強制補習ヘドニズム

田原摩耶

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エリア1・始まりの町

02※

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「っあなたって人は……っ」

 目の前で、しかも自分の恥体を見られながら自慰をされるのはなかなか気持ちがいいものではなく、込み上げてくる慣れない感情とともに佐藤は顔が熱くなるのを感じた。

「お前が舐めてくんねーから」

 伯万は笑い、ゆっくりと、そして徐々に強弱を付けて自身を擦り上げる。
 自らの手を汚し性器を擦り上げ刺激する伯万の性器から目を逸らし、ぎゅ、と佐藤は目を瞑った。しかし、耳は塞げない。
 濡れた音が、肛門を出入りする性器が、加えられるもの全ての感覚に全身を嬲られる。佐藤は気が気ではなかった。

「っ、君ってなんでもありなんだね」
「臨機応変で順応的って言ってくんねえかな」

 自分を挟んで交わされる会話を聞き流しながら、佐藤は乱れる回路を必死に繋ぎ止める。
 因幡はともかく、なぜ、自分がこのような乱交じみた行為に参加しなければならないのか。
 どうすればこの目の前の性欲の塊を退かすことが出来るのか。しかし、答えはでない。
 因幡はまだイかないのかとシーツをぎゅっと握り締め、揺れる腰に走る甘い刺激にぞくぞくと背筋を震わせる佐藤。ふと、その唇に肉のような感触が触れた。

「佐藤さん」

 名前を呼ばれ、結んだ唇に繊細な指先が触れた。静かな声。三十三だ。

「口、開けてください」

 口を閉じ、鼻で呼吸をしていた佐藤はすぐに唇に擦り付けられるそれがなんなのか理解する。
 先端からぬるりとした液体が唇を濡らし、独特の青臭さに佐藤は顔を逸らした。

「佐藤さん」
「っ、んぅ」

 再度名前を呼ばれ、今度は鼻を摘まれる。息の根を止められそうになり、つい反射で佐藤は口を開いた。
 これ見よがしにその小さな唇に性器を捩じ込んでくる三十三。咥内いっぱいいっぱいに性器を咥えさせられる佐藤は目を見開き、目の前の三十三を睨むように見上げた。
 やっぱり三十三はやる気のなさそうな顔をしており、そのくせ性器だけは強く主張し、三十三の腰を掴み口の中のそれを吐き出そうとする佐藤の手首を掴めばもう片方の手で佐藤の頭を自らの下腹部に押し付ける。佐藤の咥内を犯す性器は喉奥を突き上げた。

「っぅ、ぐ」

 圧迫され、不快感にもがく佐藤。そんな佐藤を見下ろしながら三十三は優しく佐藤の髪を撫で付ける。
 そして、嗚咽で締まる喉の感触を味わうかのように三十三はゆっくりと腰を前後させた。

「は、なに、お前、ずるい」
「伯万さんはオナニーが好きなんでしょう。どうぞそちらで続けて下さい」
「んっ、ふぐ、ぅうッ」
「いやいやいや、意味わかんねーししゃぶらせるんなら代われよ!」
「残念ですが一人用なので」
「こっちも満員だしね」

 前後からのピストンにえずく佐藤に構わず因幡と三十三は顔を合わせるなり「ねー」と声を揃えた。

「知るかよ、ずるいんだよお前らばっかり! おい因幡お前いつまでやってんだよさっさと代われこの遅漏」
「えー、無理無理。だって健太くんてば僕の咥えて離さないんだもん」
「伯万さん、往生際が悪いですよ」
「いいとこばっか持っていくてめえには言われたくねーよ!」

 ぎゃあぎゃあと揉め始める補習生たちの声に耳を傾ける佐藤。
 騒がしい。
 ひたすら息苦しく、頭が可笑しくなりそうなくらいの刺激で朦朧としていた佐藤は少なからず色気の欠片もない三人の会話に気を散らされ冷静を取り戻しかけていた。
 取り敢えず、ここは手っ取り早く三十三をイかせるべきか。
 思いながら、震える腰に力を入れ口いっぱいに頬張った溢れる自分の唾液と先走りでどろどろになった性器をぺろぺろと舐める。
 テクニックも実績もない佐藤にとって唯一の頼りは予めインプットされた知恵という名のデータだけで、それを元に佐藤は拙い動きで三十三の性器を刺激した。

「っ、佐藤さん」

 喉奥を絞め、咥内を這いずるように挿入される性器に浮かぶ筋をなぞる。
 じゅぶじゅぶと咥内で唾液が泡を立て、口の中のそれがさらに膨張するのがわかった。

「は……っ」

 ぞくり、と僅かに頬を紅潮させた三十三が背筋を震わせるのがわかった。
 瞬間、口の中の性器が大きく跳ね、喉奥へと直接精液を注がれる。

「うっぷ、」

 口いっぱいに吐き出される精液に耐えられず、頬を膨らませ真っ青になった佐藤。
 口の中のそれを吐きだそうと三十三の腰を掴むが、佐藤の頭を掴んだ三十三はそのまま自身に抱き寄せた。
 深く、喉奥をえぐられ、嗚咽した佐藤の唇からぼたぼたと精液が溢れる。

「んぶ、ぅ、んんっ」

 息苦しさに喘ぐ。
 吐きだそうと口の中で舌を動かせば、その感触を楽しむかのように三十三はさらに腰を動かしてきた。

「人口知能でも、苦しいんですか 」
「人工知能である彼にとってこの世界はリアルに等しいからね。加えられた危害はそれなりのダメージになってくるはずだよ」
「分かっててやってるんだから、お前相当性格悪いよな」
「心外だな。僕はちゃんと彼の体調や能力を重視した上で手加減してるんだよ。それに、君たちよりかは性格はいいと自負してるよ」

 どの口がモノをいうのだろうか。
 いけしゃあしゃあと言葉を並べる因幡に突っ込まずにはいられなかったが、物理的に突っ込まれている佐藤の言葉はくぐもり、届かない。

「っぐ、んんぅ」

 じゅぷじゅぷと突かれる度に口の中で泡立てるそれの苦しさは想像以上のものだった。
 顎を掴まれ、無理やり精液を飲みされそうになる。
 口いっぱいに頬ばったそれはまた大きくなった。
 水の中でもないのにまるで溺れているような感覚に陥る佐藤。
 口の中の精液のせいで増えた体内の水分を減らそうとしているのか、全身からは汗がどっと溢れ、気が付いたら佐藤の顔は涙と鼻水でドロドロに汚れていた。

「よっぽど苦しいのかな。すごい健太君の体、力んでる」

「そろそろ、やばいかな」浅く、息を吐き出す因幡は浮かべま笑を僅かに強張らせ、呻く。
 そして、逃げるように前のめりになっていた佐藤の腕を掴み、腰を大きく打ち付けた。

「、っ!」

 瞬間、大きく体内を突き上げられた佐藤の全身の筋肉は硬直する。
 その拍子に体内の因幡のものを大きく締め付けてしまったらしい。性器の血流は加速し、熱と硬度を増した。
 そして、

「っ、は、ごめんね……っ」

 肺の空気とともに絞り出すような因幡の言葉。
 そしてすぐ、最奥で膨れあがった熱が勢いよく吐き出された。

「んっ、んんむっ!」

 体内に注がれる熱にゾクゾクと背筋が震えた。
 因幡の熱に当てられ、既にぐずぐずになっていた体内は既に限界に近く、押し寄せてくる熱を堪えるほどの気力も残されていなかった。
 ジャージの裾から覗く、勃起した佐藤の性器から勢いよく精子が押し出された。
 ぼたぼたとシーツを汚す白濁。

「……っその顔、やべぇって」

 乾いた唇を舐め、吐き捨てるように呟いた伯万は自身を擦る手を早める。
 体力を振り絞った射精したあとのぼんやりとした意識の中、口の中の三十三のものがまた大きくなった。
 いつまで、この人達の相手をすればいいのだろうか。
 長時間の性行為に予想以上の早さで消費するバッテリーに、このままでは充電する暇もなく人形遊びにつき合わされてしまう。
 飽きたらすぐ開放してくれるだろうと思っていたが、この調子なら自分がバッテリー切れになっても開放されなさそうな気がして仕方がない。
 頭の中に組み込まれたプログラムではそう危機感を感じていたが、肝心の本体はバグ(恐らく出会い頭因幡に誤作動食らったシステムの稼働が原因だろう)に侵され制御不可能状態に陥っている。
 このままでは、と口癖のように佐藤が脳裏で思案の言葉を繰り返し、伯万が人の横顔に勃起したそれを向けてきた時だ。
 部屋の扉が開くのと、膨張した伯万の性器が小さく痙攣し、勢いよく飛び出した熱い精子が佐藤の横顔を汚したのはほぼ同時だった。
 ぼんやりとした頭の中。何気なく眼球を動かして開いた扉へと目を向ければ、

「なっ、何やってんだお前ら!! 人の部屋でっ!!」

 顔を真っ赤にし、怒り諸々に肩を震わせる頸城万里の姿に「あ、忘れてた」と因幡樂は呟いた。

 それから、時間はあっという間に過ぎていった。
「てめえの顔見たせいで萎えただろうが」と理不尽な逆ギレをする伯万にヒートアップした頸城が掴み合いの大喧嘩に発展し、どさくさに紛れて「じゃあ僕はそろそろ寝ようかな」と部屋を出ていった因幡に、「お腹減りましたね。一緒にラウンジ行きませんか」と佐藤を誘ってくる三十三だったが、とにかく体力を補給したかった佐藤は一人になることを選んだ。

 時間が経てば喧嘩も収まり、静かな夜は明ける。
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