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第三章【注文の多い魔物たち】
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リューグを探しに行ったクリュエルを見送るアヴィドだったが、すぐに「さて」とこちらを振り返る。
「俺達もそろそろ行くか」
「は……はいっ!」
どこへ行くのかは知らないが、とにかく今はアヴィドに着いていって間違いはないだろう。「元気がいいな」とアヴィドに褒められてなんだか嬉しくなりながらも俺達は一度ホールへと戻ることになる。
相変わらず空気が悪いホールの中。
何度も来ても慣れないな……。どぎまぎしながらもアヴィドから離れないようについていく。
それでもやはり悲しきかな足の長さの差というのは埋められない。遅れそうになり小走りになる俺に気付いたアヴィドがこちらを振り返った。
「すまないな、早かったか」
「す、すみません……すぐに……」
着いていきます、と小走りで駆け寄ったとき。アヴィドに肩を抱かれる。
顔が近くなりぎょっとする俺に、「これなら大丈夫か?」と涼しい顔して聞いてくるのだ。
「は、は……はい……っ!」
「手を繋いだ方がいいなら繋ぐが」
「だ、大丈夫ですっ!」
この人、巳亦レベルで距離感が近い。けど、圧倒的に巳亦と違うのは多分この人の場合は俺のことを子供扱いしてるからだろう。
まるで小さい子を相手にしてるかのように目線まで合わされると正直別の意味で恥ずかしい。
それにしても、肩に置かれた手はひんやりとしていて冷たい。
「まあいい。……それにしても、ヴァイスのやつの姿が見当たらないな」
言いながら辺りを探るアヴィド。俺からしてみればどこに誰がいるかどころか、人影がぼんやりと見えるくらいなのによくわかるものだと感心する。
ちらりと店内へと目を向けた俺は、バーカウンター越しに見覚えのある巨体を見つけた。
あれは確か、テミッドを連れて行った……!
「アヴィドさん、あそこ……バーのところにいるあの大きいやつ、俺の友達を連れて行ったやつです!」
「……あいつが」
そう、アヴィドが呟いたとき。俺の肩を抱いていたアヴィドの指先が動いた。
「……?」
「よし、移動するぞ」
「え、あの……もういいんですか?」
「ああ。俺の一部を埋め込んできた。あいつの動きはこちらから完全に掌握できる。……あとは泳がせるだけだ」
「……う、うめ……?」
「要するにあいつも俺の体の一部になるということだ」
サラリと言ってのけるアヴィドだが、それって相当すごいことなんじゃないか。
震える俺に構わず、アヴィドは「そこに座ろう」と俺の体を抱き寄せてくる。そして俺達はバーカウンターの見える二人がけのソファーに腰を下ろしたのだ。
そして、ふいにカウンターから先程の大男――確か、レモラとかいう無骨なウエイターがやったきた。その手にはトレーと二人分のグラス。それを受け取ったアヴィドは「悪いな」と笑うのだ。レモラは一礼して立ち去る。
「感度はよさそうだ」
「今のって……」
「ああ、試しに俺の好きな酒を入れさせた。……少年もどうだ?」
「え、あの……俺は……その……まだ、飲めないので……」
「苦手なのか?」
「苦手というよりも、その法律で……」
自分で口にして、この世界にはそのような法律が存在してるかどうかすらわからないことに気付いた。アヴィドは、「ああ、そういうことか」と笑った。
「ここは魔界だ。一口ぐらいなら構いやしないだろう?口に合わなければ無理しなければいい」
悪い大人に誘われてる気分だ。こんなことしててもいいのだろうかという気持ちもあったが、アヴィドがこうして勧めてくるというのは逆にもう大丈夫だということなのかもしれないし……。
それに、せっかくアヴィドが用意してくれた酒だ。……正直、断ったときの反応が怖いというのが本音だ。悪い人ではないと思いたいが、人間とはまるで思想も何もかも違う。
「じゃあ、一口だけ……」
黒羽に怒られるだろうな、と思いながらもグラスを受け取った。真っ赤な液体が注がれたそれに鼻を近付ける。……お酒の匂い。ワインというやつか、実際に飲むのは初めてだ。俺は一口だけ飲んだ。……巳亦も怒るかな。なんて思いながら。
瞬間、口の中いっぱいに広がるアルコールの味に目眩を覚える。お酒が通ったあとがじんじんと熱く痺れるのだ。俺でもわかる、相当強いやつだ、これ。
「っ、う……」
「どうだ?」
「お、おいひい……れす……」
「そうか、少年はいい舌を持ってるようだな。ならば他にも用意させよう」
「へ……」
待ってくれ、社交辞令だ。という俺の言葉も聞かずにアヴィドの呼びかけで二杯目のグラスがやってきた。正直、一口でやばい。頭がぐわんぐわん揺れる。そんな液体をアヴィドは涼しい顔をして飲むのだ。
「次は白だ。……先程よりも度数は強いが、先程の代物の味がわかる君の口ならばきっと合うだろうな」
「は、はひ……」
やばい、世界が回り始めてる。グラスを握らされるがまま口に運ぶ。でも、確かに美味しい……気がする。わからない。けど、きっと美味しい。液体が浸った舌は焼けるように熱くなり、酷く喉が乾くのだ。一口飲んだだけで限界だった。
落とす前にグラスをテーブルの上に置けば、「少年?」とアヴィドの声が響いた。
「やはり強かったか?」
「……ら、いじょぶ……れ……ふ……」
「すごい顔が赤くなってるぞ。ほら、水だ」
「っ、ん、ぅ」
どうやら水を用意してくれたらしい。グラスを唇に押し付けられ、そのまま傾けられる。こくこくと喉の奥に冷たい感触が流れていくのは酷く気持ちいい。
「……っぷは」
「もう一杯飲むか?」
小さく頷き返せば、アヴィドは近くにいたスタッフを呼び止める。ぼんやりと揺れる視界。やばい、焦点が定まらない。グラグラと頭が揺れ、熱が喉から腹の奥、そして全身へと広がっていく。
熱い……。思いながら、着ていた制服の前を開けようとしたときだ。
「……曜?!」
「あ……あへ……みまひゃ……?」
おかしいな、俺も相当酔っているのだろうか。
目の前に何故か、ウエイター服の巳亦がいる……。しかも声まで本物によく似てるなんて、流石魔界のワインだ。
「アンタ、曜に何やってんだよ……!」
「何って……見てわからないか。こんなに美味いものを飲んだことがないと言うから飲ませていただけだ、お前こそ何だ?」
俺の頭の上の辺りで二人の声が響く。
暗がりの中現れた巳亦の幻に感動する反面、なんで制服着てるんだろ?とふわふわとした頭の中で疑問が芽生える。
「ああ、なるほど。お前が少年の言っていた『お友達』か」
「……っ、どういうことだ、なんでアンタが曜と……おい、曜、寝ぼけてないで説明しろ」
「んぇ? ……夢、じゃない……?」
「何言ってるんだ。ほら……あーあ、水は……おい、水持ってきてくれ」
「こら、しっかりしろ」と巳亦に頬を撫でられる。ひんやりとした冷たい手が気持ちよくてつい頬ずりをしようとしたとき、「曜」と声が落ちてきた。
「みまた……夢なのにみまたが撫でてる……」
「夢の中の俺は撫でてくれないのか?」
「んぇ……?」
すり、と頬を柔らかく撫で上げられそのまますっと目の縁を擽られ、思わず目を細めたとき。耳元に唇の柔らかい感触が触れた。そして、「起きろ、曜」と囁きかけられた瞬間、その吐息にぞくりと背筋が震えた。
そして確信した。やっぱり、本物の巳亦だ。
そうだ俺、アヴィドさんにお酒飲まされて……それで。
「少年は過保護な友達がいてさぞ窮屈だろうな。たかだか飲酒くらいでそう目くじらを立ててやるな」
「はぁ……?」
「みまた……アヴィドさん、喧嘩は……」
やめてください、とまだ回らない舌で止めに入ろうとしたとき。アヴィドは肩を竦めて笑う。
「ああ、心配しなくてもいい。これは喧嘩じゃない。ただ、この男がどうやらお前のことを心配しているようだ」
いきなり、巳亦から引き離すようにアヴィドに肩を抱き寄せられる。酒気で火照った頬を指で撫でられれば、巳亦よりも冷たい、まるで氷のような指先に思わず「ひっ!」と飛び上がりそうになった。
何事かと顔を上げれば、アヴィドはただ愉快そうに笑みを深くする。そして、アヴィドの手はすぐに巳亦に振り払われた。
「おい、ちょっと距離が近過ぎないか? ……というか、こんな幼い子供に魔界の酒を飲ませるなんて考えられないな」
「そう喚くな。俺はお前と同じように彼に接しただけだぞ? ……親しみをもってね」
「あ、あの……ふ、二人とも……」
やばい、なんか険悪な雰囲気だ……!
というよりもアヴィドが巳亦をからかって遊んでいるようにすら思える。
アヴィドの言葉に、こちらを見た巳亦に俺はびくっと姿勢を正した。目が据わってる。
「……曜、」
「は、はひ……っ!」
「酒は飲むなとあれほど忠告しただろう」
「ご、ごめんなさい……」
「……まあ、今回は悪い大人に唆されたということで多目に見てやるけど、今度からは気をつけろよ」
「もしかしてその悪い大人というのは俺のことか?」
アヴィドを無視して「具合は大丈夫か?」と聞いてくる巳亦にこっちもヒヤヒヤだ。
巳亦の様子がおかしい。……前々からおかしいと思っていたが、俺の知ってる巳亦はもっと大人で穏やかで……と思ったが、そうでもなかった。
「……目の奥が熱くて、ぐらぐらする」
「だろうな。ほら、水だ」
「ん、水……」
用意された水の入ったグラスを手には俺の前へと立つ巳亦。
冷たい水、飲みたい……。そう唇を「ん」と突き出し水を強請れば、あろうことか巳亦はグラスに口づけそのままぐいっと飲み干す。
「えっ? ……――んむっ」
なんで飲んだんだ!と驚くよりも先に、酔いの冷めない俺の唇に口付けてくる巳亦。
一瞬の出来事だった。巳亦はそのまま水を口移しで流し込んでくる。
「俺達もそろそろ行くか」
「は……はいっ!」
どこへ行くのかは知らないが、とにかく今はアヴィドに着いていって間違いはないだろう。「元気がいいな」とアヴィドに褒められてなんだか嬉しくなりながらも俺達は一度ホールへと戻ることになる。
相変わらず空気が悪いホールの中。
何度も来ても慣れないな……。どぎまぎしながらもアヴィドから離れないようについていく。
それでもやはり悲しきかな足の長さの差というのは埋められない。遅れそうになり小走りになる俺に気付いたアヴィドがこちらを振り返った。
「すまないな、早かったか」
「す、すみません……すぐに……」
着いていきます、と小走りで駆け寄ったとき。アヴィドに肩を抱かれる。
顔が近くなりぎょっとする俺に、「これなら大丈夫か?」と涼しい顔して聞いてくるのだ。
「は、は……はい……っ!」
「手を繋いだ方がいいなら繋ぐが」
「だ、大丈夫ですっ!」
この人、巳亦レベルで距離感が近い。けど、圧倒的に巳亦と違うのは多分この人の場合は俺のことを子供扱いしてるからだろう。
まるで小さい子を相手にしてるかのように目線まで合わされると正直別の意味で恥ずかしい。
それにしても、肩に置かれた手はひんやりとしていて冷たい。
「まあいい。……それにしても、ヴァイスのやつの姿が見当たらないな」
言いながら辺りを探るアヴィド。俺からしてみればどこに誰がいるかどころか、人影がぼんやりと見えるくらいなのによくわかるものだと感心する。
ちらりと店内へと目を向けた俺は、バーカウンター越しに見覚えのある巨体を見つけた。
あれは確か、テミッドを連れて行った……!
「アヴィドさん、あそこ……バーのところにいるあの大きいやつ、俺の友達を連れて行ったやつです!」
「……あいつが」
そう、アヴィドが呟いたとき。俺の肩を抱いていたアヴィドの指先が動いた。
「……?」
「よし、移動するぞ」
「え、あの……もういいんですか?」
「ああ。俺の一部を埋め込んできた。あいつの動きはこちらから完全に掌握できる。……あとは泳がせるだけだ」
「……う、うめ……?」
「要するにあいつも俺の体の一部になるということだ」
サラリと言ってのけるアヴィドだが、それって相当すごいことなんじゃないか。
震える俺に構わず、アヴィドは「そこに座ろう」と俺の体を抱き寄せてくる。そして俺達はバーカウンターの見える二人がけのソファーに腰を下ろしたのだ。
そして、ふいにカウンターから先程の大男――確か、レモラとかいう無骨なウエイターがやったきた。その手にはトレーと二人分のグラス。それを受け取ったアヴィドは「悪いな」と笑うのだ。レモラは一礼して立ち去る。
「感度はよさそうだ」
「今のって……」
「ああ、試しに俺の好きな酒を入れさせた。……少年もどうだ?」
「え、あの……俺は……その……まだ、飲めないので……」
「苦手なのか?」
「苦手というよりも、その法律で……」
自分で口にして、この世界にはそのような法律が存在してるかどうかすらわからないことに気付いた。アヴィドは、「ああ、そういうことか」と笑った。
「ここは魔界だ。一口ぐらいなら構いやしないだろう?口に合わなければ無理しなければいい」
悪い大人に誘われてる気分だ。こんなことしててもいいのだろうかという気持ちもあったが、アヴィドがこうして勧めてくるというのは逆にもう大丈夫だということなのかもしれないし……。
それに、せっかくアヴィドが用意してくれた酒だ。……正直、断ったときの反応が怖いというのが本音だ。悪い人ではないと思いたいが、人間とはまるで思想も何もかも違う。
「じゃあ、一口だけ……」
黒羽に怒られるだろうな、と思いながらもグラスを受け取った。真っ赤な液体が注がれたそれに鼻を近付ける。……お酒の匂い。ワインというやつか、実際に飲むのは初めてだ。俺は一口だけ飲んだ。……巳亦も怒るかな。なんて思いながら。
瞬間、口の中いっぱいに広がるアルコールの味に目眩を覚える。お酒が通ったあとがじんじんと熱く痺れるのだ。俺でもわかる、相当強いやつだ、これ。
「っ、う……」
「どうだ?」
「お、おいひい……れす……」
「そうか、少年はいい舌を持ってるようだな。ならば他にも用意させよう」
「へ……」
待ってくれ、社交辞令だ。という俺の言葉も聞かずにアヴィドの呼びかけで二杯目のグラスがやってきた。正直、一口でやばい。頭がぐわんぐわん揺れる。そんな液体をアヴィドは涼しい顔をして飲むのだ。
「次は白だ。……先程よりも度数は強いが、先程の代物の味がわかる君の口ならばきっと合うだろうな」
「は、はひ……」
やばい、世界が回り始めてる。グラスを握らされるがまま口に運ぶ。でも、確かに美味しい……気がする。わからない。けど、きっと美味しい。液体が浸った舌は焼けるように熱くなり、酷く喉が乾くのだ。一口飲んだだけで限界だった。
落とす前にグラスをテーブルの上に置けば、「少年?」とアヴィドの声が響いた。
「やはり強かったか?」
「……ら、いじょぶ……れ……ふ……」
「すごい顔が赤くなってるぞ。ほら、水だ」
「っ、ん、ぅ」
どうやら水を用意してくれたらしい。グラスを唇に押し付けられ、そのまま傾けられる。こくこくと喉の奥に冷たい感触が流れていくのは酷く気持ちいい。
「……っぷは」
「もう一杯飲むか?」
小さく頷き返せば、アヴィドは近くにいたスタッフを呼び止める。ぼんやりと揺れる視界。やばい、焦点が定まらない。グラグラと頭が揺れ、熱が喉から腹の奥、そして全身へと広がっていく。
熱い……。思いながら、着ていた制服の前を開けようとしたときだ。
「……曜?!」
「あ……あへ……みまひゃ……?」
おかしいな、俺も相当酔っているのだろうか。
目の前に何故か、ウエイター服の巳亦がいる……。しかも声まで本物によく似てるなんて、流石魔界のワインだ。
「アンタ、曜に何やってんだよ……!」
「何って……見てわからないか。こんなに美味いものを飲んだことがないと言うから飲ませていただけだ、お前こそ何だ?」
俺の頭の上の辺りで二人の声が響く。
暗がりの中現れた巳亦の幻に感動する反面、なんで制服着てるんだろ?とふわふわとした頭の中で疑問が芽生える。
「ああ、なるほど。お前が少年の言っていた『お友達』か」
「……っ、どういうことだ、なんでアンタが曜と……おい、曜、寝ぼけてないで説明しろ」
「んぇ? ……夢、じゃない……?」
「何言ってるんだ。ほら……あーあ、水は……おい、水持ってきてくれ」
「こら、しっかりしろ」と巳亦に頬を撫でられる。ひんやりとした冷たい手が気持ちよくてつい頬ずりをしようとしたとき、「曜」と声が落ちてきた。
「みまた……夢なのにみまたが撫でてる……」
「夢の中の俺は撫でてくれないのか?」
「んぇ……?」
すり、と頬を柔らかく撫で上げられそのまますっと目の縁を擽られ、思わず目を細めたとき。耳元に唇の柔らかい感触が触れた。そして、「起きろ、曜」と囁きかけられた瞬間、その吐息にぞくりと背筋が震えた。
そして確信した。やっぱり、本物の巳亦だ。
そうだ俺、アヴィドさんにお酒飲まされて……それで。
「少年は過保護な友達がいてさぞ窮屈だろうな。たかだか飲酒くらいでそう目くじらを立ててやるな」
「はぁ……?」
「みまた……アヴィドさん、喧嘩は……」
やめてください、とまだ回らない舌で止めに入ろうとしたとき。アヴィドは肩を竦めて笑う。
「ああ、心配しなくてもいい。これは喧嘩じゃない。ただ、この男がどうやらお前のことを心配しているようだ」
いきなり、巳亦から引き離すようにアヴィドに肩を抱き寄せられる。酒気で火照った頬を指で撫でられれば、巳亦よりも冷たい、まるで氷のような指先に思わず「ひっ!」と飛び上がりそうになった。
何事かと顔を上げれば、アヴィドはただ愉快そうに笑みを深くする。そして、アヴィドの手はすぐに巳亦に振り払われた。
「おい、ちょっと距離が近過ぎないか? ……というか、こんな幼い子供に魔界の酒を飲ませるなんて考えられないな」
「そう喚くな。俺はお前と同じように彼に接しただけだぞ? ……親しみをもってね」
「あ、あの……ふ、二人とも……」
やばい、なんか険悪な雰囲気だ……!
というよりもアヴィドが巳亦をからかって遊んでいるようにすら思える。
アヴィドの言葉に、こちらを見た巳亦に俺はびくっと姿勢を正した。目が据わってる。
「……曜、」
「は、はひ……っ!」
「酒は飲むなとあれほど忠告しただろう」
「ご、ごめんなさい……」
「……まあ、今回は悪い大人に唆されたということで多目に見てやるけど、今度からは気をつけろよ」
「もしかしてその悪い大人というのは俺のことか?」
アヴィドを無視して「具合は大丈夫か?」と聞いてくる巳亦にこっちもヒヤヒヤだ。
巳亦の様子がおかしい。……前々からおかしいと思っていたが、俺の知ってる巳亦はもっと大人で穏やかで……と思ったが、そうでもなかった。
「……目の奥が熱くて、ぐらぐらする」
「だろうな。ほら、水だ」
「ん、水……」
用意された水の入ったグラスを手には俺の前へと立つ巳亦。
冷たい水、飲みたい……。そう唇を「ん」と突き出し水を強請れば、あろうことか巳亦はグラスに口づけそのままぐいっと飲み干す。
「えっ? ……――んむっ」
なんで飲んだんだ!と驚くよりも先に、酔いの冷めない俺の唇に口付けてくる巳亦。
一瞬の出来事だった。巳亦はそのまま水を口移しで流し込んでくる。
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