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第5章

専属魔術師の真実

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陛下は、不気味な笑みを浮かべながら、炎を、ドラゴンに向けて放ちます。
炎はあっという間にドラゴンを包みます。
すると、ドラゴンを突き刺した氷が溶け、ドラゴンの傷があっという間に塞がりました。
大きく羽を広げたドラゴンは、あっという間に広間を低空飛行したと思うと、廊下の奥に消えてしました。

ドラゴンが元気になるのと対照的に、レインは、跪き、立ち上がれなくなっていました。

「どうして……!陛下が魔術を使って、どうしてレインが苦しんでいるのですか?」
「それはな、娘、この男は王族の為にとても尊い役目を担ってくれているからじゃよ」

言葉とは明らかに反対の意味を含む言い方をする陛下に、私はレインを近付かせたくありませんでした。
私は必死で。
「炎よ!炎よ!」
と、火の粉を出しましたが、陛下はその火の粉を片手で握り潰していました。
「ほう」
と、嬉しそうに笑みを浮かべました。
「これはこれは……やはり……思った通りじゃ」
陛下はそう言うと、私にご自身の掌を見せます。両方の掌を。

「娘。やはりお前を返すことは、できなくなった」
殿下の掌は、片方はレインと同じように歳を重ねていることがわかる皮膚、もう片方が、ぴんっと張り詰めた、若々しい皮膚でした。

「な……何それ……」
「思った通り。娘、お前の火の魔法こそが、この国の呪いを解く鍵になるようじゃ」
「だから、呪いって何ですか!」

すると……。
「魔術は……」
レインが、苦しそうに話し出しました。
「魔術は、自然を冒涜するもの……歪ませた自然のエネルギーは、呪いとなって……王家を蝕もうとした……」
「何それ……」
「暗黒の時代、王家は一時期、謎の死を遂げる者が多かった……。海の事故、山の事故、火の
事故……始めはただの偶然だと誰もが思った……違った……。自然が……理を作り替えた者に……王家に復讐を始めた。それこそが、あの災害の真の理由。それを、王家は隠蔽しようとした」
「で、でもその時に、確かに専属魔術師が……」
「……身代わりじゃ」

陛下が楽しそうに話し始めます。
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