斗の掌が太腿に伸びる。そのまま足の付け根まで這い上がってきた大きな掌は、あまりの恐怖に縮み込み始めていた股間を鷲掴むのだ。
「ひぎゅっ!」と大きく震える俺に構わず、手の中のその細やかな命を鷲掴みにしたまま燕斗は微笑んだ。
「――……聞こえないな、なにも」
あ、終わった。俺。
「ぁ、あ゛……っ、いやだ、燕斗」
「嘘を吐いたのはお前だ、美甘。俺に逆らえる立場か?」
「おかしいと思わないのか」と下着の裾から滑り込んできた手に、そのまま下着の中で性器を激しく責め立てられる。何故俺がこんな責め苦を受けなければならないのか、あまりの理不尽さに泣きそうになりながら「ごべんな゛しゃい」と連呼することしかできない。
しかし、それで燕斗が許すわけがない
「なんで俺に嘘吐いた」
「らっ、だ、だって……だっで、えんと怒る……」
「お前が嘘吐くからだ」
下着の中、ガチガチになって自分の先走りで濡れまくってたそこの根本を掴まれ、堪らず「ひぎゅっ!」と背筋が震える。
苦しい。大きく開いた股の間、大きくなろうとしていたところを阻害されて頭が真っ白になっていく。
「ぁ、や、やめて……苦しいの、や、いやだ……っ」
「苦しい? 嫌だ? ……お前は好きだろ、こういうの」
「ぅ、や、……っ、やだ、離して、手ぇ……っ」
「俺たちとの約束よりも、君完と一緒にいる方が楽しかった?」
「う、あ」
声質は柔らかいもののだ。しかし、言葉の端々に滲むその威圧感は拭えない。
そんなことない、なんてあからさまな嘘はこいつの怒りを更に焚きつけてしまうだけだ。
俺が言葉に詰まっていると、燕斗はそのまま下着の中から俺の性器を引っ張り出した。
「まっで、えんと……っ! い、ぅ……ッ!」
ぴょんと勃起したそこの根本を掴まれたまま、伸びてきたもう片方の手に亀頭を柔らかく撫でられる。
燕斗に性器を掴まれているというだけでも恐ろしいのに、何故そこを、と考えるだけで汗が止まらなかった。
そんな俺を無視し、燕斗は窪みに指を這わせるのだ。
「っ、ぁ、や……っ」
「なあ美甘」
「え、んと」
「――まさか、俺から逃げようだなんて思ってないよな?」
ピンポイントに刺され、息が詰まりそうになった。
燕斗の顔にいつもの柔らかい笑顔はない。
ぬちぬちと亀頭を刺激しながら、燕斗は「なあ美甘」と再度俺を呼ぶ。掌を被せるようにぐり、と亀頭を擦り上げられた瞬間、電流が流されたように下半身が震えた。
「えんと、燕斗、それいやだ、えんと……ッ!」
「なあ、違うって言わないんだ。否定しろよ、美甘」
「ち、が……っ、ちがう、ちがうからっ、ゆるして……ッ」
「遅いよ」
「っ、ひ、ぅ゛……ッ!!」
ただでさえ敏感な部分を擦られ、強すぎる刺激にどうにかなりそうだった。
燕斗の手から逃れようとする度に燕斗の膝からずり落ちそうになる。それでも燕斗は責める手を緩めなかった。
「ぁっ、あ゛……ッ、ひ、いやだ、くる、でちゃ、……っ、えんと……っ!」
「このままじゃ出ないから安心しろ。気持ちいいのがずっと続いて、端ない美甘は嬉しいだろ?」
「っ、――ッ、ぅ、ひ……ッ!」
目の前の悪魔は淡々と、優しい声で続けるのだ。
先走りも絡み、更に激しくなる燕斗の愛撫にあっという間に限界まで勃起した性器。それでも行き場のない快感にただ頭がどうにかなりそうだった。
「すごい鼻水出てるぞ、美甘」
「ご、めんなしゃ、ゆるじで……も゛ぉ、もぉじない……ッ!」
「俺を未読無視して宋都のやつとだけ二人でこっそり会った挙げ句、そのまま他の男の家に行かないってことか?」
チクチク言葉なんてものではない。相当根に持ってる燕斗の機嫌を直すにはひたすら誠意の謝罪、これに限る。
ウンウンと頷けば、燕斗は俺を見つめていた。そのまま亀頭を捏ね、揉んでいた手がやや緩む。
「じゃあ、俺のこと好きだって言えよ。美甘」
「しゅ、すき、すき!」
「愛が籠もってないな」
「ひっ、ぃぐ……っ! すきだから、はやくっ、ぃ、いきたい……っ! ぐるじ、も、やぁ……っ」
ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返しながら必死に快感から逃れようとバタつく俺に、燕斗は眉一つ変えないままこちらをじっと見下ろしていた。そして、
「っ、ん、む……っ」
触れるようにキスをされる。
そして、掴まれていた根本から手が離れた次の瞬間、そのまま俺は燕斗の掌に射精した。
浮き上がる腰、無理矢理引きずり出される快感はあまりにも強烈だ。脳の細胞が多分いくつか死んだと思う。
声にならない声をあげ、そのまま痙攣する俺の体を抱き締めたまま燕斗は更に深く唇を重ねたのだ。
「は、……っふ、う……っ」
虫の息、とはまさにこのことだろう。
射精後の疲労感に呼吸するのも精一杯で、そのまま力が抜けそうになったところを燕斗に抱き締められる。
「美甘、もう一回言って」
「な、に……」
「好きって。俺のこと」
「す……き……」
「うん」
なんなんだよ、急にしおらしくなりやがって。
そのまま唇を重ねられたまま、燕斗に性器を扱かれる。溢れる精液を塗り込むようにゆるゆると扱いてくる手は先程よりもほんの少しだけ優しい、が射精直後の俺にとっては堪らないものだ。
「っ、は、んむ……っ、う……っ」
「美甘、もう一回」
「っ、ぅ、あ……好き、好き……っ、だから、も……っ、休ませて……っ」
「だめ、ちゃんと言って」
「っ、う、んん……っ」
まるで駄々っ子のようなことを言いながらも強請ってくる燕斗。
竿全体を扱かれる度に腰が浮きそうになり、俺はうわ言のように「好き」と繰り返すのだ。その度に燕斗は俺にキスをする。頭がどうにかなりそうだった。
なんで俺は好きっていいながらこいつとキスしてんだ。
「じゃあ、宋都より好き?」
そんな中、咄嗟に問いかけてきたその言葉に思わず俺は燕斗を見上げた。
そんなの、比べられるわけがないだろ――お前らどっちも大嫌いだ。
「美甘、なんで黙るんだよ」
「っ、いやだ、燕斗……っ、こわ、い」
「俺は怖くないだろ。……なあ、こっち向けよ」
美甘、と顎を掴まれ、ぷにゅ、と唇をくっつけられる。唇の薄皮に這わされる舌に、頭の奥がじんわりと熱くなる。
こんな状況で、ちんぽから汁垂らしながらアホみたいに同じ言葉を繰り返すことしかできない俺だけど、その問いに対してだけは答えることはできなかった。
それが燕斗の気に召さなかったようだ。
「……まだ駄目か」
確かにそう、小さく燕斗はつぶやいたのだ。
そしてそのときだった。扉の外からドタドタとけたたましく階段を駆け上がってかる音が聞こえてきた。誰の足音なのか、俺にはもう分かる。
そして次の瞬間、勢いよく扉が開いた。走って帰ってきたのか、制服姿で息を乱した宋都がそこにいた。
「おいっ、燕斗……って、うわ、遅かったか」
「遅かったな、宋都。美甘なら連れて帰ってきたぞ」
「あの電話からだろうなとは思ったけどよ、よくやるよな」
見るな、とか、せめて足を閉じさせてくれとか色々あったが、宋都は燕斗の膝の上で股をおっぴろげさせられている俺を見ても動じることなく、むしろ何もなかったかのようにどかりと隣に腰をかけてくるのだ。
「っ、さ、んと……っ」
「おー泣いてる泣いてる。燕斗におもくそ怒られたか」
「けどま。お前が悪いんだからな」と笑いながらそのまま人の下着をずらし、肛門に指を入れてくる宋都にぎょっとした。
「っ、ぅ、ん……っ、んん……っ!」
「言っておくが宋都、お前にもこのあと色々聞きたいことはあるんだがな」
「まあまあそんな怒んなって。ほら、お前の好きなやつ買ってきてやったから」
片手間作業みたいに人のケツとちんぽ弄りながら俺挟んで会話しないでくれ。
宋都はコンビニの袋に入ったそれをそのまま燕斗に手渡す。うっすらと見えた中身は、一時期燕斗がハマってたカカオ成分のチョコレートだ。俺にはなにが楽しくてそんな甘くもない罠みたいなチョコを買って食ってんのか理解できなかったが、どうやら今もまだ燕斗は好きなようだ。
それを受け取った燕斗はそのまま宋都を睨む。
「俺は美甘と違って物で釣られないぞ」
「分かってるよ。だから土産」
「……はあ」
このため息は少し許してるときの燕斗だ。というよりも、やれやれ本当にどうしようもないやつだなといった諦めの境地に近い。
受け取った袋をサイドボードに置いた燕斗はそのまま宋都を睨む。
「俺がいない間、美甘と遊んだんだろ? だったら今は、俺が美甘と遊ぶ番だ」
「おいおい、そんなにケチケチすんなって。ほら、美甘だって二人のが喜んでるだろ」
「こんなにケツヒクつかせて」と宋都に柔らかくなった肛門に何本も指挿れられ、そのままコリコリ前立腺を揉まれればぶわりと汗が滲んだ。
「っう、ぁ……っ、や……っ!」
「すぐ気持ちよくなってんじゃねーよ美甘」
「っ、ち、が……っ、んん……っ!」
「燕斗、ほら、美甘が口寂しいっつってんぞ」
そんなつもりはない。勝手なことを言うな。
そう言ってやりたいのに、口を開けば溜まった唾液と出したくもない声しか出てこない。
宋都に無理矢理燕斗の方を向かされたまま、えんと、と呟けば、燕斗の顔が引きつるのを見た。
「……っ、お前は、本当に……」
「えん……っ、ん、む……ぅ……ッ」
噛み付くように唇を重ねられる。
普段の燕斗よりも荒っぽいキスだった。それでも、それだけでも反応できるように既に俺の体は慣れさせられている。ねじ込まれる舌先にそのままぢゅぷ、と音立て、粘膜をこすり合わせるように絡ませられるのだ。逃げようとしても後頭部を掴まれて逃れることはできない。
唾液が溢れようが、汚れようが、関係ない。燕斗にディープキスされながら扱かれ、宋都にケツを穿られる。二度目の絶頂には射精は伴わなかった。ガクガクと跳ね上がる下腹部。「お、イッた」と宋都の笑う声を聞き流しながら、俺は暫く目の前の燕斗から目を反らすことはできなかった。否、許されなかった。
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