腐敗系男子

田原摩耶

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腐男子と不良

02※

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 鹿波の前に膝をつき、窮屈そうに先走り滲ませるそれに唇を寄せる。男のもの、しかもいけ好かない野郎のものを俺が口でしゃぶるのは気に入らないが、それよりも、俺の手でイカせて泣かせたいという気持ちの方が勝ったのだ。

「ふざけんな!クソッ!絶対に、ぜったいに、訴えてやるからな……っ」

 鹿波はというと相変わらずだが、先端の輪郭をなぞるように舌先を這わせればその罵声も止む。
 裏筋に浮かぶ血管をなぞる。玉を軽く揉みながら根本から先端まで舌を這わせれば、鹿波の声は吐息に変わる。必死に声を殺してるのだろう。唇を硬く結ぶ鹿波。

「っ、ん、ぅ、ふ……っ」

 先程まで生意気ばかり言っていた口からは、熱っぽい声が漏れる。静かになったことが何よりも答えになってるとわかってないのだろうか。
 亀頭部分を咥え、窪みに舌先を押し当てる。そのまま抉るように舌をグリグリと押し付ければ、鹿波の腰が痙攣する。

「……ぁっ、や、め、ろ……ッ!」

 口の中のブツが更に脈を早めた。膨れるのが分かって、俺はそのまま執拗に亀頭を責める。カリの輪郭を確かめるように舌を這わせ、亀頭ごと吸い上げる。するとあら不思議、鹿波の口からは次第に蕩けたような声が漏れ始めた。

「やめっ、ほんと、無理、やばい……から……っ、頼むから、やめ……ッ」
「嫌だ」
「ッ、あ、あッ、ひッ、ぅあ」

 逃げる腰を捕まえ、喉の奥まで性器を飲み込んだ。
 中々息苦しく、男臭かったがそれでも、苦悶の色を浮かべた鹿波を見上げるのは中々楽しい。
 喉全体を使って性器を締め付けた瞬間、口の中で大きく跳ねたそれは俺の喉へ精を吐き出した。
 まさかこんなに早く出されるとは思ってなくて、俺はうっかりそれを飲み込んでしまう。
 ねばねばとした液体が喉に絡み付き、慌てて性器から口を離す。と、同時に咽る。

「……ッ、早すぎんだよ、早漏野郎……ッ」
「うるせえ……ッ!」

 まだ減らず口を叩ける余裕があるようだ。
 可愛くない反応にムッとしつつ、俺は鹿波の腿を掴み上げた。

「は……離せ、変態っ」

 尻の穴が見えるくらい足を持ち上げれば、鹿波が顔を引き攣らせる。それを無視して、俺は無防備に晒されたそこに、唾液を絡めた指を一本押し当てた。
 引き締まったそこは、硬く閉ざされてる。そんなの想定内だ。

「お、い、どこ触って……っ、痛ッ」
「はぁ……?どこって……?わかんねえーのかよ、自分のケツの穴の位置も」
「なっ、に、言って」

 ずっ、と唾液の滑りを頼りに一本の指を挿入する。分かっていたが、かなりキツイ。こりゃチンポ入りそうにないな。
 思いながら俺は出来る限りそこをほぐそうと、まずは入り口付近を指の腹で揉みほぐす。

「っ、ふ、ぅ」

 痛いのか、涙を滲ませる鹿波。こいつのことだからまじで辛いとかそんなんじゃなく生理的なものだろうと思うけど、どうしてか赤くなった濡れた目を見ると酷く胸の奥がざわつく。
 唾液を塗り込むように指を動かせば濡れた音が響く。そしてその都度鹿波の腰が揺れた。

「っひ、ぅ、く……ぅ……ッ」

 苦しそうな声。
 痛いのだろう。思いっきり痛め付けるのも悪くない。けれど、それよりも。
 内壁を摩擦し、筋肉を解していく。一本から二本へと指を増やせば鹿波の腰が落ちそうになり、俺はそれを捕まえた。剥き出しになった下腹部に自分の指が入る図というのはなかなか壮観だ。濡れた内壁をしっかり解し、引き抜けば、その反動で鹿波はずるりと壁に凭れた。
 息も絶え絶えといった様子だが、まだ大丈夫そうだ。でなければ困る。俺はベルトのバックルを掴み、緩めた。

「っ、ぁ、やめ……ろ……っ」

 ここまできてやめれるわけがなかった。
 勃起した性器を握り、俺は、解したそこに押し当てた。まだ硬いが、最初はそんなものだろうということにしておく。
 思いっきり腰を進めれば、ずっと沈んだその感触に、つられて息を漏らす。

「……ひっ、ぎ……!」

 きつい、つか、熱い。あとめっちゃきつい。
 チンポごと引きちぎられそうなそんな狭さに気持ちいいとか思う余裕はなかった。鹿波の苦しむ顔を見たいが一心で腰をゆっくりと進めていけば、唾液でぬるぬるしたそこは確実に俺のものを飲み込んでいく。亀頭まで飲み込んだところで、息を吐いた。汗が止まらない。それは鹿波も同じだった。顔を真っ赤にし、涙なのか汗なのかよくわからないものを流しながらこちらを睨みつける鹿波に、俺は再び腰を動かした。

「動くなッ、ぁ、や、動くな……ッ!」

 それは最早悲鳴に近かった。
 そんなこと言われても、腰を動かすこと以外能がない俺は鹿波の腿を掴み、腰をゆっくり沈める。
 最初は焦ったが、次第にこの窮屈さ、締付けが心地よくなり始めた。
 何よりもオナホとは違う、人の体温。
 包み込まれるような肉感に腰が自然に動いてしまうのだ。もっと、もっと締め付けてくれと言わんばかりに。

「ひっ、ぎ……ぃ……ッ」

 ぼろぼろと鹿波の目頭から大粒の涙が溢れる。それを舐め取り、俺はゆっくりと鹿波の体を抱き寄せた。鹿波はもう暴れることはなかった。その代わり、親の仇でも見るかのような恨めしそうな目でこちらを睨む。
 それもすぐ、痛みに引きつった。

「はっ、あ……うあっ」
「……可愛い声出すんじゃねえよ……ッ」

 半分以上鹿波の中に入ったが、根本まで挿れたら本当に壊れてしまいそうなそんな気すらした。
 一回抜き、再びゆっくりと腰を進める。そうピストンを繰り返し徐々に内壁を押し広げていけば、次第に鹿波の声も甘いものになっていく。気持ちよくなってきたのだろうか、勃ち上がり始めてる鹿波の性器を見て、内心ほっとする。

「も……っ許して……っ」

 それは酷く弱々しい、鹿波の声だった。
 あのクソ生意気な鹿波から吐き出されたとは思えないその声に一瞬、思考がフリーズする。次の瞬間、大きく脈打つ心臓。気がついたときにはやばかった。
 浅くなる呼吸、手加減する余裕もなく、ただ目の前のこいつを自分のものにしたい。そんな浅ましい欲が芽生えては何も考えられなくなる。

「てめ、やッ、あ、ひ、ィッ!」

 優しくがなんだ、初めてだからなんだ、知るか!俺だって初めてだ!

 腰を思いっきり掴み、中まで深く挿入する。奥を突く度に性器全体を締め付けられ、その感覚を求めて更に腰を打ち付ける。ぐちゅぐちゅと音を立て擦れる内壁は出し入れ繰り返す度に捲れ上がれ、吸い付いてきた。
 動く度に鹿波の口からは断続的な喘ぎ声が漏れ、自分に反応してくれるのが嬉しくてわけわかんなくなった俺は何度目かのキスをした。
 唇を吸いながら腰を進める。汗も唾液も混ざり合って、なんだかもうぐちゃぐちゃだった。
 このまま溶けてしまいそうだ。思いながら、俺は、鹿波を思いっきり抱き締めた。奥深く根本まで挿入した途端、糸が切れたように射精する。

「──この、早漏野郎ッ」

 鹿波の腿へと垂れる白濁。こちらを睨む鹿波に、俺はきゅっと唇を結ぶ。
 ごもっともです。



「人のケツで童貞卒業すんじゃねえよ!」
「うるせえ、人に汚い精液飲ませやがって!」
「そ、それお前が勝手に飲んだんじゃねえか!変態!ホモ野郎!信じらんねえ!」
「ぎゃーぎゃーうっせえんだよお前!さっさとケツ出しやがれ!」
「やめろ、触んじゃねえ!……やっ」

 ベッドの上、俺は鹿波の腿を掴み、足を開かせた。ぐっぽりと開いたそこから溢れる白濁に、我ながらえげつないことをしてしまったと今更怖気づく。
 それも、鹿波のような暴力の権化を相手に。

 殺されるか?死ぬか?殺される前に本棚の奥のBL本を始末しないと、なんて思いながら精液を掻き出しながら俺は恐る恐る鹿波の反応を伺う。
 同時に、声を出さないよう必死に唇を一の字に結んでいた鹿波と視線がぶつかった。
 心臓の奥がどくりと脈打ち、俺は咄嗟に鹿波から目を逸らす。

「……こりゃ、風呂に入った方が早いかも知れない」
「も、元々はお前が……なっ中に、……出すから悪いんだろうが……!ホモ野郎……ッ!」
「だから悪かったっていってるだろ。……それに、俺はホモじゃ……」

 ない、と言いかけて、俺は口を閉じた。
 いや俺、完璧ホモじゃん。
 数分前の自分の行動を思い出し、俺は改めて鹿波を見つめた。

「なっ、なんだよ……っ」
「……鹿波」
「名前呼ぶんじゃねえよ、ホモ野郎……っ」

 動揺したのか、急にしおらしくなる鹿波。
 頬が赤いのは、先程の余韻が残っているせいだろうか。
 よくみると、中々可愛らしい顔をしている。つり目がちのキツい目は、潤み、揺らいでいた。
 痕の残った手首を掴めば、鹿波はびくりと肩を揺らす。
 そのまま顔を近付ければ、「おい」と鹿波はたじろいだ。それでも構わず更に顔を寄せれば、なんということか、観念したかのように鹿波はおずおずと顔を逸し、それからまたちらりとこちらを見る。

「っ……」

 てっきり殴られるのではと思っていただけに、伏せ目がちにこちらを見る鹿波に俺はなかなかの衝撃を覚えていた。
 まさかこいつ、俺に惚れたのだろうか。
 無抵抗の鹿波に、こっちまで緊張してくる。据え膳食わぬはなんとやら。思い切って俺は、唇を突き出そうとした。
 そのときだった。

「……あのー、そろそろ入っていいかな」

 恐る恐る扉から顔を出す山下。
 こいつ、なんてタイミングで。
 青褪めたとき、真っ赤になった鹿波のグーパンが俺の頬にめり込んだ。


 おしまい
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