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悪い人
05※
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どれほど時間が経ったのかすらも分からない。
一晩中二人に犯されていた気がした。起きているのか眠っているのかはたまた悪夢か現実なのかわからない頭の中。いきなり下腹部に違和感を感じ、目を覚ました。
「っ、え」
ここがどこなのか、そんな疑問なんかすぐに吹き飛んだ。
「……いつまでおねんねしてるんだ? スレイヴちゃん」
「ぉ、まっ、え……ッ!」
「安心しろ、まだ指しか挿れてねえから」
俺の足元、膝立ちになったメイジはそう笑いながら俺の腿を掴み、自分の肩に引っ掛けるように開脚させてくるのだ。剥き出しになった下腹部、側には捨てられた手袋があった。
「っ、や、め……ッひぅッ!」
「ああ、暴れんなよ。まだ催淫効果は切れてないからな」
「ぅあ、ッ、や、抜けッ! 抜け……ッ、ぇ……ッ!」
「ひでえ声だな、まあ無理もないか。一晩中あいつに犯されてあんな声出してたらそりゃガラガラにもなるわ」
一晩中、という言葉に思い出したくもない記憶がフラッシュバックする。そして気づく、ここがあそこではないこと、そしてあいつの姿がないことに。
広いベッドの上、あのときとは違い体が動くことに気づいた俺は上半身だけでも這いずってベッドから逃げようとするが腹の中、臍の裏側を撫でるように指を動かされた瞬間意識が飛びそうになる。
「ぅ、ひ……ッ」
「やめとけやめとけ、もう諦めろ。お前は逃げらんないんだから」
どういう意味だ、と尋ねるよりも先に内壁、固くなった凝りをこりこりと撫でられた瞬間下腹部が跳ねる。「抜け! 抜けって!」と声をあげるが、そこをくるりと指の腹で一撫でされただけでその声は悲鳴に変わった。
「ぁ、や、めろぉ……触るなッ、触るなぁ……ッ! っ、く、ひ……ッ!」
「あーあ、また中だけでイッたのか?はは、すっかり無駄チンポになったな」
「けど、そっちのが可愛いぞ」耳元で囁かれるだけでサブイボが立つ。それなのに撫でるように空いた手で脇腹を触れられると恐ろしく敏感になるのだ。全部、全部、こいつのせいだ。こいつのわけのわからない変態魔法のせいだ。細い指で撫でられただけで自分のものではないみたいに痙攣しっぱなしの内壁に怖くなる。ぶれる視界、メイジ、と睨めば、やつは笑った。
「勇者サマは今ならいないぞ。……本当あいつは難儀なやつだよな、見たくないだってよ、俺にお前が犯されてるの」
「っ、ぉ、……か……ッ」
「ああ、そうだよ。一度貫通すりゃ今更一緒だってのに。咥えるものが変わろうとな」
「ッ、ひ……ィ、や、めろ……ッ!」
ちゅぷ、と音を立て引き抜かれる指に息を飲む。自分の体がどうなってるのかすら考えたくなかったが、酷く熱を持ったそこにふぅっと息を吹き掛けられるだけで背筋が震えた。ビクビクと痙攣する腰を撫で、メイジは俺の腿に頬摺りをして笑うのだ。
「やめてほしいか?」
「……ッ、ぅ……あ……」
「今のお前の体はこの状況で止められた方がきついと思うぞ」
濡れた人差し指が盛り上がった肛門、その周囲の皺を撫でるように円を描く。つい先程まで異物を咥え込んでいたそこは恐ろしく敏感になっていた。無意識に全神経が集中するそこにメイジは笑う。
「吸い付くほど物欲しいのか?」
「す、いついてなんか……ッ」
「いい、恥ずかしがんなよ。一晩中咥え込んでたんだからな、モノ寂しくて仕方ないんだろ」
「ちが、ぁ……っひ、ぐ、ぅ……ッ!」
つぷ、と再度埋め込まれる指に下腹部がぎゅうっと反応する。違う、違うのに、こんなことしたいわけではないのにまるでメイジの指を待っていたようにきゅんきゅんと反応する下腹部に血の気が引いた。
「……っおい、締めすぎだろ。ここ、指の腹で揉まれるのがそんなに好きなのか?」
なあ、と腹部を撫でられ、同時に更に執拗に前立腺を捏ね繰り回される。最早感覚などなかった。じんじんと痺れるような持続的な快感の波に呑まれた意識はすぐに絡め取られる。
「ぁっ、や、め……っ、だめだ、めいじっ、メイジ……っ!」
「あー……その声いい、クる」
「ぁ、ッ、や、ぅ……ッ! ぐ……ッく、うぅ……ッ!」
「勇者のもの一晩中咥えていたくせにまだ足りないのか? ……本当、欲張りなやつだな」
内腿に唇を寄せられ、そのままキスをされればその感触だけでも頭が真っ白になりそうだった。そして、そのままちゅぷ、と指を引き抜いたメイジは急に塞ぐものを失い口を開閉させるそこを優しく撫でるのだ。
「大分腫れてるな、……そりゃ、毎晩あんなセックスしてりゃお前の肛門もこんなに柔らかくなるわけだな。これじゃもうただの性器だ、排泄器官とは言えねえな」
「っ、や、めろ……言うな……ぁ……っ」
「ナイトとはしたのか?」
いきなりこの場にはいない男の名前を出され、血の気が引いた。その名前に一気に現実に引き戻された俺は咄嗟にメイジを突き飛ばそうとして、そのまま腕を掴まれた。
「……なあ、答えろよ。あいつとはしたのか?」
「っ……黙れよ、誰がお前なんかに言うか、この変態野郎……っ」
「そうか、まだしてないのか。……なら丁度いい。経験はあるに越したことはない、少しは上達した方が後々将来のためにも役立つだろう」
「それに、あいつも喜ぶだろうしな」そう笑うメイジの言葉が何一つ理解することができなかった。
「ぁ、いつ……って……ッひ、ぅ……!」
先程までしつこく弄られ余計過敏になっていたそこを指でくるくると撫でられ、下腹部にきゅうっと力が入る。疼きが収まらない。やめろ、とばたつこうにもあいつは涼しい顔して笑うのだ。
「はは、見ろよお前のここ、しゃぶりついてくるぞ。もっとしてくれって」
「っ、ちが……」
「今更照れ隠す必要はない、俺とお前の仲だろ。お前が『挿れてください~』って泣いて懇願してきても俺は構わないけどな」
「ッ……」
恥ずかしさよりも腹が立った。けれどねちねちと肛門の盛り上がった肉を撫でられてる現状、やつからは隠したいところもなにもかも丸見えであると思うと何を言ったところで同じだ。
反応するだけこいつは喜ぶ変態だ。唇を噛んで堪えようとしたとき。
「っ、な……ぁ……ッ!」
あろうことかあいつは俺の肛門を左右に押し広げる。ぎょっとした。
「健康的なピンク色だ」
「っ、み、るな、……ぁ……ッ!」
「ほらみろ、中がヒクついてるぞ。どれ、味は……」
「っ、こ、んの……ッ! ぅッ、ひ……ッ!」
あろうことかこの変態野郎は躊躇なく俺の下腹部を抱きかかえ、鼻先を押し付けるようにその開いた肛門に唇を押し付けてくるのだ。吹きかかる吐息の気持ち悪さに全身が凍りつくのも束の間、メイジはそのままべろりと剥き出しになった肉壁に舌を這わせるのだ。
「ぅ、そだろ……ッ! や、めろ……ッ! やめろ……ッ!」
「……っん、は……締め過ぎだ、力抜け……ッ」
「し、んじらんね……ッぇ、お前、クソ……ッ!」
必死にメイジの頭を鷲掴んで引き剥がそうとするがあいつは寧ろ強く俺の腿を掴んでは更に舌をねじ込んで来るのだ。唾液を流し込み、それを内壁に塗り込むようにたっぷりと舐られる感触がよりリアルで余計気持ち悪かった。指やスライムとはまた違う、まるで太ったナメクジに執拗に中を舐られるような心地悪さにただ背筋が凍りついた。
「くぅ……ッ! ぅ、んんぅ……ッ!」
「はぁ……っ、ん、は……やば、スレイヴちゃんの味がする……っ」
そこで喋るな、嗅ぐな、舐めるな。
そう言いたいのに少しでも気を緩めれば気持ち悪い声が出てしまいそうで怖かった。必死に唇を噛み、声を、呼吸を殺す。
下腹部、腹の中でぐちゅぐちゅと濡れた音が響き、くまなく這わされる舌先に目眩がした。
メイジの鼻息が吹きかかるだけで背筋が凍る。嫌なのに、逃げようと腰を引こうとすることすら許されない。
「っ、ふ、ぅ……ッ、く、ぅう……ッ」
こんなの、何が楽しいのかまるで理解できない。
それなのに大の大人が、夢中になって俺の股間に顔を埋めて内壁をむしゃぶり尽くすその図は滑稽でもあり恐怖でもあった。
ふやけてるのではないかと思うほどこの男は俺の中をたっぷりと念入りに恐ろしいほどまでに執拗に味わった。逃げることも出来ないまま、大量の唾液を流し込まれたそこはメイジが舌を引き抜くと同時にどぷ、と溢れるのだ。中途半端に嬲られ、とろとろに濡れそぼった肛門を見てメイジは舌なめずりをするのだ。
「……なあ、スレイヴちゃん。あいつが今どこに行ってるか分かるか?」
「っ……な、に……ッ」
自分のベルトに手を伸ばしたメイジはそのまま片手で器用に外す。既に張り詰めていた下腹部は嫌でも目についた。それでも直視できない、したくもない俺の目の前、わざと見せつけるように緩めた着衣から引き摺り出した性器を俺の下腹部にぺちんと押し付けるのだ。その感触だけでも堪らず体が跳ねた。
散々弄られ、腫れ上がり、捲れたそこに触れる熱く硬い肉棒の感触に嫌でも昨夜の行為を体は思い出し、勝手に疼き出すのだ。口の中が酷く乾いていく。
逃げ場などはない、術もないのだ。ならば、と最後の抵抗のつもりで目を瞑って顔を逸らそうとするがすぐに頭を掴まれ、メイジの方を向かされた。
「ナイト迎えに行ってんだよ」
むに、と押し当てられた亀頭に意識を取られた瞬間だった。手首をぐっと掴まれる。その言葉の意味を理解するよりも先に部屋の扉が開いた。
「スレイヴ殿……ッ!」
なんで、これも夢か。メイジの見せた夢なのか。
何故ここに、この部屋に――ナイトが。
扉の前、こちらを見て顔色を変える男にそう、息を飲んだ瞬間。
「っ、な………………――~~ッ!!」
ずぷりと難なく挿入される性器に堪らず仰け反った。声を上げることもできなかった。開ききった毛穴からは汗という汗が玉のようにどっと吹き出し、目の前が白く染まる。
「ッ!……っふ、ぅ、待っで、ま゛ッ、ぁ、お゛ッ! ぐ、ぅううう……ッ!」
足首を掴まれたまま叩きつけるように根本まで挿入したメイジはそのままガクガクと震える俺の腰を捕まえたまま奥の感触を楽しむように浅く息を吐くのだ。
夢じゃない、夢ではないのだ。ナイトがそこにいる。なんで。
頭が真っ白になる。なんで俺は、こいつの前で、メイジに。
「……っ、ナイト、お前さあ来るの早すぎだろ……っ!」
「っ、メイジ殿……貴殿は……ッ」
そう、止めに入ろうとするナイトの背後。
顔を覗かせたそいつはベッドの上、メイジに犯されてる俺を見て「おー、やってんな」と楽しげに笑った。
そして、ナイトを宥めるようにその肩を抱くのだ。
「やめとけやめとけ、ナイト。こいつに何言ったって一緒だって。――これは俺らのパーティーの意向らしいしな」
対して驚くわけでもない、まるで最初からこの部屋で何が行われてるのか知っていたかのようなシーフの態度に頭が混乱する。他の奴らに見られてる、それ以上に、ナイトに見られてることがただ恥ずかしくて耐えられなくて俺は必死に藻掻こうとするが体が動かない。
「っ、み、るなぁ……ッ! 頼むから、見ないで、くれ……ッ!」
「なんだよ、さっきまでノリノリだったくせに大好きなナイトが来たから恥ずかしがってるのか?」
「っ、こ、ろす……ッ、殺してやる……ッ! ん、むぅ……ッ!」
「ッは、……ッ中きゅんきゅん締め付けておいて何言ったんだか……っ! おいナイト、お前は知らないだろ? スレイヴちゃんはこうやってケツの穴犯されるのが大好きなんだってよ……っ」
「っ、ち、がぁっ! 嫌だ、やめろ! 抜ッ! ぅ、う゛げ、ッ、抜けぇッ!」
やめろやめろやめろ頼む見ないでくれ、ナイト、嫌だ。こんなの嫌なのに、頭の中までぐちゃぐちゃに掻き混ぜられたみたいに何も考えられない。根本までずっぽり挿入されたまま奥を執拗に亀頭でぐちぐち押し潰されるだけで開いた喉からは汚い声が漏れた。ビクビクと痙攣する下腹部は隙間なくメイジに犯されたまま小刻みに揺すられ、その振動だけで既に勃起した性器は揺れる。
こんな間抜けな姿をナイトに見せてる事実が耐えられない。これだけは、絶対に。
「っ、ぁ、ぐ、ぅ……ッ! ふ、っ、ぅ……ッ!」
「やめろ……ッ! いますぐスレイヴ殿を離せ! こんな真似をしてどういうつもりだ……ッ!」
「……っそんなの分かってるだろ、勇者サマを傷付けた罰だ。……お前もあいつと同じ気持ちになってほしいってさ」
そうメイジが俺の髪を撫で、唇を落としたときだ。
「ッ、ぐ、ぅ!」とナイトの呻き声が聞こえてきて、全身が冷たくなる。
「悪いなー、ナイト。俺はあんたに恨みないんだがうちの坊っちゃんが難しい時期なんだわ、悪いがあいつの気持ちが晴れるまで我慢してくれよな」
ナイトを側の椅子に拘束したシーフはそう申し訳なさそうに笑う。そしてそのときだった、ナイトと目が合った。ショック、失望、違う、申し訳なさ、怒り、困惑――それらが混ざり合ったような形容し難い表情だった。それもほんの一瞬、俺から目を逸らすように目は瞑られる。そして『すまない』……そうナイトの唇が動いた瞬間、辛うじて形を保っていた一本の糸がぷちりと音を立てて引きちぎれたのだ。
夢だったらどれだけ良かっただろうか。
例えこれが夢だとしても耐えられなかった。
「っ、ぅ゛……ぐ、う……ッ! ぅ、や゛……め……ッろ゛……ぉ……~~ッ!」
「……っ、は、急に威勢良くなったな、スレイヴちゃん……ッ! そんなに愛しのナイトに見てもらえて興奮してるのか?」
「ち、が……ッぁ゛……ッ、ひ……ッ!」
「何が違うんだよ、こんなに精子くださいって人のチンポ締め付けておいて何言ってんだ?……っ、ほら、言・え・よ、今お前犯してるのは誰だ? 勇者サマでもナイトでもない」
「俺だよ、スレイヴちゃん」逃げる腰を捕まえられ、ひっくり返ったカエルみたいな無様な格好でピストンを繰り返され、声を上げることもできなかった。
嫌だ、やめろ、と拒もうとすれば頬を舐められ、耳を噛まれ、耳の溝、穴まで舐められる。
「っ、ぎ、ひ……ッ、嫌だっ、やめろ! め、いじ、や……ッ!」
「……っ、なんだ? スレイヴちゃんは耳まで感じやすいのか?」
「ッや、……ッ、ぅ……あ……ッ!」
耳朶の凹凸部分を舐められ、耳朶を口に含められそのまま甘く噛まれるだけで片耳が恐ろしいほどまでに熱くなる。鼓膜に直接染み込む濡れた品性の欠片もない音はただ不快なはずなのに、そのまま体を押さえつけて犯されるだけで余計何も考えられなくなるのだ。
「っ、は……スレイヴちゃんの耳、ぷりぷりしてて可愛いな」
「っや、……ッ、ぅ……やめろ……死ね……ッ! 死ね、この、ぉ……ッ、お゛……ッん゛ぅ……ッ!ふ……ッ、ぅ、う゛…………ッ!!」
顎を掴まれ、わざと音を立てるように舌を絡み取られる。吐き気がした。やめろ、と言おうとした瞬間さらに深くまで舌に犯されるのだ。上半身と下腹部メイジに犯される。
「う゛ッ、ふ……ッ、ぅ、~~……ッ」
声を殺したいのに、無理矢理開かされた喉奥からは奥を突かれる度にくぐもった声が漏れてしまう。汗が止まらない。せめてと目を硬く瞑り俺の姿を見ないようにしてくれてるナイトがただ耐えられなくて、俺は、何も考えられなかった。
ねちねちと責め立てるような動きから次第に大胆になってくる動き、早まるピストンに耐えられず声が漏れる。
「ん゛ッ! ぅ……うッ、ふ、ぅ……ッ!」
肌がぶつかり、潰れた肉の音が腹の中で響く。気持ちよくない、屈辱でしかない行為、それなのに痛いほど勃起した性器からはドロリとした精液が溢れ、下腹部の痙攣を抑えることはできなかった。照明の下、こちらを見下ろすメイジと目があった。唇を離したメイジは俺の手を捕まえ、手の甲の上から重ねるように手を握りしめた。
そしてぎゅっと指を絡められたときだ。
「ぁ゛ッ?! ぐ、ぅ、んぅう……ッ!!」
頭の中で、腹の中で熱が弾ける。ドクドクと流し込まれる熱にのたうち回りそうになるのをメイジは俺の手を捕らえたまま長い射精を終えるまで引き抜かなかった。そして、受け止めきれずに広がった穴から精液が漏れ出したとき、メイジはそのままゆっくりと腰を引き、硬いままの自らの性器を引き抜いた。
瞬間、中に出されたばかりの精液がどろりと溢れ出す。もう終わったのか、そう安堵するのも束の間。
「っ、ぁ、ひ……ッ!」
そしてそのまま体を抱き抱えられ、ベッドの上、胡座を掻いたメイジの上に背中を向けるよう座らせられるのだ。そして正面には椅子に座らせられたナイトと、その横、椅子の背もたれを肘掛け代わりにニタニタとこちらを見ていたシーフと目が合う。
「っ、や、め……ッ見るな……ぁ……――~~ッ!!」
そう懇願するよりも先に背後のメイジに体を抱き上げられたと思った次の瞬間、開いたまま閉じる暇もないそこに再び宛てがわれた亀頭の感触に息を飲む。まずい、と膝に力を込め、なんとか体勢を保とうとするが腕を掴まれ、ぐっと引っ張られれば呆気なくバランスは決壊し、ずぷっと根本まで一気に挿入される。脳天まで貫かれるような挿入に呼吸をすることもできなかった。
「ッ、……スレイヴ殿……っ」
「っ、ひ、ィ、見、るなッ、見るな、やめ、ッ! ぇ……ぉ、ぐッ、ぅ゛ぅう……ッ!!」
跨がるような体勢のまま下から突き上げられ、顔を隠したいのに両腕を掴まれてるせいでそれすらも許されない。
萎えるどころか既に限界まで勃起した性器に犯される。腰を揺さぶるように掴まれれば快楽から逃れることも出来ない。見るな、見ないでくれ。そう言いたいのに言葉すらも遮られる。
それどころか、片手で両腕を掴み、俺の腰に手を回したメイジはそのまま俺の膝を掴み大きく開脚させるのだ。
「な、ぁ……ッ!」
「っ、おい騎士サマ、よぉく見とけよ? 好きでもない男にケツにブチ込まれて娼婦みたいに腰振って喜ぶようなやつなんだよ、スレイヴちゃんは」
「ちっ、がッ! ひ、ぅ……ッ!」
「アンタがこいつを逃げ出す手引きをするからこんなことになったんだ、可哀想にな。昨夜も勇者サマに一晩中犯されてこんなに真っ赤に腫れてな……」
「っ、ゆ、うしゃ殿……」
「ぁ、き、くなぁ……っ! ナイト、っ、聞くな、こいつの……ッ、んぅううッ!」
腰を抜かれそうになったと思えば腿を掴まれ一気に突き上げられる。内臓を潰され、脳天まで意識が飛びそうになるほどの快感に堪らず呻いた。ビリビリと仰け反った瞬間、ピストンに合わせて揺れていた性器からどぷりと精液混じりの体液が溢れ出し、竿を伝って根本まで流れるのだ。
脳味噌全体に電流を流されたみたいに何も考えられなかった。全身の筋肉が弛緩し、ぴくぴくと痙攣する。そしてややあって再び腹の奥に吐き出される精液、その射精の熱と勢いに堪らず背筋が震えた。
「は……ぁ……ッんんぅ、……ふ……ッ」
上体を抱きかかえるようにして引き抜かれる性器。そしてそのまま二人に見せつけるように俺の足を開脚させたまま肛門を左右に押し広げるメイジに血の気が引いた。
「っ、や、め……ろ……っメイジ……っ」
「はっ……こんなに広がったか、ほら見ろよ。ここまでくればもう性器だ性器」
「男に突っ込んでもらうための穴だな」後孔から精液が溢れ、ベッドのシーツまでも汚す。あまりの恥辱に全身の血が熱くなる。項に吹きかかる吐息、絡みつくようなシーフの目、青褪めたナイトの顔。俺は、なにをしているのか。自分がどんな顔しているのか、どんな格好をしているのか。既にわからなくなっていた。脳が理解するのを拒否していた。
「……メイジっ、も、頼むから……止めてくれ……ッ、こんな……ッ!っ、ぁ……ッ!」
「……人を鬼みたいな言い方するなよ、全部お前が招いた結果だろ」
「なあ、ナイト」そう、溢れ出す精液を指で絡め取ったメイジはそれを俺の眼前で広げるのだ。鼻をつくような不快な雄の匂い、どろりとした液体が糸を引いて伸びるのを見て喉仏が上下する。
「お前も混ざれよ」
「……ッ貴殿は、正気か。こんなことをして……ッ」
「話聞いてただろ? ……これはうちのパーティーの意向だって――なあ? 勇者」
「……ッ!」
扉が開いたことにも気付けなかった。部屋の扉の前、メイジの視線の先にはいつの間にかあいつがいた。
――勇者。
その顔に表情はない。
咄嗟に足を閉じようとするが体が動かない。
――嘘だと言ってくれ。こんな茶番、全部嘘だと。
そう懇願するがあいつには一寸も届かない。
「……ああ、そうだな」
「っ、ゆ、うしゃ……」
「ナイト、こいつを抱けよ。俺が許可する」
そして、ベッドの側までやってきた勇者は俺の下腹部に手を伸ばし、既に口を開いたそこに指を捩じ込んでは中に溜まった精液を掻き出した。
目の前が真っ暗になった。鼓動が焼けるように熱くなり、腰が跳ねる。冗談じゃない。そう思うのに、体が動かない。メイジの妙な術のせいだとすぐに理解した。開きっぱなしの口からは浅い呼吸と唾液しか溢れない。
異様な空気だった。異を唱えるのはナイトしかいない。
「勇者殿……ッ、貴殿は、自分が何を言ってるのか分かってるのか!」
「ああ、そうだな」
「貴殿とスレイヴ殿は大切な仲間ではないのか」
「ああ、そうだ」
「ならば……――」
「それを先に裏切ったのはこいつだ」
「……ッ」
顎を掴まれ、勇者に顔を覗き込まれる。ぐちゃぐちゃに混ざり合った精液を掻き出され、荒い動作にも関わらず内壁を引っ掻かれる度に腰が揺れ、開いた口からは浅ましい声が漏れるのだ。
「っ、ぁ……や……ッ」
「スレイヴ、お前は言ったよな? ……このパーティーに残るためならなんだってするって」
「っ、ゆ、うしゃ……ッ」
「……だったらナイトに奉仕してやれよ、今までしてきたみたいに喉を使ってな」
「お…………まえ……ッ」
「出来ないのか? ――こいつが特別だからか?」
それはゾッとするような冷たい目だった。見たことのない勇者の顔に俺は背筋が冷たくなっていくのを感じた。
「悪いことは言わねえよ、勇者サマの言うこと聞いとけ?」
「そうそう、しゃぶるくらい獣でもできる」
シーフとメイジが囃し立てる。二人のどうでもいい野次すら頭に入ってこなかった。やめろとナイトは口を動かした。しなくていい、そんなこと。望んでいないと目で訴えかけてくるのだ。
けれど。
「…………できないのか? スレイヴ」
「……ッ、……」
「この男がどうなってもいいのか」
それは俺にだけ聞こえる声量で耳打ちされた。ぎょっと顔をあげれば、至近距離でやつと目が合う。
「やれば、いいんだろ……ッ」
皮肉のつもりか、メイジの妙な魔法も解かれていた。あれほど糸が切れたように脱力していた体も動いた。舌も回る。自分の意思でやれということか。
――本当に、反吐が出る。
「っ、スレイヴ殿、やめろ」
「……アンタは悪くない、全部……俺のせいだ」
だから、とベッドを降りた俺は縺れそうになりながらも椅子に括り付けられたナイトの前までやってきた。
俺だけが辱めを受けるだけならまだいい、けど、この男に何かあればと思うと酷く恐ろしくなった。それは勇者が有言実行する男だとずっと側で見てきていたからこそ、余計。
スレイヴ殿、と名前を呼ぶ声が僅かに震えていることに気付いた瞬間息が苦しくなる。
俺は、酷いことをしている。今まで助けてくれたナイトに……。
「っ、……悪い……目、瞑っててくれ」
そうすれば視覚的なショックは和らぐはずだ。そう慰めにもならないことを言うことで精一杯だった。
一晩中二人に犯されていた気がした。起きているのか眠っているのかはたまた悪夢か現実なのかわからない頭の中。いきなり下腹部に違和感を感じ、目を覚ました。
「っ、え」
ここがどこなのか、そんな疑問なんかすぐに吹き飛んだ。
「……いつまでおねんねしてるんだ? スレイヴちゃん」
「ぉ、まっ、え……ッ!」
「安心しろ、まだ指しか挿れてねえから」
俺の足元、膝立ちになったメイジはそう笑いながら俺の腿を掴み、自分の肩に引っ掛けるように開脚させてくるのだ。剥き出しになった下腹部、側には捨てられた手袋があった。
「っ、や、め……ッひぅッ!」
「ああ、暴れんなよ。まだ催淫効果は切れてないからな」
「ぅあ、ッ、や、抜けッ! 抜け……ッ、ぇ……ッ!」
「ひでえ声だな、まあ無理もないか。一晩中あいつに犯されてあんな声出してたらそりゃガラガラにもなるわ」
一晩中、という言葉に思い出したくもない記憶がフラッシュバックする。そして気づく、ここがあそこではないこと、そしてあいつの姿がないことに。
広いベッドの上、あのときとは違い体が動くことに気づいた俺は上半身だけでも這いずってベッドから逃げようとするが腹の中、臍の裏側を撫でるように指を動かされた瞬間意識が飛びそうになる。
「ぅ、ひ……ッ」
「やめとけやめとけ、もう諦めろ。お前は逃げらんないんだから」
どういう意味だ、と尋ねるよりも先に内壁、固くなった凝りをこりこりと撫でられた瞬間下腹部が跳ねる。「抜け! 抜けって!」と声をあげるが、そこをくるりと指の腹で一撫でされただけでその声は悲鳴に変わった。
「ぁ、や、めろぉ……触るなッ、触るなぁ……ッ! っ、く、ひ……ッ!」
「あーあ、また中だけでイッたのか?はは、すっかり無駄チンポになったな」
「けど、そっちのが可愛いぞ」耳元で囁かれるだけでサブイボが立つ。それなのに撫でるように空いた手で脇腹を触れられると恐ろしく敏感になるのだ。全部、全部、こいつのせいだ。こいつのわけのわからない変態魔法のせいだ。細い指で撫でられただけで自分のものではないみたいに痙攣しっぱなしの内壁に怖くなる。ぶれる視界、メイジ、と睨めば、やつは笑った。
「勇者サマは今ならいないぞ。……本当あいつは難儀なやつだよな、見たくないだってよ、俺にお前が犯されてるの」
「っ、ぉ、……か……ッ」
「ああ、そうだよ。一度貫通すりゃ今更一緒だってのに。咥えるものが変わろうとな」
「ッ、ひ……ィ、や、めろ……ッ!」
ちゅぷ、と音を立て引き抜かれる指に息を飲む。自分の体がどうなってるのかすら考えたくなかったが、酷く熱を持ったそこにふぅっと息を吹き掛けられるだけで背筋が震えた。ビクビクと痙攣する腰を撫で、メイジは俺の腿に頬摺りをして笑うのだ。
「やめてほしいか?」
「……ッ、ぅ……あ……」
「今のお前の体はこの状況で止められた方がきついと思うぞ」
濡れた人差し指が盛り上がった肛門、その周囲の皺を撫でるように円を描く。つい先程まで異物を咥え込んでいたそこは恐ろしく敏感になっていた。無意識に全神経が集中するそこにメイジは笑う。
「吸い付くほど物欲しいのか?」
「す、いついてなんか……ッ」
「いい、恥ずかしがんなよ。一晩中咥え込んでたんだからな、モノ寂しくて仕方ないんだろ」
「ちが、ぁ……っひ、ぐ、ぅ……ッ!」
つぷ、と再度埋め込まれる指に下腹部がぎゅうっと反応する。違う、違うのに、こんなことしたいわけではないのにまるでメイジの指を待っていたようにきゅんきゅんと反応する下腹部に血の気が引いた。
「……っおい、締めすぎだろ。ここ、指の腹で揉まれるのがそんなに好きなのか?」
なあ、と腹部を撫でられ、同時に更に執拗に前立腺を捏ね繰り回される。最早感覚などなかった。じんじんと痺れるような持続的な快感の波に呑まれた意識はすぐに絡め取られる。
「ぁっ、や、め……っ、だめだ、めいじっ、メイジ……っ!」
「あー……その声いい、クる」
「ぁ、ッ、や、ぅ……ッ! ぐ……ッく、うぅ……ッ!」
「勇者のもの一晩中咥えていたくせにまだ足りないのか? ……本当、欲張りなやつだな」
内腿に唇を寄せられ、そのままキスをされればその感触だけでも頭が真っ白になりそうだった。そして、そのままちゅぷ、と指を引き抜いたメイジは急に塞ぐものを失い口を開閉させるそこを優しく撫でるのだ。
「大分腫れてるな、……そりゃ、毎晩あんなセックスしてりゃお前の肛門もこんなに柔らかくなるわけだな。これじゃもうただの性器だ、排泄器官とは言えねえな」
「っ、や、めろ……言うな……ぁ……っ」
「ナイトとはしたのか?」
いきなりこの場にはいない男の名前を出され、血の気が引いた。その名前に一気に現実に引き戻された俺は咄嗟にメイジを突き飛ばそうとして、そのまま腕を掴まれた。
「……なあ、答えろよ。あいつとはしたのか?」
「っ……黙れよ、誰がお前なんかに言うか、この変態野郎……っ」
「そうか、まだしてないのか。……なら丁度いい。経験はあるに越したことはない、少しは上達した方が後々将来のためにも役立つだろう」
「それに、あいつも喜ぶだろうしな」そう笑うメイジの言葉が何一つ理解することができなかった。
「ぁ、いつ……って……ッひ、ぅ……!」
先程までしつこく弄られ余計過敏になっていたそこを指でくるくると撫でられ、下腹部にきゅうっと力が入る。疼きが収まらない。やめろ、とばたつこうにもあいつは涼しい顔して笑うのだ。
「はは、見ろよお前のここ、しゃぶりついてくるぞ。もっとしてくれって」
「っ、ちが……」
「今更照れ隠す必要はない、俺とお前の仲だろ。お前が『挿れてください~』って泣いて懇願してきても俺は構わないけどな」
「ッ……」
恥ずかしさよりも腹が立った。けれどねちねちと肛門の盛り上がった肉を撫でられてる現状、やつからは隠したいところもなにもかも丸見えであると思うと何を言ったところで同じだ。
反応するだけこいつは喜ぶ変態だ。唇を噛んで堪えようとしたとき。
「っ、な……ぁ……ッ!」
あろうことかあいつは俺の肛門を左右に押し広げる。ぎょっとした。
「健康的なピンク色だ」
「っ、み、るな、……ぁ……ッ!」
「ほらみろ、中がヒクついてるぞ。どれ、味は……」
「っ、こ、んの……ッ! ぅッ、ひ……ッ!」
あろうことかこの変態野郎は躊躇なく俺の下腹部を抱きかかえ、鼻先を押し付けるようにその開いた肛門に唇を押し付けてくるのだ。吹きかかる吐息の気持ち悪さに全身が凍りつくのも束の間、メイジはそのままべろりと剥き出しになった肉壁に舌を這わせるのだ。
「ぅ、そだろ……ッ! や、めろ……ッ! やめろ……ッ!」
「……っん、は……締め過ぎだ、力抜け……ッ」
「し、んじらんね……ッぇ、お前、クソ……ッ!」
必死にメイジの頭を鷲掴んで引き剥がそうとするがあいつは寧ろ強く俺の腿を掴んでは更に舌をねじ込んで来るのだ。唾液を流し込み、それを内壁に塗り込むようにたっぷりと舐られる感触がよりリアルで余計気持ち悪かった。指やスライムとはまた違う、まるで太ったナメクジに執拗に中を舐られるような心地悪さにただ背筋が凍りついた。
「くぅ……ッ! ぅ、んんぅ……ッ!」
「はぁ……っ、ん、は……やば、スレイヴちゃんの味がする……っ」
そこで喋るな、嗅ぐな、舐めるな。
そう言いたいのに少しでも気を緩めれば気持ち悪い声が出てしまいそうで怖かった。必死に唇を噛み、声を、呼吸を殺す。
下腹部、腹の中でぐちゅぐちゅと濡れた音が響き、くまなく這わされる舌先に目眩がした。
メイジの鼻息が吹きかかるだけで背筋が凍る。嫌なのに、逃げようと腰を引こうとすることすら許されない。
「っ、ふ、ぅ……ッ、く、ぅう……ッ」
こんなの、何が楽しいのかまるで理解できない。
それなのに大の大人が、夢中になって俺の股間に顔を埋めて内壁をむしゃぶり尽くすその図は滑稽でもあり恐怖でもあった。
ふやけてるのではないかと思うほどこの男は俺の中をたっぷりと念入りに恐ろしいほどまでに執拗に味わった。逃げることも出来ないまま、大量の唾液を流し込まれたそこはメイジが舌を引き抜くと同時にどぷ、と溢れるのだ。中途半端に嬲られ、とろとろに濡れそぼった肛門を見てメイジは舌なめずりをするのだ。
「……なあ、スレイヴちゃん。あいつが今どこに行ってるか分かるか?」
「っ……な、に……ッ」
自分のベルトに手を伸ばしたメイジはそのまま片手で器用に外す。既に張り詰めていた下腹部は嫌でも目についた。それでも直視できない、したくもない俺の目の前、わざと見せつけるように緩めた着衣から引き摺り出した性器を俺の下腹部にぺちんと押し付けるのだ。その感触だけでも堪らず体が跳ねた。
散々弄られ、腫れ上がり、捲れたそこに触れる熱く硬い肉棒の感触に嫌でも昨夜の行為を体は思い出し、勝手に疼き出すのだ。口の中が酷く乾いていく。
逃げ場などはない、術もないのだ。ならば、と最後の抵抗のつもりで目を瞑って顔を逸らそうとするがすぐに頭を掴まれ、メイジの方を向かされた。
「ナイト迎えに行ってんだよ」
むに、と押し当てられた亀頭に意識を取られた瞬間だった。手首をぐっと掴まれる。その言葉の意味を理解するよりも先に部屋の扉が開いた。
「スレイヴ殿……ッ!」
なんで、これも夢か。メイジの見せた夢なのか。
何故ここに、この部屋に――ナイトが。
扉の前、こちらを見て顔色を変える男にそう、息を飲んだ瞬間。
「っ、な………………――~~ッ!!」
ずぷりと難なく挿入される性器に堪らず仰け反った。声を上げることもできなかった。開ききった毛穴からは汗という汗が玉のようにどっと吹き出し、目の前が白く染まる。
「ッ!……っふ、ぅ、待っで、ま゛ッ、ぁ、お゛ッ! ぐ、ぅううう……ッ!」
足首を掴まれたまま叩きつけるように根本まで挿入したメイジはそのままガクガクと震える俺の腰を捕まえたまま奥の感触を楽しむように浅く息を吐くのだ。
夢じゃない、夢ではないのだ。ナイトがそこにいる。なんで。
頭が真っ白になる。なんで俺は、こいつの前で、メイジに。
「……っ、ナイト、お前さあ来るの早すぎだろ……っ!」
「っ、メイジ殿……貴殿は……ッ」
そう、止めに入ろうとするナイトの背後。
顔を覗かせたそいつはベッドの上、メイジに犯されてる俺を見て「おー、やってんな」と楽しげに笑った。
そして、ナイトを宥めるようにその肩を抱くのだ。
「やめとけやめとけ、ナイト。こいつに何言ったって一緒だって。――これは俺らのパーティーの意向らしいしな」
対して驚くわけでもない、まるで最初からこの部屋で何が行われてるのか知っていたかのようなシーフの態度に頭が混乱する。他の奴らに見られてる、それ以上に、ナイトに見られてることがただ恥ずかしくて耐えられなくて俺は必死に藻掻こうとするが体が動かない。
「っ、み、るなぁ……ッ! 頼むから、見ないで、くれ……ッ!」
「なんだよ、さっきまでノリノリだったくせに大好きなナイトが来たから恥ずかしがってるのか?」
「っ、こ、ろす……ッ、殺してやる……ッ! ん、むぅ……ッ!」
「ッは、……ッ中きゅんきゅん締め付けておいて何言ったんだか……っ! おいナイト、お前は知らないだろ? スレイヴちゃんはこうやってケツの穴犯されるのが大好きなんだってよ……っ」
「っ、ち、がぁっ! 嫌だ、やめろ! 抜ッ! ぅ、う゛げ、ッ、抜けぇッ!」
やめろやめろやめろ頼む見ないでくれ、ナイト、嫌だ。こんなの嫌なのに、頭の中までぐちゃぐちゃに掻き混ぜられたみたいに何も考えられない。根本までずっぽり挿入されたまま奥を執拗に亀頭でぐちぐち押し潰されるだけで開いた喉からは汚い声が漏れた。ビクビクと痙攣する下腹部は隙間なくメイジに犯されたまま小刻みに揺すられ、その振動だけで既に勃起した性器は揺れる。
こんな間抜けな姿をナイトに見せてる事実が耐えられない。これだけは、絶対に。
「っ、ぁ、ぐ、ぅ……ッ! ふ、っ、ぅ……ッ!」
「やめろ……ッ! いますぐスレイヴ殿を離せ! こんな真似をしてどういうつもりだ……ッ!」
「……っそんなの分かってるだろ、勇者サマを傷付けた罰だ。……お前もあいつと同じ気持ちになってほしいってさ」
そうメイジが俺の髪を撫で、唇を落としたときだ。
「ッ、ぐ、ぅ!」とナイトの呻き声が聞こえてきて、全身が冷たくなる。
「悪いなー、ナイト。俺はあんたに恨みないんだがうちの坊っちゃんが難しい時期なんだわ、悪いがあいつの気持ちが晴れるまで我慢してくれよな」
ナイトを側の椅子に拘束したシーフはそう申し訳なさそうに笑う。そしてそのときだった、ナイトと目が合った。ショック、失望、違う、申し訳なさ、怒り、困惑――それらが混ざり合ったような形容し難い表情だった。それもほんの一瞬、俺から目を逸らすように目は瞑られる。そして『すまない』……そうナイトの唇が動いた瞬間、辛うじて形を保っていた一本の糸がぷちりと音を立てて引きちぎれたのだ。
夢だったらどれだけ良かっただろうか。
例えこれが夢だとしても耐えられなかった。
「っ、ぅ゛……ぐ、う……ッ! ぅ、や゛……め……ッろ゛……ぉ……~~ッ!」
「……っ、は、急に威勢良くなったな、スレイヴちゃん……ッ! そんなに愛しのナイトに見てもらえて興奮してるのか?」
「ち、が……ッぁ゛……ッ、ひ……ッ!」
「何が違うんだよ、こんなに精子くださいって人のチンポ締め付けておいて何言ってんだ?……っ、ほら、言・え・よ、今お前犯してるのは誰だ? 勇者サマでもナイトでもない」
「俺だよ、スレイヴちゃん」逃げる腰を捕まえられ、ひっくり返ったカエルみたいな無様な格好でピストンを繰り返され、声を上げることもできなかった。
嫌だ、やめろ、と拒もうとすれば頬を舐められ、耳を噛まれ、耳の溝、穴まで舐められる。
「っ、ぎ、ひ……ッ、嫌だっ、やめろ! め、いじ、や……ッ!」
「……っ、なんだ? スレイヴちゃんは耳まで感じやすいのか?」
「ッや、……ッ、ぅ……あ……ッ!」
耳朶の凹凸部分を舐められ、耳朶を口に含められそのまま甘く噛まれるだけで片耳が恐ろしいほどまでに熱くなる。鼓膜に直接染み込む濡れた品性の欠片もない音はただ不快なはずなのに、そのまま体を押さえつけて犯されるだけで余計何も考えられなくなるのだ。
「っ、は……スレイヴちゃんの耳、ぷりぷりしてて可愛いな」
「っや、……ッ、ぅ……やめろ……死ね……ッ! 死ね、この、ぉ……ッ、お゛……ッん゛ぅ……ッ!ふ……ッ、ぅ、う゛…………ッ!!」
顎を掴まれ、わざと音を立てるように舌を絡み取られる。吐き気がした。やめろ、と言おうとした瞬間さらに深くまで舌に犯されるのだ。上半身と下腹部メイジに犯される。
「う゛ッ、ふ……ッ、ぅ、~~……ッ」
声を殺したいのに、無理矢理開かされた喉奥からは奥を突かれる度にくぐもった声が漏れてしまう。汗が止まらない。せめてと目を硬く瞑り俺の姿を見ないようにしてくれてるナイトがただ耐えられなくて、俺は、何も考えられなかった。
ねちねちと責め立てるような動きから次第に大胆になってくる動き、早まるピストンに耐えられず声が漏れる。
「ん゛ッ! ぅ……うッ、ふ、ぅ……ッ!」
肌がぶつかり、潰れた肉の音が腹の中で響く。気持ちよくない、屈辱でしかない行為、それなのに痛いほど勃起した性器からはドロリとした精液が溢れ、下腹部の痙攣を抑えることはできなかった。照明の下、こちらを見下ろすメイジと目があった。唇を離したメイジは俺の手を捕まえ、手の甲の上から重ねるように手を握りしめた。
そしてぎゅっと指を絡められたときだ。
「ぁ゛ッ?! ぐ、ぅ、んぅう……ッ!!」
頭の中で、腹の中で熱が弾ける。ドクドクと流し込まれる熱にのたうち回りそうになるのをメイジは俺の手を捕らえたまま長い射精を終えるまで引き抜かなかった。そして、受け止めきれずに広がった穴から精液が漏れ出したとき、メイジはそのままゆっくりと腰を引き、硬いままの自らの性器を引き抜いた。
瞬間、中に出されたばかりの精液がどろりと溢れ出す。もう終わったのか、そう安堵するのも束の間。
「っ、ぁ、ひ……ッ!」
そしてそのまま体を抱き抱えられ、ベッドの上、胡座を掻いたメイジの上に背中を向けるよう座らせられるのだ。そして正面には椅子に座らせられたナイトと、その横、椅子の背もたれを肘掛け代わりにニタニタとこちらを見ていたシーフと目が合う。
「っ、や、め……ッ見るな……ぁ……――~~ッ!!」
そう懇願するよりも先に背後のメイジに体を抱き上げられたと思った次の瞬間、開いたまま閉じる暇もないそこに再び宛てがわれた亀頭の感触に息を飲む。まずい、と膝に力を込め、なんとか体勢を保とうとするが腕を掴まれ、ぐっと引っ張られれば呆気なくバランスは決壊し、ずぷっと根本まで一気に挿入される。脳天まで貫かれるような挿入に呼吸をすることもできなかった。
「ッ、……スレイヴ殿……っ」
「っ、ひ、ィ、見、るなッ、見るな、やめ、ッ! ぇ……ぉ、ぐッ、ぅ゛ぅう……ッ!!」
跨がるような体勢のまま下から突き上げられ、顔を隠したいのに両腕を掴まれてるせいでそれすらも許されない。
萎えるどころか既に限界まで勃起した性器に犯される。腰を揺さぶるように掴まれれば快楽から逃れることも出来ない。見るな、見ないでくれ。そう言いたいのに言葉すらも遮られる。
それどころか、片手で両腕を掴み、俺の腰に手を回したメイジはそのまま俺の膝を掴み大きく開脚させるのだ。
「な、ぁ……ッ!」
「っ、おい騎士サマ、よぉく見とけよ? 好きでもない男にケツにブチ込まれて娼婦みたいに腰振って喜ぶようなやつなんだよ、スレイヴちゃんは」
「ちっ、がッ! ひ、ぅ……ッ!」
「アンタがこいつを逃げ出す手引きをするからこんなことになったんだ、可哀想にな。昨夜も勇者サマに一晩中犯されてこんなに真っ赤に腫れてな……」
「っ、ゆ、うしゃ殿……」
「ぁ、き、くなぁ……っ! ナイト、っ、聞くな、こいつの……ッ、んぅううッ!」
腰を抜かれそうになったと思えば腿を掴まれ一気に突き上げられる。内臓を潰され、脳天まで意識が飛びそうになるほどの快感に堪らず呻いた。ビリビリと仰け反った瞬間、ピストンに合わせて揺れていた性器からどぷりと精液混じりの体液が溢れ出し、竿を伝って根本まで流れるのだ。
脳味噌全体に電流を流されたみたいに何も考えられなかった。全身の筋肉が弛緩し、ぴくぴくと痙攣する。そしてややあって再び腹の奥に吐き出される精液、その射精の熱と勢いに堪らず背筋が震えた。
「は……ぁ……ッんんぅ、……ふ……ッ」
上体を抱きかかえるようにして引き抜かれる性器。そしてそのまま二人に見せつけるように俺の足を開脚させたまま肛門を左右に押し広げるメイジに血の気が引いた。
「っ、や、め……ろ……っメイジ……っ」
「はっ……こんなに広がったか、ほら見ろよ。ここまでくればもう性器だ性器」
「男に突っ込んでもらうための穴だな」後孔から精液が溢れ、ベッドのシーツまでも汚す。あまりの恥辱に全身の血が熱くなる。項に吹きかかる吐息、絡みつくようなシーフの目、青褪めたナイトの顔。俺は、なにをしているのか。自分がどんな顔しているのか、どんな格好をしているのか。既にわからなくなっていた。脳が理解するのを拒否していた。
「……メイジっ、も、頼むから……止めてくれ……ッ、こんな……ッ!っ、ぁ……ッ!」
「……人を鬼みたいな言い方するなよ、全部お前が招いた結果だろ」
「なあ、ナイト」そう、溢れ出す精液を指で絡め取ったメイジはそれを俺の眼前で広げるのだ。鼻をつくような不快な雄の匂い、どろりとした液体が糸を引いて伸びるのを見て喉仏が上下する。
「お前も混ざれよ」
「……ッ貴殿は、正気か。こんなことをして……ッ」
「話聞いてただろ? ……これはうちのパーティーの意向だって――なあ? 勇者」
「……ッ!」
扉が開いたことにも気付けなかった。部屋の扉の前、メイジの視線の先にはいつの間にかあいつがいた。
――勇者。
その顔に表情はない。
咄嗟に足を閉じようとするが体が動かない。
――嘘だと言ってくれ。こんな茶番、全部嘘だと。
そう懇願するがあいつには一寸も届かない。
「……ああ、そうだな」
「っ、ゆ、うしゃ……」
「ナイト、こいつを抱けよ。俺が許可する」
そして、ベッドの側までやってきた勇者は俺の下腹部に手を伸ばし、既に口を開いたそこに指を捩じ込んでは中に溜まった精液を掻き出した。
目の前が真っ暗になった。鼓動が焼けるように熱くなり、腰が跳ねる。冗談じゃない。そう思うのに、体が動かない。メイジの妙な術のせいだとすぐに理解した。開きっぱなしの口からは浅い呼吸と唾液しか溢れない。
異様な空気だった。異を唱えるのはナイトしかいない。
「勇者殿……ッ、貴殿は、自分が何を言ってるのか分かってるのか!」
「ああ、そうだな」
「貴殿とスレイヴ殿は大切な仲間ではないのか」
「ああ、そうだ」
「ならば……――」
「それを先に裏切ったのはこいつだ」
「……ッ」
顎を掴まれ、勇者に顔を覗き込まれる。ぐちゃぐちゃに混ざり合った精液を掻き出され、荒い動作にも関わらず内壁を引っ掻かれる度に腰が揺れ、開いた口からは浅ましい声が漏れるのだ。
「っ、ぁ……や……ッ」
「スレイヴ、お前は言ったよな? ……このパーティーに残るためならなんだってするって」
「っ、ゆ、うしゃ……ッ」
「……だったらナイトに奉仕してやれよ、今までしてきたみたいに喉を使ってな」
「お…………まえ……ッ」
「出来ないのか? ――こいつが特別だからか?」
それはゾッとするような冷たい目だった。見たことのない勇者の顔に俺は背筋が冷たくなっていくのを感じた。
「悪いことは言わねえよ、勇者サマの言うこと聞いとけ?」
「そうそう、しゃぶるくらい獣でもできる」
シーフとメイジが囃し立てる。二人のどうでもいい野次すら頭に入ってこなかった。やめろとナイトは口を動かした。しなくていい、そんなこと。望んでいないと目で訴えかけてくるのだ。
けれど。
「…………できないのか? スレイヴ」
「……ッ、……」
「この男がどうなってもいいのか」
それは俺にだけ聞こえる声量で耳打ちされた。ぎょっと顔をあげれば、至近距離でやつと目が合う。
「やれば、いいんだろ……ッ」
皮肉のつもりか、メイジの妙な魔法も解かれていた。あれほど糸が切れたように脱力していた体も動いた。舌も回る。自分の意思でやれということか。
――本当に、反吐が出る。
「っ、スレイヴ殿、やめろ」
「……アンタは悪くない、全部……俺のせいだ」
だから、とベッドを降りた俺は縺れそうになりながらも椅子に括り付けられたナイトの前までやってきた。
俺だけが辱めを受けるだけならまだいい、けど、この男に何かあればと思うと酷く恐ろしくなった。それは勇者が有言実行する男だとずっと側で見てきていたからこそ、余計。
スレイヴ殿、と名前を呼ぶ声が僅かに震えていることに気付いた瞬間息が苦しくなる。
俺は、酷いことをしている。今まで助けてくれたナイトに……。
「っ、……悪い……目、瞑っててくれ」
そうすれば視覚的なショックは和らぐはずだ。そう慰めにもならないことを言うことで精一杯だった。
応援ありがとうございます!
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