十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

和泉杏咲

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おまけ第3章 真珠に託した愛の祈り その1

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神様の前で愛を誓い合った直後の夜は、月明かりがいつもよりも美しかった。
シャワーでお互い体を清め合った後、理玖は生まれたままの姿で、私はこの日のために用意した、白いレースで作られたランジェリーを身につけてからベッドに横たわる。

「これ、どうしたの?」

理玖は、私の胸元を隠す薄い布を摘みながら聞いてくる。

「…………言わなくても、分かってよ」

理玖の妻として、最初に理玖に抱かれるのだ。
少しでも可愛く思われたいというのが、女心というものだ。
理玖は、そんな私の心を読んだのか、耳たぶを軽く噛みながら

「すっごい可愛い」

と囁いてくいる。
自分の吐息で、私の体が震えるのを理玖は楽しんでいるようだった。

「感じてる?」
「…………見れば分かるでしょ」
「美空の口から聞きたいんだ」

だったら、話す隙を少しでも与えてくれればいいものの。
理玖の手は私のランジェリーの裾から中に侵入して、私の素肌を直接撫で始める。
最初はおへそ回り、次に腰、背中。
理玖の手が上がっていくのと一緒に、ランジェリーがどんどん捲れていく。

「やばい……美空……」

右側の乳首だけが、理玖の前に晒されたタイミングで、理玖が手の動きを止めた。

「どうしたの?」
「……スケッチしたい」
「は?」

何をいきなり言い出すんだろう。

「こんな綺麗でいやらしい美空……絵にしたい」

あ、この顔は本気だ。
男の顔の中に混じる、芸術家としての顔。
そんな2つの人格が今、理玖から見え隠れしている。

私は、理玖の頬を両手で押さえて、キスができる距離まで理玖の顔を引き寄せる。
お互いを求める息の音が、耳に直接響く。
心臓も吐息に合わせてどくん、どくんと波打ち、理玖の目の中に私が映っている。
この瞬間が、私はたまらなく好きだ、と思った。
けれども……。

「やめて」

それとこれとは、別だ。

「どうして」
「恥ずかしすぎる」

理玖が美大時代にたくさんの裸婦を描いてきたのも知っている。
今でも、人体構造の勉強のためにと、男女問わず裸の絵をトレーニングと言って描くのも知っている。
自分よりずっと美人でスタイルの良い女性の裸に視線を向ける理玖に、複雑な気持ちを抱いたのも1度や2度ではない。
でも……。

「私……絵に残せるような体じゃないから……」

結婚式のために、少しは頑張ってダイエットしたけれど。
余計なお肉は少ししか取れてくれなくて、どうにか矯正下着という魔法のツールでまともにしてもらったのが、昨日の花嫁姿の裏事情。
そしてそんな私の体を、ガラスに触れるような優しい手で撫でてくる男は、ギリシャ彫刻のような極上の顔を体を持っている。

「……私の方が、理玖をスケッチしたい」
「ダメ」

理玖は間髪入れずにそう言うと、私のいただきに唇を寄せた。
他の誰にも聞かせたことのない、私の彼だけの声が、空に向かって放たれる。

「俺はお前を愛するのが先だ」

そう言いながら、私の声が荒くなっていくのを楽しむかのように、胸の膨らみに鎖骨、二の腕、そして手へと、理玖の唇と手が動いてく。
そして最後に辿り着くのは……。

「んっ……理玖……くすぐったいよ……」

私の指先を逃さないようにと、自分の指をしっかり絡めた理玖は、毎回私の指先全てに口づけをしてくる。

「でもお前、俺にこうされるの……嫌いじゃないだろ?」

好きだろ、とは聞かないのが理玖らしいと思った。

「うん……好き……」

でも私が本当に好きなのは

「そうか……じゃあもう1回……」

と、涙が出るのではないかという程顔を歪ませながら微笑む、理玖の顔。

「待って、私も」

理玖の唇が私の手にとられる前に、私が理玖の唇を愛する。
理玖の形の良い唇が、私の舌で舐められるたびに気持ちよさに震えてくれる瞬間が、たまらなく愛おしい。

「美空……こんなのどこで覚えたの?」
「さあ、どこでしょう」

私がごまかすと

「いいよ、体に聞くから」

と言って、私をベッドに押さえつけてから、今度は私の入口を隠す下着を、理玖はゆっくりと下ろしていく。
理玖を求めていた証拠の糸が、きらりと光る。
理玖はその糸を手に取って

「待ってた?」

と意地悪く聞いてくる。

「分かってるくせに……」
「美空の口から聞きたい」

それは、10年。
私が彼を待たせてしまったからこその、彼なりの私へのちょっとした仕返しなのかもしれない。


「……待ってる。今も、この先も、理玖を待ってるの」
「美空……!!」

この私の言葉が合図となり、理玖と私は体をつなげる。
そして、本能丸出しのヒトという生物として、お互いを貪り尽くす。
私は理玖の本能を出さないように必死に咥え、理玖もまた、私の中へ深く入り込もうと、必死に泳ぐ。
そして理玖は、私の体が欲したタイミングで、理玖の遺伝子を私の子宮へと送り込む。

私と理玖の間に生まれるであろう、新しい命を想いながら……。
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