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Fight2 まさか僕以外の奴となんか、食事に行かないよね?
9.明日のランチ、上司命令だから
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「ごめんね?この人先約があって……」
「え?先約あんてありまし………っ!?」
加藤さんが私の肩を掴んでいない方の手で、私の腰を思いっきりつねってくる。
地味に痛い。痛すぎる。
「いや、でも高井さん帰ろうとしてましたし」
と地味チャラ男が口を開くと、加藤さんは何かを企んだ笑みを浮かべる。
……恐らく今日1番の、怖い顔。
「じゃあ……君達がさ……やる?」
「何を?」
返事が私とチャラ男ズと被ってしまった。
加藤さんはそんなことを一切気にした様子もなく言葉を続ける。
「まず新規クライアントに挨拶の電話100件」
「え!?」
そんなの聞いてない。
「次に、売上に関する報告書、これも100件分」
「は!?」
おいおい、待て待て。
そんな仕事量、この時間からの先約では済まないレベルだよな?
それをするくらいならまだ、チャラ男ズと飲みに行く方がまだましじゃあ……。
ちらりと、チャラ男ズに視線を送る。
チャラ男ズは、私の視線を分かりやすく逸らすと
「あ~わかりました」
「すんません、失礼しました~!」
というセリフを残して、トンズラした。
「あ、ちょっと」
待って、と私が言い終わる前に、すでに別の女の子に声をかけ始めていた。
その行動の素早さを、もう少し仕事にも生かせばいいのに……というお節介な言葉が喉から出てきそうになった。
「はぁ……」
真横から、盛大なため息が聞こえてきた。
「な、なんですか!?」
加藤さんが心底呆れた顔をして私を見ている。
あれ?もしかして私、本当に仕事、言われてたっけ?
私が忘れてただけ!?
「あのぉ……加藤さん……?私本当に仕事……」
そう私が言うと、いつの間にか落としていた私のカバンを押し付けてきた。
「誰からの誘いも受けず、真っ直ぐ帰ること」
「は?」
「上司命令」
「はい?」
「まさか僕以外と一緒に食事なんか行かないよね?」
「だから、あの?」
「じゃ、また明日」
加藤さんはそう言うと、とっとと自分の席に戻ろうとした。
え?
つまり、あのチャラ男ズから私を助けてくれたってこと?
「ちょっと待ってください!」
私は加藤さんのスーツの裾を掴んだ。
「何するんだ!スーツを引っ張るな!」
加藤さんが足を止める。
「あの、加藤さん……」
今までだったら、素直にこう言う事を言えなかった相手。
だけど、今日の出来事で、ほんの少しだけど心を開いてもいいかもしれないと思えた。
この人にも、優しいところがあると、知ることができた。
だから……。
「ありがとう、ございました」
私がそう言うと、加藤さんはピタッと体の動きを止めた。
「いきなり何?」
「あの、だから今日の訪問の件と……今……」
「……別に……これ、普通だから……」
ぼそり、と加藤さんが返事をする。
「あ、そう……ですか?」
「上司の仕事だからそうしただけだから」
加藤さんはそれだけ言うと、足早に自分の席に戻っていく。
「なんだ……つまらないの……」
と、私は無意識に呟いていた。
さて、帰ろう……と思ったその時、スマホに着信が入る。
なんだろう……と思って画面を操作すると
「え!?」
加藤さんからのメールが入っていた。
いつの間に打ったのだろう?
すでに加藤さんはまた、別のクライアントと電話で話している様子だった。
私は、まじまじと、その画面を確認する。
「明日のランチ、上司命令だから」
と書かれていた。
私はどう返事をしようか、少しだけ悩んだが、この近くで1番高くて美味しいと評判の店のURLだけ送ってやった。
それを、あの上司はどう解釈するのだろうか。
ほんの少しだけ、明日がくるのが楽しみになった。
ちなみに、その日の帰り道の乙女ゲームは、イマイチ入り込めなかったが、それはシナリオが悪かったからに違いない。
決して、返事がくるかどうかを楽しみにしていたから、ではない。
Winner 不明
Fight3へ続く……
「え?先約あんてありまし………っ!?」
加藤さんが私の肩を掴んでいない方の手で、私の腰を思いっきりつねってくる。
地味に痛い。痛すぎる。
「いや、でも高井さん帰ろうとしてましたし」
と地味チャラ男が口を開くと、加藤さんは何かを企んだ笑みを浮かべる。
……恐らく今日1番の、怖い顔。
「じゃあ……君達がさ……やる?」
「何を?」
返事が私とチャラ男ズと被ってしまった。
加藤さんはそんなことを一切気にした様子もなく言葉を続ける。
「まず新規クライアントに挨拶の電話100件」
「え!?」
そんなの聞いてない。
「次に、売上に関する報告書、これも100件分」
「は!?」
おいおい、待て待て。
そんな仕事量、この時間からの先約では済まないレベルだよな?
それをするくらいならまだ、チャラ男ズと飲みに行く方がまだましじゃあ……。
ちらりと、チャラ男ズに視線を送る。
チャラ男ズは、私の視線を分かりやすく逸らすと
「あ~わかりました」
「すんません、失礼しました~!」
というセリフを残して、トンズラした。
「あ、ちょっと」
待って、と私が言い終わる前に、すでに別の女の子に声をかけ始めていた。
その行動の素早さを、もう少し仕事にも生かせばいいのに……というお節介な言葉が喉から出てきそうになった。
「はぁ……」
真横から、盛大なため息が聞こえてきた。
「な、なんですか!?」
加藤さんが心底呆れた顔をして私を見ている。
あれ?もしかして私、本当に仕事、言われてたっけ?
私が忘れてただけ!?
「あのぉ……加藤さん……?私本当に仕事……」
そう私が言うと、いつの間にか落としていた私のカバンを押し付けてきた。
「誰からの誘いも受けず、真っ直ぐ帰ること」
「は?」
「上司命令」
「はい?」
「まさか僕以外と一緒に食事なんか行かないよね?」
「だから、あの?」
「じゃ、また明日」
加藤さんはそう言うと、とっとと自分の席に戻ろうとした。
え?
つまり、あのチャラ男ズから私を助けてくれたってこと?
「ちょっと待ってください!」
私は加藤さんのスーツの裾を掴んだ。
「何するんだ!スーツを引っ張るな!」
加藤さんが足を止める。
「あの、加藤さん……」
今までだったら、素直にこう言う事を言えなかった相手。
だけど、今日の出来事で、ほんの少しだけど心を開いてもいいかもしれないと思えた。
この人にも、優しいところがあると、知ることができた。
だから……。
「ありがとう、ございました」
私がそう言うと、加藤さんはピタッと体の動きを止めた。
「いきなり何?」
「あの、だから今日の訪問の件と……今……」
「……別に……これ、普通だから……」
ぼそり、と加藤さんが返事をする。
「あ、そう……ですか?」
「上司の仕事だからそうしただけだから」
加藤さんはそれだけ言うと、足早に自分の席に戻っていく。
「なんだ……つまらないの……」
と、私は無意識に呟いていた。
さて、帰ろう……と思ったその時、スマホに着信が入る。
なんだろう……と思って画面を操作すると
「え!?」
加藤さんからのメールが入っていた。
いつの間に打ったのだろう?
すでに加藤さんはまた、別のクライアントと電話で話している様子だった。
私は、まじまじと、その画面を確認する。
「明日のランチ、上司命令だから」
と書かれていた。
私はどう返事をしようか、少しだけ悩んだが、この近くで1番高くて美味しいと評判の店のURLだけ送ってやった。
それを、あの上司はどう解釈するのだろうか。
ほんの少しだけ、明日がくるのが楽しみになった。
ちなみに、その日の帰り道の乙女ゲームは、イマイチ入り込めなかったが、それはシナリオが悪かったからに違いない。
決して、返事がくるかどうかを楽しみにしていたから、ではない。
Winner 不明
Fight3へ続く……
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