最弱魔術師が初恋相手を探すために城の採用試験を受けたら、致死率90%の殺戮ゲームに巻き込まれました

和泉杏咲

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第4章

安心感

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私は荷の中から取り出したランタンを持ち、暗い廊下を歩いていました。
大事な話の途中で、お腹を鳴らしてしまった私。とても情けなく思いましたが、他の受験者の方達も先に進んだ後、誰一人戻ってきていらっしゃらなかったので、どこか他にも休める場所があるかもしれませんし、食糧もどこかに備蓄されているのかもしれないと思いましたので、状況把握の為に、食糧を手に入れる為にと、進む事を決めました。
最初は私一人で行く予定でしたが、私が出発して少ししてから、その人が後をついてきている事が分かりました。
出会いこそ、印象があまり良く無い人ではありましたが、二度助けていただき、彼の話も何故か話すことができた方でした。私はその人の存在を感じることで、ほんの少し、安心感を覚えておりました。

歩き始めて、三十分程経った頃でした。白い何かが足に当たりました。
蹴ると、ころんっと軽い音がしました。

(石?こんな所に?)

私は、その正体を確かめようと、手を伸ばしました。
その時でした。
ざあああああああああ!
天井から、翼が生えた何かの動物の群れが私に襲いかかってきました。

「きゃあああああ!」

私は手にしていたランタンを落としてしまいました。
一瞬にして暗闇が広がりました。
顔や、首が、次から次へと長い爪で引っ掻かれました。
手で振り払おうとしても、その手に攻撃が集中してきます。
口に翼のようなものが当たり、息ができません。

(苦しい……立っていられない)

息苦しさに、頭がクラクラし、地面に倒れそうになった時でした。
強風が、吹きました。
ぼとぼとと、動物の肉体が地に落ちる音がしました。
息が吸えるようになり、私は二度程、肺からの重い咳をして、両膝をつきました。

「照らせ!」

その人の声で、ぱあっと最初は真っ白に、そして徐々に視界がクリアになっていきました。
落ちていたのは、蝙蝠らしき動物の肉体だけではありませんでした。
無残にも肉が引き裂かれ、内臓が飛び出し、目玉が外れている人が、仰向けで横たわっていました。
服装から、険しい顔をしていた受験生でした。
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