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勘違い型突っ走り男
01
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「鹿波、お前、男とヤりまくってるってまじかよ」
「はあ?」
「知らねーのか?噂になってんだろ。最近大人しいと思ったらなるほどなぁ、男とヤってストレス解消か。人間変わるもんだなあ!ははは!」
某日、休み時間。
山下たちと野球して遊んでたらまあどこぞのアニメのように打ったボールがどっかに飛んでいって、ブーイングを受けた俺は渋々ボールを探しに校舎裏までやってきていた。
すると、相変わらずじめじめとした校舎裏には先客がいて、その内の一人がよく見知ったやつで。
一段と目立つ赤茶髪と見覚えのある背中。鹿波だ。
それともう一人、鹿波の奥には向かい合うように並ぶ体格のいい男子生徒が見えた。見るからに鹿波タイプだ。
なにを話しているのだろうか。多少気になったが、まあこういうのには関わらないに限るな。
なにやら不穏な空気を感じた俺はボール探しを中断し、そのまま気付かれないよう影に身を潜める。
「……で、話は」
唸るような低い鹿波の声。
これは腸が煮え繰り返り、怒りの限界を通り越して段々冷静になっているときの鹿波の声だ。
静かなその声に無関係な俺までギクッと緊張してしまう。
対して、男子生徒はそんな鹿波に全く気付いていないようだ。
「んだよつれねえな」そうにやにや笑いながら鹿波に一歩一歩近付く男子生徒は何気無い仕草で鹿波の肩に手を伸ばし、そのまま耳元に顔を近付ける。
「まあ、話っつーか一発ヤらせ」
そう男子生徒が鹿波の耳元でなにかを囁いたときだった。
言い終わる前に、肩に回された男子生徒の腕を掴んだ鹿波はそのまま背負い投げる。
ふわりと宙を浮いた男子生徒の体はそのまま地面へと乱暴に叩き付けられ、「ぷぎッ」となんとも可愛らしい声が聞こえてきた。
うわぁ、痛そう。雑な投げ方をしたお陰で不自然に曲がる腕を押さえもがく男子生徒に構わず、鹿波はその顔面に向かって思いっきり叩き潰すように踏みつけた。
なにかが潰れたような音がして、いつの日かの自分と男子生徒が重なり顔面から血の気が引いていく。
「誰から吹き込まれたんだ?んな、馬鹿げた話。なあ。誰から吹き込まれたんだって、おい。鼻潰すぞ豚」
低い声。ぐりぐりと足の裏を動かし擦り付けるように踏みにじる鹿波。
これは、逃げた方がいいな。うっかり見付かりでもしたらとばっちりが来そうだ。
そう悟った俺は抜けそうになる腰を持ち上げ、その場を後にしようとしたときだった。
不意に、近くの草むらに人影を見付ける。
もしかして自分のような人間が他にもいるのかと思ったが、違う。バットを手にしたそのもう一人はどうやら今現在鹿波に踏まれている男子生徒の仲間のようだ。
俺に気付いていないらしい共犯者はバット片手に草むらを出て、そのまま鹿波の背後に近付く。
普通に考えて、あれだ。男子生徒を踏みにじるのに気を取られている隙を狙って鹿波を襲うつもりなのだろう。そして輪姦凌辱プレイに発展してそれはもう激しいことになるに違いない。違いない。
うんまあ、あの小生意気な鹿波がリンチされて泣き喚いているところも見てみたい気がするが、そんなことを暢気に考える思考とは裏腹に体は勝手に動いていた。
「っおい!後ろ!」
そう鹿波に向かって咄嗟に声を上げるが、間に合わない。
構わず鹿波の後頭部に向かってバットを振りかぶる共犯者に焦った俺は草むらから出て慌てて鹿波に向かって走り出す。
「なッ」
背後からの声に驚いた鹿波は後ろを振り返り、今まさに殴りかかろうとしてくる共犯者といきなり飛び出してきた俺に目を丸くした。
ここまでは順調だった。
漫画のように『危ない!』とか『伏せろ!』とか言いながら鹿波を抱き締めそのままスライディング、見事バットを空振らせ『お前……!!なんでここに……!!』と驚く鹿波に尋ねられそこで俺は『それはお前が呼んだからさ』と決め台詞を口にする。
そうすれば鹿波は俺に惚れ、鹿波に恩を押し付けると同時にあいつに上下関係をしっかり分からせ、そして校内でも『あいつすげー!』と英雄扱いなんてそんなことを考えていたがどうやらやはり現実はそこまで甘くなかったようだ。
抱き締めようとした鹿波は普通に俺から身を避け、シミュレーションでは空振るはずだったバットは見事俺の後頭部直撃。
頭蓋骨を揺らすカコーンと小気味いい音を最後に、俺の意識はあっさり途切れた。
気を失う直前、呆れたような顔をして俺を見下ろす鹿波が映ったがそれも次に目を覚ましたときには忘れていた。
「はあ?」
「知らねーのか?噂になってんだろ。最近大人しいと思ったらなるほどなぁ、男とヤってストレス解消か。人間変わるもんだなあ!ははは!」
某日、休み時間。
山下たちと野球して遊んでたらまあどこぞのアニメのように打ったボールがどっかに飛んでいって、ブーイングを受けた俺は渋々ボールを探しに校舎裏までやってきていた。
すると、相変わらずじめじめとした校舎裏には先客がいて、その内の一人がよく見知ったやつで。
一段と目立つ赤茶髪と見覚えのある背中。鹿波だ。
それともう一人、鹿波の奥には向かい合うように並ぶ体格のいい男子生徒が見えた。見るからに鹿波タイプだ。
なにを話しているのだろうか。多少気になったが、まあこういうのには関わらないに限るな。
なにやら不穏な空気を感じた俺はボール探しを中断し、そのまま気付かれないよう影に身を潜める。
「……で、話は」
唸るような低い鹿波の声。
これは腸が煮え繰り返り、怒りの限界を通り越して段々冷静になっているときの鹿波の声だ。
静かなその声に無関係な俺までギクッと緊張してしまう。
対して、男子生徒はそんな鹿波に全く気付いていないようだ。
「んだよつれねえな」そうにやにや笑いながら鹿波に一歩一歩近付く男子生徒は何気無い仕草で鹿波の肩に手を伸ばし、そのまま耳元に顔を近付ける。
「まあ、話っつーか一発ヤらせ」
そう男子生徒が鹿波の耳元でなにかを囁いたときだった。
言い終わる前に、肩に回された男子生徒の腕を掴んだ鹿波はそのまま背負い投げる。
ふわりと宙を浮いた男子生徒の体はそのまま地面へと乱暴に叩き付けられ、「ぷぎッ」となんとも可愛らしい声が聞こえてきた。
うわぁ、痛そう。雑な投げ方をしたお陰で不自然に曲がる腕を押さえもがく男子生徒に構わず、鹿波はその顔面に向かって思いっきり叩き潰すように踏みつけた。
なにかが潰れたような音がして、いつの日かの自分と男子生徒が重なり顔面から血の気が引いていく。
「誰から吹き込まれたんだ?んな、馬鹿げた話。なあ。誰から吹き込まれたんだって、おい。鼻潰すぞ豚」
低い声。ぐりぐりと足の裏を動かし擦り付けるように踏みにじる鹿波。
これは、逃げた方がいいな。うっかり見付かりでもしたらとばっちりが来そうだ。
そう悟った俺は抜けそうになる腰を持ち上げ、その場を後にしようとしたときだった。
不意に、近くの草むらに人影を見付ける。
もしかして自分のような人間が他にもいるのかと思ったが、違う。バットを手にしたそのもう一人はどうやら今現在鹿波に踏まれている男子生徒の仲間のようだ。
俺に気付いていないらしい共犯者はバット片手に草むらを出て、そのまま鹿波の背後に近付く。
普通に考えて、あれだ。男子生徒を踏みにじるのに気を取られている隙を狙って鹿波を襲うつもりなのだろう。そして輪姦凌辱プレイに発展してそれはもう激しいことになるに違いない。違いない。
うんまあ、あの小生意気な鹿波がリンチされて泣き喚いているところも見てみたい気がするが、そんなことを暢気に考える思考とは裏腹に体は勝手に動いていた。
「っおい!後ろ!」
そう鹿波に向かって咄嗟に声を上げるが、間に合わない。
構わず鹿波の後頭部に向かってバットを振りかぶる共犯者に焦った俺は草むらから出て慌てて鹿波に向かって走り出す。
「なッ」
背後からの声に驚いた鹿波は後ろを振り返り、今まさに殴りかかろうとしてくる共犯者といきなり飛び出してきた俺に目を丸くした。
ここまでは順調だった。
漫画のように『危ない!』とか『伏せろ!』とか言いながら鹿波を抱き締めそのままスライディング、見事バットを空振らせ『お前……!!なんでここに……!!』と驚く鹿波に尋ねられそこで俺は『それはお前が呼んだからさ』と決め台詞を口にする。
そうすれば鹿波は俺に惚れ、鹿波に恩を押し付けると同時にあいつに上下関係をしっかり分からせ、そして校内でも『あいつすげー!』と英雄扱いなんてそんなことを考えていたがどうやらやはり現実はそこまで甘くなかったようだ。
抱き締めようとした鹿波は普通に俺から身を避け、シミュレーションでは空振るはずだったバットは見事俺の後頭部直撃。
頭蓋骨を揺らすカコーンと小気味いい音を最後に、俺の意識はあっさり途切れた。
気を失う直前、呆れたような顔をして俺を見下ろす鹿波が映ったがそれも次に目を覚ましたときには忘れていた。
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