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第5章
言ってはならぬ
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「え?」
「ほう?まさか……話したのか?レイン。この娘に」
「話してなどいな……げほっ」
レインは、激しく咳き込み始めました。
「レイン、レイン!」
レインの体が、少しずつ小さくなっていきます。
「……どうしたのですか、レイン……レイン!」
レインの手が、再び骸骨のようになっていきます。
胸を抑え、とても苦しそうに息を吐いています。
私は、どうにかレインの苦しさを緩和してあげたくて、背中をさすりました。
どんどん背が丸くなっていきます。
このままだと、本当に……。
「や、やだ……レイン……!」
せっかく、また会えたのに、どうしてこんなに苦しんでいる様子を見なくてはいけないのでしょう?
「ほう……効果は、一過性のものであったか……だが……なかなか興味深い……」
舌舐めずりをして、陛下が近づいてきます。
怖い。
これが、あの賑やかな王都の人々が崇める人。
「娘、何を聞いた……?」
私は首を振りました。
レインが、私の手を必死に握っています。
言ってはならぬと、レインの心の声が聞こえたから。
「ははは。まあ良い、そんな些細な事」
「さ、些細な事って……」
「もうお前を逃す気はないからのぉ、娘」
「そうはいかない」
完全に元の姿……今にも倒れそうな、老爺の姿に戻ったレインが、私と陛下の間に立ち上がりました。
足が、震えていました。
「娘、知りたくないか?何故こいつがこんな姿になったか」
そう言うと、王は両手をあげて
「面白いものを見せてくれた礼に、見せてやろう……!」
陛下が手をかざします。
レインの体が緊張で硬直したのが分かりました。
私は嫌な予感がして、レインの体を守るように抱きしめました。
手に力が篭ります。
「燃えろ!」
陛下が呪文を唱えると、勢いよく殿下の手から炎が湧き上がります。
その時、レインが体を震わせ、口から唾を吐き出しています。
「な、何で……!」
「ほう?まさか……話したのか?レイン。この娘に」
「話してなどいな……げほっ」
レインは、激しく咳き込み始めました。
「レイン、レイン!」
レインの体が、少しずつ小さくなっていきます。
「……どうしたのですか、レイン……レイン!」
レインの手が、再び骸骨のようになっていきます。
胸を抑え、とても苦しそうに息を吐いています。
私は、どうにかレインの苦しさを緩和してあげたくて、背中をさすりました。
どんどん背が丸くなっていきます。
このままだと、本当に……。
「や、やだ……レイン……!」
せっかく、また会えたのに、どうしてこんなに苦しんでいる様子を見なくてはいけないのでしょう?
「ほう……効果は、一過性のものであったか……だが……なかなか興味深い……」
舌舐めずりをして、陛下が近づいてきます。
怖い。
これが、あの賑やかな王都の人々が崇める人。
「娘、何を聞いた……?」
私は首を振りました。
レインが、私の手を必死に握っています。
言ってはならぬと、レインの心の声が聞こえたから。
「ははは。まあ良い、そんな些細な事」
「さ、些細な事って……」
「もうお前を逃す気はないからのぉ、娘」
「そうはいかない」
完全に元の姿……今にも倒れそうな、老爺の姿に戻ったレインが、私と陛下の間に立ち上がりました。
足が、震えていました。
「娘、知りたくないか?何故こいつがこんな姿になったか」
そう言うと、王は両手をあげて
「面白いものを見せてくれた礼に、見せてやろう……!」
陛下が手をかざします。
レインの体が緊張で硬直したのが分かりました。
私は嫌な予感がして、レインの体を守るように抱きしめました。
手に力が篭ります。
「燃えろ!」
陛下が呪文を唱えると、勢いよく殿下の手から炎が湧き上がります。
その時、レインが体を震わせ、口から唾を吐き出しています。
「な、何で……!」
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