最弱魔術師が初恋相手を探すために城の採用試験を受けたら、致死率90%の殺戮ゲームに巻き込まれました

和泉杏咲

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第4章

過酷な3日間

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「闇の時代と呼ばれた頃も、知っているな?」
「最初の専属魔術師が誕生した、きっかけの時代……ですよね」

自然の法則が狂っていた。それも全て、王族……人間が生み出した魔術によって引き起こされたこと。
……無理やり、起きるはずの無い現象を起こすことで、自然は大きく傷ついていた。
その傷を治すために、自然は膨大なエネルギーを使うことになる。
ところが、傷はどんどん深まっていく。
……耐えきれなくなり、かつての姿に戻ろうとした自然が、暴発して引き起こされたのが、あの災害の数々だった」

そこまで言って、その人がまた大きく咳き込みました。

「やはり苦しいのでは?これを、外しましょう」
「やめろ……それだけは……」

私は、その人の頭のターバンを思いっきり引っ張りました。
出てきたのは、ほとんどの皮膚がしわくちゃな顔と額。
地元の70代の祖父を遥かに上回る年齢だと想像するのは難くありませんでした。

私とその人の目が、はっきり合いました。
顔を隠していても、感情が伝わるその人の瞳が、ほんの少し揺れていました。
その後、その人は大きく深呼吸をしました。
酸素を求めるように。

「一度お休みになってはいかがですか?」
私は、ここでその人の話を一度止めるべき、と思いました。
話せば話すほど、その人の苦しみが増しているようでしたので。

「大丈夫だ……」
「ですが、一度お眠りになったらどうです?」
「いや、まだ、眠るわけにいかない」
「どうしてですか」
「試験が、終わって……ない……」

3日間。
なんと過酷なことでしょう。
眠れば、先程の方のように、あっという間に肉として食われてしまうかもしれません……そう言うことなのでしょう。

「あなたは、過去にもこの試験を受けた事があるのですか?」

私がそう尋ねた時、その人のまぶたはすでに下がり、寝息を立てておりました。
 
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