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1.人生最後のデートだと思っていたのに

怪しい誘い 3/私という人間のお話

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そんな彼女は、私が派遣社員としてお世話になっているITシステムの会社で、SNSを担当する広報として、美貌を存分に発揮している。

一方の私はと言えば。
リモートワークなのを良いことに。
上半身はオフィスカジュアル用に買った、体型カバーが売りの、透け感がおしゃれなトップス。色は黒。

一目見て気に入るほど、可愛い服だと私は思ったのだが……その時はセールで5000円が1200円くらいになっていた。
……きっとサイズが一般的ではないから、売れないのかな。

(それは、ラッキーなんだ)

買った当時は、ポジティブに考えるように心がけた。

そして下半身。
ウエスト部分がゴムで作られたジャージを履いている。
「いかに体を楽にするか」を意識したチグハグなファッション。

それは、似合う似合わないより、他人の目を気にするより自分の気持ちを優先させていることが一目瞭然。

顔もどうせ……せいぜい画質が悪いWEBミーティングシステムを使ってビデオ通話するくらいでしか見られない。

だから、簡単にニキビが消えるBBクリームをさっと塗り、申し訳程度に100均で買ったリップを塗るくらいの3分メイキング。

さらに、最近のビデオ通話システムの発達は凄まじく、背景も自分で好きなものに変えられる。
私は、オプションですでに入っていた森っぽいの写真画像を使っている。

「森山さんだから森ね」

と、見た人をあっさりと納得させる無難なチョイス。
本当に好きなものを、自分の背景として設定する勇気はない。

そんなチグハグな私と、例え他人からなんて言われようとも、全身を作りこみ自分を売り込むことができる佐野さん。

もちろんそんな私と彼女が仲良くできるはずもなく。
それどころか……一方的に嫌われてるかも……と思えるような行動も数知れず。

仕事で、必要があれば意見を交わすくらいには、佐野さんも私も、社会人としてのスキルは身についている。

でもそれだけの関係。
そんな人が、急に私なんかに前触れもなく話しかけてくるなんて……。
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