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第二十話
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一方、街中は案の定このテレビの一件で大混乱に陥っていた。
国の批判は一気にアルミール家へと高まり、民衆の不満の矛先となったのだ。
更に他の国にもこちらと隣国の不祥事が知れ渡り、恐らく狙うなら今がチャンスと転機を伺っている。
私はその後警察へ事情聴取も兼ねて暫くお世話になっていた。
そんな時、私は大公様に呼び出された。
恐らくアルミール家への処罰などだろう。
私はお屋敷から脱走する時に持ってきたドレスを着て大公様の元へ向かった。
1着だけでもまともなドレスを持ってきて良かったと心から思う。
そして、大公様のお屋敷にて。
私は緊張を耐え抜き、大公様の前で跪く。
「大公様、この度は国をも巻き込んだ騒ぎにしてしまい、誠に申し訳ございません!」
私は土下座して謝るが、すぐ目の前で腰を掛けていた大公様は椅子から立ち上がり、私の頭を撫でてくれた。
え?何事?
私は思わず顔をあげる。
そこには優しそうなお爺さんの顔があった。
大公様はあまり表舞台に顔を出さない為、私も初めて対面する。
「謝らなくていい、君は辛い中1人で頑張ったんだろう?
だから私は、そんな君を見込んで頼みたいことがあるんだ。」
大公様は優しい声色でこう言った。
「君に、公爵の代理を任せたい。」
「え?ええ?」
私は言われた意味が分からなかった。
「大公様?どういうお考えなのでしょうか?
私は女性なので、公爵なんてとても…」
「ああ、だが公爵なき今、均衡が崩れて他国もこちらを狙っていることは、分かっているね?」
それは確かに、目に見えて分かる。
「はい、そうですけれど…」
「早急に公爵が必要なんだけれど、いきなりそんな地位や名誉を与えられる人はなかなか居ない。
しかし、君はアルミール家の1人であり、更にはあの大国のイングランドの血筋を持つ君に相応しい。」
「え?イングランド?私が?」
私はそんな血筋初耳である。
「そうか、君は母君が若くして亡くなったから聞かされていないのか。
我が国は前にも一度大きな戦争になりかけた事があってね、その頃伯爵であった君の父親は、その戦争を回避する為、大国イングランドとの平和条約と共に、君の母親と結婚したのだよ。」
確かに父は政略結婚で、母は異国の人だったとは聞かされていたが、私に大国イングランドの血が混じっていただなんて。
「今回は君にばかり負担がかかってしまい申し訳ないが、きっと君なら国民も納得するだろうし、上手くいけばあの大国のイングランドの後ろ盾も取れる。そうなったら他国はもうこちらを狙い辛いだろう。」
確かに、そうかもしれない。
私が代理とはいえ公爵の座に着くのなら、イングランドは私を無下には出来ないだろう。
「私も出来る限り君をフォローする。
頼まれてくれるかな?」
そこまで言われたら、断る訳にもいかないだろう。
そもそも大公様なのだから、そのお願いは命令にも等しい気がするが。
「畏まりました。大公様の意のままに。」
こうして私は公爵の娘から公爵(仮)になってしまった。
その後は連日アルミール家とドレッド伯爵の様々な悪行でテレビを賑わせ、私の父は公爵の地位を剥奪され、ドレッド伯爵は逮捕され遠い国へ連行されたという。
そして私を虐めていた継母と妹たちは、公爵の娘を虐待というあるまじき行為とみなされ、そちらも無事に逮捕された。
結果的に言えば、私の目論見通りとなった。
そして、不正を暴いたレオルド伯爵は一気に国民の支持を得て、いきなり公爵の座まで上り詰めた。
隣国は隣国でドレッドの人身売買や闇取引などの件で他の異国とも揉めたらしいが、そこはレオルド公爵が上手くやって戦争までには至らなかったそうだ。
そして公爵(仮)となった私は、前公爵と癒着が認められたテレビ会社を解体し、また新たに別のテレビ会社として立て直した。
今後はテレビや新聞などで他の貴族が好き勝手都合のいい情報を流さない様、新たな法律まで定めた。
それと他国が攻め入らない様に、兵力の強化なども行った。
女性の公爵なんて、とか、異国の血が混じってるくせに、と国民から非難を浴びるのでは?と正直ビクビクしていたが、国民は今まで、継母どものせいとはいえ、私を悪く言っていた罪悪感や、私がやられていた仕打ちへの同情などにより、意外に支持されていてびっくりした。
何せ私の父の時より支持率が高かったとか。
国の批判は一気にアルミール家へと高まり、民衆の不満の矛先となったのだ。
更に他の国にもこちらと隣国の不祥事が知れ渡り、恐らく狙うなら今がチャンスと転機を伺っている。
私はその後警察へ事情聴取も兼ねて暫くお世話になっていた。
そんな時、私は大公様に呼び出された。
恐らくアルミール家への処罰などだろう。
私はお屋敷から脱走する時に持ってきたドレスを着て大公様の元へ向かった。
1着だけでもまともなドレスを持ってきて良かったと心から思う。
そして、大公様のお屋敷にて。
私は緊張を耐え抜き、大公様の前で跪く。
「大公様、この度は国をも巻き込んだ騒ぎにしてしまい、誠に申し訳ございません!」
私は土下座して謝るが、すぐ目の前で腰を掛けていた大公様は椅子から立ち上がり、私の頭を撫でてくれた。
え?何事?
私は思わず顔をあげる。
そこには優しそうなお爺さんの顔があった。
大公様はあまり表舞台に顔を出さない為、私も初めて対面する。
「謝らなくていい、君は辛い中1人で頑張ったんだろう?
だから私は、そんな君を見込んで頼みたいことがあるんだ。」
大公様は優しい声色でこう言った。
「君に、公爵の代理を任せたい。」
「え?ええ?」
私は言われた意味が分からなかった。
「大公様?どういうお考えなのでしょうか?
私は女性なので、公爵なんてとても…」
「ああ、だが公爵なき今、均衡が崩れて他国もこちらを狙っていることは、分かっているね?」
それは確かに、目に見えて分かる。
「はい、そうですけれど…」
「早急に公爵が必要なんだけれど、いきなりそんな地位や名誉を与えられる人はなかなか居ない。
しかし、君はアルミール家の1人であり、更にはあの大国のイングランドの血筋を持つ君に相応しい。」
「え?イングランド?私が?」
私はそんな血筋初耳である。
「そうか、君は母君が若くして亡くなったから聞かされていないのか。
我が国は前にも一度大きな戦争になりかけた事があってね、その頃伯爵であった君の父親は、その戦争を回避する為、大国イングランドとの平和条約と共に、君の母親と結婚したのだよ。」
確かに父は政略結婚で、母は異国の人だったとは聞かされていたが、私に大国イングランドの血が混じっていただなんて。
「今回は君にばかり負担がかかってしまい申し訳ないが、きっと君なら国民も納得するだろうし、上手くいけばあの大国のイングランドの後ろ盾も取れる。そうなったら他国はもうこちらを狙い辛いだろう。」
確かに、そうかもしれない。
私が代理とはいえ公爵の座に着くのなら、イングランドは私を無下には出来ないだろう。
「私も出来る限り君をフォローする。
頼まれてくれるかな?」
そこまで言われたら、断る訳にもいかないだろう。
そもそも大公様なのだから、そのお願いは命令にも等しい気がするが。
「畏まりました。大公様の意のままに。」
こうして私は公爵の娘から公爵(仮)になってしまった。
その後は連日アルミール家とドレッド伯爵の様々な悪行でテレビを賑わせ、私の父は公爵の地位を剥奪され、ドレッド伯爵は逮捕され遠い国へ連行されたという。
そして私を虐めていた継母と妹たちは、公爵の娘を虐待というあるまじき行為とみなされ、そちらも無事に逮捕された。
結果的に言えば、私の目論見通りとなった。
そして、不正を暴いたレオルド伯爵は一気に国民の支持を得て、いきなり公爵の座まで上り詰めた。
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そして公爵(仮)となった私は、前公爵と癒着が認められたテレビ会社を解体し、また新たに別のテレビ会社として立て直した。
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