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第1章
話は、ほんの三時間前に遡ります
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太陽がある程度まで上り、ブランチとして、甘いドーナツかブレッドを食べる人々で溢れていましたし、甘いフルーツソーダやキャンディーなど、つい立ち寄りたくなってしまうたくさんの屋台によって、灰色の石畳がカラフルに色づいておりました。
私はこの時、待ち望んだ王都に足を踏み入れた事に、心躍らされていました。
王都の住民らしき、身なりが整っている者もいれば、衣服は汚れてはいるものの、無駄なものは全て排除したといわんばかりの荷の塊を持つ旅人らしき者もおりました。
そんな中に、所々にいるのが、明らかに旅慣れをしていない、亀の甲らのように背負った巨大な荷物と武具を身につけた人々。
彼らと私は、きっと同じ目的で王都に来たのだと親近感を覚えました。私もまた、首から肩、背中に欠けて痛みが走る程の大荷物を持ち、周囲から好奇な目で見られていたのです。
「姉ちゃん、一人かい?」
「この辺で見ない顔だねぇ?王都名物のキャンディー、持っていくかい?」
街中で商いをしている人々はとても気さくなようです。
こんな私にも親切にしてくれるのですから。
ですが、こんなこともありました。
「まさか、あんたも、王宮専属魔術師選抜試験に来たんじゃないだろうな?」
早々に、私の目的を当てた者もおりました。
「こんな冴えない女が?まさか~」
大柄で、物騒な武器を身体中に巻きつけた男性二名が、私を見下ろして、薄気味悪い笑みを浮かべておりました。
きっとこの方達も、同じ目的なのかもしれませんが、彼らの気味の悪さと野蛮さに、つい、逃げ出してしまいました。
(あんな人達が多いのだろうか……)
私は、受験会場へ行くことを一瞬躊躇いそうになりましたが、そうすると自分の一世一代の決意が泡のように消えてしまう気がしたので、頂いたキャンディーを力一杯頬張りながら、足早に目的地に行くことにしました……のですが。
私はこの時、待ち望んだ王都に足を踏み入れた事に、心躍らされていました。
王都の住民らしき、身なりが整っている者もいれば、衣服は汚れてはいるものの、無駄なものは全て排除したといわんばかりの荷の塊を持つ旅人らしき者もおりました。
そんな中に、所々にいるのが、明らかに旅慣れをしていない、亀の甲らのように背負った巨大な荷物と武具を身につけた人々。
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「姉ちゃん、一人かい?」
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こんな私にも親切にしてくれるのですから。
ですが、こんなこともありました。
「まさか、あんたも、王宮専属魔術師選抜試験に来たんじゃないだろうな?」
早々に、私の目的を当てた者もおりました。
「こんな冴えない女が?まさか~」
大柄で、物騒な武器を身体中に巻きつけた男性二名が、私を見下ろして、薄気味悪い笑みを浮かべておりました。
きっとこの方達も、同じ目的なのかもしれませんが、彼らの気味の悪さと野蛮さに、つい、逃げ出してしまいました。
(あんな人達が多いのだろうか……)
私は、受験会場へ行くことを一瞬躊躇いそうになりましたが、そうすると自分の一世一代の決意が泡のように消えてしまう気がしたので、頂いたキャンディーを力一杯頬張りながら、足早に目的地に行くことにしました……のですが。
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