62 / 71
おまけ第2章 星を刻んだ結婚指輪に愛を誓う その1
しおりを挟む
私と理玖の入籍日は、父の葬式から四十九日経ってすぐ。
「10年待ったんだから、1年も待てるわけがない」
という理玖の意向によるもの。
さすがの理玖も、忌中の間は待ってくれてはいたが、それが明けてからは
「いつ入籍する?」
と仕切りに聞いてくるようになった。
ちなみにこの時、すでに私は理玖の部屋で生活する時間が多くなっていた。
父親が入院してからほとんど一人暮らし状態が続いてはいたが、それでも一人ぼっちは寂しいというのも理由だったが、なかなか理玖がベッドから私を離してくれなかった……というのもあるには、ある。
入籍までにスピードについては……私の場合はすでに父母は亡くなってしまっているので、反対する親戚もいなかった。
むしろ
「これで美空ちゃん、寂しくないわね」
と言ってくれる人もいたくらいだ。
どちらかと言えば私が気にしたのは、理玖の両親だ。
10年前の経緯は知っているだろうか。
知らなかったら、急に連れてきた女とすぐ結婚したいという息子にどんな気持ちになるだろう。
知っていたとしたら、失恋させた女と元さやに戻ってすぐに結婚する息子のことを、咎めたりはしないだろうか。
理玖は
「結婚なんてお互いが良ければいいじゃん」
と言ったが、流石に挨拶なしで入籍はあり得ないと主張させてもらった。
「うちの両親のことなんか気にしなくてもいい」
きっぱり言う理玖。
でも私は、やはり気になってしまう。
「ダメだよ。やっぱりちゃんと挨拶をしないと……」
もし10年前のことを知っていたら、きちんと謝罪をしないといけない……という自分の思いも含めて理玖にぶつけると
「うーん……」
と一瞬悩んでから、私を抱き寄せてからぽんぽんと頭を軽く叩く。
まるで私を落ち着かせるように。
「まあ……見てもらえば、分かるか」
「え?」
「気にしなくてもいいって言った理由」
まるでいたずらっこのような笑みを浮かべた理玖は、そのまま私の手を繋いだままスマホをいじった。
「ああ、もしもし母さん。久しぶり」
なんと、この場で理玖が電話をかけたのは、理玖のお母さんへだったらしい。
「うん……そう。彼女連れて行くから。待ってて」
え、今から!?
そんなことを考えたのが、理玖にはお見通しだったらしく
「善は急げっていうからな。それに」
理玖は、私の手を握っている手に力を込めて
「また逃げられないようにしなきゃ」
と真顔で言ってから、奪うようなキスを唇にした。
「ところで、挨拶終わったら、美空も満足だろう?」
「え?」
「役所行ってすぐに手続きするから。ハンコだけ持って。なければ途中で買うから」
そうして出かけた先は、浅草橋。
職人が多いと言われる町に、理玖の実家があった。
ご両親はというと、理玖のお父さんは伝統工芸の職人、お母さんは私でも知っている有名なイラストレーターさんだった。
名刺で名前を見た時に泡を吹きそうになった。
「あらー可愛いお嬢さんね。今度のイラストのモデルになってもらいたいけど、いいかしら」
「やめて、有料だから」
「お、彼女か。男の子が生まれたら俺の後継にしてもいいか?」
「勝手に決めんなバカ親父」
などと、それぞれから普通にフランクに話しかけられ、理玖がそれに対していちいち突っ込んでるのが、とても可愛かった。
「だから、会わせたくなかったんだ」
理玖の両親の家を後にし、入籍を済ませた帰り道。
一緒に理玖の家に戻る道中に、理玖がぼやく。
「でも、安心したな……」
「何に?」
私の呟きに、理玖が不思議そうに聞く。
「私を、家族だって受け入れてくれて」
もうすでに、父も母もいない。
家族と呼べる人もほとんど残っていない。
この世界で、私と血がつながっている人を感じられないだけで、こんなに不安な気持ちになるなんて知らなかった。
でも、そんな中で理玖が側にいてくれて、家族になりたいと言ってくれたこと。
理玖を大事にしている家族が、私を家族だと受け入れてくれること。
そのことが、私に絶対的な安心感を与えてくれていた。
理玖は、私の言葉にいたずらっ子のような笑みを浮かべてから耳元でこう囁く。
「新しい家族も、早く作らないとな」
その言葉の意味は、これから熱い夜を過ごすということ。
まだ外だというのに、そんなことを隠さずストレートに言う理玖に戸惑いはするが、それが嫌ではない自分もまたいる。
きっとそれは私も同じ気持ちだから。
「優しくしてくれる?」
私が、わざと上目遣いでいうと、理玖は私の唇を塞ぐように軽くキスをしてから
「優しくしたいけど、激しくなったらごめん」
と予告をしてきた。
「10年待ったんだから、1年も待てるわけがない」
という理玖の意向によるもの。
さすがの理玖も、忌中の間は待ってくれてはいたが、それが明けてからは
「いつ入籍する?」
と仕切りに聞いてくるようになった。
ちなみにこの時、すでに私は理玖の部屋で生活する時間が多くなっていた。
父親が入院してからほとんど一人暮らし状態が続いてはいたが、それでも一人ぼっちは寂しいというのも理由だったが、なかなか理玖がベッドから私を離してくれなかった……というのもあるには、ある。
入籍までにスピードについては……私の場合はすでに父母は亡くなってしまっているので、反対する親戚もいなかった。
むしろ
「これで美空ちゃん、寂しくないわね」
と言ってくれる人もいたくらいだ。
どちらかと言えば私が気にしたのは、理玖の両親だ。
10年前の経緯は知っているだろうか。
知らなかったら、急に連れてきた女とすぐ結婚したいという息子にどんな気持ちになるだろう。
知っていたとしたら、失恋させた女と元さやに戻ってすぐに結婚する息子のことを、咎めたりはしないだろうか。
理玖は
「結婚なんてお互いが良ければいいじゃん」
と言ったが、流石に挨拶なしで入籍はあり得ないと主張させてもらった。
「うちの両親のことなんか気にしなくてもいい」
きっぱり言う理玖。
でも私は、やはり気になってしまう。
「ダメだよ。やっぱりちゃんと挨拶をしないと……」
もし10年前のことを知っていたら、きちんと謝罪をしないといけない……という自分の思いも含めて理玖にぶつけると
「うーん……」
と一瞬悩んでから、私を抱き寄せてからぽんぽんと頭を軽く叩く。
まるで私を落ち着かせるように。
「まあ……見てもらえば、分かるか」
「え?」
「気にしなくてもいいって言った理由」
まるでいたずらっこのような笑みを浮かべた理玖は、そのまま私の手を繋いだままスマホをいじった。
「ああ、もしもし母さん。久しぶり」
なんと、この場で理玖が電話をかけたのは、理玖のお母さんへだったらしい。
「うん……そう。彼女連れて行くから。待ってて」
え、今から!?
そんなことを考えたのが、理玖にはお見通しだったらしく
「善は急げっていうからな。それに」
理玖は、私の手を握っている手に力を込めて
「また逃げられないようにしなきゃ」
と真顔で言ってから、奪うようなキスを唇にした。
「ところで、挨拶終わったら、美空も満足だろう?」
「え?」
「役所行ってすぐに手続きするから。ハンコだけ持って。なければ途中で買うから」
そうして出かけた先は、浅草橋。
職人が多いと言われる町に、理玖の実家があった。
ご両親はというと、理玖のお父さんは伝統工芸の職人、お母さんは私でも知っている有名なイラストレーターさんだった。
名刺で名前を見た時に泡を吹きそうになった。
「あらー可愛いお嬢さんね。今度のイラストのモデルになってもらいたいけど、いいかしら」
「やめて、有料だから」
「お、彼女か。男の子が生まれたら俺の後継にしてもいいか?」
「勝手に決めんなバカ親父」
などと、それぞれから普通にフランクに話しかけられ、理玖がそれに対していちいち突っ込んでるのが、とても可愛かった。
「だから、会わせたくなかったんだ」
理玖の両親の家を後にし、入籍を済ませた帰り道。
一緒に理玖の家に戻る道中に、理玖がぼやく。
「でも、安心したな……」
「何に?」
私の呟きに、理玖が不思議そうに聞く。
「私を、家族だって受け入れてくれて」
もうすでに、父も母もいない。
家族と呼べる人もほとんど残っていない。
この世界で、私と血がつながっている人を感じられないだけで、こんなに不安な気持ちになるなんて知らなかった。
でも、そんな中で理玖が側にいてくれて、家族になりたいと言ってくれたこと。
理玖を大事にしている家族が、私を家族だと受け入れてくれること。
そのことが、私に絶対的な安心感を与えてくれていた。
理玖は、私の言葉にいたずらっ子のような笑みを浮かべてから耳元でこう囁く。
「新しい家族も、早く作らないとな」
その言葉の意味は、これから熱い夜を過ごすということ。
まだ外だというのに、そんなことを隠さずストレートに言う理玖に戸惑いはするが、それが嫌ではない自分もまたいる。
きっとそれは私も同じ気持ちだから。
「優しくしてくれる?」
私が、わざと上目遣いでいうと、理玖は私の唇を塞ぐように軽くキスをしてから
「優しくしたいけど、激しくなったらごめん」
と予告をしてきた。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~
けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。
してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。
そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる…
ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。
有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。
美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。
真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。
家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。
こんな私でもやり直せるの?
幸せを願っても…いいの?
動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?

再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!


包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる