アダルトな大人

田原摩耶

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土砂降り注ぐイイオトコ

悪の組織の縦社会

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「きっ、紀平さんまで……」

 少なからずともまともだろうと思っていたが、いやまだ二人に比べたらまだいいが、なんだろうかこの恐怖感。

「あはは、いやーだってせっかくなんだから形から入ろうよって提案してみたんだけどね、まさかここまでなんてさ」
「なッ!あ、あんたがやらねえと手伝わねえって言い出したんだろうが!」
「は?お前は自分から着替えたんだろ」

 真顔で返す紀平さんに四川は「うぐっ」と言葉に詰まる。
 紀平さんが首領という時点で察しはついていたが段々力関係が見えてきたぞ。

「まぁこれならほら、宣伝にもなるからいいでしょ」

 そして、無理やり四川を黙らせた紀平さんは笑い掛けてくる。この人めっちゃ楽しんでる。
「値札貼っておきましょうか」「言いながら税込み五百円を俺に貼るな!!」となにやら揉めている怪人と司令官はこの際おいておこう。
 この場合、全ての主導権を握っているキヒラ…紀平さんに話をした方が早そうだ。

「かなたん、ごめんねしせ「怪人フォーリバーです」…怪人フォーリバーのせいで」
「おい!あんたが命令したんじゃないですか!」
「き、キヒラーさん…」
「あ、かなたんもノッちゃうタイプなんだ」

 と思っていたが、どうやらここに連れてこられたのは紀平さんのお陰のようだ。
 だとしたらそう簡単には帰してもらえるだろうか。

「ま、それならよかった。お詫びと言ってはなんだけどほら、かなたんの分も用意しておいたから」

 お詫び?
 顔を上げれば、どこからともなく紀平さんが取り出したのは日曜朝9時の女児向けアニメに出てきそうな魔法少女服。恐ろしいことにその衣装は明らかに女児サイズでも無ければ女もののサイズではなく、紳士サイズだった。

「嫌だ、く、来るなぁー!」
「首領キヒラー…原田さんが嫌がってます」
「とかいいつつ期待してるんだよ。ほら、しせ「フォーリバー!」…フォーリバー、そいつを拘束しろ」
「はっ?なんで俺があんたの命令…」
「へぇ~、首領の命令が聞けないと」

 笑う紀平さんに、四川が青褪める。
 職権乱用だ、と突っ込みたかったが今は四川の下っ端怪人の立場を心配してる場合ではない。
 どさくさに紛れてさっさと逃げようとするが、

「チッ…!」

 思いっきり服を掴まれ、引き戻される。

「っぁ、てめ、くそ、この露出狂!」
「ほっとけ!」

 どうやら本人も気にしていたようだ。
 同情するが、だからといって易易と捕まる気にはならない。と言った傍から柱に縛り付けられたのでもう無理だ。俺は諦めることにした。

 どうしてこうもついていないのか。
 四川と掴み合いになった結果、なんとか魔法少女に転職せずには済んだが代わりに雑に柱に括りつけられてしまう結果になってしまった。余計悪化してるとかわかってる。

「原田さん………………可愛い」
「前々から思ってたけどお前の可愛いの基準はおかしい」
「いやいや、俺も前から思ってたんだけどさ、かなたんって荒縄とか似合いそうだよね」

 紀平さんの目が笑っていない。まじだ。まじで荒縄があったら使う気満々の目だ。

「き、ひら、さ…」
「ツッカーサー君」
「はい」
「俺が囮になるから君は、上、行ってきてよ。仕組みは分かるだろ?」

 上?上ってどこだろうか。…じゃなくて、ちょっと待て、囮ってことは…。

「しかし、頭首キヒラー…」
「頭首と司令官、どっちが偉いか知ってるよね」
「……」
「偉い人の命令は絶対だよね、ツッカーサー君」

 やばい。しかも紀平さんじゃなくて完全に頭首キヒラーの方だ。
 正直キヒラーもツッカーサーもいつもとどう違うのかわからないが完全にこの状況を楽しんでいるのは見て明らかだ。

「…御意」

 あっ、 ツッカーサー司令官そういうキャラなのか、なるほどわからん。 

 渋々ながらも出ていく司に安堵するも束の間、残ったのは自称怪人露出狂と一番敵にしたくない人だ。
 これは司にいてもらった方がよかったのではないかと思いたくなる人選だが、司がいたらいたで余計悪化しそうな気がしてならないので取り敢えず俺は柱と同化することにした。
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