腐敗系男子

田原摩耶

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友人の使い方

02※

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 いやー最高。
 山下がいなくなった自室の中で、俺は椅子の上で足を組みながら目の前の鹿波に目を向けた。

「……」
「……」

 かれこれ数分。
 鹿波はスラックスに手をかけたまま固まっていた。
 勢いで友人を庇ったものの、恥ずかしいものは恥ずかしいようだ。
 俺の目の前で脱ぐのを躊躇う鹿波に、気が長いことで知られている俺も流石に限界が近付いていた。

「おい。まだ脱がねえのかよ」

 鹿波を急かせばやつは舌打ちをする。

「うるせえな……お前がこっち見てにやにやにやにや気持ち悪いから脱げねえんだよ」

 俺、そんなににやにやしていたのだろうか。
 咄嗟に口許に手を当て、慌てて顔を引き締める。

「我が儘言ってんじゃねーよ。俺が見てても文句言わずに脱げ。いますぐにだ」

 口許から手を離しながら、そう再び鹿波に命令した。
「クソ……ッ」と苛ついた様子で舌打ちをした鹿波は、山下のことを思い出したのだろう。渋々、ベルトのバックルに手を伸ばす。ガチャガチャと音を立てながら雑に外されるベルトを緩め、そのまま鹿波はスラックスを脱いでいく。
 太すぎもせず細すぎもしない、程よく引き締まった太ももが露になっていく瞬間は相手が鹿波だと分かっていても、無意識に生唾を飲んでしまった。
 鹿波の足から目が離せないでいると、いきなり視界が暗くなる。

「気持ち悪いんだよ!ちょっとは遠慮しろよ、ホモ野郎!」

 どうやら脱いだズボンを投げ付けられたようだ。俺はまだぬくもりの残るズボンを顔面で受け止める。

「……おい、脱いだぞ。次はどうしたらいいんだよ」

 吹っ切れたのか、鹿波は煽るように着ていたシャツの裾を持ち上げた。
 可愛くねえなこいつ。鹿波に内心舌打ちをしながら、俺は長めのシャツの裾から覗く鹿波の下着に目を向ける。ヤンキー特有の黒いボクサーパンツ。

「じゃあ、それも脱げよ」

 余裕ぶっこく鹿波の下半身、俺はそれ顎でしゃくった。

「……は?」

 まさか下着まで脱げと言われるとは思っていなかったらしい。
 先ほどまでの余裕の笑みはどこへいったのか、鹿波は顔を引きつらせた。

「脱がねーとわかんねえだろ?ケツの穴の位置」
「んなの、見なくていいだろうが!」
「それじゃーお前を脱がす意味ないだろ

「いいからさっさと脱げよ。山下が帰ってきたらどうすんだ?」渋る鹿波に、俺は白々しく山下の名前を口に出す。
 友人の名前に反応した鹿波は、ぐっと唇を噛み、自分の下着のウエストに手をかけた。
 恐る恐る下着を降ろしていくその手が、遠目で見ても緊張してるのがわかった。
 変に俺が見ているということを意識してしまっているのだろう。俺の存在を気にせずさっさと脱げばいいものの、恥ずかしがってもたもたするからこっちまで興奮してきた。

「鹿波、お前、なんで勃起してんの?」

 膝上まで下着を下ろす鹿波に、俺は笑いながらそう問い掛ける。
 服の裾から覗く勃ちかけた性器を眺める俺に、鹿波の顔が赤くなった。

「生理現象に決まってんだろうが、勘違いすんなっての……っ」

 こちらを睨んだ鹿波は、言いながら足首まで持ってきた下着を床の上に脱ぎ捨てる。
 ここでツンデレみたいな反応されても……中々悪くはないけど。
 思いながら、俺は言う通りに下を脱いだ鹿波の生足を眺めることにした。流石に下着は飛んでこなかった。

「……っ」

 先程よりも幾分鹿波が大人しくなったような気がする。
 恐らく、服の裾で下半身を隠すことに集中しているのだろう。頑張る鹿波の姿を見て多少和んだが、別に俺は心を安らかにさせるために脱がせたわけではない。

「じゃあ、次は四つん這いな」

 俺はそう鹿波に告げる。
 そう。それだ。これが当初の目的だ。漫画を描くためには女豹のポーズが必要だった。
 鹿波のような体格のごついやつがしてもあれだが、今となっては鹿波を悔しがらせることが出来ればなんでもよかった。
 恨めしそうに俺を睨んでいた鹿波だったが、大人しく床の上に屈んだ。
 流石に駄々捏ねるかなと思っていただけに、俺は鹿波の従順な態度に驚かされた。
 よっぽど山下のことを大切に思っているのか。
 そんな山下が自分と同じ条件を言い渡されて、あっさりと俺に鹿波を押し付けたことを知れば鹿波はどんな顔をするのだろう。
 まあ、山下も俺も殴られることには間違いないな。そんなことを思いながら、おずおずと床の上に四つん這いになる鹿波を見下ろす。

「ケツ、もっとこっちに向けろよ。腰もしっかり上げてな」
「死ね……!」

 自分の立場がわかっている上でまだ憎まれ口を叩く鹿波には感心すら覚えた。
 言いながらも、鹿波は床の上に頭をつけ腰を上げる。
 こちらに腰を向けているおかげで鹿波がどんな顔をしているかはわからなかったが、恐らく俺を殴りたくて堪らないはずだ。
 椅子から腰を持ち上げた俺は、そのまま携帯電話を取り出す。

「おい……まだかよ」 

 顔を伏せたまま、鹿波はそう俺に尋ねてきた。
 この体勢が辛いようだ。声が小さく震えている。

「あー、もうちょっとそのままな」

 鹿波の側までやってきた俺は、携帯を操作しカメラモードにした。
 携帯の画面の中に、こちらに尻を向ける鹿波が写る。
 乾いた唇を舌で舐める。無機質な機械音とともに、綺麗に鹿波の姿が画面の中に収まる。
 ああ、俺写真の才能あるかも。

「おい、待てってお前、いまなに……」
「は?なにって、普通に撮っただけだけど」
「はぁッ?話がちげーだろ!」
「言っただろ。モデルって。……ま、安心しろよ。個人で使うだけだから」
「個人だと……っ?!」

 いいながら、俺は画像をフォルダに保存した。
 嘘ではない。絵を描こうと思ったが丁度いいアングルの資料がなくてこうやって鹿波にモデルをやらせているだけだ。別にネットに晒そうとか俺はそんな悪どい性格はしていない。
 しかし、そんな俺の言葉を誤解したらしい鹿波は顔を赤くさせる。

「……お前、いま変なこと考えただろ」

 真っ赤になって慌ててうつ伏せになる鹿波は、「うるせえ」と声を荒げた。
 図星指されて照れているのか。俺は携帯を服の中に仕舞い、目の前の鹿波の尻に手を伸ばす。

「おいっ、なに触ってんだよ。お前」
「モデルって言ったろ。動くなよ」

 びっくりして体を跳ねさせた鹿波に、言いながら俺は鹿波の尻を鷲掴んだ。
 筋肉質な硬い触り心地の鹿波の尻を揉んでいると、うつ伏せになった鹿波の方から「殺す。まじで殺す」と物騒な声が聞こえてくる。
 そんなことを言いながらも抵抗しない鹿波が愛しくて、俺は喉を鳴らして笑った。

「そんな怖いこと言うなって。俺らの仲だろ?」

 鹿波の肛門の周りを指で撫でれば、鹿波の腰が大きく揺れた。覗く耳が赤く染まってる。

「馴れ馴れしいんだよ……っ」

 うつ伏せになったまま、鹿波は恨めしそうに呟く鹿波。
 今自分の立場がこの男よりも上だとわかっているからだろうか。毒づく鹿波すら愛しく思えた。

「とか言いながら興奮してんのは誰だよ」

 俺は鹿波の肛門を指で拡げ、そのまま一枚写メる。シャッター音に鹿波が「クソ」と毒づいたが、それでもやはり何もしてこない。それどころか、必死に閉じようと下腹部に力を入れる鹿波が愉快で、俺はそのまま臀部に顔を近付けた。
 唾液で濡らした舌を肛門に這わせれば、鹿波は慌てて腰を引かせる。

「まじやめろっ、気持ち悪いんだよ!離せって……っ!」

 全身に鳥肌を立ってる鹿波からして本気で嫌がってるのだろう。
 しかしこんな状況で止めたら男が廃るというものだ。
 嫌がる鹿波の腰を掴み、そのまま俺は舌先で入り口をほぐし、そのまま舌を挿入させる。たっぷりと唾液を含ませ、内部全体を鳴らすように舌の出し入れさせれば、鹿波の腰がぴくりと反応するのがわかった。
 逃げ腰になる鹿波を捕まえ、更に鼻を押し付けるように顔を埋めれば、鹿波の匂いがより一層濃くなる。頭がクラクラするほど、濃厚で、気が付けば夢中になって俺は鹿波の中を舐め回していた。

「や、やめろって……っバカ、やめろよっ」

 本気で嫌悪感を覚えてるのだろう。遠く聞こえる鹿波の声には涙が滲んでいる。それすら俺を煽り立てるのだ。
 指に吸い付く腿は俺の指の跡がくっきり残り、赤くなってる。それすら愛しく思えるのだから単純なのかもしれない。

「やっ、め、ろぉ……っ!」

 じゅぶじゅぶと濡れた音を立て、中が泡立つ。唾液を使って奥まで舌を挿入することは簡単だった。中を擦る度に鹿波の声は甘くなっていく。
 ぐずぐずになっていく肉壁は少し摩擦しただけでも俺の舌をぎゅっと締め付けてきて、鹿波に挿入したときの頭がおかしくなるような快感が蘇り、俺は鹿波のケツにむしゃぶり付きながら勃起した。
 慣らすだけのつもりが、鹿波の反応を見たくて、夢中になって中を掻き回していた。唾液でどろどろになった俺の口の周りと鹿波の下腹部は、唇を離すと同時に糸を引いた。開いたそこからは透明の液体がとろりと溢れ、ピクピクと震えるケツは体温上昇してるのかほのかに赤みが差している。
 正直、エロい。

「……っまじ、あり得ねぇ……」

 腰を浮かせたままぐったりとうつ伏せになる鹿波。吐息混ざり、その呟く声すら俺にとって興奮剤でしかなかった。
 鹿波の熱と薫りに充てられ、すっかり勃起したそれを飛び出す。俺がジッパー降ろして下着の中から取り出すのを見て、鹿波は首を横に降った。

「や……っ、めろ、馬鹿……まじ、勘弁してくれ……ッ」

 自分のケツを庇うように手を伸ばす鹿波。挿入してくれといわんばかりに出来上がったそれを前に引き下がれるやつがいるなら俺に紹介してくれ。俺は大いに賞賛する。

「……自分が山下の代わりになるっつったんだろ?自分の言葉には責任持てよ」
「でも……っ」
「でもじゃねえだろ!」
「ひッ、ぁうッ!」

 ぐずぐずに蕩けたそこに宛てがったそれは少し腰を進めればずぶりと頭を飲み込まれる。瞬間、鹿波の身体が大きく仰け反る。腰を高く上げた鹿波に覆い被さるように力任せに腰を進めれば、なんと入る入る。前回同様、それ以上に熱くなった内壁は俺の侵入を拒むように絡み付いてきて、それすらも気持ちよかった。

「は、ゃ……っやめっ、死ねっ、まじ……死ね……ッ!」

 逃げようとする鹿波の腕を引っ張り、俺は無理矢理腰を進め鹿波の中へ性器を捩じ込んだ。

「俺が死んだらお前悲しむだろうが……っ」

 冗談混じりそんなことを口にしながら、俺は腰を落とす。瞬間、ビクビクッと電気でも流れたかのように鹿波の下半身が痙攣する。
 そして、

「……自惚れんな、カスが……ッ」

 こちらを見ようともしないまま即答される。
 まさか否定されるとは思っていなかった俺のピュアなハートはひどく傷つけられた。

「抜け……っ、抜け、馬鹿……っ、変態……キモいんだよ……ッ!!早く抜け!!」

 腰を動かす度に、鹿波の罵声はでかくなる。
 吐息混じりに呻く鹿波は、それでもやっぱり俺の方を見ようとしなかった。
 勃起した鹿波の性器に手を伸ばした俺は、鹿波の背中の上に覆い被さるようにしてそれをゆるゆると扱いた。先走りで濡れた鹿波の性器は擦る度にいやらしい音を立て、俺のをキツく締め付けるのだ。

「やめろっ、死ね、くそっ、擦んなって、あっ、や、やめ……も、や……ぁ……っ!」

 最早呂律の回っていない。うつ伏せになったまま藻掻く鹿波に、俺はというと正直、鹿波以上にテンパっていたのかもしれない。
 あの鹿波がまた俺の下で喘いでる。その事実を受け入れると、冷静では居られなくなるのだ。

「色気もねえうるせぇ声……もっと色気出して鳴けねーのかよ……ッ」
「ふざけ……っん、ぅあッ、やッ、あぁッ!」
「さっきまでの威勢はどうしたぁ?……そんなにイイのかよ、ここ」

 中を執拗に突き上げれば、俺の動きに合わせて鹿波の身体が痙攣する。開きっぱなしの口からは聞いたこともない甘い声が漏れていて、やつの声は言わば麻薬だった。俺は、鹿波の声を聞くと途端に自分に対して謎の自信が沸いてしまうのだ。だからだろう、普段なら絶対言えないようなことを言ってしまう。してしまう。
 手の中、勃起した鹿波の性器を上下すればするほど腰の痙攣は増し、その都度内壁はきゅんきゅんと俺を締め付けてくるのだ。

「やめっ、死ぬ、やめろっ、まじ、どうにかなる……ッ!おかしくなる、やめてくれッ!」

 悲鳴にも似たその声は俺の耳に届いた。けれど、その意味を理解するほど頭は回っていなかった。ただ、鹿波の身体を貪ることに夢中になっていた。やつの項に噛みつき、抱きしめるように腰を振る。手の中の性器から伝わる鹿波の鼓動が俺と重なったとき、ドクンと大きく脈打った。
 手の中のそれがぶるりと震えたと同時に、カーペットの上にボタボタと白濁が落ちた。射精と同時に肉壁にキツく締め付けられ、遅れて俺は鹿波の中に射精した。
 鹿波の中に溜まっていた精液注ぎながら、俺は鹿波のものから手を離す。

「っ、死ね……!」

 吐息混じり、くたりとカーペットの上に倒れ込んだ鹿波はそう口にした。
 ……もう少し他にセリフは無かったのだろうか。
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