イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜

和泉杏咲

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マイナス余命1日

1.残念ながら運命というものは決まってしまった通りにしか動いてはくれない

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まさか私がもう一度自分が生きている前提で「来年」という言葉を使える日が来るなんて思わなかった。

奴は「そうだよ、来年まで待っててね」と涙を浮かべて私の薬指を自分の薬指に絡めさせる。そしてお互い微笑みあって、今度は私から小指と小指の繋がりを作った。

ここで物語が終われば、どんなに美しいだろうと思うのだが、残念ながら運命というものは決まってしまった通りにしか動いてはくれない。

私はあの日から病院に入院した。2か月の入院の間、唯一変化した事と言えば。ただ死を待つためでなく、悠木の家の援助によって延命治療を受けるという選択を受け入れた事だった。

大きな進歩だと医師も母も私に言ってくれたが、自分の体の事だ、それらが全て遅すぎたという事は誰よりも自覚がある。
宣告された死亡日が近づくにつれて、私の痛みは、意識を保つ事を拒むほどになっていた。薬の種類が代わり、まともな意識を保っていられた日数は、2週間よりも少ない。

ああ、もうすぐ私は死んでしまうのだ。
「夢」を選択した時から、もう後戻りはできなかったのだ。
でも、あの夏の日の誓いは決して馬鹿な事だったと思わない。あれがあったから、どこか刹那的に生きていた私の人生の最後は本当に眩しくて愛しくて、好きになった人に好きだって素直に言いたくなるようになった。
そしてとうとうあの日がきた。
昨日までの痛みが嘘のように無くなっていた。
何も考えずに自分で体を起こそうとしたら、体の筋肉がそぎ落とされたかの様に言う事を聞いてくれない。
……ちょっと頭を動かすことが限界か……。
ドアがある方に頭を動かしたら、何かの影が動いた。誰かいるのだろうか……?
これ以上首を動かすことが出来なかったので声を振り絞って「誰」と聞いてみた。
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