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第二十二話
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ひとしきりレオルド公爵は笑った後、瞳に溜まった涙を拭いながら私に話しかける。
「お嬢様、前に一度社交パーティで出会ったことを覚えてます?」
私ははて、と記憶を辿る。
しかし、レオルド公爵といえば女性の取り巻きが常にいる感じで、会ったとしてもチラッと見たことがあるのかも、くらいにしか記憶がない。
「5年前の社交パーティで一緒に踊ったのを覚えてない?」
5年前?踊った?
私は更に頭を混乱させる。
確か5年前、11歳の頃、そういえばあれが最後に出た社交パーティだったか?
いつもの様に壁に花を決め込んでいた私の元へ、1人の同い年くらいの男の子が話しかけてくれたっけ?
私は昔の事を思い出す。
あれは確か、他国の貴族たちも多数参加していた社交パーティだった。
「お前、何でそんな隅っこにいんの?
公爵の他の娘はみんな真ん中の方に行ってるぞ。」
そう男の子に問われ、私は咄嗟に1人が好きだから、いいんです。と答えた。
「私のことは放っておいて下さい。」
精一杯、私は拒絶した。
私が他の人と親しげにしてると、後から妹たちはその人に私の悪い噂を流したり、使用人の分際でいい気になるなよと虐めが酷くなったりするからだ。
しかも、今声をかけてきた男の子はかなりの美少年だ。妹たちにそんな少年と話しているところなんて、絶対に見られてはいけない。
それに大体の人は放っておいてと言えば、みんな何処かへ行ってくれる。
しかし、その男の子だけは頑なに私の側から離れなかった。
「…何でずっと居るんですか?」
「俺も1人が好きだから。
でも、本当に1人だと寂しいから、あんたと居るよ。」
そう言う男の子の言ってる事はなんだか無茶苦茶だった。
「矛盾してません?それ。」
「あんただって、1人が好きと言いながら、寂しそうな顔してるじゃん。」
私はそんなに顔に出てたのだろうか?
本当はみんなに混じって仲良くしたい。
楽しくおしゃべりしたり、お料理を食べたり。
その時、丁度音楽が流れ始めた。
大人も子供も、みんな男女で組んで踊っている。
「あーあ、退屈だし、踊る?」
そう軽いノリで男の子は誘ってきた。
「いや、いいです。私踊ったことないですし。」
と、断る私を他所に男の子は私の肩を掴んで強制的に踊らされる。
「ちょっ!今断ったじゃない!」
「やった事ないならやればいいじゃん。」
私はすぐ様逃げようとするが、がっしり腰をホールドされて逃げられない。
こんなところ妹たちにでも見られたらまずい!
私はキョロキョロと周りを見渡すと、それに男の子も気付いたようで、誰か探してるの?と問いかけられた。
「違う、見つかりたくないの。」
私がボソッと言うと、男の子はグッと私の腕を掴んで外のテラスの方まで出された。
「え?何?」
いきなりテラスに出されてびっくりすると、男の子はここなら大丈夫でしょ?と私の手をとった。
「俺と踊っていただけませんか?お嬢様。」
そう問いかける男の子は月明かりに照らされ、一層綺麗に見えた。
「でも、何で私なんかと?」
水を差す様に私は尋ねる。
「何でって…
まあ、何でもいいじゃん。」
と言いながら、また男の子はまた強引に私と踊り出した。
音楽が鳴り止むまで、ずっと。
ああ、と私は思い出す。
そう言えば、あの男の子は、まさしくレオルド公爵ではないか。
「お嬢様、前に一度社交パーティで出会ったことを覚えてます?」
私ははて、と記憶を辿る。
しかし、レオルド公爵といえば女性の取り巻きが常にいる感じで、会ったとしてもチラッと見たことがあるのかも、くらいにしか記憶がない。
「5年前の社交パーティで一緒に踊ったのを覚えてない?」
5年前?踊った?
私は更に頭を混乱させる。
確か5年前、11歳の頃、そういえばあれが最後に出た社交パーティだったか?
いつもの様に壁に花を決め込んでいた私の元へ、1人の同い年くらいの男の子が話しかけてくれたっけ?
私は昔の事を思い出す。
あれは確か、他国の貴族たちも多数参加していた社交パーティだった。
「お前、何でそんな隅っこにいんの?
公爵の他の娘はみんな真ん中の方に行ってるぞ。」
そう男の子に問われ、私は咄嗟に1人が好きだから、いいんです。と答えた。
「私のことは放っておいて下さい。」
精一杯、私は拒絶した。
私が他の人と親しげにしてると、後から妹たちはその人に私の悪い噂を流したり、使用人の分際でいい気になるなよと虐めが酷くなったりするからだ。
しかも、今声をかけてきた男の子はかなりの美少年だ。妹たちにそんな少年と話しているところなんて、絶対に見られてはいけない。
それに大体の人は放っておいてと言えば、みんな何処かへ行ってくれる。
しかし、その男の子だけは頑なに私の側から離れなかった。
「…何でずっと居るんですか?」
「俺も1人が好きだから。
でも、本当に1人だと寂しいから、あんたと居るよ。」
そう言う男の子の言ってる事はなんだか無茶苦茶だった。
「矛盾してません?それ。」
「あんただって、1人が好きと言いながら、寂しそうな顔してるじゃん。」
私はそんなに顔に出てたのだろうか?
本当はみんなに混じって仲良くしたい。
楽しくおしゃべりしたり、お料理を食べたり。
その時、丁度音楽が流れ始めた。
大人も子供も、みんな男女で組んで踊っている。
「あーあ、退屈だし、踊る?」
そう軽いノリで男の子は誘ってきた。
「いや、いいです。私踊ったことないですし。」
と、断る私を他所に男の子は私の肩を掴んで強制的に踊らされる。
「ちょっ!今断ったじゃない!」
「やった事ないならやればいいじゃん。」
私はすぐ様逃げようとするが、がっしり腰をホールドされて逃げられない。
こんなところ妹たちにでも見られたらまずい!
私はキョロキョロと周りを見渡すと、それに男の子も気付いたようで、誰か探してるの?と問いかけられた。
「違う、見つかりたくないの。」
私がボソッと言うと、男の子はグッと私の腕を掴んで外のテラスの方まで出された。
「え?何?」
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「でも、何で私なんかと?」
水を差す様に私は尋ねる。
「何でって…
まあ、何でもいいじゃん。」
と言いながら、また男の子はまた強引に私と踊り出した。
音楽が鳴り止むまで、ずっと。
ああ、と私は思い出す。
そう言えば、あの男の子は、まさしくレオルド公爵ではないか。
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