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女王が生まれる日
ハートのキング
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『早速ドレスを仕立ててもらうとするよ』
そうアリスは言い残し、そのまま衣装部屋を出ていった。
荒らされた衣装部屋の中、僕とサイスは暫く動けなかった。ややあってサイスはふう、と息をつく。
「……大丈夫ですか、王子」
倒れたマネキンを起き上がらせながらもサイスは僕に目を向ける。……まさかこの男に心配されるとは思わなかった。けれど、確かにサイスの目からすれば僕は大丈夫なようには見えなかったのだろう。
「ああ……問題ない」
「……アリス君のあれは相変わらず見たいっすね、っと、勿体ねえー……生地だけでも換金すりゃ金になりそうっすけど」
「……燃やしておけ」
「あっ、王子……」
「自室に戻るだけだ」
「ならば俺も」と慌ててマネキンから手を離すサイスを手で制す。
「……部屋に戻るだけだ、逃げない」
「暫く一人にさせてくれ」とサイスに言えば、サイスは少しだけ考えるように視線を泳がせる。
「……ま、荒らすだけ荒らして出ていったアリス君が悪いっすもんね。いいっすよ、けど危なくなったら呼んでくださいね」
エースならば「絶対に駄目です」と頑なになっていただろう。いい加減な男だ、と思ったが今はそのルーズさに助けられた。
それから布切れとなったドレスを片すというサイスを残して僕は衣装部屋を後にする。
一人になれば何かが変わるとは思ってない。
寧ろどろりとした怒りは腹の奥で燻っているようだった。
原因も分かってる。全てあのイカれ男のお陰だ。
――母様、申し訳ございません。
怒りもあった、そして自分に対する不甲斐なさも。何もかもあの男に踏みにじられる、思い出も、誇りも、なにもかも。
衣装部屋を出て廊下を抜けていく。
真っ直ぐに部屋に戻る気にはなれなかった。外の空気が吸いたかったのだ。
――城内、バルコニー。
日は高く、腹立たしいほど空は澄み渡っていた。
手すりを掴み、周りを見渡す。薔薇の蔦で覆われた城壁の外はよく見えないが、その周辺には常に兵隊たちが見回りをしているようだ。
そのまま飛び降りようとすれば飛び降りることもできるだろう。逃げ出そうと思えば逃げ出せる。
手すりを握り締め、大きく身を乗り出そうとしたときだった。
「ッロゼッタ、何をしてる……!」
背後で聞こえてきた声に、咄嗟に振り返ろうとした瞬間だった。――懐かしい匂いに、温もりに全身を抱き竦められる。
そしてすぐ、抱き竦められた体制のままどさりと何かを下敷きに倒れ込んだ。
「ッ、キング、大丈夫ですか」
それからすぐ聞こえてきたその声に全身が凍り付いた。赤い着崩した軍服に眩い程の金髪。そして珍しく焦ったような顔をしたその男――ジャックは僕、ではなく、僕の下にいたその人物に駆け寄るのだ。
普段滅多に畏まった態度を取らないこの男が唯一敬語になる相手――キング。
「ああ、私は大丈夫だ。……っ、いたた……っ」
「……っ、……」
顔を上げればすぐそこにはよく見慣れた、それでいて酷く久し振りの顔があった。ずっと、探していた。聞きたいことはたくさんあった、吐き出したい言葉も、恨み辛みもあったのにその顔を見た瞬間、頭の中が真っ白になるのだ。
あまりにも何もなかったように昔のままの柔和な笑みで笑うから。
自分の妻が処刑されたというのにも関わらず、この男は――。
「……ロゼッタ、怪我はないか?」
伸びてきた厚い手のひらに頬を撫でられそうになり、咄嗟にその手を振り払う。瞬間、首筋に突きつけられるのはジャックが抜いた剣先だ。あまりにも一瞬の出来事だった。薄皮数ミリ先に感じる金属特有の冷気に全身の神経が一気に尖る。
ジャックの表情にいつものニヤケ面はない、無表情で僕を見下ろすその目は処刑人の目だ。
「…………ジャック」
キング――父は、そうただ一言ジャックの名前を呼んだ。それが合図になった。剣を下ろしたジャックはそのまま鞘へと収める。キン、と響く金属音。僕はその場から動くことができなかった。
「……久し振りだな、ロゼッタ。……なかなか顔を見せることが出来ずすまなかった」
もしかしたら、僕は心の底でどこかでまだ信じていたかったのかもしれない。本当は全てアリスが仕組んだことで、王も脅されていたのだと。けれど、この男は母に対する詫びもなかった。ただの一言も、母のことを詫びることも悲しむ顔も見せなかった。
――僕にとっては、それだけで十分だった。
怒りと不快感、吐き気のあまり声を発することすらもできなかった。
「……ロゼッタ?」
何故、何故なのか。何故、母上を見殺しにした。何故、アリスに王位を継承した。何故、何故……。
言いたいことはいくらでもあった、殺してやりたいと思った。それなのに、実際本人を前にすると失望の方が大きくて――声すら出ない。
「どうした、ロゼ……」
ロゼッタ、と伸ばされた手を振り払う。乾いた音が辺りに響いた。
「……どうして……っ」
「……ロゼッタ?」
「貴方は、笑っていられるのですか……」
この状況に、この有様に。絞り出した言葉に、キングの表情から笑みが消える。
ぶん殴ってやりたい気持ちだったのに、いざ顔を見たらあまりのバカバカしさに心臓の奥から冷たくなっていくようだった。
やつが何かを言い出す前に、堪らず僕はキングを突き飛ばしてその場から逃げ出す。
「おいッ!! ……クソ……ッ、ご無事ですか、キング」
「ああ……ああ、大丈夫だ、これくらい。……それよりも、ロゼッタを……」
「どうなさいますか」
「……何もしなくていい、けど、また危ない真似をするかもしれん。……目を離さないでいてやってくれ、あの子は周りが見えなくなりやすい」
「……は」
◆ ◆ ◆
「はぁ……っ、はあ……」
息が苦しい。昔から体力はあまりない方だった。
白ウサギからも過度な運動はあまりしないようにと止められていた。
けれど、その言付けもここ数日で大分破ってきてしまった。
城内、自室まで戻ってきた僕は扉を閉めたのを確認し、そのままその場に座り込んだ。ベッドまで数歩、その数歩が辛かった。
――エース。
――母様。
呼吸を繰り返し、肺に酸素を送る行為を繰り返すと大分落ち着いてきた。収縮していた気道が広がっていくような感覚に目を瞑る。そのまま膝を抱え頭を埋めた。
父は、昔から母に逆らうことはできなかった。
名ばかりの王位、実際に民の前に立ち国政を取り持っていたのは母だ。
白ウサギは父のことを優しい人だと言った。母に怒られて泣いていた僕を慰めてくれるのはいつもあの人だった。「大丈夫だ、お前なら立派なキングになれる」と。大きな掌で頭を撫でられると安心したのを覚えてる。
それでも、いつからだろうか。父と疎遠になったのは。元々母のように強い人ではなかった。
物心ついたときには城内で父と会うことも少なくなっていた。母は父を存在しないもののように扱い、振る舞っていた。一度幼心ながらに父のことを聞いたとき、あの母の――女王の目が忘れられない。感情の抜け落ちたような目。母は、何も答えなかった。その後、僕は二度と母に父の話をすることはなかった。
その後一度、白ウサギに父のことをこっそり聞いたことがあった。白ウサギは「我らがキングは体調を崩され離れで療養をされております」と他人行儀に答えた。僕は、それ以上の追求をやめた。
そんな父が再び姿を現すようになったのはいつからか。
「……ロゼッタ様、私です」
……どれほどの時間が経ったのだろうか。
座り込んだまま時間が経過していたようだ。叩かれる扉越しに聞こえてくるのは聞き慣れた白ウサギの声だ。
怠い身体を動かし、立ち上がる。そしてそろりと扉を開けば、そこにはよく見知った顔があった。
「白ウサギ……」
「ロゼッタ様、具合が優れないのですか?」
「……問題ない、これくらい」
「……取り敢えず、上がらせていただきます。……今は私だけなので、寛いで下さい」
白ウサギに促されるがままベッドへと寝かされる。部屋の扉を閉めた白ウサギは横になった僕の額に触れる。前髪をそっと撫でるように掻き分けられ、目を瞑った。そのときだった。頬を撫で、体温を測っていた白ウサギの指が外れる。そしてその代わりに首へと伸びるのだ。
「……この跡は」
僅かに白ウサギの声のトーンが落ちる。白ウサギがなんのことを言ってるのかわからなかった。瞼を持ち上げれば、すぐ側には白ウサギの顔があった。
「跡……?」
「……首筋が赤くなってます。どこかで引っ掛けられましたか?」
柔らかい声で尋ねられ、鈍い頭で思考する。怪我なんてするようなことしていない、と言い掛けて停止する。
部屋へと押し掛けてきたジャックとの行為がよぎる。それは無関係だと思いたかったが、途中から意識が朦朧としていてよく覚えていない。けれどもしそれのことを指摘されてるのだとしたら……最悪だ。
「……知らない間に引っかかっただけだろう。別に平気だ」
「しかし跡が残ると大変です。……薬を塗っておきますね」
王子、とつい癖のように口にする白ウサギに言い返す気にもなれなかった。断ったところで白ウサギはわかりましたと納得するわけでないだろう。……昔からだ、気弱なくせに変なところで頑固なのもずっと変わらない。
好きにしろ、と僕は再び目を瞑る。……少しだけ、休みたかったのだ。一人でいても心許ない、信頼出来る人間の側で休めればそれで十分だった。
白ウサギが持参した鞄のなかにはたくさんの薬が入ってるのを知ってる。幼い頃、何度か中身を覗こうとしては危ないから触ってはいけないとやんわりと注意されたこともある。飲み薬から塗り薬、何に使うのかわからない器具に大きな注射器、いついかなるときでも対応できるようにとありとあらゆる医療器具が入ってるという。
「……これで大丈夫でしょう」
そう、傷の手当を済ませた白ウサギは僕から手を離した。目を開けば、白ウサギが椅子から立ち上がるところだった。
「……戻るのか?」
「ええ、これから少し用事がありまして……屯所へと行かなければ」
屯所はこの城の敷地内にある兵隊たちの詰め所だ。城程は大きくないが、それでも日夜この城の警備する兵隊たちが寝泊まりをしている。
元より白ウサギは母の専属医のはずだ、そんな白ウサギが何故あんなむさ苦しいところに呼ばれる必要があるのか。
「誰に言われたんだ?」
妙に引っかかって尋ねれば、白ウサギの視線が外される。
「それは、その」と口籠る白ウサギ。その態度から口止めされてることがわかった。
……仮にも元女王の専属医だ、そんな男を顎で呼び出せる相手となると立場は上の者に限られる。
「申し訳ございません、ロゼッタ様……貴方でもこればかりは……」
仕事だからか、それとも脅されてるのか。恐らくそのどちらもだろう。これ以上は聞き出せないだろう。寝返りを打ち、白ウサギに背中を向ける。
「ああそうか、じゃあこんなところで油売ってないでさっさと行け」
「ろ、ロゼッタ様……申し訳ございません」
「……、……」
謝るな、馬鹿。僕が聞き分けのないやつみたいじゃないか。言い返してやりたかったが、やめた。
白ウサギは「何かあったらすぐにお申し付けくださいね」とだけ言って部屋を出ていった。
……別にあいつを困らせたいわけではない。状況も状況だ、僕に構ってられないのだろう。僕の立場がなくなったお陰で白ウサギの立場まで危うくなってるのか、兵隊にこき使われている白ウサギを見るのは正直不愉快だったが助けてやれる方法も今はない。
……けど、白ウサギが来てくれてよかった。
少しだけではあるが白ウサギのお陰で大分気分がよくなっているのは事実だ。
――白ウサギが出ていってから暫くしたときだった。
窓から差し込む陽気にベッドの上でうとうとしかけていたとき、不意に部屋の外で物音がした。条件反射でベッドから飛び起きる。そのまま逃げるようにベッドの陰に隠れようとしたときだった。
『――王子ー? 起きてますか?』
緊張感のない、弾むように明るい声――ダムだ。
全身が緊張する。扉の向こうにいるのは僕の知ってるダムではない、アリスに操られているであろう人間だ。
居留守しようか迷った。けど、
『おーうーじ! 王子~! お茶の時間ですよ~! 淹れたてホヤホヤの紅茶と焼き立てのチェリーパイもありますよー!』
コンコンとリズミカルに叩かれる扉と喧しい声にその緊張もすぐに解けた。そして次に湧いてくるのは怒りだ。
「……っ、煩いぞ、今何時だと思って……!」
そう扉を開けば、そこにはティーワゴンを手にした見慣れた顔があった。明るい橙髪にきっちりと着込んだ割烹着、そしてその顔に浮かべるのは人懐っこい笑み。
「だから、午後三時のお茶会ですよ。そろそろ王子の小腹も空いてきたかと思って」
「…………」
「……王子? どうしました?」
「……帰れ、いらない」
「ええっ? 王子がお茶もおやつもいらないなんて、もしかして具合でも悪いんですか?」
お前の顔を見て食欲など湧くものかと言い返しそうになったが、やめた。
……懲罰房での姿を見たというのに、まだ僕には目の前の男が別人だとは思えなかった。
そこにいるのは僕がよく知るトゥイードル・ダムそのものだった。考えれば考えるほど思考回路がこんがらがる。それと同時に、アリスへの疑念も。
「……パイはお前が作ったのか?」
「そこはご安心を。ちゃんとディーに作らせたので王子の口にも合うはずですよ」
ディーは甘党だ。そんなディーが作る洋菓子は他の大人たちに言わせてみればただの砂糖の塊らしいが、僕にとっては最高の洋菓子だ。……そんなやり取りをしたのはデーとダムがこの屋敷にやってきて暫くしてからだ。それから僕への茶菓子はディーが用意してくれていた。
……そして、アリスはこのときはまだ存在しない。ダムもそのことを覚えてるということは、ここにいるのは本物のダムなのか?
「この部屋でのお茶会もなんか新鮮だね。普段は薔薇園が多かったけど今使用禁止になってるから仕方ないといえば仕方ないんだけど」
何故、など聞かずともわかった。
荒れに荒れた薔薇園を思い出す。血の赤、絵の具の白、死体。……死体は生き返らせることができても、荒れた薔薇たちの手入れには時間がかかるということか。人の話も聞かずに早速茶会の用意をテキパキと始めるダムに折れ、僕は寝室から出ていくことにした。
僕とダム、二人きりのお茶会が始まる。
とはいえ、ダムは使用人だ。実際にお茶をするのは僕だけだ。
部屋の中に広がる薔薇の香り。普段ならば心安らぐこの匂いも、今だけは不安を掻き立てる要素でしかない。
――本当にこのまま口にしていいのか。
本来ならばエースが毒味役を買って出ていただろう、そもそも毒味などする必要がなかった。毒の心配をしなければならない茶会など誰が寛げるものか。そう思っていたが、「王子?どうしました?」とあまりにも毒気ない顔で尋ねられれば馬鹿馬鹿しくなってくる。
……そもそもアリス、あいつには僕を殺す意思はない。こいつがアリスの傀儡だというのならば毒が盛られてる可能性も低いだろう。そう空腹で唸る腹部を抑えながら、僕はティーカップを手に取り縁に口を付ける。口内から全身へと染み渡るローズの薫りに思わずほっと息を吐いた。
……美味しい。それからパイにも手を付ける。酷く懐かしい味だ。この一口だけでも胸がいっぱいになりそうな甘ったるしさは間違いない、ディーの作ったチェリーパイだ。
「良かった、食欲はあるみたいですね。王子」
「……その王子っていうのやめろ、僕はもう王子ではない」
「ああ、クイーンってお呼びしなければならないんだっけ。……っと、アリス……王子には秘密にしてくださいよ。あの人、貴方のことになると結構苛烈なので後が怖いんですよ」
笑うダム。
……そりゃ嫌ってほど知ってる。自分が仕置部屋に連れて込まれていたことも忘れてるのか。
それは当然の疑問だ。幸いこの場にはアリスもいない。聞くだけ聞いてみるか、と僕は手にしたティーカップを置いた。
「……ダム、お前は……アリスに何かされたのか?」
単刀直入に尋ねる。ダムは怯えるどころか、「え?」と不思議そうに小首を傾げるのだ。
「何って……まあ確かにあまり王子……いえ、クイーンに馴れ馴れしくするなだとか色々言われましたけど、直接何かをということはないですね。それに、アリスってほら裏表がないじゃないですか。大体クイーンが見たままかと」
へらりと笑うダムは嘘を吐いてるようにも無理をしてるようにも見えない。……記憶を改竄してるのか、それとも洗脳してるのか。体の傷がなくなりピンピンしてることから考えて瓜二つで記憶まで同じの別人という可能性も考えたがあまりにも非現実過ぎてやはり簡単に納得できない。
裏表がない、か。確かにあの男は己の欲求に素直だ。……そのせいで全てがめちゃくちゃになってしまった現状だ。
「……王子?」
「ダム、手を出せ」
「え? こうですか?」
そう、言われるがまま僕の前に掌を伸ばすダム。その手首を掴み、裾を大きく捲くりあげる。
「っ、お、王子……?!」
「…………」
程よく引き締まったその袖の下、やはりそこには殴られたような痣も、傷一つなかった。
「あ、あのぉ~……?」
不安そうな、それでいて驚いたような妙な顔をしたダム。僕はやつがそれ以上何かを言う前に手を離した。
「……もういい、下がれ」
「王子、いや……クイーン、その、ですが」
「下がれと言ってるんだ、聞こえなかったか?」
つい語気が荒くなってしまう。びくりと肩を跳ねさせたダムだったが、それ以上口答えすることはなかった。畏まりました、と頭を下げたダムはそのまま部屋から出ていく。
一人残された部屋の中、無意識に溜息が漏れてしまう。
殺しても死なない男と、記憶を引き継いだまま生まれ変わった別人。あの男はなんなんだ、一体。考えれば考えるほど見えない答えに苛立った。
温くなった紅茶に口を付け、深く息を吐いた。
食欲は沸かなかったが駄目にするわけにもいかない。
食欲は失せるばかりだが腹は減る。
僕はチェリーパイの皿に手を伸ばした。
そうアリスは言い残し、そのまま衣装部屋を出ていった。
荒らされた衣装部屋の中、僕とサイスは暫く動けなかった。ややあってサイスはふう、と息をつく。
「……大丈夫ですか、王子」
倒れたマネキンを起き上がらせながらもサイスは僕に目を向ける。……まさかこの男に心配されるとは思わなかった。けれど、確かにサイスの目からすれば僕は大丈夫なようには見えなかったのだろう。
「ああ……問題ない」
「……アリス君のあれは相変わらず見たいっすね、っと、勿体ねえー……生地だけでも換金すりゃ金になりそうっすけど」
「……燃やしておけ」
「あっ、王子……」
「自室に戻るだけだ」
「ならば俺も」と慌ててマネキンから手を離すサイスを手で制す。
「……部屋に戻るだけだ、逃げない」
「暫く一人にさせてくれ」とサイスに言えば、サイスは少しだけ考えるように視線を泳がせる。
「……ま、荒らすだけ荒らして出ていったアリス君が悪いっすもんね。いいっすよ、けど危なくなったら呼んでくださいね」
エースならば「絶対に駄目です」と頑なになっていただろう。いい加減な男だ、と思ったが今はそのルーズさに助けられた。
それから布切れとなったドレスを片すというサイスを残して僕は衣装部屋を後にする。
一人になれば何かが変わるとは思ってない。
寧ろどろりとした怒りは腹の奥で燻っているようだった。
原因も分かってる。全てあのイカれ男のお陰だ。
――母様、申し訳ございません。
怒りもあった、そして自分に対する不甲斐なさも。何もかもあの男に踏みにじられる、思い出も、誇りも、なにもかも。
衣装部屋を出て廊下を抜けていく。
真っ直ぐに部屋に戻る気にはなれなかった。外の空気が吸いたかったのだ。
――城内、バルコニー。
日は高く、腹立たしいほど空は澄み渡っていた。
手すりを掴み、周りを見渡す。薔薇の蔦で覆われた城壁の外はよく見えないが、その周辺には常に兵隊たちが見回りをしているようだ。
そのまま飛び降りようとすれば飛び降りることもできるだろう。逃げ出そうと思えば逃げ出せる。
手すりを握り締め、大きく身を乗り出そうとしたときだった。
「ッロゼッタ、何をしてる……!」
背後で聞こえてきた声に、咄嗟に振り返ろうとした瞬間だった。――懐かしい匂いに、温もりに全身を抱き竦められる。
そしてすぐ、抱き竦められた体制のままどさりと何かを下敷きに倒れ込んだ。
「ッ、キング、大丈夫ですか」
それからすぐ聞こえてきたその声に全身が凍り付いた。赤い着崩した軍服に眩い程の金髪。そして珍しく焦ったような顔をしたその男――ジャックは僕、ではなく、僕の下にいたその人物に駆け寄るのだ。
普段滅多に畏まった態度を取らないこの男が唯一敬語になる相手――キング。
「ああ、私は大丈夫だ。……っ、いたた……っ」
「……っ、……」
顔を上げればすぐそこにはよく見慣れた、それでいて酷く久し振りの顔があった。ずっと、探していた。聞きたいことはたくさんあった、吐き出したい言葉も、恨み辛みもあったのにその顔を見た瞬間、頭の中が真っ白になるのだ。
あまりにも何もなかったように昔のままの柔和な笑みで笑うから。
自分の妻が処刑されたというのにも関わらず、この男は――。
「……ロゼッタ、怪我はないか?」
伸びてきた厚い手のひらに頬を撫でられそうになり、咄嗟にその手を振り払う。瞬間、首筋に突きつけられるのはジャックが抜いた剣先だ。あまりにも一瞬の出来事だった。薄皮数ミリ先に感じる金属特有の冷気に全身の神経が一気に尖る。
ジャックの表情にいつものニヤケ面はない、無表情で僕を見下ろすその目は処刑人の目だ。
「…………ジャック」
キング――父は、そうただ一言ジャックの名前を呼んだ。それが合図になった。剣を下ろしたジャックはそのまま鞘へと収める。キン、と響く金属音。僕はその場から動くことができなかった。
「……久し振りだな、ロゼッタ。……なかなか顔を見せることが出来ずすまなかった」
もしかしたら、僕は心の底でどこかでまだ信じていたかったのかもしれない。本当は全てアリスが仕組んだことで、王も脅されていたのだと。けれど、この男は母に対する詫びもなかった。ただの一言も、母のことを詫びることも悲しむ顔も見せなかった。
――僕にとっては、それだけで十分だった。
怒りと不快感、吐き気のあまり声を発することすらもできなかった。
「……ロゼッタ?」
何故、何故なのか。何故、母上を見殺しにした。何故、アリスに王位を継承した。何故、何故……。
言いたいことはいくらでもあった、殺してやりたいと思った。それなのに、実際本人を前にすると失望の方が大きくて――声すら出ない。
「どうした、ロゼ……」
ロゼッタ、と伸ばされた手を振り払う。乾いた音が辺りに響いた。
「……どうして……っ」
「……ロゼッタ?」
「貴方は、笑っていられるのですか……」
この状況に、この有様に。絞り出した言葉に、キングの表情から笑みが消える。
ぶん殴ってやりたい気持ちだったのに、いざ顔を見たらあまりのバカバカしさに心臓の奥から冷たくなっていくようだった。
やつが何かを言い出す前に、堪らず僕はキングを突き飛ばしてその場から逃げ出す。
「おいッ!! ……クソ……ッ、ご無事ですか、キング」
「ああ……ああ、大丈夫だ、これくらい。……それよりも、ロゼッタを……」
「どうなさいますか」
「……何もしなくていい、けど、また危ない真似をするかもしれん。……目を離さないでいてやってくれ、あの子は周りが見えなくなりやすい」
「……は」
◆ ◆ ◆
「はぁ……っ、はあ……」
息が苦しい。昔から体力はあまりない方だった。
白ウサギからも過度な運動はあまりしないようにと止められていた。
けれど、その言付けもここ数日で大分破ってきてしまった。
城内、自室まで戻ってきた僕は扉を閉めたのを確認し、そのままその場に座り込んだ。ベッドまで数歩、その数歩が辛かった。
――エース。
――母様。
呼吸を繰り返し、肺に酸素を送る行為を繰り返すと大分落ち着いてきた。収縮していた気道が広がっていくような感覚に目を瞑る。そのまま膝を抱え頭を埋めた。
父は、昔から母に逆らうことはできなかった。
名ばかりの王位、実際に民の前に立ち国政を取り持っていたのは母だ。
白ウサギは父のことを優しい人だと言った。母に怒られて泣いていた僕を慰めてくれるのはいつもあの人だった。「大丈夫だ、お前なら立派なキングになれる」と。大きな掌で頭を撫でられると安心したのを覚えてる。
それでも、いつからだろうか。父と疎遠になったのは。元々母のように強い人ではなかった。
物心ついたときには城内で父と会うことも少なくなっていた。母は父を存在しないもののように扱い、振る舞っていた。一度幼心ながらに父のことを聞いたとき、あの母の――女王の目が忘れられない。感情の抜け落ちたような目。母は、何も答えなかった。その後、僕は二度と母に父の話をすることはなかった。
その後一度、白ウサギに父のことをこっそり聞いたことがあった。白ウサギは「我らがキングは体調を崩され離れで療養をされております」と他人行儀に答えた。僕は、それ以上の追求をやめた。
そんな父が再び姿を現すようになったのはいつからか。
「……ロゼッタ様、私です」
……どれほどの時間が経ったのだろうか。
座り込んだまま時間が経過していたようだ。叩かれる扉越しに聞こえてくるのは聞き慣れた白ウサギの声だ。
怠い身体を動かし、立ち上がる。そしてそろりと扉を開けば、そこにはよく見知った顔があった。
「白ウサギ……」
「ロゼッタ様、具合が優れないのですか?」
「……問題ない、これくらい」
「……取り敢えず、上がらせていただきます。……今は私だけなので、寛いで下さい」
白ウサギに促されるがままベッドへと寝かされる。部屋の扉を閉めた白ウサギは横になった僕の額に触れる。前髪をそっと撫でるように掻き分けられ、目を瞑った。そのときだった。頬を撫で、体温を測っていた白ウサギの指が外れる。そしてその代わりに首へと伸びるのだ。
「……この跡は」
僅かに白ウサギの声のトーンが落ちる。白ウサギがなんのことを言ってるのかわからなかった。瞼を持ち上げれば、すぐ側には白ウサギの顔があった。
「跡……?」
「……首筋が赤くなってます。どこかで引っ掛けられましたか?」
柔らかい声で尋ねられ、鈍い頭で思考する。怪我なんてするようなことしていない、と言い掛けて停止する。
部屋へと押し掛けてきたジャックとの行為がよぎる。それは無関係だと思いたかったが、途中から意識が朦朧としていてよく覚えていない。けれどもしそれのことを指摘されてるのだとしたら……最悪だ。
「……知らない間に引っかかっただけだろう。別に平気だ」
「しかし跡が残ると大変です。……薬を塗っておきますね」
王子、とつい癖のように口にする白ウサギに言い返す気にもなれなかった。断ったところで白ウサギはわかりましたと納得するわけでないだろう。……昔からだ、気弱なくせに変なところで頑固なのもずっと変わらない。
好きにしろ、と僕は再び目を瞑る。……少しだけ、休みたかったのだ。一人でいても心許ない、信頼出来る人間の側で休めればそれで十分だった。
白ウサギが持参した鞄のなかにはたくさんの薬が入ってるのを知ってる。幼い頃、何度か中身を覗こうとしては危ないから触ってはいけないとやんわりと注意されたこともある。飲み薬から塗り薬、何に使うのかわからない器具に大きな注射器、いついかなるときでも対応できるようにとありとあらゆる医療器具が入ってるという。
「……これで大丈夫でしょう」
そう、傷の手当を済ませた白ウサギは僕から手を離した。目を開けば、白ウサギが椅子から立ち上がるところだった。
「……戻るのか?」
「ええ、これから少し用事がありまして……屯所へと行かなければ」
屯所はこの城の敷地内にある兵隊たちの詰め所だ。城程は大きくないが、それでも日夜この城の警備する兵隊たちが寝泊まりをしている。
元より白ウサギは母の専属医のはずだ、そんな白ウサギが何故あんなむさ苦しいところに呼ばれる必要があるのか。
「誰に言われたんだ?」
妙に引っかかって尋ねれば、白ウサギの視線が外される。
「それは、その」と口籠る白ウサギ。その態度から口止めされてることがわかった。
……仮にも元女王の専属医だ、そんな男を顎で呼び出せる相手となると立場は上の者に限られる。
「申し訳ございません、ロゼッタ様……貴方でもこればかりは……」
仕事だからか、それとも脅されてるのか。恐らくそのどちらもだろう。これ以上は聞き出せないだろう。寝返りを打ち、白ウサギに背中を向ける。
「ああそうか、じゃあこんなところで油売ってないでさっさと行け」
「ろ、ロゼッタ様……申し訳ございません」
「……、……」
謝るな、馬鹿。僕が聞き分けのないやつみたいじゃないか。言い返してやりたかったが、やめた。
白ウサギは「何かあったらすぐにお申し付けくださいね」とだけ言って部屋を出ていった。
……別にあいつを困らせたいわけではない。状況も状況だ、僕に構ってられないのだろう。僕の立場がなくなったお陰で白ウサギの立場まで危うくなってるのか、兵隊にこき使われている白ウサギを見るのは正直不愉快だったが助けてやれる方法も今はない。
……けど、白ウサギが来てくれてよかった。
少しだけではあるが白ウサギのお陰で大分気分がよくなっているのは事実だ。
――白ウサギが出ていってから暫くしたときだった。
窓から差し込む陽気にベッドの上でうとうとしかけていたとき、不意に部屋の外で物音がした。条件反射でベッドから飛び起きる。そのまま逃げるようにベッドの陰に隠れようとしたときだった。
『――王子ー? 起きてますか?』
緊張感のない、弾むように明るい声――ダムだ。
全身が緊張する。扉の向こうにいるのは僕の知ってるダムではない、アリスに操られているであろう人間だ。
居留守しようか迷った。けど、
『おーうーじ! 王子~! お茶の時間ですよ~! 淹れたてホヤホヤの紅茶と焼き立てのチェリーパイもありますよー!』
コンコンとリズミカルに叩かれる扉と喧しい声にその緊張もすぐに解けた。そして次に湧いてくるのは怒りだ。
「……っ、煩いぞ、今何時だと思って……!」
そう扉を開けば、そこにはティーワゴンを手にした見慣れた顔があった。明るい橙髪にきっちりと着込んだ割烹着、そしてその顔に浮かべるのは人懐っこい笑み。
「だから、午後三時のお茶会ですよ。そろそろ王子の小腹も空いてきたかと思って」
「…………」
「……王子? どうしました?」
「……帰れ、いらない」
「ええっ? 王子がお茶もおやつもいらないなんて、もしかして具合でも悪いんですか?」
お前の顔を見て食欲など湧くものかと言い返しそうになったが、やめた。
……懲罰房での姿を見たというのに、まだ僕には目の前の男が別人だとは思えなかった。
そこにいるのは僕がよく知るトゥイードル・ダムそのものだった。考えれば考えるほど思考回路がこんがらがる。それと同時に、アリスへの疑念も。
「……パイはお前が作ったのか?」
「そこはご安心を。ちゃんとディーに作らせたので王子の口にも合うはずですよ」
ディーは甘党だ。そんなディーが作る洋菓子は他の大人たちに言わせてみればただの砂糖の塊らしいが、僕にとっては最高の洋菓子だ。……そんなやり取りをしたのはデーとダムがこの屋敷にやってきて暫くしてからだ。それから僕への茶菓子はディーが用意してくれていた。
……そして、アリスはこのときはまだ存在しない。ダムもそのことを覚えてるということは、ここにいるのは本物のダムなのか?
「この部屋でのお茶会もなんか新鮮だね。普段は薔薇園が多かったけど今使用禁止になってるから仕方ないといえば仕方ないんだけど」
何故、など聞かずともわかった。
荒れに荒れた薔薇園を思い出す。血の赤、絵の具の白、死体。……死体は生き返らせることができても、荒れた薔薇たちの手入れには時間がかかるということか。人の話も聞かずに早速茶会の用意をテキパキと始めるダムに折れ、僕は寝室から出ていくことにした。
僕とダム、二人きりのお茶会が始まる。
とはいえ、ダムは使用人だ。実際にお茶をするのは僕だけだ。
部屋の中に広がる薔薇の香り。普段ならば心安らぐこの匂いも、今だけは不安を掻き立てる要素でしかない。
――本当にこのまま口にしていいのか。
本来ならばエースが毒味役を買って出ていただろう、そもそも毒味などする必要がなかった。毒の心配をしなければならない茶会など誰が寛げるものか。そう思っていたが、「王子?どうしました?」とあまりにも毒気ない顔で尋ねられれば馬鹿馬鹿しくなってくる。
……そもそもアリス、あいつには僕を殺す意思はない。こいつがアリスの傀儡だというのならば毒が盛られてる可能性も低いだろう。そう空腹で唸る腹部を抑えながら、僕はティーカップを手に取り縁に口を付ける。口内から全身へと染み渡るローズの薫りに思わずほっと息を吐いた。
……美味しい。それからパイにも手を付ける。酷く懐かしい味だ。この一口だけでも胸がいっぱいになりそうな甘ったるしさは間違いない、ディーの作ったチェリーパイだ。
「良かった、食欲はあるみたいですね。王子」
「……その王子っていうのやめろ、僕はもう王子ではない」
「ああ、クイーンってお呼びしなければならないんだっけ。……っと、アリス……王子には秘密にしてくださいよ。あの人、貴方のことになると結構苛烈なので後が怖いんですよ」
笑うダム。
……そりゃ嫌ってほど知ってる。自分が仕置部屋に連れて込まれていたことも忘れてるのか。
それは当然の疑問だ。幸いこの場にはアリスもいない。聞くだけ聞いてみるか、と僕は手にしたティーカップを置いた。
「……ダム、お前は……アリスに何かされたのか?」
単刀直入に尋ねる。ダムは怯えるどころか、「え?」と不思議そうに小首を傾げるのだ。
「何って……まあ確かにあまり王子……いえ、クイーンに馴れ馴れしくするなだとか色々言われましたけど、直接何かをということはないですね。それに、アリスってほら裏表がないじゃないですか。大体クイーンが見たままかと」
へらりと笑うダムは嘘を吐いてるようにも無理をしてるようにも見えない。……記憶を改竄してるのか、それとも洗脳してるのか。体の傷がなくなりピンピンしてることから考えて瓜二つで記憶まで同じの別人という可能性も考えたがあまりにも非現実過ぎてやはり簡単に納得できない。
裏表がない、か。確かにあの男は己の欲求に素直だ。……そのせいで全てがめちゃくちゃになってしまった現状だ。
「……王子?」
「ダム、手を出せ」
「え? こうですか?」
そう、言われるがまま僕の前に掌を伸ばすダム。その手首を掴み、裾を大きく捲くりあげる。
「っ、お、王子……?!」
「…………」
程よく引き締まったその袖の下、やはりそこには殴られたような痣も、傷一つなかった。
「あ、あのぉ~……?」
不安そうな、それでいて驚いたような妙な顔をしたダム。僕はやつがそれ以上何かを言う前に手を離した。
「……もういい、下がれ」
「王子、いや……クイーン、その、ですが」
「下がれと言ってるんだ、聞こえなかったか?」
つい語気が荒くなってしまう。びくりと肩を跳ねさせたダムだったが、それ以上口答えすることはなかった。畏まりました、と頭を下げたダムはそのまま部屋から出ていく。
一人残された部屋の中、無意識に溜息が漏れてしまう。
殺しても死なない男と、記憶を引き継いだまま生まれ変わった別人。あの男はなんなんだ、一体。考えれば考えるほど見えない答えに苛立った。
温くなった紅茶に口を付け、深く息を吐いた。
食欲は沸かなかったが駄目にするわけにもいかない。
食欲は失せるばかりだが腹は減る。
僕はチェリーパイの皿に手を伸ばした。
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