75 / 84
3.信じられると、ようやく思えたのに……
初めての幸せ 2/無事でいられるのだろうか……?
しおりを挟む
「いい部屋だね」
「そ、そうですか……?」
どうにか取り繕った部屋を、樹さんは気に入ってくれたらしい。
「ああ、君の匂いがして、落ち着く」
「そ、そうですか……?」
時々理解不明な事を言ってくる樹さんは、本当に表情を変えることが稀。
笑顔になることも滅多にないが……根本的に喜怒哀楽の感情を表情に出すことが苦手なのだと、言っていた。
だから樹さんは、どんな言葉も真顔で話す。
たとえそれが、少女漫画に出てくるキラキライケメンが発するような……砂を吐きたくなるような甘いセリフだったとしても。
「どうした?優花?」
「いえ……威力に自覚がない人の無邪気な攻撃って怖いなと思いまして……」
「どういうこと?」
「何でもないです!」
(自分の顔面力と言葉が、どれだけ相手にダメージを与えるか……この人種は自覚がないんか!?)
どんどん顔が熱くきた。
今体温を測ったら40度超えになるのでは……?
せっかく新調した……といっても恥ずかしくてネットでぽちっただけの下着が、自分の汗で濡れていっているのが、肌で分かる。
(着替えなきゃ……)
私は樹さんを、この部屋にある1番値段が高いクッションに座らせてから、テレビのリモコンを渡した。
「ゆっくりしててください。テレビは自由に見てくれて良いですから」
「どこ行くの?」
「ちょ、ちょっと洗面所に」
「そうか、分かった」
普通、これだけでもドキドキものだ。
でも、樹さんはそれをはるかに上回ってくる。
ちゅっ。
「!!????」
急に引き寄せられたかと思うと、樹さんに頬キスされてしまった。
「早く戻ってきて」
こんなことを、真顔でしてくる樹さん。
「……は、はいぃ……善処します……」
急いで準備していた着替え用下着セットを持って、洗面所に逃げた。
(私……今日……無事でいられるのだろうか……?)
洗面所の中で、用意したブラと下着のセットを見ながら、ようやく呼吸がちゃんとできた。
「そ、そうですか……?」
どうにか取り繕った部屋を、樹さんは気に入ってくれたらしい。
「ああ、君の匂いがして、落ち着く」
「そ、そうですか……?」
時々理解不明な事を言ってくる樹さんは、本当に表情を変えることが稀。
笑顔になることも滅多にないが……根本的に喜怒哀楽の感情を表情に出すことが苦手なのだと、言っていた。
だから樹さんは、どんな言葉も真顔で話す。
たとえそれが、少女漫画に出てくるキラキライケメンが発するような……砂を吐きたくなるような甘いセリフだったとしても。
「どうした?優花?」
「いえ……威力に自覚がない人の無邪気な攻撃って怖いなと思いまして……」
「どういうこと?」
「何でもないです!」
(自分の顔面力と言葉が、どれだけ相手にダメージを与えるか……この人種は自覚がないんか!?)
どんどん顔が熱くきた。
今体温を測ったら40度超えになるのでは……?
せっかく新調した……といっても恥ずかしくてネットでぽちっただけの下着が、自分の汗で濡れていっているのが、肌で分かる。
(着替えなきゃ……)
私は樹さんを、この部屋にある1番値段が高いクッションに座らせてから、テレビのリモコンを渡した。
「ゆっくりしててください。テレビは自由に見てくれて良いですから」
「どこ行くの?」
「ちょ、ちょっと洗面所に」
「そうか、分かった」
普通、これだけでもドキドキものだ。
でも、樹さんはそれをはるかに上回ってくる。
ちゅっ。
「!!????」
急に引き寄せられたかと思うと、樹さんに頬キスされてしまった。
「早く戻ってきて」
こんなことを、真顔でしてくる樹さん。
「……は、はいぃ……善処します……」
急いで準備していた着替え用下着セットを持って、洗面所に逃げた。
(私……今日……無事でいられるのだろうか……?)
洗面所の中で、用意したブラと下着のセットを見ながら、ようやく呼吸がちゃんとできた。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。
window
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。
そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。
しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。
不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。
「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」
リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。
幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。
平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。


アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる