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女装か全裸か俺の服
02
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翌日、深夜。
被服部から受け取ったそれをプレゼント用の袋に入れ、それを片手に俺はとある場所へ向かっていた。
――学生寮、大浴場。
既に入浴を済ませた俺が再度ここに訪れた目的はただ一つ、とある人物にこのプレゼントを渡すことだ。
脱衣所でわいわい騒ぎながら脱衣を始める不良数人。その中には一際目立つ男がいた。
――くそ、鹿波め、俺といるときはいっつもしかめっ面のくせに友人たちと話すときは楽しそうに笑いやがって。
なんだかイライラしつつ、物陰からその様子を伺っていた俺はやつらが浴場へ移動するのを待った。
時間が時間なだけに、他の利用者はいない。
暫く様子を見ていると、服を脱いだ不良たちはぞろぞろと浴場へと向かう。
ようやく無人になった脱衣所内、こっそり物陰から出た俺は先ほど鹿波が服を入れていた棚に近付いた。
鹿波の脱ぎたて下着ゲーット。
なんて言いながら別に用意していた袋に鹿波の私服もろもろを詰め込んだ俺は、空になった棚を見て一人ほくそ笑む。慌てる鹿波が目に浮かび、今から楽しみで仕方なかった。
浴場から聞こえてくる不良たちの笑い声と一緒になって笑いながら俺は再び物陰へ身を潜めることにする。
数十分後、暇潰しに鹿波の下着で抜いていると何人かが疎らになって浴場から出てくる。
どうやら鹿波はまだ風呂に入っているようだ。
ぞろぞろと出てくる中、目的の人間が出てこないのを不審に思いながらも俺は待ち続ける。
まさか残った不良と風呂場で乳繰り合ってんじゃないだろうな。……クソ、ちんこがイライラしてきたな。
鹿波の下着の匂いを嗅ぎながら何発か抜き終えた頃、ようやく残っていた不良と鹿波が出てくる。
おっせーんだよ、お前らの仲間とっくに帰ってるぞ。
なんて思いながら後処理を済ませた俺は二人に目を向ける。
……どっかで見たことあると思ったら、この前鹿波とフラグ立てていた不良じゃないか。なんだ、もしかしてまじでフラグ立ったのかこれは。
二人とも変わらない感じで話していたが、脱衣所内にはもどかしいようななんとも言えない空気が漂っている。
これはあれだな、間違いなくボーイズでラブ的なあれだな。本来ならば腐った性癖の俺としては喜ばしい展開なのかもしれないが、なんだろうか……無性に邪魔をしてやりたくなる。
「なに、お前まだ着替えねえの?」
不意に、突っ立ったまま動かない鹿波に不良は不思議そうに尋ねる。その一言に、僅かに動揺する鹿波は「先帰ってろよ」と不良を促した。
どうやら空になった棚を確認したようだ。鹿波の言葉に、やっぱり不思議そうな顔をする不良だったが「わかった」と寂しそうに頷く。
自ら一人になる選択肢を選ぶとはなかなか賢い。
「じゃあ、後でな」
着替えを済ませた不良はタオル一枚のままの鹿波を一瞥し、名残惜しそうに脱衣所を後にする。
後でな、ということはまた後で会う約束をしているということか。しっかりフラグ立ててんじゃねーよと口の中で吐き捨てる。
ようやく静かになった脱衣所内、一人だけになった鹿波は周りの棚を探し出す。どうやら自分が棚を間違えていると思っているようだ。
まあ、普通はそう思うだろう。
が、今回は違う。なんたって鹿波の服下着着替えタオルは全て俺の手の中にあるわけだからな。
なんだか急に自分が偉くなったみたいで気分がいい。
不安そうな顔して棚の裏まで覗く鹿波が可愛くて、もう少しこのまま様子を見ておきたくなる。
そんなところにあるわけねーだろとにやにや笑いながら、俺は用意しておいた着替えもとい被服部渾身の作品を手に取りそのまま物陰から出た。
近くにあった椅子の上に乗り、棚の上を覗く鹿波は背後から近付く俺に全く気が付いていないようだ。
身に付けているものが腰に巻いているタオル一枚にも関わらず動き回るのはやはり周りに誰もいないとわかっているからだろう。
無防備に棚の上を探す鹿波に声かけるのも惜しいなと感じた俺は、少し遊んでみることにした。
鹿波の腰に巻かれているタオルの結び目に手を伸ばし、着替え探しに夢中になっている鹿波の後ろ姿を眺めつつ俺はそれをほどく。
糸も簡単にほどけるタオルを鹿波の下半身から取り上げれば、急に涼しくなった下半身に鹿波が手探りでタオルを探す。
もちろん俺がタオルを取り上げた今鹿波の手にそれらしきものが当たるわけがなく、不思議そうな顔をした鹿波は自分の足元に目を向けた。
そして、背後に立っていた俺にようやく気が付いたようだ。
「うわっ、お前……ッ!!」
まるで幽霊でも見たかのような反応である。
鹿波は慌てて振り返ろうとして俺の手の中にタオルがあることに気が付いたようだ。
目を丸くした鹿波はじわじわと顔を赤くさせ、「っにやってんだよ!」と声を荒げ俺からタオルを取り上げようとする。
そして椅子から落ちた。
「椅子の上で暴れんなよ。椅子が可哀想だろ」
間一髪のところで鹿波を受け止めてやれば、鹿波は「お前のせいだろ」と睨んでくる。可愛いげがないが、正論なだけになにも言えない。
「クソ……ッ離せよ、あっち行け!つーかなんでここいるんだよ。タオル返せよ!」
せめて一つずつ聞いてくれないだろうか。
余程動揺しているのか、人の顎を掴みそのまま力業で引き離そうとしてくる鹿波。まじで痛い。
「いいのかよ、あっち行って。困ってるだろうと思ってせっかくコレ届けに来てやったってのに」
鹿波の手首を掴みそれを離しながら、小さく咳き込んだ俺は言いながら手に持っていたプレゼント袋を鹿波に押し付ける。
いきなりプレゼントを渡され呆れたような顔をする鹿波。先ほどに増して視線がキツいのはなんでだろうか。
「まさか、隠したのお前か?」
なんでバレた。このタイミングで現れた俺とプレゼントを不審に思ったのか、鹿波はそう勘繰るように睨んでくる。
「人を疑うのは良くないぞ」言いながら、ぐいぐいと袋を押し付ければ舌打ちが返ってきた。
「どこに隠したんだよ、返せよ」
「いいからプレゼント開けろって」
「よくねーよ!」
「いつまでもその格好でいるつもりかよ」
「まあ、俺は全然構わないんだけど」きゃんきゃん吠える鹿波にそう笑いながら下腹部に目を向ければ、不愉快そうに顔をしかめた鹿波は「気持ち悪いんだよ」と吐き捨てる。
耳が赤い。なんでもない風を装ってるくせに、指摘されると意識してしまうようだ。
相変わらず可愛いげがない態度を取る鹿波だったが、文句を言いながらもプレゼントを受け取ってくれる。
「……まじ意味わかんねーし。おい、さっさと離れろよ。近いんだよ!」
袋を抱える鹿波に胸元を押され、俺は「はいはいわかりました」と鹿波から離れる。
服がない今、鹿波が逃げることも出来ないはずだ。俺の腕から逃げた鹿波は脱衣所の隅まで走って行き、そこでこそこそと袋を開ける。
こちらに背中を向ける鹿波に無防備すぎだろと呆れつつ、優しく慈愛に満ちた俺は鹿波がプレゼントの中身を確認するのを待った。
そして、
「な……なんだよこれ……!」
それを手にした鹿波は、怒りと羞恥で顔を真っ赤にしながら俺に掴みかかってくる。
黒い生地。金の刺繍。やはりいつ見ても素晴らしい出来だ――ハイスリットの黒いミニチャイナ。
「お前に似合うと思って用意し……痛ぇっ!!」
殴られた。
「こんなの、着れるわけないだろ!ふざけてんのか!」
「……いってぇな。着るだけ着てみろって、ちゃんとサイズも合わせてあるから」
「テメェ……ふざけてんのか?!そんなに言うなら自分で着ればいいだろうが」
「じゃあお前が俺の服着るか?俺がたった今まで着ていた俺の体液体臭様々なものが染み込んだこの俺の服をお前が着るんだな?俺の下着を自分の肌に身につけるんだな?そんなにお前が俺に包み込まれて感じたいって言うなら良いぞ、貸せよチャイナ」
「せっかく新品を用意したのにお前がそこまで俺にまみれたいって言うんなら仕方ないよな」噛み付いてくる鹿波に負けじとそう言い返せば、鹿波はぐぐぐと押し黙る。
無駄に見栄っ張りで負けず嫌いなやつとは思っていたが、まさかここまでわかりやすいやつとは。
言いながらその場で服を脱ごうとすれば「誰もお前のなんか着るとか言ってねーだろ」と忌々しそうに吐き捨てる。
「じゃあチャイナ着ろよ」
「なんでそうなるんだよ!」
「いつまでもフルチンのままだと湯冷めするだろ?俺だって目のやり場に困るんだよ」
「誰のせいだと思って……」
鹿波はすっかり俺を犯人扱いしているようだ。心外だ。
まあ俺が犯人なんだけど。
「じゃあ全裸で部屋まで戻るのか?」
「どうせ、他のやつらいねーし」
「いつ誰が来て見られるかわからない状況で一人ムラムラしながら部屋までちんこ丸出しで帰るのか。お前なかなか変態だな。露出狂」
「……ッこの」
「あーいい眺めいい眺め。乳首立たせてちんこ丸出しのやつに凄まれても全く怖くねえな。あっはっはっはあ゙ぃってぇっ!」
思いっきり肩を殴られ、俺は「なにすんだよ」と肩を擦りながら鹿波を睨む。
「図星指されてそんなに悔しかったか?露出狂」
「……死ねっ」
「あーそう、そんなこと言うわけね。あー傷付くなあ、鹿波が困ってると思ってせっかく用意してきたのに」
唸るように吐き捨てる鹿波にそうわざとらしく肩を落とした俺は、言いながら鹿波からチャイナを取り上げようとする。が、鹿波はチャイナから手を離そうとしない。
「手ぇ退けろよ。着ねーんだろ」
「……誰も、着ないなんて言ってねぇだろ」
俺の手を退ける鹿波は、そう苦虫を噛み潰したような顔をする。
最初から素直になればいいものを。もっと言うなら、俺を服を着るのが最善だと思ったが意地っ張りな上に無駄にプライドが高い鹿波には無理だろう。
俺からチャイナを奪い返した鹿波は、それを片手に脱衣所の物陰へと歩いていく。
どうやら俺の目の前で着替えたくないようだ。
今さら恥ずかしがる仲でも思うのだが。
物陰でこそこそ着替えている鹿波を想像しながら、俺はそれを着替え終わることを待つことにする。
被服部から受け取ったそれをプレゼント用の袋に入れ、それを片手に俺はとある場所へ向かっていた。
――学生寮、大浴場。
既に入浴を済ませた俺が再度ここに訪れた目的はただ一つ、とある人物にこのプレゼントを渡すことだ。
脱衣所でわいわい騒ぎながら脱衣を始める不良数人。その中には一際目立つ男がいた。
――くそ、鹿波め、俺といるときはいっつもしかめっ面のくせに友人たちと話すときは楽しそうに笑いやがって。
なんだかイライラしつつ、物陰からその様子を伺っていた俺はやつらが浴場へ移動するのを待った。
時間が時間なだけに、他の利用者はいない。
暫く様子を見ていると、服を脱いだ不良たちはぞろぞろと浴場へと向かう。
ようやく無人になった脱衣所内、こっそり物陰から出た俺は先ほど鹿波が服を入れていた棚に近付いた。
鹿波の脱ぎたて下着ゲーット。
なんて言いながら別に用意していた袋に鹿波の私服もろもろを詰め込んだ俺は、空になった棚を見て一人ほくそ笑む。慌てる鹿波が目に浮かび、今から楽しみで仕方なかった。
浴場から聞こえてくる不良たちの笑い声と一緒になって笑いながら俺は再び物陰へ身を潜めることにする。
数十分後、暇潰しに鹿波の下着で抜いていると何人かが疎らになって浴場から出てくる。
どうやら鹿波はまだ風呂に入っているようだ。
ぞろぞろと出てくる中、目的の人間が出てこないのを不審に思いながらも俺は待ち続ける。
まさか残った不良と風呂場で乳繰り合ってんじゃないだろうな。……クソ、ちんこがイライラしてきたな。
鹿波の下着の匂いを嗅ぎながら何発か抜き終えた頃、ようやく残っていた不良と鹿波が出てくる。
おっせーんだよ、お前らの仲間とっくに帰ってるぞ。
なんて思いながら後処理を済ませた俺は二人に目を向ける。
……どっかで見たことあると思ったら、この前鹿波とフラグ立てていた不良じゃないか。なんだ、もしかしてまじでフラグ立ったのかこれは。
二人とも変わらない感じで話していたが、脱衣所内にはもどかしいようななんとも言えない空気が漂っている。
これはあれだな、間違いなくボーイズでラブ的なあれだな。本来ならば腐った性癖の俺としては喜ばしい展開なのかもしれないが、なんだろうか……無性に邪魔をしてやりたくなる。
「なに、お前まだ着替えねえの?」
不意に、突っ立ったまま動かない鹿波に不良は不思議そうに尋ねる。その一言に、僅かに動揺する鹿波は「先帰ってろよ」と不良を促した。
どうやら空になった棚を確認したようだ。鹿波の言葉に、やっぱり不思議そうな顔をする不良だったが「わかった」と寂しそうに頷く。
自ら一人になる選択肢を選ぶとはなかなか賢い。
「じゃあ、後でな」
着替えを済ませた不良はタオル一枚のままの鹿波を一瞥し、名残惜しそうに脱衣所を後にする。
後でな、ということはまた後で会う約束をしているということか。しっかりフラグ立ててんじゃねーよと口の中で吐き捨てる。
ようやく静かになった脱衣所内、一人だけになった鹿波は周りの棚を探し出す。どうやら自分が棚を間違えていると思っているようだ。
まあ、普通はそう思うだろう。
が、今回は違う。なんたって鹿波の服下着着替えタオルは全て俺の手の中にあるわけだからな。
なんだか急に自分が偉くなったみたいで気分がいい。
不安そうな顔して棚の裏まで覗く鹿波が可愛くて、もう少しこのまま様子を見ておきたくなる。
そんなところにあるわけねーだろとにやにや笑いながら、俺は用意しておいた着替えもとい被服部渾身の作品を手に取りそのまま物陰から出た。
近くにあった椅子の上に乗り、棚の上を覗く鹿波は背後から近付く俺に全く気が付いていないようだ。
身に付けているものが腰に巻いているタオル一枚にも関わらず動き回るのはやはり周りに誰もいないとわかっているからだろう。
無防備に棚の上を探す鹿波に声かけるのも惜しいなと感じた俺は、少し遊んでみることにした。
鹿波の腰に巻かれているタオルの結び目に手を伸ばし、着替え探しに夢中になっている鹿波の後ろ姿を眺めつつ俺はそれをほどく。
糸も簡単にほどけるタオルを鹿波の下半身から取り上げれば、急に涼しくなった下半身に鹿波が手探りでタオルを探す。
もちろん俺がタオルを取り上げた今鹿波の手にそれらしきものが当たるわけがなく、不思議そうな顔をした鹿波は自分の足元に目を向けた。
そして、背後に立っていた俺にようやく気が付いたようだ。
「うわっ、お前……ッ!!」
まるで幽霊でも見たかのような反応である。
鹿波は慌てて振り返ろうとして俺の手の中にタオルがあることに気が付いたようだ。
目を丸くした鹿波はじわじわと顔を赤くさせ、「っにやってんだよ!」と声を荒げ俺からタオルを取り上げようとする。
そして椅子から落ちた。
「椅子の上で暴れんなよ。椅子が可哀想だろ」
間一髪のところで鹿波を受け止めてやれば、鹿波は「お前のせいだろ」と睨んでくる。可愛いげがないが、正論なだけになにも言えない。
「クソ……ッ離せよ、あっち行け!つーかなんでここいるんだよ。タオル返せよ!」
せめて一つずつ聞いてくれないだろうか。
余程動揺しているのか、人の顎を掴みそのまま力業で引き離そうとしてくる鹿波。まじで痛い。
「いいのかよ、あっち行って。困ってるだろうと思ってせっかくコレ届けに来てやったってのに」
鹿波の手首を掴みそれを離しながら、小さく咳き込んだ俺は言いながら手に持っていたプレゼント袋を鹿波に押し付ける。
いきなりプレゼントを渡され呆れたような顔をする鹿波。先ほどに増して視線がキツいのはなんでだろうか。
「まさか、隠したのお前か?」
なんでバレた。このタイミングで現れた俺とプレゼントを不審に思ったのか、鹿波はそう勘繰るように睨んでくる。
「人を疑うのは良くないぞ」言いながら、ぐいぐいと袋を押し付ければ舌打ちが返ってきた。
「どこに隠したんだよ、返せよ」
「いいからプレゼント開けろって」
「よくねーよ!」
「いつまでもその格好でいるつもりかよ」
「まあ、俺は全然構わないんだけど」きゃんきゃん吠える鹿波にそう笑いながら下腹部に目を向ければ、不愉快そうに顔をしかめた鹿波は「気持ち悪いんだよ」と吐き捨てる。
耳が赤い。なんでもない風を装ってるくせに、指摘されると意識してしまうようだ。
相変わらず可愛いげがない態度を取る鹿波だったが、文句を言いながらもプレゼントを受け取ってくれる。
「……まじ意味わかんねーし。おい、さっさと離れろよ。近いんだよ!」
袋を抱える鹿波に胸元を押され、俺は「はいはいわかりました」と鹿波から離れる。
服がない今、鹿波が逃げることも出来ないはずだ。俺の腕から逃げた鹿波は脱衣所の隅まで走って行き、そこでこそこそと袋を開ける。
こちらに背中を向ける鹿波に無防備すぎだろと呆れつつ、優しく慈愛に満ちた俺は鹿波がプレゼントの中身を確認するのを待った。
そして、
「な……なんだよこれ……!」
それを手にした鹿波は、怒りと羞恥で顔を真っ赤にしながら俺に掴みかかってくる。
黒い生地。金の刺繍。やはりいつ見ても素晴らしい出来だ――ハイスリットの黒いミニチャイナ。
「お前に似合うと思って用意し……痛ぇっ!!」
殴られた。
「こんなの、着れるわけないだろ!ふざけてんのか!」
「……いってぇな。着るだけ着てみろって、ちゃんとサイズも合わせてあるから」
「テメェ……ふざけてんのか?!そんなに言うなら自分で着ればいいだろうが」
「じゃあお前が俺の服着るか?俺がたった今まで着ていた俺の体液体臭様々なものが染み込んだこの俺の服をお前が着るんだな?俺の下着を自分の肌に身につけるんだな?そんなにお前が俺に包み込まれて感じたいって言うなら良いぞ、貸せよチャイナ」
「せっかく新品を用意したのにお前がそこまで俺にまみれたいって言うんなら仕方ないよな」噛み付いてくる鹿波に負けじとそう言い返せば、鹿波はぐぐぐと押し黙る。
無駄に見栄っ張りで負けず嫌いなやつとは思っていたが、まさかここまでわかりやすいやつとは。
言いながらその場で服を脱ごうとすれば「誰もお前のなんか着るとか言ってねーだろ」と忌々しそうに吐き捨てる。
「じゃあチャイナ着ろよ」
「なんでそうなるんだよ!」
「いつまでもフルチンのままだと湯冷めするだろ?俺だって目のやり場に困るんだよ」
「誰のせいだと思って……」
鹿波はすっかり俺を犯人扱いしているようだ。心外だ。
まあ俺が犯人なんだけど。
「じゃあ全裸で部屋まで戻るのか?」
「どうせ、他のやつらいねーし」
「いつ誰が来て見られるかわからない状況で一人ムラムラしながら部屋までちんこ丸出しで帰るのか。お前なかなか変態だな。露出狂」
「……ッこの」
「あーいい眺めいい眺め。乳首立たせてちんこ丸出しのやつに凄まれても全く怖くねえな。あっはっはっはあ゙ぃってぇっ!」
思いっきり肩を殴られ、俺は「なにすんだよ」と肩を擦りながら鹿波を睨む。
「図星指されてそんなに悔しかったか?露出狂」
「……死ねっ」
「あーそう、そんなこと言うわけね。あー傷付くなあ、鹿波が困ってると思ってせっかく用意してきたのに」
唸るように吐き捨てる鹿波にそうわざとらしく肩を落とした俺は、言いながら鹿波からチャイナを取り上げようとする。が、鹿波はチャイナから手を離そうとしない。
「手ぇ退けろよ。着ねーんだろ」
「……誰も、着ないなんて言ってねぇだろ」
俺の手を退ける鹿波は、そう苦虫を噛み潰したような顔をする。
最初から素直になればいいものを。もっと言うなら、俺を服を着るのが最善だと思ったが意地っ張りな上に無駄にプライドが高い鹿波には無理だろう。
俺からチャイナを奪い返した鹿波は、それを片手に脱衣所の物陰へと歩いていく。
どうやら俺の目の前で着替えたくないようだ。
今さら恥ずかしがる仲でも思うのだが。
物陰でこそこそ着替えている鹿波を想像しながら、俺はそれを着替え終わることを待つことにする。
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