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第二部 高校生編
その音楽家はニシンの燻製が好きです
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なじみとの妙に甘ったるい夕食終えて就寝し、問題なく登校した。
彼シャツを見せられて襲わなかったのは英断だと思うが、惜しいことをしたとも思う。
いつか彼シャツ状態でしてくれるよう頼んでみよう。
そもそも平日では時間が無さすぎる。
一発ヤったらもう終わりだ。前戯に時間を掛けているし、フィニッシュは気絶してしまうし。
その割にはお互い満足しきってるわけでもないし。
どこかの休日で一日ずっと続けるというのも良いかもしれない。
終わったころには地獄絵図不可避だが、掃除の手間より優先されるべきことがある。
その場合は彼シャツに限らず色んな衣装で変化を付けていきたい。
衣装だけではなく、プレイの幅も広げた方が楽しめるだろう。勿論、お互い嫌なことはしないという前提になるが。
「安心院、ここの空欄は?」
「武布津神命」
「チッ、正解」
今舌打ちしたなこの教師。
この歴史の教師はどうら不意打ちで難問を出す意地悪なタイプらしく、それでクラス全体に油断のできない雰囲気を作って真面目に授業を受けさせるのだ。
まあ初日の印象なので、初回故の『つかみ』なのかもしれないが。
ふう、と一つ溜息をついて思考を切り替える。
いかんいかん、なじみの彼シャツが強烈過ぎて未だに頭がエロよりになってしまっている。少なくとも今は授業に集中しなければならない。
いやしかし、傾国の美少女が目の前でエロい格好をして、いつでもウェルカム体勢とか一男子として『そっち』方面に寄らないわけがない。
とはいえ、ここまではあくまでも俺の望みであって、なじみの望みではない。
ほぼ同棲状態とはいえなじみにも都合はあるだろうし、都合がつかない時に強引に迫ってもなじみを困らせるだけだ。
それでも受け入れてはくれるとは思うが、問題はそこじゃない。
盛りの付いた猿じゃあ無いんだ。
文化的な生活をしながら、その合間合間に獣欲を満たす。
人間なのだから、それぐらいがちょうどいいだろう。
「安心院、ここは?」
「史奈津彦命」
「チッ、正解だ」
つーかなんでこんなに古事記を重点的にするんだ・・・趣味か?
*
おそらく担当者の趣味に彩られたのであろう歴史の授業を終え、そのまま他の授業も無難に消化していく。
幸い中学の復習レベルのものしか出てこず、一般受験の連中からすれば余裕綽々の授業だ。
昼休みは雄大の紹介で数人男友達が増え、予想以上に盛り上がった。
特に盛り上がった話題は、結局の所猥談であった。やはり思春期男子は猥談で繋がる。
「巨乳うううううううううぅぅぅぅ!!」
「ロリいいいぃぃぃぃいいいいいい!!」
「貴ッ様ぁ! あの母性と女性を象徴するふくよかな丸みを否定するかぁ!」
「何が母性と女性だ! そんなもん世俗にまみれた汚れ女の象徴じゃボケがぁ!! 清純無垢なロリこそ至高!!」
そんなことを大声で言うのだから、同伴しているこっちの身にもなってほしい。
幸い校舎裏で人気のない所だったために、俺の人権がなくなるという事はなかったが。
ただ、二人ともロリ巨乳だけは『邪道』として否定していた。
ロリ巨乳に否定が入る度に雄大がぴくっと反応していたのは気の所為である。多分、きっと、めいびー。
俺としては議論していた属性の人間すべてに会ったことがあるし、ある程度の人脈も確保しているので、誰の援護もできないところだった。
変に入部してきて軽音部が活発になれば俺が困るので、利根川部長の紹介はしないで置いた。
*
で、さらに授業を消化して放課後。
本日は図書委員の会合である。
話を聞けば、どうやら昼休みと放課後のどちらかに図書委員として図書館に駐在し、本の貸し出しや返却の処理、来館者のカウントをするのが仕事らしい。
どちらも規定時間になればその時点で帰って良いそうだ。
ただし、放課後だと文芸部と被るとのこと。
俺は当然放課後を選んだ。
でないと図書委員にした意味がない。元より微と交流するためだけに入ったのだし。
結果水曜日の放課後は図書委員として活動し、その後軽音部に行く事になった。
今日は火曜日なので、明日から早速仕事である。
簡単に説明された諸々を頭に叩き込んで部活へ向かった。
*
「やあやあ安心院君! 今日はお互いの演奏を聞かせ合おうじゃないか! 理解し合うならそれが最善だ!」
「ちょっと何言ってるかわかんないですね」
理解し合うなら同棲するのが最善だと思う。男女ならばセックスを含めて。
なじみとの実体験である。
さて、エロ漫画か何かの世界ならここで『理解し合うならもっと良いのがありますよ』などと言って勃起させ、その催淫効果で利根川部長をおいしくいただくところであろうが、あいにくここは幼馴染イチャラブ純愛日常モノの世界である。そんなことはしない。
そもそもリスキーすぎるし。
「というかなんでそんなにテンションが高いので?」
「そりゃあ勿論、僕が入部してから初めての部員が居るからね! テンションの一つや二つ上がるさ!」
聞けば軽音魂の参加人数が『二人』であることに昨日家で一人感動していたのだとか。
ロリらしくさぞかし可愛らしい喜びようだったのだろう。
まあなじみとは比べるべくもないが。
「むっ、何か失礼なことを考えてるね」
「さて、どの思考が失礼に当たるのか不明なので分かりませんね」
「・・・君、実は僕のことあんまり敬ったりしてないだろ」
「年功序列だけで敬われようというその気概が何よりの証明では?」
「・・・特に反論も思いつかないね」
じゃあ、と一言前置きしてギターの掛けてあるラックに移動する利根川部長。
「僕の華麗な演奏で君に『ぎええビックリだぽよぉおぎえっぎえっ』と言わせてあげよう」
「驚きのあまりそう言う知的生命体が居るなら多分そいつは人間じゃないですね」
「聞いてもらおうか、ジゼル・カーヴィンで『帝王』」
聞いたことはない人名と曲名だ。
ピアノの練習でこの世界のクラシックは大体聞いている。ならば近代作曲家だろうか。
そうして利根川部長が演奏したのは実に壮大な一曲であった。
ギターに関しては詳しくないのでよくわからないが、初めはゆっくりと、段々強烈でダイナミックになっていく音の変遷は周辺諸国を一纏めにしていく『帝王』の名にふさわしいだろう。
一瞬で音がくすぶるようなものに変わった。
すぐに帝王の音に戻り、暴力的な音が続く。
しばらくその暴力的な音が続き、最後に帝王の音が大きくかき鳴らされ、演奏は終わった。
部屋の中を静寂が、いや、余韻が満たす。
時間にして5分ほどの演奏だったが、利根川部長はほんのりと汗ばみ、顔も上気している。
幼児体形であることを加味しても色っぽいその姿だが、俺はそれを微塵も意識していなかった。
だって、その演奏があまりにも素晴らしかったから。
「・・・どう、かな?」
静寂に耐えきれなくなったのか、利根川部長がおずおずと聞いてくる。
自信なさげな表情は、人前で演奏することに不慣れだからだろうか。
「ぎええビックリだぽよぉおぎえっぎえっ」
「君、気持ち悪いぐらい付き合ってくれるね」
「今の驚きを一番表現できるのがこれだと思ったんで」
これを言う奴は人間じゃないなんて言ってしまったが、一部分に限れば実際人間ではないし、別に良いだろう。
「ふふーんどうだい? 尊敬した?」
「いえ別に」
「あれぇ!?」
そもそも技術を持つ人間と尊敬に値する人間がイコールなのかは疑問だ。
勿論その技術を培うまでになされた努力たるや、想像を絶することだろう。
しかしそれはあくまでも技術者としての話であり、人間として高い評価を得たいならば、技術だけではなく人格も優れているべきではないだろうか。
「そういうわけで演奏者としては尊敬していますよ」
「人間として尊敬していないって言ってるのと同じだよね、それ?」
「尊敬とは作るものではなく生まれるものであり育つものだと思いますよ」
他動詞なのがミソ。
「結構ずけずけ言うね・・・まあいいや、ところで安心院君、君はさっきの一曲に何を感じた?」
「演奏で分かり合えるってやつですか?」
「そうだとも。僕は一人の時はずっと演奏していたから、技術には自信がある。けれどそれだけで会話ができる程表現力に長けているとは思わない。だから演奏後に感想を聞きたいのさ。ちゃんとした会話でね」
さっきの曲は『会話』ではなく『物語』に聞こえた。
人語なんて一つもないのにストーリー性を持たせるなんて充分凄い表現力だと思うが。
当初の落ち着いた音は帝国の発足当時。
盛り上がっていく音は帝国の繁栄と周辺諸国の征服。
くすぶるような音は謀略。
帝王の音はそのまま帝王を表現し、後に続く音は暴力、つまり軍であり戦争だ。
最後に大きく鳴り響いたのは帝王の音。そして一気に終わったところから『帝王は戦争の最中謀略によって討ち取られたが、最後までその誇りを失うことはなかった』という事だろう。
「・・・帝王、というよりは戦王、という感じでしたね」
「お、わかる? わかっちゃう? 栄枯盛衰、あるいは盛者必衰の理をあの曲の中に見出すとは・・・やるね?」
「いや、利根川部長の演奏が良かったからですよ」
「僕の技術なんて木っ端みたいなものさ・・・でもその中に表現したいことを見出してくれるのは、嬉しい」
利根川部長は少しはにかむように笑った。それは外見不相応、年相応の笑顔だった。
そのギャップにドキリと来るものがないと言えば嘘になる。
それが予想外故に起きたものだとしても。
「ヨシ! 安心院君には僕のことを『梅雨ちゃん』と呼ぶ権利を上げよう!」
「部長、そういう所ですよ」
「あれぇ!?」
彼シャツを見せられて襲わなかったのは英断だと思うが、惜しいことをしたとも思う。
いつか彼シャツ状態でしてくれるよう頼んでみよう。
そもそも平日では時間が無さすぎる。
一発ヤったらもう終わりだ。前戯に時間を掛けているし、フィニッシュは気絶してしまうし。
その割にはお互い満足しきってるわけでもないし。
どこかの休日で一日ずっと続けるというのも良いかもしれない。
終わったころには地獄絵図不可避だが、掃除の手間より優先されるべきことがある。
その場合は彼シャツに限らず色んな衣装で変化を付けていきたい。
衣装だけではなく、プレイの幅も広げた方が楽しめるだろう。勿論、お互い嫌なことはしないという前提になるが。
「安心院、ここの空欄は?」
「武布津神命」
「チッ、正解」
今舌打ちしたなこの教師。
この歴史の教師はどうら不意打ちで難問を出す意地悪なタイプらしく、それでクラス全体に油断のできない雰囲気を作って真面目に授業を受けさせるのだ。
まあ初日の印象なので、初回故の『つかみ』なのかもしれないが。
ふう、と一つ溜息をついて思考を切り替える。
いかんいかん、なじみの彼シャツが強烈過ぎて未だに頭がエロよりになってしまっている。少なくとも今は授業に集中しなければならない。
いやしかし、傾国の美少女が目の前でエロい格好をして、いつでもウェルカム体勢とか一男子として『そっち』方面に寄らないわけがない。
とはいえ、ここまではあくまでも俺の望みであって、なじみの望みではない。
ほぼ同棲状態とはいえなじみにも都合はあるだろうし、都合がつかない時に強引に迫ってもなじみを困らせるだけだ。
それでも受け入れてはくれるとは思うが、問題はそこじゃない。
盛りの付いた猿じゃあ無いんだ。
文化的な生活をしながら、その合間合間に獣欲を満たす。
人間なのだから、それぐらいがちょうどいいだろう。
「安心院、ここは?」
「史奈津彦命」
「チッ、正解だ」
つーかなんでこんなに古事記を重点的にするんだ・・・趣味か?
*
おそらく担当者の趣味に彩られたのであろう歴史の授業を終え、そのまま他の授業も無難に消化していく。
幸い中学の復習レベルのものしか出てこず、一般受験の連中からすれば余裕綽々の授業だ。
昼休みは雄大の紹介で数人男友達が増え、予想以上に盛り上がった。
特に盛り上がった話題は、結局の所猥談であった。やはり思春期男子は猥談で繋がる。
「巨乳うううううううううぅぅぅぅ!!」
「ロリいいいぃぃぃぃいいいいいい!!」
「貴ッ様ぁ! あの母性と女性を象徴するふくよかな丸みを否定するかぁ!」
「何が母性と女性だ! そんなもん世俗にまみれた汚れ女の象徴じゃボケがぁ!! 清純無垢なロリこそ至高!!」
そんなことを大声で言うのだから、同伴しているこっちの身にもなってほしい。
幸い校舎裏で人気のない所だったために、俺の人権がなくなるという事はなかったが。
ただ、二人ともロリ巨乳だけは『邪道』として否定していた。
ロリ巨乳に否定が入る度に雄大がぴくっと反応していたのは気の所為である。多分、きっと、めいびー。
俺としては議論していた属性の人間すべてに会ったことがあるし、ある程度の人脈も確保しているので、誰の援護もできないところだった。
変に入部してきて軽音部が活発になれば俺が困るので、利根川部長の紹介はしないで置いた。
*
で、さらに授業を消化して放課後。
本日は図書委員の会合である。
話を聞けば、どうやら昼休みと放課後のどちらかに図書委員として図書館に駐在し、本の貸し出しや返却の処理、来館者のカウントをするのが仕事らしい。
どちらも規定時間になればその時点で帰って良いそうだ。
ただし、放課後だと文芸部と被るとのこと。
俺は当然放課後を選んだ。
でないと図書委員にした意味がない。元より微と交流するためだけに入ったのだし。
結果水曜日の放課後は図書委員として活動し、その後軽音部に行く事になった。
今日は火曜日なので、明日から早速仕事である。
簡単に説明された諸々を頭に叩き込んで部活へ向かった。
*
「やあやあ安心院君! 今日はお互いの演奏を聞かせ合おうじゃないか! 理解し合うならそれが最善だ!」
「ちょっと何言ってるかわかんないですね」
理解し合うなら同棲するのが最善だと思う。男女ならばセックスを含めて。
なじみとの実体験である。
さて、エロ漫画か何かの世界ならここで『理解し合うならもっと良いのがありますよ』などと言って勃起させ、その催淫効果で利根川部長をおいしくいただくところであろうが、あいにくここは幼馴染イチャラブ純愛日常モノの世界である。そんなことはしない。
そもそもリスキーすぎるし。
「というかなんでそんなにテンションが高いので?」
「そりゃあ勿論、僕が入部してから初めての部員が居るからね! テンションの一つや二つ上がるさ!」
聞けば軽音魂の参加人数が『二人』であることに昨日家で一人感動していたのだとか。
ロリらしくさぞかし可愛らしい喜びようだったのだろう。
まあなじみとは比べるべくもないが。
「むっ、何か失礼なことを考えてるね」
「さて、どの思考が失礼に当たるのか不明なので分かりませんね」
「・・・君、実は僕のことあんまり敬ったりしてないだろ」
「年功序列だけで敬われようというその気概が何よりの証明では?」
「・・・特に反論も思いつかないね」
じゃあ、と一言前置きしてギターの掛けてあるラックに移動する利根川部長。
「僕の華麗な演奏で君に『ぎええビックリだぽよぉおぎえっぎえっ』と言わせてあげよう」
「驚きのあまりそう言う知的生命体が居るなら多分そいつは人間じゃないですね」
「聞いてもらおうか、ジゼル・カーヴィンで『帝王』」
聞いたことはない人名と曲名だ。
ピアノの練習でこの世界のクラシックは大体聞いている。ならば近代作曲家だろうか。
そうして利根川部長が演奏したのは実に壮大な一曲であった。
ギターに関しては詳しくないのでよくわからないが、初めはゆっくりと、段々強烈でダイナミックになっていく音の変遷は周辺諸国を一纏めにしていく『帝王』の名にふさわしいだろう。
一瞬で音がくすぶるようなものに変わった。
すぐに帝王の音に戻り、暴力的な音が続く。
しばらくその暴力的な音が続き、最後に帝王の音が大きくかき鳴らされ、演奏は終わった。
部屋の中を静寂が、いや、余韻が満たす。
時間にして5分ほどの演奏だったが、利根川部長はほんのりと汗ばみ、顔も上気している。
幼児体形であることを加味しても色っぽいその姿だが、俺はそれを微塵も意識していなかった。
だって、その演奏があまりにも素晴らしかったから。
「・・・どう、かな?」
静寂に耐えきれなくなったのか、利根川部長がおずおずと聞いてくる。
自信なさげな表情は、人前で演奏することに不慣れだからだろうか。
「ぎええビックリだぽよぉおぎえっぎえっ」
「君、気持ち悪いぐらい付き合ってくれるね」
「今の驚きを一番表現できるのがこれだと思ったんで」
これを言う奴は人間じゃないなんて言ってしまったが、一部分に限れば実際人間ではないし、別に良いだろう。
「ふふーんどうだい? 尊敬した?」
「いえ別に」
「あれぇ!?」
そもそも技術を持つ人間と尊敬に値する人間がイコールなのかは疑問だ。
勿論その技術を培うまでになされた努力たるや、想像を絶することだろう。
しかしそれはあくまでも技術者としての話であり、人間として高い評価を得たいならば、技術だけではなく人格も優れているべきではないだろうか。
「そういうわけで演奏者としては尊敬していますよ」
「人間として尊敬していないって言ってるのと同じだよね、それ?」
「尊敬とは作るものではなく生まれるものであり育つものだと思いますよ」
他動詞なのがミソ。
「結構ずけずけ言うね・・・まあいいや、ところで安心院君、君はさっきの一曲に何を感じた?」
「演奏で分かり合えるってやつですか?」
「そうだとも。僕は一人の時はずっと演奏していたから、技術には自信がある。けれどそれだけで会話ができる程表現力に長けているとは思わない。だから演奏後に感想を聞きたいのさ。ちゃんとした会話でね」
さっきの曲は『会話』ではなく『物語』に聞こえた。
人語なんて一つもないのにストーリー性を持たせるなんて充分凄い表現力だと思うが。
当初の落ち着いた音は帝国の発足当時。
盛り上がっていく音は帝国の繁栄と周辺諸国の征服。
くすぶるような音は謀略。
帝王の音はそのまま帝王を表現し、後に続く音は暴力、つまり軍であり戦争だ。
最後に大きく鳴り響いたのは帝王の音。そして一気に終わったところから『帝王は戦争の最中謀略によって討ち取られたが、最後までその誇りを失うことはなかった』という事だろう。
「・・・帝王、というよりは戦王、という感じでしたね」
「お、わかる? わかっちゃう? 栄枯盛衰、あるいは盛者必衰の理をあの曲の中に見出すとは・・・やるね?」
「いや、利根川部長の演奏が良かったからですよ」
「僕の技術なんて木っ端みたいなものさ・・・でもその中に表現したいことを見出してくれるのは、嬉しい」
利根川部長は少しはにかむように笑った。それは外見不相応、年相応の笑顔だった。
そのギャップにドキリと来るものがないと言えば嘘になる。
それが予想外故に起きたものだとしても。
「ヨシ! 安心院君には僕のことを『梅雨ちゃん』と呼ぶ権利を上げよう!」
「部長、そういう所ですよ」
「あれぇ!?」
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