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第四章【モンスターパニック】
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それから店内を色々見て回って良さげなお菓子を買い物カートに乗せていると、不意に美味しそうなお菓子が置いてある棚を見つけた。
その棚の上の辺りには、ありとあらゆるタイプのお菓子が詰め込まれたパーティー用詰め合わせセットというまさにこんなときにもってこいなものもある。
そっと手を伸ばすが、指先すら届かない。近くに踏み台か梯子かないだろうかと見渡していると、「どうした」と背後から黒羽の声が聞こえてきた。
「あ、黒羽さん丁度良いところに……! あの、あれ届く?」
「これか?」
「うん、そうそれ! ……ありがとう、黒羽さん」
ひょい、と高いところにあったお目当てのお菓子セットの袋を手にとった黒羽はそのままこちらへと渡してくれる。
遠目に見たときよりも思いの外大きいが、人数が人数だし丁度良いかもしれない。とそれを買い物カートにそっと乗せたときだった。
「お言葉ですが、伊波様。些かこの人数のつまみにしては量が多すぎる気がするんだが」
「ええ? でもほら、皆たくさん食べるし……」
「仮にも就寝前で食後だ。……それに、砂糖が多すぎる。虫歯にでもなったらどうするんだ」
「う……だって全部美味しそうだったし……」
「その徳用菓子詰め合わせを選ぶのならこの辺りの砂糖菓子は不要だ。糖分の過剰摂取になる」
「で、でも! 黒羽さんの好きそうなのも見つけたよ。ほら、この魚っぽいやつ……」
「自分の分は用意しなくていい、貴方がほしいものだけを選ぶんだ」
取り付く島もないとはこのことだろう。ひょいひょいと甘いものたちが棚に戻されていくのを見守る俺の背中にはさぞ哀愁が漂っていることだろう。
「これだけは許してください!」となんとか黒羽のためのおつまみは死守することはできたが、先程まで意気揚々とカートに乗せていた過半数のお菓子たちは棚に戻されてしまった。
そして黒羽に「買い込むのなら低カロリーのものを」と口酸っぱく怒られた俺はしおしおになりながら再び店内を見て回ることになった。
「曜。……って、あれ、なんか元気ないな。さっきまであんなに生き生きしてたのに」
「巳亦……」
「その顔、黒羽さんに怒られたのか」
黒羽と別れたあと、再び店内でカロリーが高くなさそうなものを選んでいると、向かい側から巳亦がやってくる。
そして早速図星を言い当てられてしまった俺は項垂れた。
「うん、寝る前にそんなに食うなって……」
「はは、なるほどな。黒羽さんらしいけど、テミッドの方見てきたら多分黒羽さん卒倒するかもな」
「テミッド?」
なんでだ?と小首を傾げたとき、そのまま巳亦は「ほら、あっち」と俺の背後を笑顔で指差した。
促されるがまま振り返れば、こちらへと迫ってくるのはありとあらゆる菓子を箱ごと山盛りに積んだカートだった。何事かとぎょっとしたとき、そのカートの影からひょっこりとテミッドが顔を出す。
「い、伊波様……美味しそうなの見つけました……!」
「て、テミッド! 言っておくけど一応今日だけの分だからな!」
まさか勘違いしてるのではないかと念のため確認してみるが、テミッドはきょとんとした顔のままこちらを見つめてくる。そして小さく頷くのだ。
「はい、今夜の分のおやつ……です」
「そ、そうか……ならいいか?」
「まあ、そういうこったな」
俺はテミッドの胃の容量を甘く見積もってしまっていたらしい。ならまあ大丈夫か、と自分に言い聞かせることにした。
そしてその後黒羽に見つかって大分減らされていたのは言うまでもない。
それから黒羽の監視の元、色々つまみを見て回ること数分。当初カートに乗せていたものよりも大分厳選したが、それでも会計を済ませたあとは結構な量になっていた。
流石にこれを手で持って帰るのは手間だということで、黒羽の愛車たちに五重塔まで先に運んでもらうことになる。
その棚の上の辺りには、ありとあらゆるタイプのお菓子が詰め込まれたパーティー用詰め合わせセットというまさにこんなときにもってこいなものもある。
そっと手を伸ばすが、指先すら届かない。近くに踏み台か梯子かないだろうかと見渡していると、「どうした」と背後から黒羽の声が聞こえてきた。
「あ、黒羽さん丁度良いところに……! あの、あれ届く?」
「これか?」
「うん、そうそれ! ……ありがとう、黒羽さん」
ひょい、と高いところにあったお目当てのお菓子セットの袋を手にとった黒羽はそのままこちらへと渡してくれる。
遠目に見たときよりも思いの外大きいが、人数が人数だし丁度良いかもしれない。とそれを買い物カートにそっと乗せたときだった。
「お言葉ですが、伊波様。些かこの人数のつまみにしては量が多すぎる気がするんだが」
「ええ? でもほら、皆たくさん食べるし……」
「仮にも就寝前で食後だ。……それに、砂糖が多すぎる。虫歯にでもなったらどうするんだ」
「う……だって全部美味しそうだったし……」
「その徳用菓子詰め合わせを選ぶのならこの辺りの砂糖菓子は不要だ。糖分の過剰摂取になる」
「で、でも! 黒羽さんの好きそうなのも見つけたよ。ほら、この魚っぽいやつ……」
「自分の分は用意しなくていい、貴方がほしいものだけを選ぶんだ」
取り付く島もないとはこのことだろう。ひょいひょいと甘いものたちが棚に戻されていくのを見守る俺の背中にはさぞ哀愁が漂っていることだろう。
「これだけは許してください!」となんとか黒羽のためのおつまみは死守することはできたが、先程まで意気揚々とカートに乗せていた過半数のお菓子たちは棚に戻されてしまった。
そして黒羽に「買い込むのなら低カロリーのものを」と口酸っぱく怒られた俺はしおしおになりながら再び店内を見て回ることになった。
「曜。……って、あれ、なんか元気ないな。さっきまであんなに生き生きしてたのに」
「巳亦……」
「その顔、黒羽さんに怒られたのか」
黒羽と別れたあと、再び店内でカロリーが高くなさそうなものを選んでいると、向かい側から巳亦がやってくる。
そして早速図星を言い当てられてしまった俺は項垂れた。
「うん、寝る前にそんなに食うなって……」
「はは、なるほどな。黒羽さんらしいけど、テミッドの方見てきたら多分黒羽さん卒倒するかもな」
「テミッド?」
なんでだ?と小首を傾げたとき、そのまま巳亦は「ほら、あっち」と俺の背後を笑顔で指差した。
促されるがまま振り返れば、こちらへと迫ってくるのはありとあらゆる菓子を箱ごと山盛りに積んだカートだった。何事かとぎょっとしたとき、そのカートの影からひょっこりとテミッドが顔を出す。
「い、伊波様……美味しそうなの見つけました……!」
「て、テミッド! 言っておくけど一応今日だけの分だからな!」
まさか勘違いしてるのではないかと念のため確認してみるが、テミッドはきょとんとした顔のままこちらを見つめてくる。そして小さく頷くのだ。
「はい、今夜の分のおやつ……です」
「そ、そうか……ならいいか?」
「まあ、そういうこったな」
俺はテミッドの胃の容量を甘く見積もってしまっていたらしい。ならまあ大丈夫か、と自分に言い聞かせることにした。
そしてその後黒羽に見つかって大分減らされていたのは言うまでもない。
それから黒羽の監視の元、色々つまみを見て回ること数分。当初カートに乗せていたものよりも大分厳選したが、それでも会計を済ませたあとは結構な量になっていた。
流石にこれを手で持って帰るのは手間だということで、黒羽の愛車たちに五重塔まで先に運んでもらうことになる。
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