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1.人生最後のデートだと思っていたのに
運命の日 8/風鈴祭り
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(……特別な……日……とは?)
「俺は、ギリギリ最終日なら大丈夫そうです」
氷室さんは、スマホを見ながら言った、のだが……。
(ギリギリ?最終日?一体何を言っていらっしゃるんですか??)
私は、話についていけず呆然としていた。
「あ、森山さんの方が、まずかったですか」
「いえいえ!私は土日暇なので……」
つい反射程に答えてしまった。
(って!……そうではなくて!!)
私は、氷室さんに意図を聞こうとするが
「特別な日にするなら、こういうイベントの方が良いかと、思いまして」
と矢継ぎ早に言葉を重ねられてしまう。
(だから……特別な日って?)
「あの……1つ、よろしいでしょうか?」
「なんですか?」
「氷室さん……本当に、風鈴祭りに行きたいんですか?」
「森山さんは、行きたくないんですか?」
「え、行きたいです」
風鈴は、とても見たい。
SNS映えする写真も撮れそうだ。
「それなら、決まりですね」
氷室さんはそう言うけれど……。
(氷室さんは、お祭りの意味、分かっているのだろうか……?)
男女で行くのは、おそらくカップルであるケースがほとんどだろう。
男女の友達同士で行くケースも、あるのかもしれないが……。
ああ、そうか。
お互い励まし合いながら良いご縁が来るように祈り合う、友達枠としての誘いか?
それなら、まあ……納得できる気はするが……。
「森山さんは浴衣、持ってますか?」
「……たぶん……」
「そうですか。俺は持ってなかったんですが……1着くらい持っておいても良さそうですね。買っておきます」
「あの……氷室さん?」
(は、話がどんどん進んでいく……!?)
確かに……浴衣を着て小江戸と呼ばれる川越を歩くことに、少し憧れはある、けれども!
「せっかく特別な日にするのであれば、特別な服……というのも悪くないですからね」
「氷室さん!その前に特別な日ってどういう」
「失礼、一瞬スマホ、見ます」
私が質問を投げかけようとした途端、氷室さんのスマホに着信が入ったらしく、真剣な表情で確認していた。
私は、ほとんど冷め切った紅茶を飲みながら、氷室さんを待つ。
「申し訳ありません森山さん」
「え?」
「……仕事で、トラブルがあったみたいでして……」
「仕事って、病院ですか?」
「まあ……そんなところです」
氷室さんはつい先日、病院を開業したばかりで、院長として忙しい日々を過ごしていると、先日聞いたばかりだった。
「大変、それなら早く行かないと」
「すみません、このお詫びはまた……」
氷室さんは伝票を取ると
「森山さんも、ぜひ浴衣で一緒に行きましょう。あとでメッセージで待ち合わせ場所決めましょう」
と言うと、早足で去っていってしまった。
いつもなら
(足長いな……コンパスが違うとただ歩くだけでもめっちゃかっこいいんだな……うらやましい……)
などと考えるところだったが……今の私にそんなことを考えるゆとりは全くなかった。
何それ、何それ何それ。
特別な日って……どう言うこと?
この時ふと、急に
「婚活での告白は、大体3回目のデートですることが多い」
と、いくつかの婚活サイトのWEB上に書かれていたことを思い出してしまい、私の顔からは、氷室さんが飲まずに残していったアイスティーのグラスがかいている汗と同じくらい、もしくはそれ以上の汗が噴き出してしまった。
「俺は、ギリギリ最終日なら大丈夫そうです」
氷室さんは、スマホを見ながら言った、のだが……。
(ギリギリ?最終日?一体何を言っていらっしゃるんですか??)
私は、話についていけず呆然としていた。
「あ、森山さんの方が、まずかったですか」
「いえいえ!私は土日暇なので……」
つい反射程に答えてしまった。
(って!……そうではなくて!!)
私は、氷室さんに意図を聞こうとするが
「特別な日にするなら、こういうイベントの方が良いかと、思いまして」
と矢継ぎ早に言葉を重ねられてしまう。
(だから……特別な日って?)
「あの……1つ、よろしいでしょうか?」
「なんですか?」
「氷室さん……本当に、風鈴祭りに行きたいんですか?」
「森山さんは、行きたくないんですか?」
「え、行きたいです」
風鈴は、とても見たい。
SNS映えする写真も撮れそうだ。
「それなら、決まりですね」
氷室さんはそう言うけれど……。
(氷室さんは、お祭りの意味、分かっているのだろうか……?)
男女で行くのは、おそらくカップルであるケースがほとんどだろう。
男女の友達同士で行くケースも、あるのかもしれないが……。
ああ、そうか。
お互い励まし合いながら良いご縁が来るように祈り合う、友達枠としての誘いか?
それなら、まあ……納得できる気はするが……。
「森山さんは浴衣、持ってますか?」
「……たぶん……」
「そうですか。俺は持ってなかったんですが……1着くらい持っておいても良さそうですね。買っておきます」
「あの……氷室さん?」
(は、話がどんどん進んでいく……!?)
確かに……浴衣を着て小江戸と呼ばれる川越を歩くことに、少し憧れはある、けれども!
「せっかく特別な日にするのであれば、特別な服……というのも悪くないですからね」
「氷室さん!その前に特別な日ってどういう」
「失礼、一瞬スマホ、見ます」
私が質問を投げかけようとした途端、氷室さんのスマホに着信が入ったらしく、真剣な表情で確認していた。
私は、ほとんど冷め切った紅茶を飲みながら、氷室さんを待つ。
「申し訳ありません森山さん」
「え?」
「……仕事で、トラブルがあったみたいでして……」
「仕事って、病院ですか?」
「まあ……そんなところです」
氷室さんはつい先日、病院を開業したばかりで、院長として忙しい日々を過ごしていると、先日聞いたばかりだった。
「大変、それなら早く行かないと」
「すみません、このお詫びはまた……」
氷室さんは伝票を取ると
「森山さんも、ぜひ浴衣で一緒に行きましょう。あとでメッセージで待ち合わせ場所決めましょう」
と言うと、早足で去っていってしまった。
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(足長いな……コンパスが違うとただ歩くだけでもめっちゃかっこいいんだな……うらやましい……)
などと考えるところだったが……今の私にそんなことを考えるゆとりは全くなかった。
何それ、何それ何それ。
特別な日って……どう言うこと?
この時ふと、急に
「婚活での告白は、大体3回目のデートですることが多い」
と、いくつかの婚活サイトのWEB上に書かれていたことを思い出してしまい、私の顔からは、氷室さんが飲まずに残していったアイスティーのグラスがかいている汗と同じくらい、もしくはそれ以上の汗が噴き出してしまった。
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