人類サンプルと虐殺学園

田原摩耶

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第四章【モンスターパニック】

12※

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 あれ、俺なにやってたんだっけ。
 そうだ、確か黒羽がアヴィドと一緒に遊戯室から出ていって、それで。
 ――それで?

「ふ、ぅ……っ」
「んー、かわいいねえ曜君。お目々とろーんってして甘くて、ふわふっわ」
「ふわふわ……?」
「そうそう、とろとろのクリーム舐めてるみたいで美味しいってこと」

 そう微笑んで、クリュエルはまた俺の唇を舐める。
 なんで俺、クリュエルに舐められてるのだろつか。
 分からないけど、なにか大切なことを忘れている気がする。
 なのに、クリュエルに抱き締められて舌ごと絡め取られると全部どうでもよくなっていってしまう。

「は、ん、ふ……っ」

 女の子みたいに可愛い格好してるクリュエルだからこそ余計、なんだかいけないことしてるみたいな気持ちになってくる。
 息継ぎでいっぱいいっぱいで、クリュエルにされるがままになっている間にあれよとビリヤード台に座らせられそうになる。

「く、りゅえる」
「ん?」
「ここ、座るところじゃないだろ……?」
「大丈夫だよ、アヴィド様もよく椅子にしてるから」

 本当なのか嘘なのか分からないが、誤魔化すようにぷちゅ、と唇を重ねられ、そのまま軽く薄皮を吸われれば頭がぼうっとしてくる。

「ほら、曜君。足開いて」
「……足?」
「僕が舐めやすいように大きく開くんだよ、出来るよね? 曜君」

 ――舐めるって、なんだ。
 そう喉元までで掛かるが、クリュエルに見つめられたらなんだかそうしなければならない気がしてくる。
 何故だかは分からない。それでも、「ほら、早く早く~」と急かすように擦り寄られれば拒むことができなかった。クリュエルにキスされながら、そのまま俺は自分の股を開く。
 クリュエルの双眼は俺の下腹部に向けられ、再びこちらを見た。

「それから? どうするんだったっけ?」
「舐め、やすいように?」
「そうだね、曜君はフェラとかしたことあるの?」
「あ、る……」

 こんなこと人に話すようなことではないと思っているのに、思考と身体が噛み合わない。
 寧ろ直接クリュエルに脳の中を覗き込まれているように嘘が吐けないのだ。
 尋ねられるがまま口にすれば、クリュエルはにんまりと笑う。

「へえ、えっちだなぁ。いいね、僕も舐めるのも舐められるのも好きだよ」
「……そうなのか?」
「うん。人間の精子は中でも格別だからね」

 ゆっくりと開いた股の間に立ったクリュエルは、俺の顔を覗き込みながらゆっくりと下腹部、制服の裾の下に隠れていたそこに手を伸ばす。

「ん、ぅ……っ!」
「キスだけで勃っちゃったんだ? 本当、かわいーなあもう、期待しちゃった?」
「クリュエルのキス、きもちい……」
「あは、素直すぎ。そんな可愛いこと言われたら僕も勃起しちゃいそう」
「ぅ、ん……っ!」

 すりすりと硬く芯を持ち始めていたそこを良い子良い子するように優しく撫でられ、全身が熱く痺れ出す。
 俺の下腹部に顔を埋めたクリュエルはそのまま下着ごと俺の下半身を脱がしてくるのだ。
 下着の下からふるりと現れる性器。必死に頭を擡げ始めているそこを見て、「曜君のここも可愛いね」と笑いながらクリュエルは根本を掴んでそのまま優しく亀頭にキスをする。
 リップ音とともに走る刺激に驚き、背筋がぴんと伸びる。

「っ、ぁ、や……っ」

 ビリヤード台の上、クリュエルに見られるのが恥ずかしくて慌てて裾を伸ばして性器を隠そうとすれば、「や、じゃないでしょ~?」とクリュエルに止められた。

「どうするんだっけ?」

 それから、耳元で囁かれる声に心臓の音が大きくなる。薄暗い遊戯室の中、ぼんやりと赤く染まった瞳から目を反らすことができなかった。
 言われるがまま足を開き、クリュエルの邪魔にならないようにそのまま両足を台に乗せる。
 大きく開脚した下半身にクリュエルは「良い子良い子」と笑い、そして引っ張られて開きかけていた肛門を柔らかく撫でるのだ。

「ぁ、……っ、う」

 あのとき、クリュエルに肛門を弄られたのは夢の中のはずだったのに。
 二本の指にぷにぷにと肛門の周りの盛り上がった肉を揉まれながら、そのままぱくりと亀頭を咥えるクリュエルに息を飲んだ。

「っ、ぁ、あ……っ!」
「ん……っ、ふふ、怖がらなくて大丈夫だよ。ほら、曜君がたくさん頑張ったからよしよししてあげるだけだからね」
「っ、ん、ぅ、……っ! そ、んなところ……っ!」
「ほら、よーしよーし」
「ぅ゛、ひ……ッ!」

 難なくねじ込まれる二本の指。まるでクリュエルの指を待っていたかのようにその挿入に全身が震え、頭の中が真っ白になる。
 痛みも違和感もなかった。恐ろしく馴染むような、引っ張られるような強引な挿入すらもこの体は喜んでいた。

「ぉ……ッ、ふー……っ、ぅ、う゛……ッ!」

 キャンディかなにかのように小さく、長い舌で亀頭をたっぷりと唾液を絡めるように嬲られながらも同時に前立腺を揉み解される。
 感じたことのない感覚に脳の髄まで甘く痺れ、尿道口から溢れる先走りをクリュエルは一滴も余さず舐め取り、「おいしー」と頬を緩ませた。

「っは、んむ……っ、ふふ、曜君って全身甘々だねえ。やっぱ、人間のが一番いいや」
「っ、く、りゅえる、まって、ま゛ッ、ぅ゛……っ!」
「ほら、ここいっぱい弄ってあげたらどんどん溢れてくるよ。ぜーんぶ搾り取ってあげるから、遠慮せずいっぱい気持ちよくなってね」

 語尾にハートが飛びそうな勢いで笑うクリュエルはそのまま亀頭にキスし、薄く長い舌を巻き付けるようにしてそのまま根本まで一気に咥えるのだ。瞬間、熱を持った粘膜に性器を飲み込まれる。どこまで入ってんのかもわからない。咥内全体を使って性器全体を愛撫され、許容範囲を越えた快感に頭の中が真っ白になっていく。

「ッ、ぁ゛ッ、う、……ッ、待っ、ぁ……っ! ぁ、や、く、ッぅ゛……~~ッ!!」

 ――どうなってんだ、これ。
 絶対苦しいだろと思うのに、クリュエルは寧ろ美味しそうに、幸福に満ち溢れた顔で人の性器を頬張っている。細っこい喉と顎で俺を咥え込み、口の中で触手のように絡みついてくる舌先に性器全体をしごかれる。
 その間も下半身を責め立てる指は止まらない。耐えられず、ビリヤード台の上に倒れ込んだ俺はそのまま更にクリュエルに責められた。

「っ、ぅ゛、ひ……ッ! も、だ、やめ、出るっ、出ちゃ……ッう、から……ッ!」

 このままじゃまずい。なにがまずいのか朦朧とした頭の中、『イッてもいいよ』と言わんばかりに前立腺を押し上げられ、がくんと大きく下半身が震えた。そして、呆気なく限界に達した俺の性器から溢れる精液。それを喉全体で受け止めたクリュエルはまるで性器をストローのように見立て、尿道に残っていた精液ごと吸い上げるのだ。

「ぁ゛、あ……ッ!!」

 射精直後、敏感になったそこを更に畳み掛けるように愛撫される。どうやら宣言通り、クリュエルは本気で俺の精液を一滴も残すつもりはないらしい。萎える暇もなく襲いかかってくる快感に身悶えてる内に、さらに中を複数の指で掻き回される。下半身が痙攣しようがそんなのお構いなしにクリュエルは行為を続行させるのだ。

「っ、ぁ゛ッ、う゛っや、また、また俺……っ!」

 激しいフェラに二本のツインテールは揺れる。堪らずクリュエルの頭を掴み、せめてフェラだけでもやめさせようとしたとき。目元にかかった水色の前髪の下、二つの目が捕食者の目をしていることに気づき、息を飲んだ。

「ぃ゛、ひ……ッ!!」

 クリュエルに舐められた箇所に甘い電流が常に流されているようだ。際限もなく重ねがけされていく快感に思考は麻痺し、止めどなく溢れる白濁混じりの体液をクリュエルは品のない音を立てて吸い上げていく。

「っ、ぁ、も、でな、い゛」
「ふ、嘘だ~。ほら、だって曜君の、まだ出した~いっ! ってぴくぴくしてるし」

「ここも、まだまだイケるよね」と、勃起した性器に引っ張られ、持ち上がった睾丸を柔らかく撫でられ、背筋が震えた。
 瞬間、クリュエルに触られた睾丸が疼く。中でなにかが蠢き、睾丸全体が重たくなっていくのを感じて恐怖すらも覚えた。
 俺はそんなに出る方じゃない。自分でも限界を感じているのに、クリュエルの言葉に反応するみたいに睾丸が精子を作ろうとしているのが分かった。

「っ、や、な、に……っ、これ、こわい……っ」
「怖くないよ~、大丈夫大丈夫。今、曜君の身体は頑張って僕のために餌を作ってくれてるんだよ。だからほら、曜君も頑張らないとね」
「ぁ、え、う……っ」
「ええ? なんで泣いてるの? 泣くほど気持ちよかった?」

 クリュエルの言葉に自分の頬を濡らすものが涙だと気付く。最早快感が強すぎて感情すらも追いついてない状況だ、おそらく生理的なものだろうけれど、これは――。

 股間から顔をあげ、ずい、と近付いてきたクリュエルの舌に、べろりと頬を舐められた。涙を舐めとられたのだとそこで気付く。
 さっきまで俺のちんこ舐めた舌で。

「あは! 曜君って涙まで美味しいんだ」
「クリュ――」

「貴様、何をしている!!」

 クリュエル、とその名前を口にしようとした矢先のことだった。いきなり遊戯室の扉が開いたかと思えば、聞こえてきたその声に脳が揺さぶられそうになった。
 扉の向こうに黒羽の姿を見つけたのも一瞬、次の瞬間にはクリュエルに斬りかかっていた黒羽。クリュエルは「げ」と露骨に嫌そうな顔をし、そして一瞬の間に姿を水色の蝙蝠に変える。そのままひらりと黒羽の刀を避けるのだ。

「うっわ、戻ってくるの早すぎ~! 今からがいいところだったのにーっ!」
「貴様、伊波様になにをしたッ!」
「何って、別に何も~? ただちょっと、約束を守ってもらっただけだもーん!」
「ふざけるな……ッ! おい、逃げる気か!」

 これは、俺はまだ夢を見てるのだろうか。
 そのまま逃げるようにパタパタと飛んでいくクリュエルを追いかけようとする黒羽だったが、ビリヤード台の上から動けなくなってる俺に気付いたようだ。こちらを一瞥し、舌打ちした黒羽はそのまま俺に駆け寄る。

「……っ、伊波様、大丈夫か」
「く、ろはさ……」

 黒羽に抱き起こされ、顔を覗き込まれる。心配そうな顔をしてる黒羽を見て、安心させなきゃと思うのに上手く舌が回らない。

「魅了の類の術か……これだから淫魔のやつは信用できないのだ」

 魅了、って、なんかゲームでもそんな効果があった気がする。
 そんなことをぼんやりと考えながら、ひくひくと震える下半身に気付いた。先程まで執拗なほどに弄くり回され、ぽっかりと口を開いたままのそこが酷くもの寂しくて。

 ぐるぐると煮えたぎるように熱くなる睾丸の中。溜まっていく精液を出したくて堪らなくて、それなのにクリュエルがいなくなってしまった今どうすることもできず、余計苦しくなる。
 考える頭もなかった。ただ、本能のままに俺は自分の下半身に手を伸ばした。

「っ、ん……っ」
「っ、伊波様、待て、なにを……」

 黒羽さんがいるけど、いるけど、止められない。今は人の目よりもこの苦しさから開放されたかった。たくさん出して、気持ちよくなりたい。
 そんな思考で塗り潰された頭の中、俺はそのまま肛門につぷりと指を挿し込んだ。

「ん、ぅ……っ、もっと、……」

 ちゅぷ、ぬぷ、と指を掻き回す。俺の指はクリュエルみたいに長くないし、どこまで指を入れたらいいのかもわからない。当たり前だ、ここを使って自慰なんてしたことなかった。

「っ、や、きもちよくない……っ」
「伊波様……っ、待ってください、すぐに術を……」

 解きますので、と肛門を弄っていた手を掴み、止められる。がっしりとした、俺よりも大きな手。前に魔界に来たばかりの頃、黒羽に犯されたときの記憶が蘇り、全身が熱くなる。
 下半身がずんと重くなるのを感じた。これだ、と思わず黒羽の手を見つめる。
 そしてそのまま俺は目の前の黒羽を見つめた。

「っ、黒羽さん……」
「伊波様、なにを……」

 そのまま黒羽の手を掴んで、自分の下半身に持っていく。強張り、離れようとする黒羽の腕。けれど相手が俺だから力加減をしてくれてるらしい、幸い振り払われることはなかった。だから俺はそのまま黒羽の手の甲に手を重ね、そのまま黒羽の指を絡めるようにして自分の下半身へと誘導した。
 ごつごつとした、自分の指とは比べ物にならない太く硬い指先。これを挿入され、前立腺をごりごり押し潰されたらと思うと考えただけでイキそうだった。

「ぁ、ん……っ、黒羽、さん……っ」
「伊波様、おやめください……っ」
「黒羽さん、挿れて……っ、前みたいに、俺のこと……めちゃくちゃにして、ください……っ」

 外聞もクソもない。
 じゃなきゃ、もどかしくて切なくて、それこそ頭がどうにかなってしまいそうだった。

「っ、伊波様……」

 ごくりと、黒羽の喉仏が上下するのを見て、酷く喉が乾くようだった。
 そのままその首筋に顔を寄せ、ねだるように舌を這わせれば、舌越しに黒羽の緊張が伝わってくる。
 そして、

「っ、貴方という方は……」

 次の瞬間、黒羽の指が閉じた肉をこじ開けるように中に侵入してきた。

「……っ、ぅ……あ……ッ!」

 求めていた感触に全身が打ち震える。まだぼんやりとした頭の中、それでも体内に挿入される複数の指に中を掻き回され、堪らず俺は黒羽にしがみついた。

「っ、黒羽さ、……っ、そこ、もっと……っ」
「……ッ、……」
「んっ、ぅ……ッ! そこ、きもち、ィ……っ黒羽さ、……ッ、ぁ、……ッ!」

 黒羽は何も言わない。何かを堪えるような険しい顔のまま、中を傷つけないように、それでも的確に俺の弱いところをシコられると堪らなく気持ちよくて、無意識のうちに腰が揺れた。
 もっと、と黒羽の腕にしがみつく。その体ごと抱き締められたまま、黒羽は更に奥まで指を挿入させるのだ。

「っ、ふーッ、ぅ、う゛……ッ! ぁ、そこ、くろはさ、ぁ……ッ、あ、ひ……――ッ!」

 長く太い指が動くだけで粘膜は摩擦され、臍の裏側を削られる。クリュエルの催淫が効いているのもあってか、普段以上に苦痛よりも倍増された快感の供給に耐え切れず、俺はそのまま呆気なく絶頂を迎えることになる。

「……ッ、は……ッ!」

 びく、と小さく震えた性器からは最早精液は出てこない。ガクガクと小刻みに痙攣起こした下半身は黒羽の指を咥えこんだまま、足を閉じることもできないまま俺は黒羽にもたれかかった。

「っ、くろ、はさ……っ、んむ……ッ!」

 そのまま名前を呼ぼうとした時、唇を塞がれる。肉厚な舌に唇を強引に割られ、咥内へと侵入してくる黒羽の舌。
 黒羽からキスされたことに驚いたが、それ以上に嬉しくて、心地よくて、そのまま黒羽の背中に腕を回そうとしたときだった。
 触れ合った舌越しに、苦い味が広がる。

「ッ、ん゛……ッ?!」

 驚いて、慌てて黒羽から顔を離そうとするが無駄だった。更に顎を咥えられたまま、喉の奥になにかを流し込まれた。
 この目を覚ますような苦味には覚えがある。いつぞやの万能薬だ。

「ん、ん゛~~っ!!」

 ぢゅぶ、と唾液を流し込まれ、そのまま喉の奥まで万能薬を飲ませられる。拒むことなどできなかった。上を向くような形で固定されたまま、俺が吐き出すのも拒否するように黒羽は唇を塞ぐ。

 ――熱くて、気持ちいいのに、苦い。とてつもなく。
 こんなこと、あっていいのだろうか。

 そして俺がごくんと薬を飲み込んだのを確認し、ようやく黒羽は舌を引き抜いた。散々咥内を舐っていた太い舌がなくなり、ぽっかりと開いた口を閉じることを忘れたまま俺は嗚咽を漏らす。

「ぅ゛、お゛え……」
「その薬を口にすれば淫魔からの催淫は落ち着くはずだ。……それまでの辛抱だ」
「く、くろはしゃん……騙した……?」
「騙しているわけではない、伊波様のためだ」
「お、俺と……そんなにえっちしたくないの……?」
「そ、そういう問題ではない……そのような言葉、貴方が使わなくていい」

 薬が効いてるのか分からないが、苦味とか諸々で頭は更にこんがらがっているようだ。もどかしくなって、俺はそのまま黒羽にしがみついた。

「っ、伊波様……っ?!」
「ん、む……っ!」

 さっきの苦い薬の仕返しだ、とその唇に顔を寄せる。キスの仕方などわからなくて、犬みたいにぺろぺろ舐めることしかできない。それでも片目だけを見開き、驚く黒羽の後ろ首に手を回し、逃げないようにしっかりとホールドしたまま唇をちゅ、と押し付けた。

「っん、む……っ、好き、好きです、黒羽さん……っ俺のこと嫌いにならないで……っ」
「っ、ま、待て、伊波様……ッ!」
「もっかい、もっかいしたい、黒羽さんときもちいこと……っ」
「伊波様……っ!」

 薬が効いて現実に戻る前に、腹に溜まっていたものを全部出したかった。そのまま黒羽の制服に手を掛け、上着を脱がそうとするが上手くいかない。あれ、どうして。そうなんだか泣きそうな気持ちになりながらガチャガチャしてると、眉間に更に深く皺を刻んだ黒羽に抱き締められた。

「っ、う、や……黒羽さん……ボタンどこ……」
「……伊波様」
「お、俺……そんなにガキなのかな」

「……黒羽さん、俺のこと興味ないのかな」性的興奮が落ち着いてきたと思えば、次にやってくるのは情緒不安定だ。クリュエルに掛けられた術のせいなのかもう分からない、けど自分がみっともない真似をしてしまったという自覚をしてしまえば不安が広がってきた。

 黒羽さん、とぽろ、目から涙が溢れたとき。黒羽に唇を塞がれた。今度はなんの薬を飲まされるのだろうか、そう身構えたが、先程のような恐ろしいほどの苦味もなにもない。ぬるりとした熱い長く舌が絡められ、そのまま喉の奥、上顎を滑って舌の付け根ごと舐られた。

「っ、ん、ぅ……ッ!」

 短いようで長い、濃厚な口づけだった。黒羽がなにを考えてるか分からなくて、それでも黒羽にまたキスしてもらえたことに心が勝手に喜んでいる。悲しい気持ちも不安もいつの間にかに薄れるほどのキスに、俺は堪らず黒羽にしがみついた。
 そして、ぢゅぷ、と濡れた音を立てて舌が引き抜かれる。はあはあと肩で息をしていると、至近距離で黒羽に見つめられるのだ。

「……興味などなければ、とっくに貴方のことを抱き潰してる」

「そんなことも分からないのか」そう、頬に手を添えられたまま真っ直ぐに覗き込まれる目に心臓が止まりそうになった。

「く、ろは……しゃ……」

 一瞬、何を言われたのか分からなかった。
 唖然と目の前の黒羽を見上げたとき、顔を手で押さえた黒羽はそのまま、はあ、と大きな溜息を吐く。

「全てはあの淫魔のせいだとしても、貴方にここまで溜め込ませたことについては自分にも否はある」

 ――認めよう、とその唇は動いた。
 そして、伸びてきた手に頬を撫でられる。そのまますり、と硬い掌全体で撫で上げられ、前髪をかき上げられた。
 照明の明るさに思わず目を閉じたとき、視界が陰った。こちらを覗き込む黒羽の視線が絡む。あのときとは違う、いつもの黒羽だ。

「っ、ぅ、あ……っ」
「――こうなってしまった責任は、取る。……しかし、貴方も貴方です。伊波様」
「く、ろはさ……ん、む……っ」

 近付く黒羽に思わず背伸びしてキスしようとしたとき、そのまま顎を掴まれ、唇を塞がれた。
 熱い、熱くて蕩けてしまいそうだ。
 ――俺、黒羽さんのこと怒らせてるのに、気持ちよくなってる。どうしよう。
 そんなことを考えながらも、噛み付くようなキスに何も考えられなかった。黒羽さん、とその背中に腕を伸ばし、目の前の黒羽に擦り寄る。
 制服越し、黒羽の体が硬直するのが分かった。

「……っ、伊波様」
「おれ、怒らないよ……っ、黒羽さんになら、なにされてもいいから……」

 そう呟いた瞬間、黒羽の額にびきりと青筋が浮かぶのが見えてしまった。あ、と思った次の瞬間、伸びてきた大きな手に腿を掴まれる。

「っ、黒羽さ……っ、ん、……ッ! う……ッ!」
「……ッ、貴方は、本当に酷い人だ」

 ビリヤード台の上、そのまま大きく脚を開かされる。今の俺に羞恥心というものはなかった。黒羽たちにいじられ、口を開いたそこからとろりと体液が溢れた。
 そのまま俺の下腹部に顔を寄せた黒羽。なにをされるのか一瞬分からなくて、痺れる頭の中黒羽の頭を見ていたときだ。

「っ、ん、う……ッ!」

 下腹部、開いた肛門に這わされるにゅるりとした舌先に下半身が震えた。驚いて視線を下げれば、黒羽が俺の尻の穴を舐めているではないか。

「っ、く、ろはさ……っ、そ、そこ……ッ、ぉ……ッ!」
「……っ、何か問題でもあるか?」
「き、たない……っ、」
「伊波様の体で汚いところなんてあるわけないだろ」

 即答だ。そう言って、俺の肛門を広げ、更に奥の肉の壁を掻き分けて突き進んでくる舌に全身が甘く痺れる。

「っ、ぁ……ッ、ん、う……ッ!」

 や、やばい、これ……なにも考えられなくなる。
 肉厚な舌先に掻き回され、際際までねっとりと舐られる。黒羽の髪や鼻先が当たるのがこそばゆくて、粘膜同士が擦れるたびにぐぢゅ、と濡れた音が腹の奥で響き渡るのだ。

「っ、は……っ、ぁ、く、ろはさ……ッ、ぁ……っ!」

 夢を見てるような感覚だった。あの黒羽さんが、俺のお尻を舐めてる。
 それも、あのときとは状況は違う。今は黒羽はちゃんと意識もあって、俺は……。

 生き物かなにかのように蠢く舌に肛門の中を執拗に犯され、あっという間に絶頂まで高められる。それでも普段のような射精感もなく、性器の先っぽがじんじんと熱が溜まったように熱くなる。
 先走りに混じってとろとろと溢れ出す精液はそのまま萎えない性器を伝い、睾丸まで落ちていくのだ。それに気付いた黒羽は一旦舌を抜き、それを舐めとる。そのまま睾丸から性器まで、滴る体液ごと舐られれば「うう゛――~~っ」と思わず動物のような声が漏れてしまった。

「っ、くろ、はしゃ……っ」
「……っ、は、甘いな」
「ぁ、あ……っ、く、ろはさんも、おれ……っ」

 黒羽さんにもする、と黒羽の下半身に手を伸ばそうとして、黒羽に手首を取られた。
 またいつものように『そんなことしなくていい』と怒られるのだろうか、とびくついたときだった。黒羽はそのまま俺の手を握る。

「くろは、さ……――」

 どうしたのだろうか、と思った時だった。
 もう片方の手で自分の下半身に手を伸ばした黒羽は、そのままベルトを緩める。その下から勢いよく溢れたその性器に、思わず目を見張った。

「わ、ぁ……っ」
「……っ、そんなに見るな」

「だって、黒羽さん……っ、ん、ふふ、俺でおっきくなってくれたんだって思ったら……っ」

 逃げようとしない黒羽に嬉しくなって、俺は黒羽と手を繋いだまま目の前に反り立つ性器に顔を寄せる。あんだけ怖かったはずの黒羽の性器が、今はただ愛しくて堪らない。
 照明に照らされ、ドクドク脈打つ血管をまとわりつかせて硬くなったそれは相変わらず大きい。俺の頭より大きいのではないかと頬を擦り寄せれば、「伊波様」と黒羽の声が僅かに上ずった。

「……っ、可愛い、黒羽さん」
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