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エリア1・始まりの町
02
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『パーティーメンバーのレベルが5に上がりました』
どこからともなく聞こえてくる、性別不明の機械音声。
その言葉に三十三と因幡は「いえーい」と手を合わせた。
「いえーいじゃねえよ。なんだよそれ、ミトちんはともかくお前らまともに戦ってねーじゃん」
「まあまあ、いいじゃん。一石二鳥ってことで」
「というか因幡、お前首どうしたんだよ、首」
「健太くんから薬草貰っちゃった」
言いながら、全快した因幡樂は自らの首を撫でヘラリと笑う。
そこには生々しい傷跡が残っているわけでもなく、文字通り無傷の状態だった。
「すげえな薬草」そう素直に感心する伯万。
それと同時にここが誰かの作り上げた空想世界だということを思い出す。
第一エリア、森の広場。
先程までところどころ焼け焦げ、血や獣の匂いが漂っていたそこはなにもなかったように平然としており、倒したモンスターの死骸も跡形もなく消えてしまった。
やはりゲームと言うべきか、感傷に浸らせる暇すら与えてくれない。
「薬草と言えば、なんか宝箱見付けたんですが」
そして、そんな世界が珍しいのか辺りをキョロキョロ探索していた三十三はそう言いながら広場の奥を指さした。
つられて視線を向ければ、確かにそこにはよくある金の装飾が施された宝箱がどっしりと置かれている。それに反応したのは佐藤だった。
「モンスターを倒すとアイテムや賞金が貰えるようになっています。伯万さん、開けてみて下さい」
草むらを掻き分けるように置かれた宝箱の側に立つ佐藤に、指名された伯万はあからさまに嫌そうな顔をする。
「またなんか化け物出てこないよな」
「嫌なら見なくても構いませんよ、非常に勿体ないですが」
「はいはい、開けりゃいいんだろ、開けりゃ」
挑発的な佐藤の言葉にむっとしながらも宝箱に歩み寄った伯万はそのまま宝箱の蓋に手をかけた。
抱き抱えるには少しキツいくらいの大きさはある宝箱の蓋はなかなか重たい。
それでも宝箱の中身に興味があった伯万は足腰に力を入れ、蓋を持ち上げるように開く。その中身を覗き込む三人と一機。
「これは……」
「果物ですか」
「あのNPCが言ってたやつだね」
宝箱の中身にはたくさんの果物の実が入っており、その隅には箱形の機械が取り付けられていた。
果物に目が行く三人とは対照的にまず箱形のそれに目を向けた佐藤は機械に触れ、三人に目を向ける。
「それと、これは二万ポイント分のカードリーダーですね」
箱形の機械に触れた佐藤はそのコードを読み取り、着ていたジャージから四人のカードを取り出した。そしてそのカードリーダーにカードを翳し、一人五千ポイント配分した佐藤は四人にそれを手渡す。
「では皆さん、これを」
「これって確かさっき言ってたやつ?」
「ええ、俺からの三千ポイントを加え計八千のポイントが皆さんのカードに残ってます。これで好きなものを買ってください」
「どうも」
因幡、伯万、三十三に手渡し残り一人の補習者に渡そうとするが補習者、頸城万里の姿が見当たらない。
あの男は単独行動が基本だとデータに記載されていたので急にいなくなった頸城に慌てはしない。佐藤はジャージに一枚のカードを戻し、そのまま四人に向き直る。
「では一旦外へ戻りましょう。皆さん疲れましたでしょう」
そして、相変わらずの仏頂面のまま提案する佐藤のその言葉にほっと安堵した様子の補習者たちは「ほんとだよ」とか好き好き勝手なことを言いながらさっさと出口に向かって歩き出す。
そんな三人の後ろ姿を一瞥した佐藤はそのまま視線をさ迷わせ、森の片隅、地面の上に屈み込む頸城の後ろ姿を見付け、そのまま佐藤は近づいた。
どこからともなく聞こえてくる、性別不明の機械音声。
その言葉に三十三と因幡は「いえーい」と手を合わせた。
「いえーいじゃねえよ。なんだよそれ、ミトちんはともかくお前らまともに戦ってねーじゃん」
「まあまあ、いいじゃん。一石二鳥ってことで」
「というか因幡、お前首どうしたんだよ、首」
「健太くんから薬草貰っちゃった」
言いながら、全快した因幡樂は自らの首を撫でヘラリと笑う。
そこには生々しい傷跡が残っているわけでもなく、文字通り無傷の状態だった。
「すげえな薬草」そう素直に感心する伯万。
それと同時にここが誰かの作り上げた空想世界だということを思い出す。
第一エリア、森の広場。
先程までところどころ焼け焦げ、血や獣の匂いが漂っていたそこはなにもなかったように平然としており、倒したモンスターの死骸も跡形もなく消えてしまった。
やはりゲームと言うべきか、感傷に浸らせる暇すら与えてくれない。
「薬草と言えば、なんか宝箱見付けたんですが」
そして、そんな世界が珍しいのか辺りをキョロキョロ探索していた三十三はそう言いながら広場の奥を指さした。
つられて視線を向ければ、確かにそこにはよくある金の装飾が施された宝箱がどっしりと置かれている。それに反応したのは佐藤だった。
「モンスターを倒すとアイテムや賞金が貰えるようになっています。伯万さん、開けてみて下さい」
草むらを掻き分けるように置かれた宝箱の側に立つ佐藤に、指名された伯万はあからさまに嫌そうな顔をする。
「またなんか化け物出てこないよな」
「嫌なら見なくても構いませんよ、非常に勿体ないですが」
「はいはい、開けりゃいいんだろ、開けりゃ」
挑発的な佐藤の言葉にむっとしながらも宝箱に歩み寄った伯万はそのまま宝箱の蓋に手をかけた。
抱き抱えるには少しキツいくらいの大きさはある宝箱の蓋はなかなか重たい。
それでも宝箱の中身に興味があった伯万は足腰に力を入れ、蓋を持ち上げるように開く。その中身を覗き込む三人と一機。
「これは……」
「果物ですか」
「あのNPCが言ってたやつだね」
宝箱の中身にはたくさんの果物の実が入っており、その隅には箱形の機械が取り付けられていた。
果物に目が行く三人とは対照的にまず箱形のそれに目を向けた佐藤は機械に触れ、三人に目を向ける。
「それと、これは二万ポイント分のカードリーダーですね」
箱形の機械に触れた佐藤はそのコードを読み取り、着ていたジャージから四人のカードを取り出した。そしてそのカードリーダーにカードを翳し、一人五千ポイント配分した佐藤は四人にそれを手渡す。
「では皆さん、これを」
「これって確かさっき言ってたやつ?」
「ええ、俺からの三千ポイントを加え計八千のポイントが皆さんのカードに残ってます。これで好きなものを買ってください」
「どうも」
因幡、伯万、三十三に手渡し残り一人の補習者に渡そうとするが補習者、頸城万里の姿が見当たらない。
あの男は単独行動が基本だとデータに記載されていたので急にいなくなった頸城に慌てはしない。佐藤はジャージに一枚のカードを戻し、そのまま四人に向き直る。
「では一旦外へ戻りましょう。皆さん疲れましたでしょう」
そして、相変わらずの仏頂面のまま提案する佐藤のその言葉にほっと安堵した様子の補習者たちは「ほんとだよ」とか好き好き勝手なことを言いながらさっさと出口に向かって歩き出す。
そんな三人の後ろ姿を一瞥した佐藤はそのまま視線をさ迷わせ、森の片隅、地面の上に屈み込む頸城の後ろ姿を見付け、そのまま佐藤は近づいた。
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