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第十九話
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しかし、それだとレオルド伯爵の父であるのに、何故わざわざこちらの国でこんな小さな新聞屋などを営んでいるのか、些か疑問だ。
「あの、アルデーレおじさんは何故ここで新聞屋を?」
恐らく私が問いたい事を理解したであろうアルデーレおじさんはそうだな、と口を開く。
「俺は昔から曲がった事が嫌いでな。
その点弟のドレッドの野郎はずる賢かった。俺も一時政治界にいたが、俺みたいな正直者の馬鹿はいい様に利用されるだけだ。」
少し悲しそうにアルデーレおじさんは語る。
「ある時、俺はドレッドの不正を見つけ、すぐ様ドレッドを叱りつけた。
…今思えば、この時ドレッドを叱るのではなく、さっさと告発してしまえば良かったんだが。
ドレッドは俺に謝って、不正を自ら告白すると約束したんだ。
しかし、その告白は、俺に不正を擦りつけるものだった。」
「…そんな!」
悪いのはドレッドでありアルデーレおじさんではないのに!
私は心の中で葛藤する。
何故無実のアルデーレおじさんが罪を被らなければならないのか。
アルデーレおじさんはそんな私の頭をポンと優しく撫でてくれる。
「もう何十年も前の話だから、気にすることはない。それに今回の件で息子が仇を取ってくれたから、もういいんだよ。」
そうだったのか。
私はそこでふと納得する。
レオルド伯爵は、ドレッド伯爵への仇打ちとして、結果的に私も助かったということなのだろう。
そうでなければ、今まで赤の他人の私を、わざわざこんなに手間暇かけて助けてくれたりしないだろう。
しかし、アルデーレおじさんは、更に驚きのことを言ってきた。
「それより、お嬢様もうちの息子と結婚したら、俺の義理の娘になるわけか。」
「え?
あ。」
先程しんみりしていたとは思えない程の笑い顔で、アルデーレおじさんは私に言ってくる。
「そういえば、テレビではそんな話になっていましたね?」
私はふとテレビの内容を思い出す。
私の虐めの告発、人身売買など、恐らくアルミール家もドレッド伯爵も地位は剥奪、恐らく警察も動いて何かしらの罪に問われるだろう。
これはこちらの国も隣国も大騒ぎになるだろう。というか、もうなっているであろう。
恐らく隣国はあのレオルド伯爵がいるのだから、場を収められるだろうけれど。
果たしてうちの国はどうなるか?
伯爵が機能しない今、他の国もこぞって攻めてくる可能性もある。
そうなると、私はレオルド伯爵と結婚している場合ではないのでは?
「あれ?我が国もしかしてすごくピンチではないですか?」
「まあ、そこは上手くレオルドがやってくれるだろ。」
私はアルデーレおじさんを見やる。
またもしかして策を巡らせているのかと思いきや。
「お嬢様、期待の眼差しを向けられても、俺はもう政治家を辞めてるんでな。」
やはり今度こそ策は無さそうだった。
「まあ、いざとなればレオルドもお嬢さんと婚約することで隣国への後ろ盾がつくし、そういうことも見越して考えてるとは思うがな?」
ニッとアルデーレおじさんは笑うが、私は対照的に今後が不安になってきていた。
「あの、アルデーレおじさんは何故ここで新聞屋を?」
恐らく私が問いたい事を理解したであろうアルデーレおじさんはそうだな、と口を開く。
「俺は昔から曲がった事が嫌いでな。
その点弟のドレッドの野郎はずる賢かった。俺も一時政治界にいたが、俺みたいな正直者の馬鹿はいい様に利用されるだけだ。」
少し悲しそうにアルデーレおじさんは語る。
「ある時、俺はドレッドの不正を見つけ、すぐ様ドレッドを叱りつけた。
…今思えば、この時ドレッドを叱るのではなく、さっさと告発してしまえば良かったんだが。
ドレッドは俺に謝って、不正を自ら告白すると約束したんだ。
しかし、その告白は、俺に不正を擦りつけるものだった。」
「…そんな!」
悪いのはドレッドでありアルデーレおじさんではないのに!
私は心の中で葛藤する。
何故無実のアルデーレおじさんが罪を被らなければならないのか。
アルデーレおじさんはそんな私の頭をポンと優しく撫でてくれる。
「もう何十年も前の話だから、気にすることはない。それに今回の件で息子が仇を取ってくれたから、もういいんだよ。」
そうだったのか。
私はそこでふと納得する。
レオルド伯爵は、ドレッド伯爵への仇打ちとして、結果的に私も助かったということなのだろう。
そうでなければ、今まで赤の他人の私を、わざわざこんなに手間暇かけて助けてくれたりしないだろう。
しかし、アルデーレおじさんは、更に驚きのことを言ってきた。
「それより、お嬢様もうちの息子と結婚したら、俺の義理の娘になるわけか。」
「え?
あ。」
先程しんみりしていたとは思えない程の笑い顔で、アルデーレおじさんは私に言ってくる。
「そういえば、テレビではそんな話になっていましたね?」
私はふとテレビの内容を思い出す。
私の虐めの告発、人身売買など、恐らくアルミール家もドレッド伯爵も地位は剥奪、恐らく警察も動いて何かしらの罪に問われるだろう。
これはこちらの国も隣国も大騒ぎになるだろう。というか、もうなっているであろう。
恐らく隣国はあのレオルド伯爵がいるのだから、場を収められるだろうけれど。
果たしてうちの国はどうなるか?
伯爵が機能しない今、他の国もこぞって攻めてくる可能性もある。
そうなると、私はレオルド伯爵と結婚している場合ではないのでは?
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「まあ、そこは上手くレオルドがやってくれるだろ。」
私はアルデーレおじさんを見やる。
またもしかして策を巡らせているのかと思いきや。
「お嬢様、期待の眼差しを向けられても、俺はもう政治家を辞めてるんでな。」
やはり今度こそ策は無さそうだった。
「まあ、いざとなればレオルドもお嬢さんと婚約することで隣国への後ろ盾がつくし、そういうことも見越して考えてるとは思うがな?」
ニッとアルデーレおじさんは笑うが、私は対照的に今後が不安になってきていた。
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