アダルトな大人

田原摩耶

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よいこの御主人様倶楽部

スキあらば好きせよ

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「……ここが原田さんの部屋」
「時川さん、時川さんは俺の手伝いをお願いします。……原田さんは寝ててください」

「あい……」

 そう言う笹山に半ば強引にベッドへと寝かされて暫く、何やらダイニングの方からは笹山と司の声が聞こえてくる。
 それから暫く五分に一回の頻度で司が様子を見に来ては、俺の体温を計ろうとしては笹山が「体温チェックはまだいいです」と司を回収しにきていた。

 ……なんだか賑やかだな。
 翔太とルームシェアすることになってから、俺が二日酔いのときとかは毎回翔太が看病してくれていた。
 逆のときもあったが、それでもなんだか新鮮だった。俺の交友関係が狭いのもあるからだろうけども。

 そんなことを考えながらうつらうつらしてる内に眠気に襲われる。
 熱と寒気と安堵の中、俺はそのまま深い眠りへと意識を手放した。


 ……。
 …………。
 ………………。


『……だから、……』
『って言っても、……』
『つーかお前……』

 ……なんだ?なんか騒がしいな。
 つか、俺、なんで寝てんだっけ……。
 汗、気持ち悪ぃし……シャワー浴びてーな……。

 なんて寝返りを打というとしたときだった。むぎゅ、と何かが当たった。そして、そのまま体を抱き締められる。
 抱きしめ……?

「……って、え……」
「……ん、起きた? 原田さん」
「………………」

 ……いや、なんで司がここに居るんだ。

「司、なにして……」
「辛そうだったから」

 辛そうだったから……?!辛そうだったからベッド潜り込んできたのか……?!
 どういうことだ。いやでも見たところ澄んだ目をしてるし脱がされた形跡もない。……本当に善意なのか。

「水、飲む? 喉飴もあるけど……あ、ご飯。笹山のやつが起きて食べれそうだったら呼んでって言ってたけど」
「そうか……けど、いい。もうちょい寝たい……」
「……原田さん、辛そう」
「まあな。……てか、司お前も離れとけよ。ここにいたら伝染すかもしんねーし……ケホッ」
「俺は風邪、あんま引かないから」

 本当かよ。けど確かに体力あるしな……いやしらねーけど。

「てか、お見舞い……ありがてえけど無理しなくていいって……他の奴らにも言ってて。帰りたくなったら帰って良いって」
「……原田さんさ」
「んぁ?」
「帰んない。……そんな弱ってる原田さん残して帰れるわけないし」

 少なくとも俺は、と司の掌が額へと伸びる。汗やら寝癖で乱れまくってた前髪を掻き上げられ、つい言葉に詰まった。
 珍しく司が真面目な顔をしていたのもあるだろう。

「司……」
「多分、あいつらもそのつもりだと思うけど。……その中でも俺が一番思ってるけど」
「そ、そうか~……?」

 笹山はともかく、四川の顔を思い浮かベてつい口元が緩む。多分安心させるためなんだろうけど、悪い気はしねえ。
 ん、と小さく顎を引いて頷く司。

「だから、ゆっくり休んでていいから」
「……お前って、そういうところ……モテそうだよな」
「別に」
「……なんだよ、謙遜か?」
「原田さん以外にこんなことしない」
「…………」

 音に表すなら多分『キュン』が一番近いのかもしれない。覗き込んでくる司と目が合って、つい俺は布団を頭までかぶる。「原田さん」と布団越しに司の声が落ちてきたが、上手く感情を噛み砕けない。
 丁度弱ってた心にクリーンヒットしたみたいな、そんな感じだ。だからこれは不可抗力みたいなもんであって断じてやましいものでもなんでもない。

「……ありがとな」
「……原田さん」
「ふ、布団に入ってくんなって! ……気持ちだけで嬉しいから、お前もあっちでゆっくりしてろ」

「俺は二度寝する」と布団から少し顔を出せば、こちらを見つめていた司は「わかった」と少しだけ寂しそうな顔をして頷く。そしてぽんぽんと俺の布団を叩く。

 それから案外あっさりと司は部屋から出ていって、俺も眠りについた。
 部屋の外から『テメェ姿見えねえと思ったら何あいつんところ行ってんだ!!』という四川のクソでけえ声が聞こえてきたが、なんかそれもいい感じのノイズになって眠れてしまった。

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