80 / 84
3.信じられると、ようやく思えたのに……
初めての幸せ 7/いつなら……?
しおりを挟む
「外を歩くって……どこを?」
「君が行きたいところであれば、どこでも」
もちろん、必要であれば外出はする。
でも、極力は引きこもっていたい。
私は、そんな人種だ。
誰の目にも、自分を触れさせたくないと思っているから。
それは、こうして樹さんと一緒に楽しい話をしている今も、例外ではない。
さっきから、こちらをチラチラと何人かに見られている。
理由は間違いなく、樹さん。
「すごいイケメンがいる」
「ラッキー」
という女の子たちの微かな声が聞こえる。
それから女の子たちは、側にいる私を見てから、明らかな嫌悪感を抱くのだ。
「どうしてあんな奴が」
そう、言いたげな視線を、痛いほど感じる。
たかだか20人もいないカフェの中で、これだけ気になってしまうのだから。
これで樹さんを連れて、人気のデートスポットに行ってしまったら、ゾッとする……。
たくさんの視線に耐えられる気はしない。
せめて。
「外よりはまだ家の方が……」
まだ、他人の視線が一切入ってこない自宅デートの方が、ずっとハードルが低い。
私は本気でそう思ってた。
だから、提案したのだ。
ところが。
樹さんは、急に顔を真っ赤にした。
「あの……樹さん?」
樹さんは、口元に手を当てて、狼狽えた様子だった。
「ど、どうしたんですか?樹さん」
(どうしよう、具合悪くなったのか?)
「体調悪くなったなら、今日はもうお開きに」
「いえ、そうじゃなくて……」
「え?」
「つまり……家……ということは……」
「え?」
「つまり……そういうこと……で……いいんだよね?」
「そういう……こと……?」
樹さんが、宙を見ながら目線だけキョロキョロさせている。
(何をそんなに狼狽えているんだろう……?……って……ああ!)
樹さんのあまりの狼狽えっぷりと、自分の脳内に微かに残っていた少女漫画の知識のおかげで、自分が発した言葉の意味に……気づいてしまった。
「あ、あの樹さん!?そ、そんなつもりは……」
(これ、セクハラで訴えられる事案!?)
確かに、男女交際の中に体の関係を持つことが含まれていることは、私でも知っている。
だけど、まさか自分が誰かとそういう関係になるなんて思ってなかったので、完全に頭から抜けてしまっていた。
それこそ子供の頃、近所の友人に
「新しいゲーム買ったから一緒に家でやってかない?」
と誘うノリだったのだ。
(し、しまった……)
それから、お互い無言になり、お茶を啜っているだけの時間だけが過ぎていく。
(言葉と言うものは、無意識に言ってはいけないんだな……)
ということを教訓にしようと、私が決意した時に、樹さんがぼそりと
「……いつなら……?」
と遠慮がちに聞いて来た。
もう
「ゲームをしに行きたい」
というノリじゃないことは分かる。
私はまたぶわっと顔が熱くなってしまう。
次から次へと湧いてくる汗のせいで、べちょべちょに化粧が崩れてしまう。
そんな残念な顔を隠すかのように、小さく頷くしかできなかった。
「君が行きたいところであれば、どこでも」
もちろん、必要であれば外出はする。
でも、極力は引きこもっていたい。
私は、そんな人種だ。
誰の目にも、自分を触れさせたくないと思っているから。
それは、こうして樹さんと一緒に楽しい話をしている今も、例外ではない。
さっきから、こちらをチラチラと何人かに見られている。
理由は間違いなく、樹さん。
「すごいイケメンがいる」
「ラッキー」
という女の子たちの微かな声が聞こえる。
それから女の子たちは、側にいる私を見てから、明らかな嫌悪感を抱くのだ。
「どうしてあんな奴が」
そう、言いたげな視線を、痛いほど感じる。
たかだか20人もいないカフェの中で、これだけ気になってしまうのだから。
これで樹さんを連れて、人気のデートスポットに行ってしまったら、ゾッとする……。
たくさんの視線に耐えられる気はしない。
せめて。
「外よりはまだ家の方が……」
まだ、他人の視線が一切入ってこない自宅デートの方が、ずっとハードルが低い。
私は本気でそう思ってた。
だから、提案したのだ。
ところが。
樹さんは、急に顔を真っ赤にした。
「あの……樹さん?」
樹さんは、口元に手を当てて、狼狽えた様子だった。
「ど、どうしたんですか?樹さん」
(どうしよう、具合悪くなったのか?)
「体調悪くなったなら、今日はもうお開きに」
「いえ、そうじゃなくて……」
「え?」
「つまり……家……ということは……」
「え?」
「つまり……そういうこと……で……いいんだよね?」
「そういう……こと……?」
樹さんが、宙を見ながら目線だけキョロキョロさせている。
(何をそんなに狼狽えているんだろう……?……って……ああ!)
樹さんのあまりの狼狽えっぷりと、自分の脳内に微かに残っていた少女漫画の知識のおかげで、自分が発した言葉の意味に……気づいてしまった。
「あ、あの樹さん!?そ、そんなつもりは……」
(これ、セクハラで訴えられる事案!?)
確かに、男女交際の中に体の関係を持つことが含まれていることは、私でも知っている。
だけど、まさか自分が誰かとそういう関係になるなんて思ってなかったので、完全に頭から抜けてしまっていた。
それこそ子供の頃、近所の友人に
「新しいゲーム買ったから一緒に家でやってかない?」
と誘うノリだったのだ。
(し、しまった……)
それから、お互い無言になり、お茶を啜っているだけの時間だけが過ぎていく。
(言葉と言うものは、無意識に言ってはいけないんだな……)
ということを教訓にしようと、私が決意した時に、樹さんがぼそりと
「……いつなら……?」
と遠慮がちに聞いて来た。
もう
「ゲームをしに行きたい」
というノリじゃないことは分かる。
私はまたぶわっと顔が熱くなってしまう。
次から次へと湧いてくる汗のせいで、べちょべちょに化粧が崩れてしまう。
そんな残念な顔を隠すかのように、小さく頷くしかできなかった。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
お見合い相手は大嫌いな同級生だった!
桜川椿
恋愛
「雪乃、明後日の日曜日にお見合い決定やから!」と突然母に言われ
付き合っている相手もいなく
三十路手前の私、羽山雪乃27歳には断る理由もすべもなく仕方なくお見合いを受けるはめになった・・・。
そしてお見合いの席で私は中学の時の同級生、横山丈一郎と再会した・・・。
「雪乃久しぶりやなぁ」と大嫌いな奴が爽やかな笑顔で私に微笑み立っていた・・・。
お見合いの相手が、まさかの同級生・・・その頃の奴の一言のせいで私はトラウマになったんや!!!
誰がアンタなんかと結婚するか!!
絶対に断ったるからな!!
カクヨム、エブリスタにも投稿しています!
表紙はPicrewの「現代和装女子」で作りました☺https://picrew.me/share?cd=uu2X4Fht5t #Picrew
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜
和泉杏咲
恋愛
表紙イラストは「帳カオル」様に描いていただきました……!眼福です(´ω`)
https://twitter.com/tobari_kaoru
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は間も無く死ぬ。だから、彼に別れを告げたいのだ。それなのに……
なぜ、私だけがこんな目に遭うのか。
なぜ、私だけにこんなに執着するのか。
私は間も無く死んでしまう。
どうか、私のことは忘れて……。
だから私は、あえて言うの。
バイバイって。
死を覚悟した少女と、彼女を一途(?)に追いかけた少年の追いかけっこの終わりの始まりのお話。
<登場人物>
矢部雪穂:ガリ勉してエリート中学校に入学した努力少女。小説家志望
悠木 清:雪穂のクラスメイト。金持ち&ギフテッドと呼ばれるほどの天才奇人イケメン御曹司
山田:清に仕えるスーパー執事
お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。
すずなり。
恋愛
母に仕組まれた『お見合い』。非の打ち所がない相手には言えない秘密が私にはあった。「俺なら・・・守れる。」終わらせてくれる気のない相手に・・私は折れるしかない!?
「こんな溢れさせて・・・期待した・・?」
(こんなの・・・初めてっ・・!)
ぐずぐずに溶かされる夜。
焦らされ・・焦らされ・・・早く欲しくてたまらない気持ちにさせられる。
「うぁ・・・気持ちイイっ・・!」
「いぁぁっ!・・あぁっ・・!」
何度登りつめても終わらない。
終わるのは・・・私が気を失う時だった。
ーーーーーーーーーー
「・・・赤ちゃん・・?」
「堕ろすよな?」
「私は産みたい。」
「医者として許可はできない・・!」
食い違う想い。
「でも・・・」
※お話はすべて想像の世界です。出てくる病名、治療法、薬など、現実世界とはなんら関係ありません。
※ただただ楽しんでいただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
それでは、お楽しみください。
【初回完結日2020.05.25】
【修正開始2023.05.08】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる