助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません

和泉杏咲

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Fight 1 僕の時間をあげた分、対価は支払ってよね、お姉さん?

8.はい、ご褒美

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「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」
「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」
「はあ!?誘惑!?」
「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」
「技って、電話かけまくっただけですけど……」
「……」
「……」

無言が続く。

「……あの?いい加減離れてくれませんか?」

まだ近い。

「あのリストだけど……」

何?このまましゃべる気?

「他の営業がどんなに口説き落としてもダメだった、超難易度高い企業ばかりだったんだけど」
「……」
「……」
「……はあ!?」
「うるさい!大きな声出さないでよ」
「だったら離れればいいでしょ!」

私はどんっとクソ上司を押して、どうにか壁ドン状態から逃れた。

「……ま、成功させたんなら良いや」
「よくない!ちっともよくない!」
「何が」
「今の壁ドンはなんだったんですか!」
「はい、ご褒美」
「だから聞いてます?人の質問に答えてください!」

クソ上司はポケットから硬貨を取り出し、私の手のひらに転がす。

「これで好きなもの飲みなよ」
「あ、ありがとうございます……」

ん?

「私のお金で加藤さんコーヒー買ったじゃないですか!これはご褒美じゃなくて、当然の権利ですから」
「え?僕に奢って欲しいの?」
「口だけ上司って言われたいんですか?」
「わかった、じゃあ今度飯、行くぞ」
「…………え?」
「あ、外出は承認しとくから、詳細だけ後でメール頂戴」

矢継ぎ早に言いたい事だけ言ったクソ上司は、最後にとんでもないセリフを吐いていきやがった。

「僕の時間をあげた分、対価は支払ってよね。お姉さん?」

嵐のような時間だったけれど。
私は、何かを聞き逃した気がするけれど。
ひとまず。

「やーっと解放されたー……やっぱり糖分たっぷりの飲みもの買おう……」

と思って手のひらを見ると……

「に……20円……?」

私はその20円を床にたたきつけたくなった。
が、お金を粗末にするのはよくないと教わったので、代わりに足で地面を踏みつけてやった。

「覚えてろよー!!!!!クソ上司ー!!!!!!!!!」


Winner 加藤涼介
Fight2へ続く……
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