イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜

和泉杏咲

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夏の暑さと君の熱さと

2.シングルマザーとその子供

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……我が母ながら、よく途中で挫折しなかったと思う。
浮気という最低最悪の理由でとっとといなくなってしまった父親なぞ、いない方が空気も美味しく感じるし幸せなどと思っていたのだが、私にも見事にその余波がやってきた。

生来の性格が、そもそも学校での集団生活には合わなかった。
小1の秋になる時には、大企業でバリバリ働く母がシングルマザーであると知った保護者達が、自分の子供にあることない事、「シングルマザーとその子供」というタイトルの本が一冊できそうな程の悪い噂を吹き込まれた為に、友達と呼べる存在は皆無だった。

最初は否定しても、その内否定するのが疲れるくらい膨大な量になっていたので、学校でも私の口数は少なくなった。

小4の秋頃から、正式に「いじめ」と呼ぶべき類の物なのか否かは判断に困るが、ロッカーに置いてあった私物を、勝手に丸めたり破ったりしてゴミ箱に投げ入れられたり、クラスの役割……学級委員とか動物係とか、誰もやりたがらないような面倒な清掃係などは誰かによって勝手に推薦されたこともあったし、私がまるで存在しないかのように扱われたこともあった。

……主に挙げるとしたらこれくらいだろうか。
口に出して言える小学校のメインイベントで覚えている事と言えば。
ニュースではSNSや裏サイトと呼ばれるインターネット上の学校外のいじめも話題になっていたが、これこそ不幸中の幸いで、スマホどころか子供携帯もパソコンも私の家には存在しなかったので直接の被害は無かった。

おかげで、クラス中が学校外……SNSで盛り上がったという話題に夢中になっている間は、それを知らない私はもちろんハブられるという事もあった。

体に被害があった訳でも無かったが、幽霊の様に扱われた事が悔しくて、毎日母のいない暗い部屋で泣いていたこともあった。
今思えば、それを「良し」と考えて、自分の中で納得させていれば良かった。
だけど、髪の毛だけならともかく、眉毛やまつ毛までがどんどん抜けていくようになってしまった為、抜け出さなくては自分の身が危ないと、子供ながらに感じた。
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