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1.萌えは私の栄養素
教えてくれないか? どんな男が彼女の心を掴むのか
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「お前は、よく令嬢と一緒にいるメイドだな」
「……はい」
「じゃあ、お前が1番令嬢のことを知っているわけだな」
「……さあ、それは、どうでしょう……」
ニーナは、何故かエドヴィン王子に拉致されて、王子が乗ってきた馬車に突っ込まれていた。
「どうでしょう、とはどういう意味だ」
「私のご主人様は、かなり変わりも……ではなくて……少々他のご令嬢とは違う趣味を持っておりまして……私のような一介のメイドでは、あの方の全てを理解するのは、到底無理でございます」
ニーナは、心の底から本気でそう答えた。
「ふむ……だとしても、普段の令嬢のことを知っているのだろう?」
「見える範囲であれば」
「では、教えてくれないか?」
「何をです」
「どんな男が彼女の心を掴むのか……とか……」
ニーナは、とても言えるはずはなかった。
おそらく今1番リーゼの心を掴みまくっているのは、間違いなくエドヴィン王子である。
でなければ、この美しすぎる顔を精巧に表現した彫刻を作るだけに飽き足らず、自分のおしゃれなど後回しにして、彼を模した彫刻のために数多くの小さな服を作りまくるはずはないのだ。
それだけを言えば、何を血迷ったのかはわからないが、リーゼに求婚をした目の前の高貴な人は大層喜ぶかもしれないと考えた。
だが、そこにセットでついてくるのが、アレクサンドラの存在。
リーゼにとって、アレクサンドラという至高の女性とセットで並んでいるエドヴィン王子こそが、崇拝の対象であり
「アレクサンドラ様以外の女性が横に並んでいる姿など悍ましくて見たくもない」
とマジ顔で繰り返すのだ。
そんなことを、この王子に言ったらどんな反応をするのだろうか。
色んな意味で、これを口にすることは、ニーナにはできそうになかった。
下手したら、何かが飛ぶ気がする。
「リーゼ様は、恋とか愛には興味がないようですので」
半分は本当だ。
自分の恋愛は二の次三の次。
「じゃあどうすればいいのだ」
「どうすればって……」
ニーナは困った。
何故、たかが男爵のメイドの1人の自分が、この国の王子は必死に助けを求められてしまっているのだろうか、と。
逃げよう。面倒なことになる前に。
直感的にそう思ったニーナは、意を決してこう言った。
「私はただのメイドですので。お役に立てず申し訳ございません。これ以上殿下の貴重な時間を奪ってしまうのも申し訳ないので」
あくまでも、エドヴィン王子のために去るのだ。
そう伝わるように、ニーナは言葉を選んだ。
「いや。俺にとってはこの時間こそが重要だ。彼女を手に入れるためには、お前が必要だからな」
えええ……と言いそうになるのをグッと堪えるために、ニーナは唇を噛んだ。
「それにしてもお前……ただのメイドではないな」
「どういう意味です?」
「彼女が王妃になった際に、十分彼女を支えられる力があると考えた」
と、いうより。
アレについていけるメイドの方が少ないのではないか、とニーナは考えた。
「彼女を王妃にしたら、お前も一緒に城に来い」
「私なんか、滅相もございません」
城には、全国から集められた優秀なメイドたちがいると聞く。もちろんそれ以外の面倒臭そうな噂も。
そんな中に、自分が入ることなどニーナは考えたくもなかった。
が、次のエドヴィン王子の言葉が、ニーナの心を一変させた。
「今の金子はいくらだ?100倍は出せると思うが」
「喜んで」
ニーナは、お金のためであれば簡単に心変わりできるほど、お金を欲していた。
「……はい」
「じゃあ、お前が1番令嬢のことを知っているわけだな」
「……さあ、それは、どうでしょう……」
ニーナは、何故かエドヴィン王子に拉致されて、王子が乗ってきた馬車に突っ込まれていた。
「どうでしょう、とはどういう意味だ」
「私のご主人様は、かなり変わりも……ではなくて……少々他のご令嬢とは違う趣味を持っておりまして……私のような一介のメイドでは、あの方の全てを理解するのは、到底無理でございます」
ニーナは、心の底から本気でそう答えた。
「ふむ……だとしても、普段の令嬢のことを知っているのだろう?」
「見える範囲であれば」
「では、教えてくれないか?」
「何をです」
「どんな男が彼女の心を掴むのか……とか……」
ニーナは、とても言えるはずはなかった。
おそらく今1番リーゼの心を掴みまくっているのは、間違いなくエドヴィン王子である。
でなければ、この美しすぎる顔を精巧に表現した彫刻を作るだけに飽き足らず、自分のおしゃれなど後回しにして、彼を模した彫刻のために数多くの小さな服を作りまくるはずはないのだ。
それだけを言えば、何を血迷ったのかはわからないが、リーゼに求婚をした目の前の高貴な人は大層喜ぶかもしれないと考えた。
だが、そこにセットでついてくるのが、アレクサンドラの存在。
リーゼにとって、アレクサンドラという至高の女性とセットで並んでいるエドヴィン王子こそが、崇拝の対象であり
「アレクサンドラ様以外の女性が横に並んでいる姿など悍ましくて見たくもない」
とマジ顔で繰り返すのだ。
そんなことを、この王子に言ったらどんな反応をするのだろうか。
色んな意味で、これを口にすることは、ニーナにはできそうになかった。
下手したら、何かが飛ぶ気がする。
「リーゼ様は、恋とか愛には興味がないようですので」
半分は本当だ。
自分の恋愛は二の次三の次。
「じゃあどうすればいいのだ」
「どうすればって……」
ニーナは困った。
何故、たかが男爵のメイドの1人の自分が、この国の王子は必死に助けを求められてしまっているのだろうか、と。
逃げよう。面倒なことになる前に。
直感的にそう思ったニーナは、意を決してこう言った。
「私はただのメイドですので。お役に立てず申し訳ございません。これ以上殿下の貴重な時間を奪ってしまうのも申し訳ないので」
あくまでも、エドヴィン王子のために去るのだ。
そう伝わるように、ニーナは言葉を選んだ。
「いや。俺にとってはこの時間こそが重要だ。彼女を手に入れるためには、お前が必要だからな」
えええ……と言いそうになるのをグッと堪えるために、ニーナは唇を噛んだ。
「それにしてもお前……ただのメイドではないな」
「どういう意味です?」
「彼女が王妃になった際に、十分彼女を支えられる力があると考えた」
と、いうより。
アレについていけるメイドの方が少ないのではないか、とニーナは考えた。
「彼女を王妃にしたら、お前も一緒に城に来い」
「私なんか、滅相もございません」
城には、全国から集められた優秀なメイドたちがいると聞く。もちろんそれ以外の面倒臭そうな噂も。
そんな中に、自分が入ることなどニーナは考えたくもなかった。
が、次のエドヴィン王子の言葉が、ニーナの心を一変させた。
「今の金子はいくらだ?100倍は出せると思うが」
「喜んで」
ニーナは、お金のためであれば簡単に心変わりできるほど、お金を欲していた。
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