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第2章
去れ
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「おい」
こちらを向いての発言ではありませんでしたが、その声が私へのものだということは、周囲に誰もいないことで分かりました。
「は、はい!」
「どう思う?」
「……はい?」
「これ、どう思う?」
「……殿下の……お姿ですよね?」
私がそう言うと。その人は大きくため息をつき
「もう良い」
とだけ。
「もう良いって……今のは……ちょっと油断しただけで……」
私がそう言うと、その人はまたこちらに顔を向けました。と同時に
「きゃあ!」
その人はどこから出したのか、私の首筋に剣先をぴたりとくっつけていたのです。
「今すぐここから去れ。邪魔だ」
そう言い放ったその人は、私の手元から落ちた、殿下の紙を奪うように拾いました。
「返してください」
その人から紙を奪い返そうとしましたが、少しでも動くと剣先が首の皮膚入り込みそうになりましたので、私はほとんど体を動かせずにおりました。
「女の子いじめるなんて、男の風上にもおけないんじゃないの?」
先ほどの優等生の風貌をした先ほどの少年がひょいと現れ、私を引き寄せ、剣先から距離を取らせてくれました。
「……何か分かったの?」
少年がその人に尋ねました。ですが、返ってきたのは次の問い。
「火は使えるか?」
「基礎中の基礎じゃん」
少年は涼しい顔で、指先で空に円を何度か描きました。辞典も見ずに。すると、その人が並べた紙に向かって、空から火の粉が槍のように降ってきました。紙が小さく燃え始めたところに、その人は私が持っていた紙を落としました。
「何するんですか!」
こちらを向いての発言ではありませんでしたが、その声が私へのものだということは、周囲に誰もいないことで分かりました。
「は、はい!」
「どう思う?」
「……はい?」
「これ、どう思う?」
「……殿下の……お姿ですよね?」
私がそう言うと。その人は大きくため息をつき
「もう良い」
とだけ。
「もう良いって……今のは……ちょっと油断しただけで……」
私がそう言うと、その人はまたこちらに顔を向けました。と同時に
「きゃあ!」
その人はどこから出したのか、私の首筋に剣先をぴたりとくっつけていたのです。
「今すぐここから去れ。邪魔だ」
そう言い放ったその人は、私の手元から落ちた、殿下の紙を奪うように拾いました。
「返してください」
その人から紙を奪い返そうとしましたが、少しでも動くと剣先が首の皮膚入り込みそうになりましたので、私はほとんど体を動かせずにおりました。
「女の子いじめるなんて、男の風上にもおけないんじゃないの?」
先ほどの優等生の風貌をした先ほどの少年がひょいと現れ、私を引き寄せ、剣先から距離を取らせてくれました。
「……何か分かったの?」
少年がその人に尋ねました。ですが、返ってきたのは次の問い。
「火は使えるか?」
「基礎中の基礎じゃん」
少年は涼しい顔で、指先で空に円を何度か描きました。辞典も見ずに。すると、その人が並べた紙に向かって、空から火の粉が槍のように降ってきました。紙が小さく燃え始めたところに、その人は私が持っていた紙を落としました。
「何するんですか!」
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