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おまけ第4章 生まれた君に、感謝の指輪を その1
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妊娠期間は大体10ヶ月。
正直妊娠した直後は、10ヶ月なんて長いだろうな……と漠然と思っていた。
けれど、実際お腹の中ですくすくと育っていく子供との生活は、もちろん体力的に辛いこともあったけれど、同時に新しい発見もあった。
「美空、体調はどう?」
リビングのソファにゆったり腰掛けながら、赤ちゃん用の靴下を編んでいた私の横に座った理玖は、手に持っていたレモネードが入ったマグカップを、私に渡した。
つわりが酷かった時に、唯一飲むことができたのが理玖が作ったレモンの酸味がさっぱりしたレモン水だったのだが、いつの間にか私の大好物になっていた。
私は一口飲んで、喉を潤してから
「うん、今日はすごく良いの」
と答えた。
「そっか」
優しい眼差しでそう言うと、理玖は私のお腹に耳を当てながら
「パパだよー。聞こえる?」
と、声をかける。
「早く会いたいなぁ……」
「理玖が、そんなに赤ちゃんが好きだなんて知らなかったよ」
理玖は、私の妊娠がわかってから、それはそれは驚くくらいにケアをしてくれた。
私がつわりでご飯が食べられない時は、何が食べられるのか一緒に考えてくれた。
家事も、私の負担にならないようにと積極的にやってくれた。
定期検診へも、時間を作っていつも一緒に手を繋いで連れて行ってくれた。
そして、毎晩一緒に眠るベッドの上で、優しく私のお腹を撫でながらこう囁いてくれるのだ。
「お前に早く会いたいよ」
と。
理玖は、本当に優しかった。
それは知っていたつもりだった。
けれど、彼の父親としての顔は、私が想像していたよりもずっと温かかった。
この人が、私の子供の父親になってくれてよかったと、何度も感謝した。
「もうすぐ予定日だけど……本当に大丈夫か?」
「うん、今日もいつも通りだったよ」
「そっか」
理玖はそう言いながら、私を抱き寄せて額にキスを落とす。
「お前は、勝手に自己完結するのが得意だからな」
「もう……まだそのこと根に持ってるの?」
理玖は、10年以上前の事を時々ちくりと刺すように言ってくる。
「違うよ」
「じゃあ、何?」
私が、口を尖らせて聞くと
「怒るなよ」
と言いながら私の頭を撫でてくる。
「もう、1人で悩むなよってことだよ」
「ふふ。頼りにしてます」
私は、理玖の唇に軽いキスを落とす。
そっと唇を離しながら理玖の目を見ると、もっと欲しいと訴えているのがわかった。
しょうがないな……と思いながら、今度は少し口を開けて理玖の唇に再びキスを落とす。
理玖の唇もすぐに開き、唇を絡ませ合うキスを長い時間、じっくりと交わした。
「んんっ……」
「美空……愛してるよ……」
呼吸のために唇をそっと離すたびに、理玖は私にそうささやく。
「私も、愛してる……」
そうして、何回か愛を囁き合っていると、急にお腹の辺りに違和感を覚えた。
何かが、いつもとおかしい。
そう思ったその時。
「あっ……!?」
「どうした!美空!?」
話には聞いていた。
それでも、やっぱりその時が来てしまうと、どうしても戸惑ってしまった。
「破水したかも……」
「え!?」
正直妊娠した直後は、10ヶ月なんて長いだろうな……と漠然と思っていた。
けれど、実際お腹の中ですくすくと育っていく子供との生活は、もちろん体力的に辛いこともあったけれど、同時に新しい発見もあった。
「美空、体調はどう?」
リビングのソファにゆったり腰掛けながら、赤ちゃん用の靴下を編んでいた私の横に座った理玖は、手に持っていたレモネードが入ったマグカップを、私に渡した。
つわりが酷かった時に、唯一飲むことができたのが理玖が作ったレモンの酸味がさっぱりしたレモン水だったのだが、いつの間にか私の大好物になっていた。
私は一口飲んで、喉を潤してから
「うん、今日はすごく良いの」
と答えた。
「そっか」
優しい眼差しでそう言うと、理玖は私のお腹に耳を当てながら
「パパだよー。聞こえる?」
と、声をかける。
「早く会いたいなぁ……」
「理玖が、そんなに赤ちゃんが好きだなんて知らなかったよ」
理玖は、私の妊娠がわかってから、それはそれは驚くくらいにケアをしてくれた。
私がつわりでご飯が食べられない時は、何が食べられるのか一緒に考えてくれた。
家事も、私の負担にならないようにと積極的にやってくれた。
定期検診へも、時間を作っていつも一緒に手を繋いで連れて行ってくれた。
そして、毎晩一緒に眠るベッドの上で、優しく私のお腹を撫でながらこう囁いてくれるのだ。
「お前に早く会いたいよ」
と。
理玖は、本当に優しかった。
それは知っていたつもりだった。
けれど、彼の父親としての顔は、私が想像していたよりもずっと温かかった。
この人が、私の子供の父親になってくれてよかったと、何度も感謝した。
「もうすぐ予定日だけど……本当に大丈夫か?」
「うん、今日もいつも通りだったよ」
「そっか」
理玖はそう言いながら、私を抱き寄せて額にキスを落とす。
「お前は、勝手に自己完結するのが得意だからな」
「もう……まだそのこと根に持ってるの?」
理玖は、10年以上前の事を時々ちくりと刺すように言ってくる。
「違うよ」
「じゃあ、何?」
私が、口を尖らせて聞くと
「怒るなよ」
と言いながら私の頭を撫でてくる。
「もう、1人で悩むなよってことだよ」
「ふふ。頼りにしてます」
私は、理玖の唇に軽いキスを落とす。
そっと唇を離しながら理玖の目を見ると、もっと欲しいと訴えているのがわかった。
しょうがないな……と思いながら、今度は少し口を開けて理玖の唇に再びキスを落とす。
理玖の唇もすぐに開き、唇を絡ませ合うキスを長い時間、じっくりと交わした。
「んんっ……」
「美空……愛してるよ……」
呼吸のために唇をそっと離すたびに、理玖は私にそうささやく。
「私も、愛してる……」
そうして、何回か愛を囁き合っていると、急にお腹の辺りに違和感を覚えた。
何かが、いつもとおかしい。
そう思ったその時。
「あっ……!?」
「どうした!美空!?」
話には聞いていた。
それでも、やっぱりその時が来てしまうと、どうしても戸惑ってしまった。
「破水したかも……」
「え!?」
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