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第4章
……続けるか?
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また少しだけ、私達は歩き、少しだけ広い空間へたどり着きました。
木の根が壁から突き出ていため、それらを少しだけ引きちぎり、薪がわりにして焚き火をしました。
「あの……本当に大丈夫ですか?」
「嫌なら食うな」
「……ですが……」
先程まで自分に襲いかかってきた蝙蝠の肉を食べる気には、さすがになりません。
「……毒とか、ないですか?」
「人食い蝙蝠が怖いのは、鋭い爪と牙だけだ。体内に毒は持っていない」
「そんな事、よく知っていますね……」
「……魔術師に、毒の知識は不可欠だ」
「……そうなのですか?」
彼は、一言もそんな事を教えてはくれませんでした。
彼が残してくれた辞典にも、そのような事は書かれてはおりません。
「……毒は……風と土の応用魔術だ……」
「風と……土?」
「空気中や土に含まれる物質の融合によって、肉体のあるべきシステムを破壊させる」
「……それは知りませんでした……」
「毒を支配できる人間は、極力少ない方が良いという考えだからな。情報はごく一部の魔術師しか降りてはこない」
(何故、この人はそこまで知っているのでしょうか?)
「……焼けたぞ」
の人は、蝙蝠の肉を火から取り出し、一口頬張りました。
本当に大丈夫なのか、じっくりと観察しておりますと、ぐうと、お腹が大きな音を立てました。
私も炎からお肉を取り出し、前歯でほんの少しだけ齧ってみました。
それから、齧るのが止まらなくなりました。
肉が無くなるまで、無言が続いていましたが、手に骨だけが残った時には、自分の目から涙が溢れていました。
ただ彼の姿が見られれば良かったのに…………それが、あんな風に人があっという間にバラバラにされて殺されるのを目撃することになるなんて……。
もしかすると、私自身があんな風になっていたかもしれません。
「寒いのか?」
「あ……」
その人は、私の表情を見て、寒さで私が震えている訳では無い事に気付いた様子でした。
「……続けるか?」
「え?」
木の根が壁から突き出ていため、それらを少しだけ引きちぎり、薪がわりにして焚き火をしました。
「あの……本当に大丈夫ですか?」
「嫌なら食うな」
「……ですが……」
先程まで自分に襲いかかってきた蝙蝠の肉を食べる気には、さすがになりません。
「……毒とか、ないですか?」
「人食い蝙蝠が怖いのは、鋭い爪と牙だけだ。体内に毒は持っていない」
「そんな事、よく知っていますね……」
「……魔術師に、毒の知識は不可欠だ」
「……そうなのですか?」
彼は、一言もそんな事を教えてはくれませんでした。
彼が残してくれた辞典にも、そのような事は書かれてはおりません。
「……毒は……風と土の応用魔術だ……」
「風と……土?」
「空気中や土に含まれる物質の融合によって、肉体のあるべきシステムを破壊させる」
「……それは知りませんでした……」
「毒を支配できる人間は、極力少ない方が良いという考えだからな。情報はごく一部の魔術師しか降りてはこない」
(何故、この人はそこまで知っているのでしょうか?)
「……焼けたぞ」
の人は、蝙蝠の肉を火から取り出し、一口頬張りました。
本当に大丈夫なのか、じっくりと観察しておりますと、ぐうと、お腹が大きな音を立てました。
私も炎からお肉を取り出し、前歯でほんの少しだけ齧ってみました。
それから、齧るのが止まらなくなりました。
肉が無くなるまで、無言が続いていましたが、手に骨だけが残った時には、自分の目から涙が溢れていました。
ただ彼の姿が見られれば良かったのに…………それが、あんな風に人があっという間にバラバラにされて殺されるのを目撃することになるなんて……。
もしかすると、私自身があんな風になっていたかもしれません。
「寒いのか?」
「あ……」
その人は、私の表情を見て、寒さで私が震えている訳では無い事に気付いた様子でした。
「……続けるか?」
「え?」
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