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第四章【モンスターパニック】
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――楽しい宴会。
そう言ったもののだ。ひたひたと歩いていく長い廊下の中、なんだかどんどん空気が重くなっているような気がした。
血の匂いがするわけでもない、地下の狭っ苦しい泥のトンネル潜らされてるわけでもない。それなのに、上から脳味噌に圧をかけられてるみたいだ。
対する他の皆の足取りは――巳亦を除いて代わりはなかった。
つい歩くペースが遅くなったとき、伸びてきた腕に体を抱き寄せられる。顔を上げれば黒羽の顔があった。
「伊波様」
「あ、……黒羽さん、ごめん」
「具合が悪いのか」
「なんだろう……慣れてないからかな、なんだか、頭が……重たくて」
「無理もありませんわ、ここは妖力で作られた施設。……人間の曜殿には少々お辛いかもしれませんわね」
そう言って、ひたりと足を止めた白梅は袖の下から何かを取り出した。
「これを」と差し出されたのは真っ黒な小瓶だった。中になにか液体のようなものが入ってるのが見えたが、何色かまでは視認できない。
「これは……」
「有り体に言えば、一時的我々の同胞になれる薬です。中には妖怪の血が少々入ってますの」
「同胞……?」
足下の行燈に翳せば、その小瓶は怪しく光る。それを見て息を飲む。
「ええ」と白梅はにっこりと微笑み、小瓶を手にした俺の掌ごと握り締めようとし、それを黒羽が振り払う。
「貴様、何を考えてる」
「あら、烏の。貴方は主の苦しむ姿を見て平気なのかしら」
「そんなわけないだろう。……伊波様、飲む必要はない」
「え、あ、黒羽さ……」
そのまま小瓶を取り上げる黒羽。
確かに歩けないほどではないが、白梅たちに失礼ではないのか。と黒羽を見上げたとき、どこからともなくクナイを取り出す黒羽。
そして、いきなり躊躇なく自分の指先を傷つける黒羽にぎょっとした。
「く、黒羽さん?! なにし……っ、んむ……っ?!」
開いた口にねじ込まれる太く硬い指先。そのまま舌に擦り付けられるように舌の根を引っ張られ、広がる鉄の味におえっとなりそうになったところで「何してるの、貴方」と呆れたように白梅は目を開いた。それは巳亦、アンブラも同じだ。
そして、俺も例外ではない。
「見てわからんか。得体の知れない薬を飲まさせるくらいなら、俺の血を飲まさせる」
「んむ、ぅ……っ」
「伊波様、苦しいだろうが我慢してください。……そうだ、薬のようなものだと思え」
「……っん、んむ……」
他意はないとしてもだ。
ちゅぱちゅぱ、と赤子のように黒羽の指を舐めさせられる姿を人に見られるのは恥ずかしい。
そして何よりも、少し強引な黒羽に抱かれたときのことを思い出して体が反応し始めてることが恐ろし恥ずかしかった。
「は、んむ……っ、くろ、はさ……血、飲んだ……」
「……そうか、具合は?」
「わ、わかんない……っ、けど、血の味がする……」
「薬よりも俺の血は濃い。効き目はあるはずだ。……効かなければまた言うんだ、いいな」
そう言って、黒羽は俺の口からちゅぽんと指を引き抜いた。自分の唾液で濡れた指が透明な糸を引いてるのを見て、どうやってもエロい事しか考えられなくなってしまう自分を叱咤する。
少しだけ引いた顔をしていた白梅だったが、「姉様」と黄桜に呼びかけられハッとしたようだ。
「……まあ、いいわ。それでは参りましょうか。……少々、寄り道し過ぎでしまいましたわね」
そのまま歩いていく白梅、その後を追いかける黄桜に再びついていく。
口の中には未だ黒羽の指の感触と血の味が残ってるようで落ち着かなかった。
けれど、確かに効果はあったようだ。先程よりも大分体が軽くなったような気がする――が、その代わりになんだか体温が下がってる気がする。
もしかしてあれか、妖怪になってるのだろうか。俺。
身体的には特には目立った変化はないので、特に気にせず俺は再び白梅たちに意識を向けることにした。
けれど、なんだろうか。ずっとどこからか見られてるような感覚は常にあった。
姿を隠した妖怪がいてもおかしなことではないが、黒羽の血を飲んだことでより全ての感覚が鋭くなっていってる気がしてならなかった。
そう言ったもののだ。ひたひたと歩いていく長い廊下の中、なんだかどんどん空気が重くなっているような気がした。
血の匂いがするわけでもない、地下の狭っ苦しい泥のトンネル潜らされてるわけでもない。それなのに、上から脳味噌に圧をかけられてるみたいだ。
対する他の皆の足取りは――巳亦を除いて代わりはなかった。
つい歩くペースが遅くなったとき、伸びてきた腕に体を抱き寄せられる。顔を上げれば黒羽の顔があった。
「伊波様」
「あ、……黒羽さん、ごめん」
「具合が悪いのか」
「なんだろう……慣れてないからかな、なんだか、頭が……重たくて」
「無理もありませんわ、ここは妖力で作られた施設。……人間の曜殿には少々お辛いかもしれませんわね」
そう言って、ひたりと足を止めた白梅は袖の下から何かを取り出した。
「これを」と差し出されたのは真っ黒な小瓶だった。中になにか液体のようなものが入ってるのが見えたが、何色かまでは視認できない。
「これは……」
「有り体に言えば、一時的我々の同胞になれる薬です。中には妖怪の血が少々入ってますの」
「同胞……?」
足下の行燈に翳せば、その小瓶は怪しく光る。それを見て息を飲む。
「ええ」と白梅はにっこりと微笑み、小瓶を手にした俺の掌ごと握り締めようとし、それを黒羽が振り払う。
「貴様、何を考えてる」
「あら、烏の。貴方は主の苦しむ姿を見て平気なのかしら」
「そんなわけないだろう。……伊波様、飲む必要はない」
「え、あ、黒羽さ……」
そのまま小瓶を取り上げる黒羽。
確かに歩けないほどではないが、白梅たちに失礼ではないのか。と黒羽を見上げたとき、どこからともなくクナイを取り出す黒羽。
そして、いきなり躊躇なく自分の指先を傷つける黒羽にぎょっとした。
「く、黒羽さん?! なにし……っ、んむ……っ?!」
開いた口にねじ込まれる太く硬い指先。そのまま舌に擦り付けられるように舌の根を引っ張られ、広がる鉄の味におえっとなりそうになったところで「何してるの、貴方」と呆れたように白梅は目を開いた。それは巳亦、アンブラも同じだ。
そして、俺も例外ではない。
「見てわからんか。得体の知れない薬を飲まさせるくらいなら、俺の血を飲まさせる」
「んむ、ぅ……っ」
「伊波様、苦しいだろうが我慢してください。……そうだ、薬のようなものだと思え」
「……っん、んむ……」
他意はないとしてもだ。
ちゅぱちゅぱ、と赤子のように黒羽の指を舐めさせられる姿を人に見られるのは恥ずかしい。
そして何よりも、少し強引な黒羽に抱かれたときのことを思い出して体が反応し始めてることが恐ろし恥ずかしかった。
「は、んむ……っ、くろ、はさ……血、飲んだ……」
「……そうか、具合は?」
「わ、わかんない……っ、けど、血の味がする……」
「薬よりも俺の血は濃い。効き目はあるはずだ。……効かなければまた言うんだ、いいな」
そう言って、黒羽は俺の口からちゅぽんと指を引き抜いた。自分の唾液で濡れた指が透明な糸を引いてるのを見て、どうやってもエロい事しか考えられなくなってしまう自分を叱咤する。
少しだけ引いた顔をしていた白梅だったが、「姉様」と黄桜に呼びかけられハッとしたようだ。
「……まあ、いいわ。それでは参りましょうか。……少々、寄り道し過ぎでしまいましたわね」
そのまま歩いていく白梅、その後を追いかける黄桜に再びついていく。
口の中には未だ黒羽の指の感触と血の味が残ってるようで落ち着かなかった。
けれど、確かに効果はあったようだ。先程よりも大分体が軽くなったような気がする――が、その代わりになんだか体温が下がってる気がする。
もしかしてあれか、妖怪になってるのだろうか。俺。
身体的には特には目立った変化はないので、特に気にせず俺は再び白梅たちに意識を向けることにした。
けれど、なんだろうか。ずっとどこからか見られてるような感覚は常にあった。
姿を隠した妖怪がいてもおかしなことではないが、黒羽の血を飲んだことでより全ての感覚が鋭くなっていってる気がしてならなかった。
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