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3.リーゼVSそれぞれ

やはり生は格別

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 その頃リーゼは、与えられた部屋のベッドの上に転がりながら、喜びを噛み締めていた。

「推しが……!とうとう生の推しが私が作った服を受け取ってくださった……!!」

 普段、リーゼが手のひらサイズの洋服をせっせと作り、彼らの彫刻に着せているだけでも満足ではあったが、やはり生は格別だった。

「殿下の受け取り方の仕草は、男性の割には上品でしたので、綺麗に絹が揺れましたわね」

 リーゼの推しを見る目は、まさに瞬間録画機。
 前世にて、散々使っていた録画機能が使えないことを嘆き悲しみながら

「録画ができないなら、自分で録画をすればいいじゃない?」

 と開き直って編み出したのが、脳内瞬間記録動画バージョンただし推しに限る、という能力だった。

「ああ……アレクサンドラ様が受け取る時は、少し眉間に皺を寄せていらっしゃって……照れていらっしゃるのかしら……」

 だが、リーゼの中のアレクサンドラは、恥じらう乙女の中に情熱的な面を持ち合わせており、いざやる時はやる、という人物像になっている。
 そのため、女性らしいフォルムをできる限り強調させ、ロマンチックだが確実に初夜を成功させられるような寝巻きをアレクサンドラには渡したのだった。

「ふふふ……早く……あの寝巻を着たお二人が初夜を迎える日が、楽しみですわ……」

 もちろん、初夜の現場を見ることは間違いなくできないだろうことは、リーゼも理解はしていた。
 だが、良い夜を過ごした後というのは分かるもの、とリーゼは学んだ。
 肌がより艶やかになる、とか。
 より距離が縮まった話し方になる、とか。
 初夜の後は四六時中くっついて離れなくなる、とかとか。
 全て『蜜愛文庫』から得た情報ではあったが、リーゼはそれが正しいと信じていた。

「ああ、いけないわ。覚えている情報を記録しなくては」

 脳の瞬間記録動画は、リーゼの妄想が始まるとあっという間に消えてしまう。
 それを防ぐために、必死でスケッチブックに文字として感動を残していた時に、ニーナが戻ってきた。

「リーゼ様。少し宜しいでしょうか」
「今、忙しいの」
「明日ですが、街にお出かけしていただきます」
「…………街に?」
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