最弱魔術師が初恋相手を探すために城の採用試験を受けたら、致死率90%の殺戮ゲームに巻き込まれました

和泉杏咲

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第1章

風の魔術

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風の魔術は、意思、祈りの力で物理的行動を後押しするもの。
動け、舞い踊れなど、自然界のエネルギーを人の意思で変えることが要求されるのです。

(今日は、絶対に行かなきゃいけないから、さすがに大丈夫ですよね)

辞書は、呪文の本文と効用、それから呪文を唱える時の姿形を現した絵の三つでそれぞれ構成されています。
私は、描かれているように手を組み、空に掲げ、足を肩幅に広げて膝を曲げます。

……少し、恥ずかしいポーズな気もしますが、気にしている場合ではありません。
そして目をつむり、手で空気を混ぜるようにグルグル時計回りに回しながら

「風よ、風よ、私をお城へ連れていけ!」

自然物への命令=呪文を唱える時、意識を全部魔術が宿る手に集中させなくてはいけません。
空気を回す手を少しでも止めると、また失敗してとんでもないことになってしまう……今日だけは、避けなくてはいけません。
魔術辞典によれば、空気の流れによって体を浮かし、そのまま願っている場所へと運んでくれる……ということでしたが……。

(お城って、どういう形をしてるんでしたっけ?)

 よりによって、体が浮き始めたタイミングで、重大なミスに気づいてしまいました。
念じる時に、具体的的ばビジョンを思い描いていないと、空気が迷ってしまい、あちらこちらに体を連れて行こうとしてしまうと、書いてあったのです。

(待って!今の無し!)

 そう思って、流れ始めた空気の流れを止めようとしたその時

「きゃっ!」

背中を誰かに蹴られ、そのまま膝から崩れ落ちて、尻餅をついてしまいました。
空気の流れは、尻餅の衝撃で私の髪の毛を通り抜け、真上をちょうど優雅に飛んでいた鳥の羽を片方もいでしまいました。

(ああ……鳥さん……ごめんなさい……)

無残にも私のせいで、行けたはず空の道を閉ざされた鳥が、地面にあっという間もなく吸い込まれていくのを見ながら、私は背後を振り返りました。。

すると……。
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