20 / 37
第3章
いてもたってもいられなくなったのです
しおりを挟む
「……私の幼なじみから預かったのです」
「幼なじみ……」
「彼は……私より少し年上の人なんですけど……この前の……三年前の魔術師選抜試験を受ける為、地元を出て行ったんです。その時に、彼が使っていたものを、私がお預かりしたんです。お守りとして……。でも、それきり音沙汰無しで……」
年上の男性。
父とも祖父とも違う、いつも私を見守ってくれた陽だまりの人。
見かける度に嬉しくなって、私がいつも飛びついてしまう人。
本来ならば縁がなく終わるはずだった魔術の事を、私に教えて世界を広げてくれた人。
叶うなら、ずっと一緒にいたかった人。
彼は幼い頃から、魔術師として、世界を救うという夢に恋焦がれているような人でした。
いつも私に、魔術とは何か、この国の歴史の事を語ってくれました。
魔術師として世の中の人の役に立ちたいと、毎日厳しい練習をしていました。
……指も一本もぎ取られそうになっているのを見たことがありました。
掌が、自分が出した炎によって火傷していたのも見ました。
そんな風に自らを傷つけながらも「誰かの為に生きたい」という彼の姿に私も憧れて、少しずつではありましたが、魔術を覚えるようになりました。
とは言いましても、専属魔術師を目指したいという想いに繋がることは、その時はありませんでしたが。
「彼のご両親は、地元を取り仕切る人達で、彼が専属魔術師になる事を、実はとても反対していたんです。王宮の専属になってしまえば、王宮と世界を往復するだけで、とても地元に戻って来られる立場ではなくなるから……と……」
それは、私も彼が旅立ってから聞かされた話でしたが。
「彼はあっという間に姿を消していました。貯めていた、ほんの少しのお金だけを持って、誰にも何も言わずに。……彼は、家よりも世界を選んだ。私がいる地元よりも、王宮を選んだ……ということだと。私、魔術師として活躍する彼のお嫁さんになるのが、夢だったんです……笑ってしまいますよね。…地元を捨てる、という決意を応援していたなんて、思いもしなかったのです……」
その人からの反応はありませんでした。
でも、私はそんな事を気にすることもできず、堰を切ったように話し続けてしまいました。
「今回の専属魔術師の応募を見た時、もしかすると、彼に会える気がしたんです……」
彼が音信不通なのは、専属魔術師として世界を飛び回っているから。
……私がもし試験を受ければ、もしかすると、試験官としているかもしれない……それが無理でも、王都に来れば、すれ違うことだけでも出来るかもしれないと……。
いてもたってもいられなくなったのです。
「幼なじみ……」
「彼は……私より少し年上の人なんですけど……この前の……三年前の魔術師選抜試験を受ける為、地元を出て行ったんです。その時に、彼が使っていたものを、私がお預かりしたんです。お守りとして……。でも、それきり音沙汰無しで……」
年上の男性。
父とも祖父とも違う、いつも私を見守ってくれた陽だまりの人。
見かける度に嬉しくなって、私がいつも飛びついてしまう人。
本来ならば縁がなく終わるはずだった魔術の事を、私に教えて世界を広げてくれた人。
叶うなら、ずっと一緒にいたかった人。
彼は幼い頃から、魔術師として、世界を救うという夢に恋焦がれているような人でした。
いつも私に、魔術とは何か、この国の歴史の事を語ってくれました。
魔術師として世の中の人の役に立ちたいと、毎日厳しい練習をしていました。
……指も一本もぎ取られそうになっているのを見たことがありました。
掌が、自分が出した炎によって火傷していたのも見ました。
そんな風に自らを傷つけながらも「誰かの為に生きたい」という彼の姿に私も憧れて、少しずつではありましたが、魔術を覚えるようになりました。
とは言いましても、専属魔術師を目指したいという想いに繋がることは、その時はありませんでしたが。
「彼のご両親は、地元を取り仕切る人達で、彼が専属魔術師になる事を、実はとても反対していたんです。王宮の専属になってしまえば、王宮と世界を往復するだけで、とても地元に戻って来られる立場ではなくなるから……と……」
それは、私も彼が旅立ってから聞かされた話でしたが。
「彼はあっという間に姿を消していました。貯めていた、ほんの少しのお金だけを持って、誰にも何も言わずに。……彼は、家よりも世界を選んだ。私がいる地元よりも、王宮を選んだ……ということだと。私、魔術師として活躍する彼のお嫁さんになるのが、夢だったんです……笑ってしまいますよね。…地元を捨てる、という決意を応援していたなんて、思いもしなかったのです……」
その人からの反応はありませんでした。
でも、私はそんな事を気にすることもできず、堰を切ったように話し続けてしまいました。
「今回の専属魔術師の応募を見た時、もしかすると、彼に会える気がしたんです……」
彼が音信不通なのは、専属魔術師として世界を飛び回っているから。
……私がもし試験を受ければ、もしかすると、試験官としているかもしれない……それが無理でも、王都に来れば、すれ違うことだけでも出来るかもしれないと……。
いてもたってもいられなくなったのです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる