【完結】「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

和泉杏咲

文字の大きさ
上 下
111 / 164
5.運命の舞踏会まであと少し

控えめに言って、キモい

しおりを挟む
 その日の夜、再びのエドヴィン王子執務室での秘密会合にて。

「ねえ、どう思います?隊長」

 もう、ニーナはアレクサンドラに「隊長じゃないんですけど」というツッコミをするのをやめた。
 というより、それ以上のツッコミポイントが今目の前にあるため、それどころではないと言った方が正しい。

「控えめに言って、キモいです」
「そうですわよね。許されるなら吐きたいほどキモいですわ」
「やめてください。色々問題が起きます」

 こそこそではなく、堂々と普通の会話の大きさに相当する60デシベルの声でニーナとアレクサンドラは、目の前の生き物をディスっている。
 なぜなら。

「ああ……可愛かったなあ……俺の妃……」

 わざわざ窓の外の月を見るという、恋する男を演じる舞台俳優がやるような、お決まりのクサい動きをエドヴィン王子はしている。

「何あれ。俺の妃とか。もう所有欲丸出し」
「まだ決まってませんけどね」
「たかだか、庭を手つないで散歩したくらいで。これだからドーテーは」
「言いましたね。言っちゃいましたね」
「すでにあれ、イッちゃってるから問題ないわ」
「否定はしません」

 エドヴィン王子は、鼻歌まで歌い始めた。
 
「いやですわね。妄想だけできっと20人くらい子供作ってるんでしょうね」
「それは身体的に負荷がかかりすぎなので、現実では実現して欲しくないですね」
「ねえ隊長」
「なんでしょうか」
「何か、ムカつきますわよね」
「同意しかない」
「このままくっつけるのも、なんかちょっと、とんとん拍子すぎてつまらないと思わない?」
「それについては、私には別案がございます」
「何?別案って」
「人間は、中途半端にいいことが起きてから中途半端に悪いことが起きた時よりも、徹底的にいいことが起きてから悪いことが起きた方が、よりショックを受けると聞いたことがあります」
「……なるほど」
「試練は、幸せの絶頂の時にさせるのが良いかと」
「……あなた、誰の味方なの?」
「私は私の味方です」
「いいわね。そういうの大好きよ」
「私も、アレキサンドラ様の貴族なのに下品さもあるところ、好みです」

 そんな会話を、60デシベルをキープしたまま会話したというのに、当のエドヴィン王子はまっっっっっったく気づく様子もなく、リーゼとの愛を深める作戦を考え始めていた。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

私を愛してくれない婚約者の日記を読んでしまいました〜実は溺愛されていたようです〜

侑子
恋愛
 成人間近の伯爵令嬢、セレナには悩みがあった。  デビュタントの日に一目惚れした公爵令息のカインと、家同士の取り決めですぐに婚約でき、喜んでいたのもつかの間。 「こんなふうに婚約することになり残念に思っている」と、婚約初日に言われてしまい、それから三年経った今も全く彼と上手くいっていないのだ。  色々と努力を重ねてみるも、会話は事務的なことばかりで、会うのは決まって月に一度だけ。  目も合わせてくれないし、誘いはことごとく断られてしまう。  有能な騎士であるたくましい彼には、十歳も年下で体も小さめな自分は恋愛対象にならないのかもしれないと落ち込む日々だが、ある日当主に招待された彼の公爵邸で、不思議な本を発見して……?

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。 『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。 『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。 『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。 不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。 ※設定はゆるいです。 ※たくさん笑ってください♪ ※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

逃げて、追われて、捕まって (元悪役令嬢編)

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で貴族令嬢として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 *****ご報告**** 「逃げて、追われて、捕まって」連載版については、2020年 1月28日 レジーナブックス 様より書籍化しております。 **************** サクサクと読める、5000字程度の短編を書いてみました! なろうでも同じ話を投稿しております。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている

百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……? ※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです! ※他サイト様にも掲載

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える

たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。 そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!

処理中です...