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1.人生最後のデートだと思っていたのに
運命の日 6/これ以上、私は傷つきたくない
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その日は、日曜日。
私は教えてもらった喫茶店にて、席につき、紅茶を頼んでいた。
先ほど、氷室さんから
「急に仕事が入ってしまった、予定より1時間程遅れる」
と、連絡があった。
そういう時には、あのゆるキャラスタンプは使ってこない。
こんな小さな気遣いは、氷室さんの誠実さを伝えてくる。
(こんな風に、待ち合わせでドキドキすること……いつぶりだろう……)
この年にもなると、誰かと待ち合わせをするとなると、ごく限られた人物だけになる。
気心知れた家族か友人。
もしくは、緊張が走る仕事の関係者。
どちらもそれなりの対処法は身に付けてうまくやれるようになったが、氷室さんはどちらでもない。
(こんな時、どうやって気持ちを紛らわせればいいのだろう……)
早く会いたい気もするし、心の準備が整わないから会いたくない気もする。
ふわふわグラグラ、心が揺れ動く、そんな待ち合わせに、私は慣れていない。
氷室さんは、とても良い人だ。
氷室さんと知り合ってから、氷室さんについて紹介されている雑誌を図書館で読んだが、キャッチフレーズに必ず「クール」と入っていた。
もちろん、冷静沈着な部分があることは分かる。
つい先日仕事で失敗したかも……と落ち込んだ時の事をメッセージで話してしまった時も、いつものゆるキャラスタンプは送ってこず、論理的な解決法を真剣に考えてくれた。
その切れ味に、最初は
(そこまで求めてないんだけどな……)
と思ったりもしたが、それは心の中に止めておいた。
そんなやり取りが繰り返された後で2回目に会うことも決まる中で、私は常に頭の中で呪文を唱えるようになっていた。
氷室さんの事は、好きになってはダメ。
好きじゃない。
氷室さんは、お友達。
仲良くなった後で、急に離れた後の虚しさを、私は嫌という程経験してきた。
だから、その虚しさ、苦しさから逃れるために、スキルという武器を手に入れた。
それで十分。
これ以上、望みたくない。
これ以上、私は傷つきたくない。
だから今日もあえて、こんな格好だと相手が好きになるわけないだろう……という、おしゃれを意識しない服を、わざと着てきた。
先に防御線を張っておくために……。
私は教えてもらった喫茶店にて、席につき、紅茶を頼んでいた。
先ほど、氷室さんから
「急に仕事が入ってしまった、予定より1時間程遅れる」
と、連絡があった。
そういう時には、あのゆるキャラスタンプは使ってこない。
こんな小さな気遣いは、氷室さんの誠実さを伝えてくる。
(こんな風に、待ち合わせでドキドキすること……いつぶりだろう……)
この年にもなると、誰かと待ち合わせをするとなると、ごく限られた人物だけになる。
気心知れた家族か友人。
もしくは、緊張が走る仕事の関係者。
どちらもそれなりの対処法は身に付けてうまくやれるようになったが、氷室さんはどちらでもない。
(こんな時、どうやって気持ちを紛らわせればいいのだろう……)
早く会いたい気もするし、心の準備が整わないから会いたくない気もする。
ふわふわグラグラ、心が揺れ動く、そんな待ち合わせに、私は慣れていない。
氷室さんは、とても良い人だ。
氷室さんと知り合ってから、氷室さんについて紹介されている雑誌を図書館で読んだが、キャッチフレーズに必ず「クール」と入っていた。
もちろん、冷静沈着な部分があることは分かる。
つい先日仕事で失敗したかも……と落ち込んだ時の事をメッセージで話してしまった時も、いつものゆるキャラスタンプは送ってこず、論理的な解決法を真剣に考えてくれた。
その切れ味に、最初は
(そこまで求めてないんだけどな……)
と思ったりもしたが、それは心の中に止めておいた。
そんなやり取りが繰り返された後で2回目に会うことも決まる中で、私は常に頭の中で呪文を唱えるようになっていた。
氷室さんの事は、好きになってはダメ。
好きじゃない。
氷室さんは、お友達。
仲良くなった後で、急に離れた後の虚しさを、私は嫌という程経験してきた。
だから、その虚しさ、苦しさから逃れるために、スキルという武器を手に入れた。
それで十分。
これ以上、望みたくない。
これ以上、私は傷つきたくない。
だから今日もあえて、こんな格好だと相手が好きになるわけないだろう……という、おしゃれを意識しない服を、わざと着てきた。
先に防御線を張っておくために……。
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