上 下
17 / 164
2.推しカプのために

エドアレを早く摂取しなくては……

しおりを挟む
 さらにそんなこんなを繰り返し、あっという間に婚約者試験当日。

「ねえ、ニーナ?」
「何でしょう、リーゼ様」
「私、この窮屈なドレスを着ないといけないのかしら?」
「はい」
「……絶対?」
「絶対です」

 この日、ニーナがリーゼに着せたドレスは、今令嬢の間で流行している、シンプルかつ上品なレースで仕立てられたドレスで、薄い桃色が女性らしさを演出している。
 さらにそれだけではなく、普段はリーゼが絶対にしたがらない、ルビーのイヤリングと、同じくルビーで作られたチョーカーも身に付けさせている。
 髪の毛は、エドヴィン王子が一目惚れした日と同じように流しているが、真珠の髪飾りを編み込んでいるため、いつもの10倍増しに輝いている。
 1つだけ残念なのは、眼鏡だけはどうしてもつけさせないといけないこと。そうしなければ、試験どころか歩くことすら危険だから、これは仕方がない。
 ちなみにエドヴィン王子は、一目惚れした姿こそ眼鏡なしの姿ではあったものの、それからことあるごとにリーゼが出没するスポットに、まるでストーカーのごとくお忍びで見に行っていたことから、リーゼの普段の姿も、一応把握はしていた。
 ちなみに、エドヴィン王子からその話を聞いた時、ニーナはいろいろな意味で自分の耳を疑った。

「正気ですか?」

 ニーナは、真顔で尋ねた。
 だがその後、晴れやかな笑顔で

「令嬢は、どのような姿でも可憐で……俺の理想の女性だ」

 などと、エドヴィン王子に言われてしまったものだから「……もう何も言うまい」状態にニーナがなってしまったというのは、別のお話。

 そんなこんなで、ニーナによって人生で最も着飾られたリーゼは、まさか自分が嫁ぐために開かれた婚約者試験などと夢に思うことなく

「エドアレを早く摂取しなくては……」

 と言いながら、スキップをしながら城に駆け込んでいった。
 ニーナは、そんな主人の背中を見送りながら、こう心の中で念じた。

「よろしくお願いしますね。リーゼ様。私の不労所得生活のために」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

相槌を打たなかったキミへ

BL / 完結 24h.ポイント:1,157pt お気に入り:20

声劇台本置き場

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:1

僕はあなたの“神様”なので。

現代文学 / 完結 24h.ポイント:4,274pt お気に入り:1

CINDERELLA

恋愛 / 完結 24h.ポイント:859pt お気に入り:9

隣国の王子様が好き?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:8

苺の誘惑 ~御曹司副社長の甘い計略~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:489pt お気に入り:37

チョコミント・アイスクリーム

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:540pt お気に入り:1

安楽椅子から立ち上がれ

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:795pt お気に入り:0

タクシーA

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:795pt お気に入り:0

天地人

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:8

処理中です...