49 / 84
1.人生最後のデートだと思っていたのに
運命の日 13/そしてこれからも、私はそうして生きていく
しおりを挟む
(こういう時は、成功しちゃうんだな……)
いつもは、この体型のせいで人混みに紛れてもすぐ見つかってしまう。
だけど、今日は自分からすっと、いなくなりたいと思った。
このまま、氷室さんの前から消えてしまいたいと、願った。
だからだろうか。
すんなりと、氷室さんには見つからずに小江戸の街並みまで戻ってくることができた。
(ここまで来れば、さすがに見つからないだろう……)
私は、駅に向かうためにバスを待ちながら、近くにあった店のガラス扉で自分の残念な姿を見てしまい、また落ち込んだ。
ぼろぼろになった髪型。
汗で化粧が崩れた顔。
しわしわになった浴衣。
そして草履を無理して履いてきたため、足がどんどん痛くなっていた。
(こんな姿の自分が真横にいるなんて、やっぱり氷室さんにとって良くない)
私はやっぱり第三者として、美男美女カップルを見てお似合いだ。
観察している側の方がよっぽど性に合っている。
早く。
バスが来てほしい。
早く。早く。
バスに乗って、駅に戻る。
そうして、電車に揺られながら日常に還れば、きっと芽生え始めてる気持ちを消すことができるだろう。
例え今日、氷室さんとこれきりになったとしても。
私はきっと、いい思い出にできる。
これまでも、そうだった。
そしてこれからも、私はそうして生きていく。
1人で。
そんなことを考えた、丁度その時。
バスが、見えた。
少し混雑しているのが、フロントガラスから分かった。
(万が一、氷室さんがここを通ったとしても、あの中なら見えないよね……)
私はデオドラントスプレーをさっと軽く自分に振りかける。
このタイミングで、スメルハラスメントで訴えられるのは、さすがに嫌だったから。
そして、バスが止まり、扉が開く。
私は乗り込む順番を待ち、中に入ろうとした。
その時、いきなり誰かから手を掴まれ、後ろに急に引っ張られた。
(この香りは……)
見なくても、分かってしまった。
誰が私を引っ張ったのか。
いつもは、この体型のせいで人混みに紛れてもすぐ見つかってしまう。
だけど、今日は自分からすっと、いなくなりたいと思った。
このまま、氷室さんの前から消えてしまいたいと、願った。
だからだろうか。
すんなりと、氷室さんには見つからずに小江戸の街並みまで戻ってくることができた。
(ここまで来れば、さすがに見つからないだろう……)
私は、駅に向かうためにバスを待ちながら、近くにあった店のガラス扉で自分の残念な姿を見てしまい、また落ち込んだ。
ぼろぼろになった髪型。
汗で化粧が崩れた顔。
しわしわになった浴衣。
そして草履を無理して履いてきたため、足がどんどん痛くなっていた。
(こんな姿の自分が真横にいるなんて、やっぱり氷室さんにとって良くない)
私はやっぱり第三者として、美男美女カップルを見てお似合いだ。
観察している側の方がよっぽど性に合っている。
早く。
バスが来てほしい。
早く。早く。
バスに乗って、駅に戻る。
そうして、電車に揺られながら日常に還れば、きっと芽生え始めてる気持ちを消すことができるだろう。
例え今日、氷室さんとこれきりになったとしても。
私はきっと、いい思い出にできる。
これまでも、そうだった。
そしてこれからも、私はそうして生きていく。
1人で。
そんなことを考えた、丁度その時。
バスが、見えた。
少し混雑しているのが、フロントガラスから分かった。
(万が一、氷室さんがここを通ったとしても、あの中なら見えないよね……)
私はデオドラントスプレーをさっと軽く自分に振りかける。
このタイミングで、スメルハラスメントで訴えられるのは、さすがに嫌だったから。
そして、バスが止まり、扉が開く。
私は乗り込む順番を待ち、中に入ろうとした。
その時、いきなり誰かから手を掴まれ、後ろに急に引っ張られた。
(この香りは……)
見なくても、分かってしまった。
誰が私を引っ張ったのか。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
毒舌お嬢と愉快な仲間たち
すけさん
恋愛
毒舌お嬢が身分を偽り地味子に変身して、自分の旦那候補者捜しを始める。
はたして毒舌お嬢の心をキュンとさせる殿方に出会う事が出来るのか!!
他サイトで投稿していた小説の改訂版です!

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜
和泉杏咲
恋愛
表紙イラストは「帳カオル」様に描いていただきました……!眼福です(´ω`)
https://twitter.com/tobari_kaoru
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は間も無く死ぬ。だから、彼に別れを告げたいのだ。それなのに……
なぜ、私だけがこんな目に遭うのか。
なぜ、私だけにこんなに執着するのか。
私は間も無く死んでしまう。
どうか、私のことは忘れて……。
だから私は、あえて言うの。
バイバイって。
死を覚悟した少女と、彼女を一途(?)に追いかけた少年の追いかけっこの終わりの始まりのお話。
<登場人物>
矢部雪穂:ガリ勉してエリート中学校に入学した努力少女。小説家志望
悠木 清:雪穂のクラスメイト。金持ち&ギフテッドと呼ばれるほどの天才奇人イケメン御曹司
山田:清に仕えるスーパー執事
ヤクザのせいで結婚できない!
山吹
恋愛
【毎週月・木更新】
「俺ァ、あと三か月の命らしい。だから志麻――お前ェ、三か月以内に嫁に行け」
雲竜志麻は極道・雲竜組の組長を祖父に持つ女子高生。
家柄のせいで彼氏も友達もろくにいない人生を送っていた。
ある日、祖父・雲竜銀蔵が倒れる。
「死ぬ前に花嫁姿が見たい」という祖父の願いをかなえるため、見合いをすることになった志麻だが
「ヤクザの家の娘」との見合い相手は、一癖も二癖もある相手ばかりで……
はたして雲竜志麻は、三か月以内に運命に相手に巡り合えるのか!?

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる