25 / 84
1.人生最後のデートだと思っていたのに
これが運命の出会い? 4/こんな時どうすれば良いの……!?
しおりを挟む
「も、申し訳ございませんでした!」
私は急いで男性から離れる。
(どうしよう……私の汗でスーツを汚してるよな……。クリーニング代払わないと……。5000円で足りるかな……)
財布を取り出そうと、私が自分のカバンを漁ろうとしたら、急にその男性に手首を掴まれた。
(えっ、何!?)
驚く間も無く
「こっち」
と男性にエントランスの中に引き摺り込まれた。
そのタワーマンションの外観はとてもオシャレだと思っていたので、中も普通のマンションと違うだろうな……とは思ってはいたけれど……。
(ここは……高級ホテルですか……?)
大理石の床に、私の部屋には入らなそうな観葉植物、明らかに外国製だと分かる、高級そうなインテリア、そして有人のフロントサービス……などなど、私が知っている世界とはまるで違う空間が、目の前に広がっていた。
男性は、すぐ近くに置かれていた、真っ白な皮張りの、お高そうなソファに私を座らせ、自分も私の真横に座ってきた。
そして私の額に、自分の手のひらを当ててきた。
(なっ、何!?)
その人と私との距離は、あまりに近い。
自分の汗の臭いを気にすればするほど、私の体からは余計に汗が吹き出してくる。
(早く……離れて……!)
という私の願いも届かず、私の額に置かれた男性の手は、そのまま私の顔の上を滑らせ、私の首にあててきた。
「ひゃっ!!」
私はつい、自分の手で男性の胸を突き飛ばしそうになった。
しかし、私のその手も、男性のもう片方の手で掴まれてしまう。
「動かないでください」
男性が真剣な表情で、私の首元を見ている。
(なになになになに!?)
こんなに、男性に至近距離で見られることなんかなかった。
(こんな時どうすれば良いの……!?)
私のなけなしの脳みそが、全力でキャパオーバーを叫んでいると、男性の手がぱっと私から離れた。と思ったらすぐ、私に500mlのスポーツドリンクを渡してきた。
「体少し冷やした後、それ全部飲むように」
「あの……?」
「熱中症です。まずこれで首元を先に冷やしてから、全部飲んでください」
「あ、あの……」
「しばらくここでゆっくりしてください。体調良くなってからご帰宅ください。いいですね」
男性は、私に質問をする隙を与えることなく言い切ると、ぱっと立ち上がり、そのままエレベーターホールの方に消えてしまった。
私は呆然と見送るしかできなかった。
クリーニング代を支払うどころか、逆に飲み物を貰ってしまった。
(どうしよう……)
中に入ったと言う事は、ここの住人である可能性もある。
せめて名前さえ聞いていれば、フロントの人に預けることが出来たかもしれないのに……。
「森山さん!何してるの!」
そんな私の思考を、バッサリと断ち切る声がした。
嫌な予感がして振り返る。
そこには、明らかに気合入っているのがバレバレな婚活向けファッションに身を包んだ佐野さんがいた。
彼女は、仁王立ちをして私を睨みつけていた。
私は急いで男性から離れる。
(どうしよう……私の汗でスーツを汚してるよな……。クリーニング代払わないと……。5000円で足りるかな……)
財布を取り出そうと、私が自分のカバンを漁ろうとしたら、急にその男性に手首を掴まれた。
(えっ、何!?)
驚く間も無く
「こっち」
と男性にエントランスの中に引き摺り込まれた。
そのタワーマンションの外観はとてもオシャレだと思っていたので、中も普通のマンションと違うだろうな……とは思ってはいたけれど……。
(ここは……高級ホテルですか……?)
大理石の床に、私の部屋には入らなそうな観葉植物、明らかに外国製だと分かる、高級そうなインテリア、そして有人のフロントサービス……などなど、私が知っている世界とはまるで違う空間が、目の前に広がっていた。
男性は、すぐ近くに置かれていた、真っ白な皮張りの、お高そうなソファに私を座らせ、自分も私の真横に座ってきた。
そして私の額に、自分の手のひらを当ててきた。
(なっ、何!?)
その人と私との距離は、あまりに近い。
自分の汗の臭いを気にすればするほど、私の体からは余計に汗が吹き出してくる。
(早く……離れて……!)
という私の願いも届かず、私の額に置かれた男性の手は、そのまま私の顔の上を滑らせ、私の首にあててきた。
「ひゃっ!!」
私はつい、自分の手で男性の胸を突き飛ばしそうになった。
しかし、私のその手も、男性のもう片方の手で掴まれてしまう。
「動かないでください」
男性が真剣な表情で、私の首元を見ている。
(なになになになに!?)
こんなに、男性に至近距離で見られることなんかなかった。
(こんな時どうすれば良いの……!?)
私のなけなしの脳みそが、全力でキャパオーバーを叫んでいると、男性の手がぱっと私から離れた。と思ったらすぐ、私に500mlのスポーツドリンクを渡してきた。
「体少し冷やした後、それ全部飲むように」
「あの……?」
「熱中症です。まずこれで首元を先に冷やしてから、全部飲んでください」
「あ、あの……」
「しばらくここでゆっくりしてください。体調良くなってからご帰宅ください。いいですね」
男性は、私に質問をする隙を与えることなく言い切ると、ぱっと立ち上がり、そのままエレベーターホールの方に消えてしまった。
私は呆然と見送るしかできなかった。
クリーニング代を支払うどころか、逆に飲み物を貰ってしまった。
(どうしよう……)
中に入ったと言う事は、ここの住人である可能性もある。
せめて名前さえ聞いていれば、フロントの人に預けることが出来たかもしれないのに……。
「森山さん!何してるの!」
そんな私の思考を、バッサリと断ち切る声がした。
嫌な予感がして振り返る。
そこには、明らかに気合入っているのがバレバレな婚活向けファッションに身を包んだ佐野さんがいた。
彼女は、仁王立ちをして私を睨みつけていた。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
毒舌お嬢と愉快な仲間たち
すけさん
恋愛
毒舌お嬢が身分を偽り地味子に変身して、自分の旦那候補者捜しを始める。
はたして毒舌お嬢の心をキュンとさせる殿方に出会う事が出来るのか!!
他サイトで投稿していた小説の改訂版です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる