十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

和泉杏咲

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第3章 別れるためのピンキーリング その21

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それから、理玖は私を抱えて、隠されていた階段で2階へと上った。
ここに理玖が住んでいるのだろうか。
10年前のアトリエと、ほぼ同じレイアウトの空間が広がっていた。
窓の側には、かつて愛し合ったベッドが置かれていた。

理玖は、そっと私をベッドに押し倒す。
私は、何も言わずに理玖の首に手を回す。
再び唇を重ねた私たちは、そのまま舌を絡め合いながら互いの衣服を剥ぎ取る。

本当に、良いのか。

理玖の唇が、そう囁いたように感じたが、私は分からないフリをした。
なんてずるい女なのだろう。
それでも、こうしないときっと、1度蘇った熱は消えてくれない。

これは、私と理玖がもう1度別れるための儀式。
今度こそ、後悔が残らないように。

理玖は、私の指先を丹念に愛していく。
私の中には、ドロドロに溶けた欲の塊が溜まっていく。
その欲を、理玖は口と指でかき混ぜていく中で、私は馬鹿なことを考えてしまった。
金属が熱で溶けて形が変わるように、このまま私と理玖も溶けて、1つの作品として蘇ることができればいいのに……、と。
そして、時が来て、私は理玖の熱の中身を受け止める。
擦り合う熱情は、1つ1つ形を作っていく。
この作品にもし名前をつけるなら……初恋の果て。

「ああっ……」
「美空…………!」


あなたが、欲しい。
私は、それを受け入れてはいけない身のはずだったのに。
何もかも忘れて彼に全てを委ねたいと思ってしまった。

本来は、許されてはいけない行為だとしても、私は彼の全てに再び囚われてしまいたかったのだ。
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